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第1章
一人の青年と三人の少年
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「……パターン黒、影です」
通信機から女性の冷静な声が聞こえてくる。
「あ~それはこちらでも確認しました~」
軍服をだらしなく着る。ボサボサの黒髪で細目の青年が通信に気だるげに応える。
「……危険度はCです」
「う~ん、これは各地のリーダー三人をわざわざ揃える必要は無かったかな?」
青年の視線の先の空間には黒い大きな穴が空いており、そこから黒く小さな影が現れた。影は地上に着地した後、しばらくよちよち歩きのような動きをしていたが、急に大きい四足歩行の獣のようになる。青年の顔色がやや緊張したものになる。
「……危険度がBに上昇……Bならまだ慌てる事態ではないかな。まずは君に任せようか」
「ひっ! お、俺ですか?」
青色の髪を長く伸ばしている少年が泣きそうに――ほとんど泣いている――尋ねる。
「ああ、君の射撃は良い牽制になる」
「は、はあ……あまり期待しないで下さい……よ!」
青髪の少年の射撃が獣と化した黒い影の頭部を中心に射抜く。黒い影は動かなくなる。
「全弾命中……実に正確な射撃だ。ところで何故頭部を中心に?」
「……生き物ならば、頭部が損傷すると動けなくなる可能性が最も高いと考えました」
「なるほど……理には適っているね……だが、そう簡単にはいかないようだ……」
青年が指し示すと、影が姿を変化させる獣よりは小さめな人型の姿に変化する。
「ならば、僕が! おらおらおらっ! もう一つおまけにそらっ!」
黄色髪を丁寧にセットしている少年が――どこか楽し気に――影の胸部を殴りつける。最後には強烈な回し蹴りをお見舞いする。黒い影は再び動かなくなる。青年が呟く。
「頭部がダメなら胸部……見事な判断だ。こちらの指示を待てなかったのは頂けないけど」
「すんまぜん、ついつい楽しくなっちまいまして……」
「恐怖に足がすくむよりはマシだけどね……見事なラッシュだったよ」
「結局信じられるのは己の拳です!」
黄色髪の少年が高々と拳を突き上げる。青年はため息をつく。
「その割にはフィニッシュがキックだったけどね……!」
黒い影が形状を化物のように変化させ、青年たちに迫ってくる。
「はああっ!」
赤髪を無造作にした少年が――何故か怒り気味に――手に持っていた刀で影を斬る。
「影が霧消した……そうか、単に首を刎ねれば良かったんだね。それにしても見事な剣だ」
「私は満足しておりません、まだまだ精進あるのみです!」
「向上心があるね。ゲートの混線でもあったのか、珍しい影だった。思わぬ収穫だね」
青年が自らと同じ軍服を着た少年たちを引き連れ、周囲を入念に確認後、帰投する。
「……パターン黒、影です」
通信機から女性の冷静な声が聞こえてくる。
「あ~それはこちらでも確認しました~」
軍服をだらしなく着る。ボサボサの黒髪で細目の青年が通信に気だるげに応える。
「……危険度はCです」
「う~ん、これは各地のリーダー三人をわざわざ揃える必要は無かったかな?」
青年の視線の先の空間には黒い大きな穴が空いており、そこから黒く小さな影が現れた。影は地上に着地した後、しばらくよちよち歩きのような動きをしていたが、急に大きい四足歩行の獣のようになる。青年の顔色がやや緊張したものになる。
「……危険度がBに上昇……Bならまだ慌てる事態ではないかな。まずは君に任せようか」
「ひっ! お、俺ですか?」
青色の髪を長く伸ばしている少年が泣きそうに――ほとんど泣いている――尋ねる。
「ああ、君の射撃は良い牽制になる」
「は、はあ……あまり期待しないで下さい……よ!」
青髪の少年の射撃が獣と化した黒い影の頭部を中心に射抜く。黒い影は動かなくなる。
「全弾命中……実に正確な射撃だ。ところで何故頭部を中心に?」
「……生き物ならば、頭部が損傷すると動けなくなる可能性が最も高いと考えました」
「なるほど……理には適っているね……だが、そう簡単にはいかないようだ……」
青年が指し示すと、影が姿を変化させる獣よりは小さめな人型の姿に変化する。
「ならば、僕が! おらおらおらっ! もう一つおまけにそらっ!」
黄色髪を丁寧にセットしている少年が――どこか楽し気に――影の胸部を殴りつける。最後には強烈な回し蹴りをお見舞いする。黒い影は再び動かなくなる。青年が呟く。
「頭部がダメなら胸部……見事な判断だ。こちらの指示を待てなかったのは頂けないけど」
「すんまぜん、ついつい楽しくなっちまいまして……」
「恐怖に足がすくむよりはマシだけどね……見事なラッシュだったよ」
「結局信じられるのは己の拳です!」
黄色髪の少年が高々と拳を突き上げる。青年はため息をつく。
「その割にはフィニッシュがキックだったけどね……!」
黒い影が形状を化物のように変化させ、青年たちに迫ってくる。
「はああっ!」
赤髪を無造作にした少年が――何故か怒り気味に――手に持っていた刀で影を斬る。
「影が霧消した……そうか、単に首を刎ねれば良かったんだね。それにしても見事な剣だ」
「私は満足しておりません、まだまだ精進あるのみです!」
「向上心があるね。ゲートの混線でもあったのか、珍しい影だった。思わぬ収穫だね」
青年が自らと同じ軍服を着た少年たちを引き連れ、周囲を入念に確認後、帰投する。
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