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第1章
第7話(1)石川の休日
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7
「しかし、立山連峰でのハイキングは大変だったなあ」
「はあ……」
「手取川でのバーベキューもバタバタしたな」
「ふむ……」
「東尋坊でのロッククライミングも苦労したらしいぜ?」
「ほう……」
「……お前、気のない返事をしているな……」
慶が喫茶店で向かい合って座る大海に対し、冷ややかな視線を送る。
「すみません。休日なので気が抜けていました……」
「それはなんとなく分かるわ」
「そうですか?」
「ああ、いつもの逆ハの字まゆ毛が、ハの字になってらあ」
慶が自らの眉に指を当てて、説明する。
「休日なもので……」
「そんなに分かりやすく電源オフ状態に入るんだな……」
「お待たせしました……」
「どうもありがとうございます……!」
大海が運ばれてきたコーヒーを口に運ぶと、眉が上がる。
「おおっ! 電源オンになった……」
慶が驚く。
「それで何のお話でしたっけ?」
「聞いてなかったんだな……」
「すみません、右耳から入って、左耳から抜けるような状態でした」
「あ、そう……」
「とは言っても、おぼろげには聞いていましたよ」
「そうか?」
「ええ、感心させられました」
「え?」
「ハイキングは楽しかったですか?」
「は?」
「バーベキューは美味しかったですか?」
「はあ?」
「ロッククライミングは良いトレーニングになりそうですね」
「ちょ、ちょっと待て」
慶が大海を制す。
「お忙しい中、スケジュールをやりくりされてすごいですね」
「だから、ちょっと待て」
「はい?」
大海が首を傾げる。
「お前理解してねえな?」
「どういうことですか?」
「オイラのプライベートの話だと思っているだろう?」
「違うのですか?」
「違えよ」
「ええ?」
「こっちがええ?だよ。合同訓練の話だろう。忘れたのか、立山連峰と手取川でのこと……」
「ああ……」
大海が思い出したかのように頷く。
「おいおい、忘れていたのかよ……」
慶が呆れる。
「忘れていたというか、発想が無かったというか……」
「発想が無かった?」
慶が首を傾げる。
「ええ、古前田隊員がそういった任務の類の話をするとは思わなかったので……」
「……オイラをなんだと思っているんだよ?」
慶が目を細める。
「ちゃらんぽら……自由人」
「ちゃらんぽらまて言って誤魔化せねえだろう! 大体自由人ってのも悪口じゃねえか⁉」
「良い意味でです」
「フォローになってねえよ!」
「合同訓練の話でしたか……」
「そもそも東尋坊でロッククライミングなんかしたら大問題だろう」
「ゲートバスターズなら許可が下りるのかなと……」
「下りねえと思うけどな……」
「そうですかね」
「まあ、それよりもだ……どうよ?」
「?」
大海が首を捻る。
「思いっきり首を捻ったな……」
慶が苦笑する。
「どうよ?とは」
「富山と福井の女子のことだよ」
慶がにやつく。
「ああ……宙山隊員は魔法の使い手ということですごいですよね」
「い、いや、そうじゃなくてだな……」
大海の言葉に慶が戸惑う。
「まあ、あれを魔法というべきなのか、それとも超能力などの派生と捉えるかは議論の分かれるところではありますね……」
「い、いや……」
「ちなみに古前田隊員はどう思われますか?」
「そういう議論はしたくねえよ!」
「はて?」
「はて?じゃねえっての……」
「福井のツインテやら眼鏡っ娘はどうだったかとかを話してえのさ」
「志波田隊員の膂力には目を見張るものがありましたね」
「いや、そういうことじゃなくてだな……」
慶が頬杖を突きながら額を抑える。
「宇田川花隊員の探索能力は頼もしいと思います」
「そういうことでもなくてだな……」
慶が両手で頭を抱える。
「? では、どういうことなのでしょうか?」
「ええい、この堅物が!」
「堅物ですか?」
「もっと柔軟になれ、日々を楽しめ」
「楽しめというのは?」
「だから、ああいう女の子たちと今後さらにお近づきになれるわけだろ?」
「おほん!」
隣の席から大きな咳払いが聞こえる。月であった。慶が驚く。
「げえっ⁉ 星野隊員⁉」
「……大海を下世話な道に誘わないでください」
月が立ち上がって振り返り、慶を見下しながら告げる。
「下世話な道って……」
「佐々美隊員と親密になればよろしいのでは? 元々お知り合いのようですし」
「あ、あいつは良いよ……」
