【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第6話(4)ツインアタック執行

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「まさかとは思うが……」

「キキ……」

「ブオ……」

 巨大な鳥の影と大型車の影が合わさって、一つの大きな影になり、それが数体、三丸たちの方に向かってくる。三丸が頭を軽く抑える。

「また融合したか……」

「先日の立山連峰に引き続いて、こういうレアケースに遭遇するとは……」

 三丸の横で深海が腕を組む。

「キブオッ!」

「大型車に翼が生えた⁉」

「キモッ!」

 竜の隣で、花が顔をしかめる。

「キキブオッ!」

「は、走っている!」

「ますますキモッ!」

「宇田川竜隊員!」

「は、はい!」

 竜が三丸に返事する。

「……どう見る?」

「……主に機動力が格段に上がりました!」

 竜が即、分析結果を三丸に伝える。深海が呟く。

「厄介ですね」

「ああ」

「さっさと片付けますか……」

 深海が前に進み出て、自らの側頭部を抑える。

「どうするつもりだ?」

 三丸が尋ねる。深海が首だけ振り返って答える。

「エンジン系統にトラブルを発生させます」

「なるほど……」

 三丸が頷く。

「それでは……」

「ちょっと待て」

 三丸が再度呼び止める。

「え?」

「これは訓練だ」

「! まさか……」

「ああ、奴らに任せる」

 三丸が陸人たちを指し示す。

「……本気で言っているのですか?」

「本気だ。実戦経験に勝る訓練はないからな」

「……」

「なんだ?」

「彼の影響ですか?」

「まあ、否定はしない……」

 三丸が肩をすくめる。

「……良いでしょう」

 深海が頷く。

「感謝する」

 三丸が笑顔を浮かべる。

「最初はどうします?」

 深海が尋ねる。

「まずは数を減らす」

 三丸が影の方を指し示す。

「ええ……」

「というわけで……雷電隊員!」

「え⁉ は、はい!」

 三丸から突然呼びかけられ、天空が戸惑う。

「ブレスレットを着けろ!」

「は、はい!」

 天空が右腕にブレスレットを着ける。

「志波田隊員! ブレスレットを着けろ!」

「はっ!」

「よし……二人とも右腕をかざせ!」

「は、はい!」

「はい!」

 腕をかざした天空と蘭が同じ色の光に包まれる。三丸が蘭に対して声をかける。

「志波田隊員、まずは影の数を減らしたい!」

「了解!」

「ただでさえ高い貴様らの身体能力は格段に上がっているはずだ! 制空権を奪れ!」

「了解しました! いくぞ、雷電隊員!」

「え⁉ ど、どうすれば良いんですか?」

 天空が首を傾げる。

「難しいことは考えるな! どうせ考えても分からんタイプだろう!」

「初対面なのによく分かってらっしゃる♪」

 天空が笑顔を浮かべる。

「飛ぶぞ! アタイにタイミングを合わせろ!」

「了解で~す♪」

「行くぞ、3、2、1、GO!」

 蘭と天空が同時に飛び上がり、鳥と車が合わさった影の上を行く。

「おお~」

「食らえ!」

「『ジャンピングカークラッシュ』!」

 蘭が金棒で、天空が拳で、打撃を放つ。

「キブオッ⁉」

 蘭と天空の打撃をまともに食らい、多くの影が霧消する。深海が頷く。

「ふむ、大分減らせましたね……」

「さながら『天空鬼翔』といったところか……」

 三丸が呟く。深海が首を傾げる。

「……疑問なのですが……そのネーミングは四文字が絶対なのですか?」

「絶対というわけではない、あの馬鹿が言い出したことだ」

「それならば……」

「一応統一しておいた方が良いだろう……」

「ふむ……」

「さて、お次は佐々美隊員!」

「はい!」

 葉が前に進み出る。

「宇田川姉弟! 援護しろ!」

「了解!」

「りょ、了解!」

 花と竜が進み出て、葉とともにブレスレットを着けた腕を掲げる。

「頼む!」

 葉が花たちに声をかける。

「はい……11時の方向! 影が数体固まっています!」

 花が声を上げる。

「ひ、火を付ければまとめて始末出来るかと!」

 竜が分析結果を伝える。

「分かった! 掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」

「キブオオッ⁉」

 葉が唱えると、一体の影が爆発し、それにつられて数体が霧消する。

「なるほど、ガソリンを引火させたのか……連携が取れている。さながら『神之双眼』といったところか……」

 三丸が腕を組んで頷く。深海が頭を抱える。

「名勝で爆発させるというのはちょっと……」

「火はすぐに霧消した。そこまでの影響はない……!」

「キブオオッ!」

 残った影の数体が翼を使って、それぞれの方向に飛び始めた。三丸が舌打ちする。

「ちっ、翼に慣れ始めたか……」

「このままだと逃げられてしまいます!」

「分かっている! 氷刃隊員!」

「は、はい⁉」

「貴様の出番だ! すべて撃ち落とせ!」

「む、無茶ぶりです! それぞれ別々の方向に飛んでいるんですよ⁉」

「心配するな! 宙山隊員! 援護を頼む!」

「了解しました!」

「え?」

「氷刃隊員! ブレスレットを掲げて!」

「は、はい……」

 陸人が雪に従う。

「とにかく撃ってください!」

「ええ……?」

「早く!」

「わ、分かりました!」

「それっ!」

「ええっ⁉」

「キブオオオッ⁉」

 陸人の撃った銃弾が、方向を変えて、飛び去ろうとした影たちに着弾し、霧消させる。

「魔法で銃弾に追尾性を持たせたか……『魔法射撃』というのはどうだ?」

「良いのではないですか……」

 三丸の問いかけに深海が応える。

「……貴様ら、よくやってくれた」

 三丸が隊員たちに向かって声をかける。深海が告げる。

「訓練は終了です」

「帰投するとしよう……」

 三丸が隊員たちにあらためて声をかける。
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