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第二章
第3レース(1)条件戦に臨む
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3
(東京レース場の芝1400mは、スタート直後から上り坂になって、そのままコーナーに入ります。そのため、短距離戦ではありますが、前半でのペースはそれほど早いものにはなりません。長い直線での“キレ”が求められるコースですね)
(直線でのキレ……)
(差しや追込竜に有利に見えますが、道中息が入りやすいので……)
(息が入る……道中ペースを落として、ラストスパートに向けてスタミナを温存することが出来るってことですね)
(そういうことです。そのため、逃げ・先行竜が粘って上位に残る……! というのも案外よく見る展開です)
「……」
5月の上旬のある日、2歳1勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、先頭をいく、イッツプレシャス! ここらへんで少し苦しくなったか! しかし後続とはまだ距離があるか⁉」
「ここだ!」
「!」
(ペース配分出来ていたのは逃げや先行竜だけじゃないんですよ!)
「良い位置に持ち出した!」
スタンドで見ていた環が頷く。
「今だ!」
「良い脚色!」
「おっと! 外からグレンノイグニースが良い脚で伸びてきているぞ! 鞍上、鞭を二、三回入れて、さらに伸びて、ここでかわした! グレンイグニースが一着! 二連勝です!」
「よしっ!」
炎仁が控えめにだがガッツポーズを取る。
「やった!」
環がスタンドでやや大げさに万歳をする。
☆
(京都レース場の芝1800mは、スタート地点が向こう正面のポケットです)
(ポケット? ああ、スタンドから見て奥まった場所ですね)
(そうです……最初のコーナーまでの距離が900mと長いため、どうしても縦長の展開になってしまいやすいコースです)
(はあ……)
(このストレートに加えて、最初の坂の下りで、皆、スピードに乗りやすいのが特徴的です)
(ふむ……)
(最後の直線も平坦なため、高速での決着ということが多いです)
「ふむ……」
5月下旬のある日、2歳2勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、先頭をいくのはグッバイヒューマンだ! 最終コーナー手前で早くも先頭に! 下り坂でついたスピードは緩まない!」
「む……」
「後方の竜も動き出してはいるが、グッバイヒューマンが差をつけたまま、先頭で最終コーナーを回った! さて、ここから届く竜はいるか!」
「ふん!」
「おっと! 紅の竜体が外から突っ込んでくるぞ!」
「長いストレートでも下り坂でも、スピードに乗り過ぎず、ある程度のスタミナを残せた! 勝負はこの直線!」
「グレンノイグニースが外からグングンと伸びてきた! グレンノイグニースが一着! 初の関西への輸送もなんのその! これで三連勝!」
「おしっ!」
炎仁が大人しめにガッツポーズを取る。
「やったあ!」
環がそれなりの声を出して万歳をする。
☆
(阪神レース場の芝1600mは、外回りのコースを使用。直線が約474mと長く、ゴール前には中山レース場に次ぐ、勾配のキツい急坂があるのが特徴です。当然ですが、後方からの差し・追込が決まりやすいコースです)
(ええ)
(スタートからコーナーまでの距離が長く、さらに3、4コーナー間の距離も長いので、内枠外枠の不利は生じにくいコース形態です)
(言い換えれば、ポジションの取り合いですね)
(そうとも言えますね。なんだかんだで内枠が有利だと言われていますが……)
(いますが?)
(実際のデータでは外枠が圧倒的に好走していますね)
(では外枠を取れれば……)
(理想的です)
「さて……」
6月上旬のある日、2歳3勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、ロードトラベルが先頭に! 4コーナーを回った!」
「むう……」
「期待のグレンノイグニースはまだ4コーナーあたり! ここからは届かないか⁉」
「届く!」
「おおっと⁉ 外からグレンノイグニースが伸びてきた!」
(……4コーナー途中からの下り坂を利用しての、追い込み策がピタリと合った!)
「グレンノイグニースがあっという間に先頭に! 坂も駆け上がり、一着! 4連勝!」
「おっしゃあ!」
炎仁がやや派手にガッツポーズを取る。
「いやったあっ!」
環がかなりの声を出して万歳をする。
☆
(東京レース場の芝1800mは、2コーナー近くにあるポケットからスタート。スタート後すぐに2コーナーに向けて斜めに進路を取る為、内枠が有利なコース形態になっています)
(はい……)
(3コーナーまでのバックストレッチが長い為、前半は比較的ゆったりとしたペースで流れ、長い直線の瞬発勝負になることが多いです)
(瞬発力勝負……)
6月下旬のある日、2歳オープンクラスにグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、人気のグレンノイグニースは内に閉じ込められ、窮屈なレース展開が続く!」
「ちっ、内枠取って喜んでいたらこれだ……」
「最後の直線に入った! おっと! ラブウィナーが飛び出した。脚色が良い! これはこのまま決まってしまうか!」
「! 今だ!」
「おおっと、内からグレンノイグニースがするすると伸びてきたぞ!」
(ラブウィナーの飛び出しで、こちらのマークがわずかに緩んだ! 内から追い込む!)
「グレンノイグニースが良い脚だ! ラブウィナーも粘るが、グレンノイグニースがかわした! そのままゴールイン! グレンノイグニース一着! これで5連勝です!」
「うおっしゃあ!」
炎仁がかなり派手にガッツポーズを取る。
「いやったわあっ!」
環が大声を出して万歳をする。
(しかし……)
(それにしても……)
(レース使い過ぎじゃないの?)
