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第1章

第4話(4)ツインアタック発動

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「なんだ⁉」

「ブブ……」

「ババ……」

 ヘリコプターの影と木の影が合わさって、一つの大きな影になり、それが数体、空中を低空飛行する。深海が驚く。

「なっ……融合した⁉」

「これはこれは……また珍しいねえ……」

 深海の横で夜塚が顎をさする。

「ブババッ!」

「! 全員伏せろ!」

 夜塚が声をかける。ヘリコプターのプロペラに絡まった木の枝がぐるぐると回転し、夜塚たちに襲いかかるが、全員が身を伏せてなんとかかわす。ヘリコプターたちは一旦上昇する。

「むう……」

「ははっ、これが本当のタケコプターかな?」

 夜塚が深海に笑いかける。

「……」

「シカトはやめてよ!」

「あれは竹ではありません」

「マジレスもやめて!」

「なんなのですか……」

 深海が呆れた視線を向ける。

「ほんの軽口だよ……」

「そんなものを叩いている余裕があるのですか?」

「焦りはミスを生むからね、落ち着くことは大事だよ」

「もっともらしいことを言いますね」

「らしいじゃなくてもっともなことを言っているんだよ」

「ふむ……!」

 ヘリコプターが空中を旋回し、夜塚たちに迫ってくる。

「来るぞ!」

「ヘリの電子機器の調子を狂わせれば……!」

 深海が自らの側頭部を抑えようとする。

「待て!」

「え⁉」

「……ここは彼らに任せよう」

 夜塚がうつ伏せになっている大海たちを指し示す。

「任せるって⁉ どうやって⁉」

「例のやつを試す……!」

「そ、そんな⁉」

「元からそういう予定だっただろう?」

 夜塚がうつ伏せの状態のまま、器用に首をすくめる。

「それはあくまでも訓練が順調に進めばの話で……!」

「またとない機会だ!」

「し、しかし……!」

「物事は考えようだよ!」

「む、むう……」

 深海が顎に手を当てる。

「考えている暇はない!」

「落ち着きが大事だとか言っていたじゃないですか!」

「それはそれ! これはこれだ!」

「ええ……」

「早く! 今回の共同責任者である君の承諾が欲しい!」

「……分かりました」

 深海が頷く。

「よしっ! じゃあ皆、これを!」

「どうぞ!」

 夜塚と深海があるものを取り出して、それぞれの隊員たちに投げ渡す。

「! これは……ブレスレット?」

 受け取った大海が首を傾げる。

「それを腕にはめるんだ!」

「は、はい!」

 大海は夜塚の指示に従う。

「立ち上がって手をかざせ! えっと……宙山隊員も!」

「りょ、了解!」

「わ、わたしもですか⁉」

「早く!」

「りょ、了解しました!」

 大海と雪が立ち上がり手をかざす。二人を同じ色の光が包む。

「! こ、これは……?」

 雪が戸惑う。夜塚が深海に問う。

「どうだい、破竹⁉」

「……共振率は極めて高いようです」

「よし! イケる!」

 夜塚が頷く。

「な、何がイケるんですか⁉」

 雪が尚も戸惑う。夜塚が指示を飛ばす。

「宙山隊員! 疾風隊員に向かって両手をかざせ!」

「え、ええ⁉」

「魔力を注ぎ込むようなイメージです!」

 深海がすかさず補足する。雪が頷く。

「わ、分かりました!」

 雪が両手を大海の方に向ける。大海が拳を握る。

「こ、これは……力が漲ってくるような……」

「疾風隊員、剣を振れ!」

「えっ⁉ ここからでは届きませんよ⁉」

「いいから早くしろ!」

「りょ、了解です! ……はああっ!」

「ブバッ⁉」

「!」

 大海の振るった剣から斬撃が飛び、ヘリコプターを一機霧消させた。

「こ、これは……」

 大海が信じられないといった様子で自らの剣をまじまじと見つめる。

「ふふっ、『魔法剣士』の完成だ……」

「ええ? ど、どういうことですか?」

 残りのヘリコプターが迫ってくる。

「話は後だ! 古前田隊員、佐々美隊員! 今のと同じ要領だ!」

「はっ!」

「マジかよ……よりにもよってこいつと……」

「不良坊主! ぶつぶつ言うな!」

「不良じゃねえ!」

 葉と慶が立ち上がる。葉が慶に向かって唱える。

「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」

「うおっしゃあ!」

「ブババッ⁉」

「‼」

 慶の放った鋭い突きがリーチ以上の伸びでヘリコプターを貫き、霧消させる。

「どうだ!」

「その程度で威張るな、自分の神力あってこそだ……」

「ああん? オイラの日頃の行いが良いんだよ」

 慶と葉が睨み合う。夜塚が声を上げる。

「良いね! 『神仏習合』だ!」

「それはさすがに安直な……『神速豪槍』とかはいかがですか?」

「それ採用♪」

 夜塚が深海を指差す。残りのヘリコプターが迫ってくる。

「ブバババッ!」

「残りの仕上げは星野隊員と天空隊員! 頼むよ!」

「りょ、了解です! で、でも、どうすれば……」

「任せといてください♪ 星野ちゃん! 僕を掴んで飛んで!」

「ほ、星野ちゃん⁉ ア、アタシの腕力じゃあ……」

「早く! 頼むよ!」

「わ、分かりました! か、軽い! これもブレスレットの力⁉」

 月が天空を抱えて、空高く舞い上がる。天空が空中で回転する。

「ぐるっと回って~離して!」

「わ、分かったわ!」

「ブバババッ⁉」

「⁉」

 月が手を離し、天空がヘリコプターに突っ込み、キックをお見舞いして霧消させる。

「『空中蹴り』!」

「そ、そのままのネーミング!」

「『空中飛行』だ!」

「こちらもネーミングセンスが……『天空覇者』というのは?」

「良いね、それも採用♪」

 ヘリコプターの影たちは霧消し、ゲートは閉じられた。深海が呟く。

「撃退成功ですね……」

「君たち、よくやってくれたよ」

 夜塚が隊員たちに向かってウインクする。大海が尋ねる。

「夜塚隊長……このブレスレットは?」

「先日開発されたばかりの物だよ。強力なイレギュラーに対抗する為にね。それを装着することによって、潜在能力が引き出され、複数の隊員が力を合わせて、強烈な攻撃を繰り出すことが出来る。そう、今のような『ツインアタック』をね!」

「ツインアタック……」

「共振率とか言ってましたよね? このメンバーが第四部隊に選ばれたのも理由が?」

「ほう、どうしてなかなか鋭いね、雷電隊員……まあ、その辺のお話は追々するとして……今は帰投しよう。お疲れさま♪」

 夜塚が隊員たちに優しく声をかける。
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