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第一章
第8話(4)薄いよ、何やってんの!
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「ひょっとして……忍者か?」
「ひょっとしなくても忍者よ。くのいちって言った方が良いのかしら」
「ほう……」
照美の説明に日光は頷く。
「ふん!」
花火が後方に飛んで、日光と距離を取る。日光が構える。
「くのいちならば、戦闘能力も高いだろう、遠慮はいらんな」
「そんな余裕があるのか?」
「今日の俺の左眼は緑……よって、貴様の身体能力にも後れは取らん!」
「!」
「『宙二秒』!」
背中に片翼の黒い翼を生やした日光が低空飛行でもって、再び花火の懐に入ろうとする。意外なスピードに花火は舌打ちする。
「ちっ!」
花火は高速でパチパチパチパチと拍手をする。それによって土煙が起こり、視界が遮られる。日光が飛行を停止し、着地して顔をしかめる。
「くっ、姿が見えん……!」
「それが花火さんの微能力、『弾幕』よ!」
「弾幕だと……む⁉」
照美の言葉に気を取られた隙をついて、豆鉄砲が日光めがけて飛んでくる。日光はかわしきれずに当たるがままになる。鬼の面を被った花火が笑う。
「よそ見している暇があるのか⁉」
「むう……」
「次はこれだ!」
「ちっ、炎か!」
「どうだ! 近寄れまい!」
ひょっとこの面を被った花火が声を上げる。
「くそ……」
「お次はこれだ!」
「ぐっ、水⁉」
「当たるとなかなか痛いだろう!」
狐の面を被った花火が叫ぶ。防御しながら日光が目を見張る。
「炎が水で消火された⁉ 今だ!」
「そうはいかん!」
「! い、いや、煙が生じてそのまま煙幕に……視界の悪さは変わらずか……」
「どうだ!」
「巧妙な二段仕掛けだな……」
「感心するとはまだ余裕があるな! これならどうだ!」
「ぐはっ⁉ 衝撃波! 紙鉄砲か……」
「そうだ!」
おかめの面を被った花火が折り紙の紙鉄砲を構える。
「おもちゃをそこまでの威力に持ってくるとは……かなりの練度だな」
「ああ、拙者はここまで血のにじむような努力を重ねてきた!」
「単なる視界を遮るだけの能力だけでなく、攻撃にも転じることが出来るなんて……!」
照美が驚く。
「……ふふっ」
「! なにがおかしい!」
花火が紙鉄砲を笑う日光に突きつける。
「おかしいのではない……嬉しいのだ」
「嬉しい? 何を言っている⁉」
「この学園に来てから、どんな能力も使いようだと俺は言ってきた……」
「……」
「貴様はさらにその先を行っている。微能力を練り込み、より高みを目指す……何故なら能力に限界などはない……俺を含め、この2年B組の連中に足りなかった考えだ……」
「!」
照美が再度驚く。四天王の面々もそれぞれハッとした表情になる。
「微能力の練り込みか……」
「なるほどね~」
「ちっ……」
「限界はない……確かにその発想が欠けていたかもしれませんね」
「気に入ったぞ、八角花火! 俺の友達になれ!」
「な、何を言っている⁉」
「ダメか⁉」
「ダ、ダメというか……拙者に勝ってからの話だ! それは!」
「それもそうだな!」
日光が三度、花火に突っ込もうとする。花火が呆れ気味に叫ぶ。
「馬鹿め! 何度来ても同じこと! 貴様は拙者に近づくことすら出来ん!」
花火が鬼の面を被り、豆鉄砲を放つ。青龍が声を上げる。
「豆の弾幕です! あれはそうそうかわせない!」
「かわさなければいい!」
「なに⁉」
日光が豆をまとめて平らげる。そして髪をかき上げて呟く。
「飢えを満たすにはちょうど良い……」
「そ、そんな馬鹿な……ならばこれだ!」