炎仁と環は喜びもそこそこに、揃ってもっともな疑問にいきつく。
(東京レース場の芝1400mは、スタート直後から上り坂になって、そのままコーナーに入ります。そのため、短距離戦ではありますが、前半でのペースはそれほど早いものにはなりません。長い直線での“キレ”が求められるコースですね)
(直線でのキレ……)
(差しや追込竜に有利に見えますが、道中息が入りやすいので……)
(息が入る……道中ペースを落として、ラストスパートに向けてスタミナを温存することが出来るってことですね)
(そういうことです。そのため、逃げ・先行竜が粘って上位に残る……! というのも案外よく見る展開です)
「……」
5月の上旬のある日、2歳1勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、先頭をいく、イッツプレシャス! ここらへんで少し苦しくなったか! しかし後続とはまだ距離があるか⁉」
「ここだ!」
「!」
(ペース配分出来ていたのは逃げや先行竜だけじゃないんですよ!)
「良い位置に持ち出した!」
スタンドで見ていた環が頷く。
「今だ!」
「良い脚色!」
「おっと! 外からグレンノイグニースが良い脚で伸びてきているぞ! 鞍上、鞭を二、三回入れて、さらに伸びて、ここでかわした! グレンイグニースが一着! 二連勝です!」
「よしっ!」
炎仁が控えめにだがガッツポーズを取る。
「やった!」
環がスタンドでやや大げさに万歳をする。
☆
(京都レース場の芝1800mは、スタート地点が向こう正面のポケットです)
(ポケット? ああ、スタンドから見て奥まった場所ですね)
(そうです……最初のコーナーまでの距離が900mと長いため、どうしても縦長の展開になってしまいやすいコースです)
(はあ……)
(このストレートに加えて、最初の坂の下りで、皆、スピードに乗りやすいのが特徴的です)
(ふむ……)
(最後の直線も平坦なため、高速での決着ということが多いです)
「ふむ……」
5月下旬のある日、2歳2勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、先頭をいくのはグッバイヒューマンだ! 最終コーナー手前で早くも先頭に! 下り坂でついたスピードは緩まない!」
「む……」
「後方の竜も動き出してはいるが、グッバイヒューマンが差をつけたまま、先頭で最終コーナーを回った! さて、ここから届く竜はいるか!」
「ふん!」
「おっと! 紅の竜体が外から突っ込んでくるぞ!」
「長いストレートでも下り坂でも、スピードに乗り過ぎず、ある程度のスタミナを残せた! 勝負はこの直線!」
「グレンノイグニースが外からグングンと伸びてきた! グレンノイグニースが一着! 初の関西への輸送もなんのその! これで三連勝!」
「おしっ!」
炎仁が大人しめにガッツポーズを取る。
「やったあ!」
環がそれなりの声を出して万歳をする。
☆
(阪神レース場の芝1600mは、外回りのコースを使用。直線が約474mと長く、ゴール前には中山レース場に次ぐ、勾配のキツい急坂があるのが特徴です。当然ですが、後方からの差し・追込が決まりやすいコースです)
(ええ)
(スタートからコーナーまでの距離が長く、さらに3、4コーナー間の距離も長いので、内枠外枠の不利は生じにくいコース形態です)
(言い換えれば、ポジションの取り合いですね)
(そうとも言えますね。なんだかんだで内枠が有利だと言われていますが……)
(いますが?)
(実際のデータでは外枠が圧倒的に好走していますね)
(では外枠を取れれば……)
(理想的です)
「さて……」
6月上旬のある日、2歳3勝クラスの条件戦にグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、ロードトラベルが先頭に! 4コーナーを回った!」
「むう……」
「期待のグレンノイグニースはまだ4コーナーあたり! ここからは届かないか⁉」
「届く!」
「おおっと⁉ 外からグレンノイグニースが伸びてきた!」
(……4コーナー途中からの下り坂を利用しての、追い込み策がピタリと合った!)
「グレンノイグニースがあっという間に先頭に! 坂も駆け上がり、一着! 4連勝!」
「おっしゃあ!」
炎仁がやや派手にガッツポーズを取る。
「いやったあっ!」
環がかなりの声を出して万歳をする。
☆
(東京レース場の芝1800mは、2コーナー近くにあるポケットからスタート。スタート後すぐに2コーナーに向けて斜めに進路を取る為、内枠が有利なコース形態になっています)
(はい……)
(3コーナーまでのバックストレッチが長い為、前半は比較的ゆったりとしたペースで流れ、長い直線の瞬発勝負になることが多いです)
(瞬発力勝負……)
6月下旬のある日、2歳オープンクラスにグレンノイグニースと出走していた炎仁は、前日に環と行ったミーティングを思い出していた。
「さあ、人気のグレンノイグニースは内に閉じ込められ、窮屈なレース展開が続く!」
「ちっ、内枠取って喜んでいたらこれだ……」
「最後の直線に入った! おっと! ラブウィナーが飛び出した。脚色が良い! これはこのまま決まってしまうか!」
「! 今だ!」
「おおっと、内からグレンノイグニースがするすると伸びてきたぞ!」
(ラブウィナーの飛び出しで、こちらのマークがわずかに緩んだ! 内から追い込む!)
「グレンノイグニースが良い脚だ! ラブウィナーも粘るが、グレンノイグニースがかわした! そのままゴールイン! グレンノイグニース一着! これで5連勝です!」
「うおっしゃあ!」
炎仁がかなり派手にガッツポーズを取る。
「いやったわあっ!」
環が大声を出して万歳をする。
(しかし……)
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(レース使い過ぎじゃないの?)
炎仁と環は喜びもそこそこに、揃ってもっともな疑問にいきつく。
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