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第1章

第6話(3)東尋坊付近にて

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「……ここが訓練ポイントですね」

「なんだ、乗り物酔いはしなかったのか?」

 三丸が深海に尋ねる。

「数時間ならともかく、数十分くらいならば……」

「そうか、つまらんな」

「つまらんなって……」

「逆にノリが悪いな」

「なんの逆ですか」

「冗談だ」

「冗談って……」

「どうだ、東尋坊は?」

 三丸が目の前の景色を指し示す。

「初めて来ました」

「そうか」

「映像などではよく目にしますけどね」

「そうだな」

「輝石安山岩の柱状節理で……」

「あん?」

「これほどの規模を持つものは世界でここを含めて三ヶ所だけだそうです」

「ほう……」

「国の天然記念物及び名勝に指定されています」

「そうか……」

「地質学的にも極めて貴重であり……」

「まあ、そういう話はどうでもいい」

「ど、どうでもいい⁉」

「あの辺りにはくれぐれも影響を出すなと上からきつく言われている」

「そうでしょうね」

「まあ、というわけで……」

「「ブレスレットの試験をさっさと始める(始めます)か」」

「……気が合ったな」

「そうですね」

「あの馬鹿の影響かな」

「否定は出来ません」

 三丸と深海は夜塚の顔を思い浮かべる。

「ふっ、共同責任者の意見が揃ったな」

「それでは……ん⁉」

 東尋坊の真上に黒いゲートが現れる。そこに通信が入る。

「パターン青、巨獣です! 危険度はC!」

 大きい鳥の影が多数現れ、空中を飛行して、三丸たちの方に向かってくる。

「個々の危険度はさほどでも無さそうだが……数が多いのが厄介だな」

「どうしますか?」

 深海が問う。三丸が笑みを浮かべる。

「こちらに任せてもらって問題はない」

「それではお任せしました」

「ああ! 宇田川花隊員! 索敵を任せる!」

「はっ! ……」

 花が目を凝らす。三丸が問う。

「どうだ?」

「……巨大な鳥と考えて差し支えないかと!」

「宇田川竜隊員! 分析を!」

「は、はっ! ……」

 今度は竜が目を凝らす。三丸が再び問う。

「どうか?」

「頭部、胸部を優先的に、翼の部分を狙って飛行能力を奪うのも有効かと!」

「だそうだ、氷刃隊員!」

「は、はい!」

「あの鳥の影どもを撃て!」

「りょ、了解しました!」

 陸人が正確な射撃で、鳥の影を次々と撃ち抜き、霧消させていく。

「ね、狙いが正確!」

「やるね~♪」

 驚く雪の横で天空が口笛を鳴らす。

「何羽か、射撃を逃れました!」

「低空飛行でこちらに向かってきます!」

 花と竜が立て続けに声を上げる。三丸が笑みを浮かべる。

「ふっ、かえって好都合というものだ……志波田隊員!」

「おう!」

「出番だぞ!」

「おっしゃあ!」

 蘭が金棒を振り回し、鳥の影を叩き潰すように霧消させていく。

「接近戦になっても問題なしか」

 葉が感心する。

「ふむ、やりますね……ん⁉」

 深海のもとに通信が入る。

「新たな反応! パターン黄、悪機です! 危険度はC!」

 大型車の影が数十体も地上に降り立ち、深海たちに向かってくる。三丸が尋ねる。

「続けて片付けても良いが?」

「いえ、こちらにお任せを……佐々美隊員!」

「はっ……」

「頼みます」

「了解……掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」

「!」

 大型車の影数体が走行中にバランスを崩し、互いに衝突して霧消する。

「竜?」

「はい、車のタイヤをパンクさせたんです」

 蘭の問いに竜がすかさず答える。

「そういうことも出来るのか……」

 蘭が顎をさする。それでもまだ数体が向かってくる。

「宙山隊員!」

「はい!」

「お願いします」

「了解です! ……はあっ!」

「‼」

 大型車の影数体がまたも走行中にバランスを崩し、互いに衝突して霧消する。

「回復魔法の応用形ですね。逆にタイヤを膨らませました……」

 竜が冷静に分析する。

「い、癒されたいと思っていたけど、あれを見るとちょっと考えちゃうな……」

「陸人くん? 何を考えているの?」

 陸人の呟きに対し、花がジト目で見つめる。なおもまだ数体が向かってくる。

「雷電隊員……」

「はいよ~♪」

「ご自由に……」

「オッケーで~す……『カークラッシュ』!」

 天空が拳や蹴りを繰り出し、大型車の影を次々と霧消させていく。蘭が呟く。

「極めて単純な攻撃だが、強力だ。ネーミングはやや安直だが……」

「片付きましたね……ん? あれは……」

 深海が視線を向けると、残っていた巨大な鳥の影と、後から現れた大型車の影、それぞれ数体が不穏な動きを見せる。
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