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第一章
第8話(2)校庭にて
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「というわけで、そろそろ朝のホームルームだ」
朱雀たちが空き教室から出ていく。その中に本郷が一人残る。
「……曲者!」
「!」
青龍がいつの間か手に持っていた槍を天井に突き立てる。紫の忍び装束に身を包んだ人間が部屋に降りてきた。青龍は槍を下ろして笑う。
「やはり聞き耳を立てていましたか」
「……」
忍者と思われる人物は黙って膝をつき、顔を伏せている。
「話の内容は大体お分かりになったでしょう? 私とあなたで組んで、他の三人を圧倒し、仁子副クラス長への貢献ぶりを示すのです」
「……果たして」
「え?」
「……それに相応しい御仁か?」
「ええ、少なくとも私はそう感じました……⁉」
青龍は驚く。顔を上げた忍者が鬼の面を被っていたからだ。忍者は中性的な声で告げる。
「……貢献ぶりを示すというのなら、実力行使も辞さないということだな」
「! そうですね……今後の話し合いによっては」
「話し合いは早い方が良い」
「む?」
「例えば今日の放課後、校庭で……そのように段取りをつけるが如何か?」
「……分かりました。お願いします」
「失礼する」
「……消えた。あの鬼の面……まあいいでしょう。校庭で決着をつけるということですか……確かにその方が分かりやすい」
青龍も静かに空き部屋を出るのであった。
♢
「ふん……」
休み時間の間、白虎が廊下をドカドカと歩く。ふとある壁の前で立ち止まる。
「……」
「おい!」
「!」
白虎が壁をドンと叩くと、なんでもない壁から紙がめくれて忍者が現れる。白虎が笑う。
「へっ、隠れ身の術ってやつか……」
「……よくぞ見破られた」
忍者が中性的な声で告げる。
「これくらい造作もねえ……それよりも、色々と嗅ぎまわっているみたいじゃねえか? どうだ? アタシと組まねえか?」
白虎が自身の豊満な胸を指差す。
「む……」
「他の連中を敵に回すのは気が進まねえか? 案外ビビりだな?」
「……ない」
「ん?」
「そのようなことはない」
忍者が声を上げる。白虎が笑みを浮かべる。
「ほう、頼もしいねえ……」
「放課後、校庭にて各々方と話し合いを……」
「話し合い? ああ、連中とか」
「左様」
「……そうだな、出し抜くんだったら早い方がいいな。色々な意味で……。よし、そのように進めておいてくれ」
「了解……失礼」
「! 消えやがったか……それにしてもあのひょっとこの面は……まあいいさ」
白虎は笑いながら移動教室に向かうのであった。
♢
「俺ってさ、よく昼休みは食堂に行かず、こうして教室のベランダで外の景色を眺めながら、軽食をつまむんだよ。意外だったかな?」
「調べはついていたので……」
「さすがだね~♪」
玄武が素直に感心する。
「……」
「一緒にどうだい?」
「結構……」
「ってか、その体勢、キツくない?」
玄武が覗き込む。忍者はベランダの外側に逆さまになって張り付いていたからである。
「心配には及ばん」
「そう? 頭に血が上っちゃわない?」
「鍛錬を積んでいる故……」
忍者は中性的な声で淡々と答える。玄武がため息をつく。
「はあ……まあ、いいや、こうして俺に接触してきたということは、君は俺についてくれるという考えで良いのかな?」
「……気が付かないようなのであれば、他を当たっていた……」
「危ない、危ない、君を逃すのは大きな損失だからね」
玄武は軽食を頬張りながら笑う。忍者が呟く。
「善は急げと言う……」
「うん?」
「放課後、校庭にて話し合いを行うのは如何か?」
「悪くない提案だね。段取りをお願い出来るかな?」
「了解した……失礼」
「! 消えた……それにしてもあの狐の面は……まあいいか」
玄武は食事を終えると、教室に戻るのであった。
♢
「井伊谷朱雀殿……」
「……女子トイレの鏡越しに仮面をつけた忍者が話しかけてくるとは、並の人間だったのなら失神ものだね」
「失礼……」
「別に構わないよ。ちょうど君に用事があったんだ」
朱雀は手を洗いながら告げる。忍者は中性的な声で呟く。
「それは奇遇なことで……」
「白々しいねえ」
朱雀が苦笑する。
「……単刀直入に申し上げる」
「僕につきたいということかい?」
「如何にも」
忍者が鏡越しに頷く。朱雀が笑う。
「ふっ、それは願ってもない申し出だね」
「ついては」
「うん?」
「今日の放課後、連中を校庭に呼び出してある……」
「ふむ……」
「名目はあくまでも話し合いとしてだが……」
「話し合いが上手くいかなければ……ということかい?」
「……そうだ」
「……その話、乗ったよ」
「では、失礼」
「! 消えた、さすがは腕利きの忍び……しかし、あのおかめの面は……? まあいい」
