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第1章
第1話(2)顔合わせ
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「あ、貴方は……」
「こうして挨拶するのは初めてかな? 夜塚梅太郎(よづかうめたろう)だよ……って、知らないかな?」
夜塚が敬礼してからおどけてみせる。大海は首を振る。
「知らないなんてとんでもない! 数々のイレギュラー討伐に功を挙げた、『最強の梅太郎』のことはこの辺の子供だって知っています!」
「そうですよ! 金沢管区が日本に、いや、世界に誇る、『ジーニアス梅太郎』!」
「泣かした女は数知れず! 『プレイボーイ梅太郎』!」
「梅太郎を強調するのやめてくれない⁉ 後、どっちかというと馬鹿にしてるでしょ⁉」
夜塚が細目をガっと見開く。
「そ、そんなつもりは無かったです、梅太郎さん」
「ごめんなさい、梅太郎さん」
「マジですんません、梅太郎さん」
大海たちが揃って頭を下げる。
「君たちわざとやってるでしょ⁉ ボクのことは夜塚隊長って呼んでくれない⁉」
「はい、了解しました……隊長?」
大海が首を傾げる。
「本日付けで君ら三人はボクを隊長とする第四部隊に配属されることになったから」
「は、はあ……」
「不満ある感じ?」
「い、いえ……ただ、急な話だなと……」
「出向先の面倒な任務が結構唐突に片付いたからね、それでも本当は前もって通告しておくべきだったのだけど……」
「だけど?」
「サプライズ感があっても良いかなと思ってさ♪」
夜塚が大げさに両手を広げる。
「そ、そうですか……」
「あれ? 驚いていない?」
「驚いています……」
夜塚が大海の顔を覗き込んで、重ねて尋ねる。
「……もしかして怒ってる?」
「怒ってはないです、こういう顔つきなだけです」
「ああ、そう。それなら良かった」
「よ、夜塚隊長!」
月が手を挙げる。
「うん? 何かな?」
「こ、これで全員ですか?」
「後方支援などサポートをお願いする人も何人かいるけど……いわゆる前線に出張るのはボクも含めたこの四人で全員だね」
「……少なくないでしょうか?」
「まあ、上に結構無理を言って作ってもらった部隊だからね。遊撃隊みたいな立ち位置と認識してもらったら良いかな?」
「遊撃隊……」
大海が呟く。月がもう一度手を挙げる。
「も、もう一つ質問よろしいでしょうか?」
「ああ、いちいち挙手しなくても良いよ」
「は、はあ……えっと、何故このメンバーなのですか?」
「あ、そういうの知りたい系~?」
夜塚が笑いながら月を指差す。月は戸惑いながら頷く。
「そ、それはもちろん……」
「第一部隊から第三部隊、それぞれの隊長さんに相談させて頂いてね……」
「はい……」
「ある意味強力な推薦を頂いたんだ」
「す、推薦! ……ある意味?」
月が首を捻る。
「うん、問題児をあげるって」
「も、問題児って! 誰がですか⁉」
「君ら」
「ど、どこが問題なんですか⁉」
「えっと、協調性に乏しい……」
「むっ……」
大海がわずかに顔をしかめる。
「ドジっ子過ぎる……」
「てへっ♡」
月が舌をペロっと出して、片手の拳を頭に添える。
「はみ出し者……」
「そこはかぶき者って言って欲しいですね……」
古前田がムッとする。
「まあ、とにかく君らの名前が挙がったので、ボクの部隊に入れさせてもらった」
「そ、そんな……」
「不服かい?」
「そ、そうではありませんが……要らない子扱いされたのはちょっと……」
月が悲しげに顔を伏せる。
「まあ、環境が変われば、またパフォーマンスも変わってくるさ」
「そ、そうでしょうか?」
「案外そういうものだよ。君らもゲートバスターズの一員なわけだから、ポテンシャルは十分なはずだ。要らない子って、自分を卑下するものじゃないよ」
「は、はい……!」
月が顔を上げる。古前田が口を開く。
「質問があるんですが……」
「どうぞ、古前田隊員」
「このボロい会議室がオイラたちの拠点ですか?」
「そうだね、ここしか空いてなかったもので……」
「希望が持ちにくいな……」
古前田が苦笑しながら部屋を見回す。
「まあまあ、住めば都って言うでしょ?」
「はあ……」
「私からも質問よろしいですか?」
「どうぞ、疾風隊員」
「今日は何をするのでしょうか?」
「自由」
「えっ⁉」
大海が驚く。
「いや、顔合わせだけだから……」
「せっかくですからトレーニングをしましょう! 最強と名高い梅……夜塚隊長と手合わせしてみたいです!」
「却下」
「な、何故ですか⁉」
「めんどい」
「め、めんどい⁉ し、しかし、隊員の練度が上がらないのはマズいのでは⁉」
「! それなら……」
「?」
夜塚が端末を取り出して確認し、画面を大海たちにも見せる。
「早速イレギュラー討伐といこうか」
「ええっ⁉ 通知が早いですね⁉」
「指令部に頼んで、他よりちょこっと早く情報を回してもらうよう手配してもらったんだ。ボクは現場でひたすら実践主義なんだよね~それじゃあ、早速だけど出動!」