ひょっとこの面を被った花火が炎を噴き出す。白虎が叫ぶ。
「炎の弾幕だ! あれでは突っ込めねえ!」
「なんの!」
「な、なに⁉」
日光が炎に突っ込み、突っ切ってみせる。そして側頭部を抑えながら呟く。
「地獄の業火など……な、慣れている……」
「邪気眼系の中二病が上手く作用している! 若干やせ我慢っぽいけど!」
照美が驚愕する。花火が困惑する。
「な、ならばこれだ!」
狐の面を被った花火が水鉄砲を放つ。玄武が声を上げる。
「水の弾幕! あれも厄介だ!」
「ふん!」
「なんだと⁉」
日光が翼をはためかせ、水を弾き飛ばす。そして目元を撫でながら呟く。
「女の涙はいわば宝石のようなもの……褒美だと思えばなんということはない……」
「いや、宝石弾き飛ばしてるし! っていうか、ちょっとキモい!」
照美が素直な感想を口にする。花火が戸惑う。
「わ、わけのわからんことを……それならばこれだ!」
おかめの面を被った花火が紙鉄砲を放つ。朱雀が叫ぶ。
「音の弾幕! あれはかわせない!」
「衝撃波の弾道も……この邪気眼ならば見える!」
「な、なんだと⁉」
日光がそのまま突っ込み、衝撃波をかわしてみせる。そして叫ぶ。
「中二ならばたやすいこと!」
「そうか! 子供じみているから、子供のおもちゃにも純粋に対応出来ているんだわ!」
「そ、そんな馬鹿なことがあるのか⁉ ……し、しまった⁉」
照美のよく分からない説明に花火が突っ込みを入れ、視線を逸らす。そこに日光が迫る。日光の拳が花火の顔を掠め、面を外した。日光が淡々と呟く。
「四天王に対して一人で渡り合ったのは見事、ただ、俺への対策が取れていなかったな……だが、腕前はさすがだ……俺たちに協力してくれないか?」
「……四天王を同士討ちさせようとしたことについては?」
「誰かの差し金だろうが、どうせ口を割らんだろう。だがそれでいい。その徹底さが欲しい」
「! ……八角花火、仁子日光殿に協力させてもらいます」
花火は膝を突き、日光に対し深々と頭を下げるのであった。
「ひょっとしなくても忍者よ。くのいちって言った方が良いのかしら」
「ほう……」
照美の説明に日光は頷く。
「ふん!」
花火が後方に飛んで、日光と距離を取る。日光が構える。
「くのいちならば、戦闘能力も高いだろう、遠慮はいらんな」
「そんな余裕があるのか?」
「今日の俺の左眼は緑……よって、貴様の身体能力にも後れは取らん!」
「!」
「『宙二秒』!」
背中に片翼の黒い翼を生やした日光が低空飛行でもって、再び花火の懐に入ろうとする。意外なスピードに花火は舌打ちする。
「ちっ!」
花火は高速でパチパチパチパチと拍手をする。それによって土煙が起こり、視界が遮られる。日光が飛行を停止し、着地して顔をしかめる。
「くっ、姿が見えん……!」
「それが花火さんの微能力、『弾幕』よ!」
「弾幕だと……む⁉」
照美の言葉に気を取られた隙をついて、豆鉄砲が日光めがけて飛んでくる。日光はかわしきれずに当たるがままになる。鬼の面を被った花火が笑う。
「よそ見している暇があるのか⁉」
「むう……」
「次はこれだ!」
「ちっ、炎か!」
「どうだ! 近寄れまい!」
ひょっとこの面を被った花火が声を上げる。
「くそ……」
「お次はこれだ!」
「ぐっ、水⁉」
「当たるとなかなか痛いだろう!」
狐の面を被った花火が叫ぶ。防御しながら日光が目を見張る。
「炎が水で消火された⁉ 今だ!」
「そうはいかん!」
「! い、いや、煙が生じてそのまま煙幕に……視界の悪さは変わらずか……」
「どうだ!」
「巧妙な二段仕掛けだな……」
「感心するとはまだ余裕があるな! これならどうだ!」
「ぐはっ⁉ 衝撃波! 紙鉄砲か……」
「そうだ!」
おかめの面を被った花火が折り紙の紙鉄砲を構える。