「とにかく、これ以上俗物が増えるのは困ります」
「ぞ、俗物扱いかよ⁉」
月の容赦ない物言いに慶が面食らう。
「しかし、立山連峰でのハイキングは大変だったなあ」
「はあ……」
「手取川でのバーベキューもバタバタしたな」
「ふむ……」
「東尋坊でのロッククライミングも苦労したらしいぜ?」
「ほう……」
「……お前、気のない返事をしているな……」
慶が喫茶店で向かい合って座る大海に対し、冷ややかな視線を送る。
「すみません。休日なので気が抜けていました……」
「それはなんとなく分かるわ」
「そうですか?」
「ああ、いつもの逆ハの字まゆ毛が、ハの字になってらあ」
慶が自らの眉に指を当てて、説明する。
「休日なもので……」
「そんなに分かりやすく電源オフ状態に入るんだな……」
「お待たせしました……」
「どうもありがとうございます……!」
大海が運ばれてきたコーヒーを口に運ぶと、眉が上がる。
「おおっ! 電源オンになった……」
慶が驚く。
「それで何のお話でしたっけ?」
「聞いてなかったんだな……」
「すみません、右耳から入って、左耳から抜けるような状態でした」
「あ、そう……」
「とは言っても、おぼろげには聞いていましたよ」
「そうか?」
「ええ、感心させられました」
「え?」
「ハイキングは楽しかったですか?」
「は?」
「バーベキューは美味しかったですか?」
「はあ?」
「ロッククライミングは良いトレーニングになりそうですね」
「ちょ、ちょっと待て」
慶が大海を制す。
「お忙しい中、スケジュールをやりくりされてすごいですね」
「だから、ちょっと待て」
「はい?」
大海が首を傾げる。
「お前理解してねえな?」
「どういうことですか?」
「オイラのプライベートの話だと思っているだろう?」
「違うのですか?」
「違えよ」
「ええ?」
「こっちがええ?だよ。合同訓練の話だろう。忘れたのか、立山連峰と手取川でのこと……」
「ああ……」
大海が思い出したかのように頷く。
「おいおい、忘れていたのかよ……」
慶が呆れる。
「忘れていたというか、発想が無かったというか……」
「発想が無かった?」
慶が首を傾げる。
「ええ、古前田隊員がそういった任務の類の話をするとは思わなかったので……」
「……オイラをなんだと思っているんだよ?」
慶が目を細める。
「ちゃらんぽら……自由人」
「ちゃらんぽらまて言って誤魔化せねえだろう! 大体自由人ってのも悪口じゃねえか⁉」
「良い意味でです」
「フォローになってねえよ!」
「合同訓練の話でしたか……」
「そもそも東尋坊でロッククライミングなんかしたら大問題だろう」
「ゲートバスターズなら許可が下りるのかなと……」
「下りねえと思うけどな……」
「そうですかね」
「まあ、それよりもだ……どうよ?」
「?」
大海が首を捻る。
「思いっきり首を捻ったな……」
慶が苦笑する。
「どうよ?とは」
「富山と福井の女子のことだよ」
慶がにやつく。
「ああ……宙山隊員は魔法の使い手ということですごいですよね」
「い、いや、そうじゃなくてだな……」
大海の言葉に慶が戸惑う。
「まあ、あれを魔法というべきなのか、それとも超能力などの派生と捉えるかは議論の分かれるところではありますね……」
「い、いや……」
「ちなみに古前田隊員はどう思われますか?」
「そういう議論はしたくねえよ!」
「はて?」
「はて?じゃねえっての……」
「福井のツインテやら眼鏡っ娘はどうだったかとかを話してえのさ」
「志波田隊員の膂力には目を見張るものがありましたね」
「いや、そういうことじゃなくてだな……」
慶が頬杖を突きながら額を抑える。
「宇田川花隊員の探索能力は頼もしいと思います」
「そういうことでもなくてだな……」
慶が両手で頭を抱える。
「? では、どういうことなのでしょうか?」
「ええい、この堅物が!」
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「だから、ああいう女の子たちと今後さらにお近づきになれるわけだろ?」
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「下世話な道って……」
「佐々美隊員と親密になればよろしいのでは? 元々お知り合いのようですし」
「あ、あいつは良いよ……」
「とにかく、これ以上俗物が増えるのは困ります」
「ぞ、俗物扱いかよ⁉」
月の容赦ない物言いに慶が面食らう。
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