夜塚が両手をポンと叩いて、三人に出動を促す。
「こうして挨拶するのは初めてかな? 夜塚梅太郎(よづかうめたろう)だよ……って、知らないかな?」
夜塚が敬礼してからおどけてみせる。大海は首を振る。
「知らないなんてとんでもない! 数々のイレギュラー討伐に功を挙げた、『最強の梅太郎』のことはこの辺の子供だって知っています!」
「そうですよ! 金沢管区が日本に、いや、世界に誇る、『ジーニアス梅太郎』!」
「泣かした女は数知れず! 『プレイボーイ梅太郎』!」
「梅太郎を強調するのやめてくれない⁉ 後、どっちかというと馬鹿にしてるでしょ⁉」
夜塚が細目をガっと見開く。
「そ、そんなつもりは無かったです、梅太郎さん」
「ごめんなさい、梅太郎さん」
「マジですんません、梅太郎さん」
大海たちが揃って頭を下げる。
「君たちわざとやってるでしょ⁉ ボクのことは夜塚隊長って呼んでくれない⁉」
「はい、了解しました……隊長?」
大海が首を傾げる。
「本日付けで君ら三人はボクを隊長とする第四部隊に配属されることになったから」
「は、はあ……」
「不満ある感じ?」
「い、いえ……ただ、急な話だなと……」
「出向先の面倒な任務が結構唐突に片付いたからね、それでも本当は前もって通告しておくべきだったのだけど……」
「だけど?」
「サプライズ感があっても良いかなと思ってさ♪」
夜塚が大げさに両手を広げる。
「そ、そうですか……」
「あれ? 驚いていない?」
「驚いています……」
夜塚が大海の顔を覗き込んで、重ねて尋ねる。
「……もしかして怒ってる?」
「怒ってはないです、こういう顔つきなだけです」
「ああ、そう。それなら良かった」
「よ、夜塚隊長!」
月が手を挙げる。
「うん? 何かな?」
「こ、これで全員ですか?」
「後方支援などサポートをお願いする人も何人かいるけど……いわゆる前線に出張るのはボクも含めたこの四人で全員だね」
「……少なくないでしょうか?」
「まあ、上に結構無理を言って作ってもらった部隊だからね。遊撃隊みたいな立ち位置と認識してもらったら良いかな?」
「遊撃隊……」
大海が呟く。月がもう一度手を挙げる。
「も、もう一つ質問よろしいでしょうか?」
「ああ、いちいち挙手しなくても良いよ」
「は、はあ……えっと、何故このメンバーなのですか?」
「あ、そういうの知りたい系~?」
夜塚が笑いながら月を指差す。月は戸惑いながら頷く。
「そ、それはもちろん……」
「第一部隊から第三部隊、それぞれの隊長さんに相談させて頂いてね……」
「はい……」
「ある意味強力な推薦を頂いたんだ」
「す、推薦! ……ある意味?」
月が首を捻る。
「うん、問題児をあげるって」
「も、問題児って! 誰がですか⁉」
「君ら」
「ど、どこが問題なんですか⁉」
「えっと、協調性に乏しい……」
「むっ……」
大海がわずかに顔をしかめる。
「ドジっ子過ぎる……」
「てへっ♡」
月が舌をペロっと出して、片手の拳を頭に添える。
「はみ出し者……」
「そこはかぶき者って言って欲しいですね……」
古前田がムッとする。
「まあ、とにかく君らの名前が挙がったので、ボクの部隊に入れさせてもらった」
「そ、そんな……」
「不服かい?」
「そ、そうではありませんが……要らない子扱いされたのはちょっと……」
月が悲しげに顔を伏せる。
「まあ、環境が変われば、またパフォーマンスも変わってくるさ」
「そ、そうでしょうか?」
「案外そういうものだよ。君らもゲートバスターズの一員なわけだから、ポテンシャルは十分なはずだ。要らない子って、自分を卑下するものじゃないよ」
「は、はい……!」
月が顔を上げる。古前田が口を開く。
「質問があるんですが……」
「どうぞ、古前田隊員」
「このボロい会議室がオイラたちの拠点ですか?」
「そうだね、ここしか空いてなかったもので……」
「希望が持ちにくいな……」
古前田が苦笑しながら部屋を見回す。
「まあまあ、住めば都って言うでしょ?」
「はあ……」
「私からも質問よろしいですか?」
「どうぞ、疾風隊員」
「今日は何をするのでしょうか?」
「自由」
「えっ⁉」
大海が驚く。
「いや、顔合わせだけだから……」
「せっかくですからトレーニングをしましょう! 最強と名高い梅……夜塚隊長と手合わせしてみたいです!」
「却下」
「な、何故ですか⁉」
「めんどい」
「め、めんどい⁉ し、しかし、隊員の練度が上がらないのはマズいのでは⁉」
「! それなら……」
「?」
夜塚が端末を取り出して確認し、画面を大海たちにも見せる。
「早速イレギュラー討伐といこうか」
「ええっ⁉ 通知が早いですね⁉」
「指令部に頼んで、他よりちょこっと早く情報を回してもらうよう手配してもらったんだ。ボクは現場でひたすら実践主義なんだよね~それじゃあ、早速だけど出動!」
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