「おもちゃをそこまでの威力に持ってくるとは……かなりの練度だな」
「ああ、拙者はここまで血のにじむような努力を重ねてきた!」
「単なる視界を遮るだけの能力だけでなく、攻撃にも転じることが出来るなんて……!」
照美が驚く。
「……ふふっ」
「! なにがおかしい!」
花火が紙鉄砲を笑う日光に突きつける。
「おかしいのではない……嬉しいのだ」
「嬉しい? 何を言っている⁉」
「この学園に来てから、どんな能力も使いようだと俺は言ってきた……」
「……」
「貴様はさらにその先を行っている。微能力を練り込み、より高みを目指す……何故なら能力に限界などはない……俺を含め、この2年B組の連中に足りなかった考えだ……」
「!」
照美が再度驚く。四天王の面々もそれぞれハッとした表情になる。
「微能力の練り込みか……」
「なるほどね~」
「ちっ……」
「限界はない……確かにその発想が欠けていたかもしれませんね」
「気に入ったぞ、八角花火! 俺の友達になれ!」
「な、何を言っている⁉」
「ダメか⁉」
「ダ、ダメというか……拙者に勝ってからの話だ! それは!」
「それもそうだな!」
日光が三度、花火に突っ込もうとする。花火が呆れ気味に叫ぶ。
「馬鹿め! 何度来ても同じこと! 貴様は拙者に近づくことすら出来ん!」
花火が鬼の面を被り、豆鉄砲を放つ。青龍が声を上げる。
「豆の弾幕です! あれはそうそうかわせない!」
「かわさなければいい!」
「なに⁉」
日光が豆をまとめて平らげる。そして髪をかき上げて呟く。
「飢えを満たすにはちょうど良い……」
「そ、そんな馬鹿な……ならばこれだ!」
ひょっとこの面を被った花火が炎を噴き出す。白虎が叫ぶ。
「炎の弾幕だ! あれでは突っ込めねえ!」
「なんの!」
「な、なに⁉」
日光が炎に突っ込み、突っ切ってみせる。そして側頭部を抑えながら呟く。
「地獄の業火など……な、慣れている……」
「邪気眼系の中二病が上手く作用している! 若干やせ我慢っぽいけど!」
照美が驚愕する。花火が困惑する。
「な、ならばこれだ!」
狐の面を被った花火が水鉄砲を放つ。玄武が声を上げる。
「水の弾幕! あれも厄介だ!」
「ふん!」
「なんだと⁉」
日光が翼をはためかせ、水を弾き飛ばす。そして目元を撫でながら呟く。
「女の涙はいわば宝石のようなもの……褒美だと思えばなんということはない……」
「いや、宝石弾き飛ばしてるし! っていうか、ちょっとキモい!」
照美が素直な感想を口にする。花火が戸惑う。
「わ、わけのわからんことを……それならばこれだ!」
おかめの面を被った花火が紙鉄砲を放つ。朱雀が叫ぶ。
「音の弾幕! あれはかわせない!」
「衝撃波の弾道も……この邪気眼ならば見える!」
「な、なんだと⁉」
日光がそのまま突っ込み、衝撃波をかわしてみせる。そして叫ぶ。
「中二ならばたやすいこと!」
「そうか! 子供じみているから、子供のおもちゃにも純粋に対応出来ているんだわ!」
「そ、そんな馬鹿なことがあるのか⁉ ……し、しまった⁉」
照美のよく分からない説明に花火が突っ込みを入れ、視線を逸らす。そこに日光が迫る。日光の拳が花火の顔を掠め、面を外した。日光が淡々と呟く。
「四天王に対して一人で渡り合ったのは見事、ただ、俺への対策が取れていなかったな……だが、腕前はさすがだ……俺たちに協力してくれないか?」
「……四天王を同士討ちさせようとしたことについては?」
「誰かの差し金だろうが、どうせ口を割らんだろう。だがそれでいい。その徹底さが欲しい」
「! ……八角花火、仁子日光殿に協力させてもらいます」
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