朱雀はトイレから颯爽と出ていく。一人個室に残った生徒が声を漏らす。
「は、はわわ……」
朱雀たちが空き教室から出ていく。その中に本郷が一人残る。
「……曲者!」
「!」
青龍がいつの間か手に持っていた槍を天井に突き立てる。紫の忍び装束に身を包んだ人間が部屋に降りてきた。青龍は槍を下ろして笑う。
「やはり聞き耳を立てていましたか」
「……」
忍者と思われる人物は黙って膝をつき、顔を伏せている。
「話の内容は大体お分かりになったでしょう? 私とあなたで組んで、他の三人を圧倒し、仁子副クラス長への貢献ぶりを示すのです」
「……果たして」
「え?」
「……それに相応しい御仁か?」
「ええ、少なくとも私はそう感じました……⁉」
青龍は驚く。顔を上げた忍者が鬼の面を被っていたからだ。忍者は中性的な声で告げる。
「……貢献ぶりを示すというのなら、実力行使も辞さないということだな」
「! そうですね……今後の話し合いによっては」
「話し合いは早い方が良い」
「む?」
「例えば今日の放課後、校庭で……そのように段取りをつけるが如何か?」
「……分かりました。お願いします」
「失礼する」
「……消えた。あの鬼の面……まあいいでしょう。校庭で決着をつけるということですか……確かにその方が分かりやすい」
青龍も静かに空き部屋を出るのであった。
♢
「ふん……」
休み時間の間、白虎が廊下をドカドカと歩く。ふとある壁の前で立ち止まる。
「……」
「おい!」
「!」
白虎が壁をドンと叩くと、なんでもない壁から紙がめくれて忍者が現れる。白虎が笑う。
「へっ、隠れ身の術ってやつか……」
「……よくぞ見破られた」
忍者が中性的な声で告げる。
「これくらい造作もねえ……それよりも、色々と嗅ぎまわっているみたいじゃねえか? どうだ? アタシと組まねえか?」
白虎が自身の豊満な胸を指差す。
「む……」
「他の連中を敵に回すのは気が進まねえか? 案外ビビりだな?」
「……ない」
「ん?」
「そのようなことはない」
忍者が声を上げる。白虎が笑みを浮かべる。
「ほう、頼もしいねえ……」
「放課後、校庭にて各々方と話し合いを……」
「話し合い? ああ、連中とか」
「左様」
「……そうだな、出し抜くんだったら早い方がいいな。色々な意味で……。よし、そのように進めておいてくれ」
「了解……失礼」
「! 消えやがったか……それにしてもあのひょっとこの面は……まあいいさ」
白虎は笑いながら移動教室に向かうのであった。
♢
「俺ってさ、よく昼休みは食堂に行かず、こうして教室のベランダで外の景色を眺めながら、軽食をつまむんだよ。意外だったかな?」
「調べはついていたので……」
「さすがだね~♪」
玄武が素直に感心する。
「……」
「一緒にどうだい?」
「結構……」
「ってか、その体勢、キツくない?」
玄武が覗き込む。忍者はベランダの外側に逆さまになって張り付いていたからである。
「心配には及ばん」
「そう? 頭に血が上っちゃわない?」
「鍛錬を積んでいる故……」
忍者は中性的な声で淡々と答える。玄武がため息をつく。
「はあ……まあ、いいや、こうして俺に接触してきたということは、君は俺についてくれるという考えで良いのかな?」
「……気が付かないようなのであれば、他を当たっていた……」
「危ない、危ない、君を逃すのは大きな損失だからね」
玄武は軽食を頬張りながら笑う。忍者が呟く。
「善は急げと言う……」
「うん?」
「放課後、校庭にて話し合いを行うのは如何か?」
「悪くない提案だね。段取りをお願い出来るかな?」
「了解した……失礼」
「! 消えた……それにしてもあの狐の面は……まあいいか」
玄武は食事を終えると、教室に戻るのであった。
♢
「井伊谷朱雀殿……」
「……女子トイレの鏡越しに仮面をつけた忍者が話しかけてくるとは、並の人間だったのなら失神ものだね」
「失礼……」
「別に構わないよ。ちょうど君に用事があったんだ」
朱雀は手を洗いながら告げる。忍者は中性的な声で呟く。
「それは奇遇なことで……」
「白々しいねえ」
朱雀が苦笑する。
「……単刀直入に申し上げる」
「僕につきたいということかい?」
「如何にも」
忍者が鏡越しに頷く。朱雀が笑う。
「ふっ、それは願ってもない申し出だね」
「ついては」
「うん?」
「今日の放課後、連中を校庭に呼び出してある……」
「ふむ……」
「名目はあくまでも話し合いとしてだが……」
「話し合いが上手くいかなければ……ということかい?」
「……そうだ」
「……その話、乗ったよ」
「では、失礼」
「! 消えた、さすがは腕利きの忍び……しかし、あのおかめの面は……? まあいい」
朱雀はトイレから颯爽と出ていく。一人個室に残った生徒が声を漏らす。
「は、はわわ……」
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