25 / 51
第一章
第6話(4)反王道を往く
しおりを挟む
「さて……」
「ま、待って!」
「なんだ、照美?」
「どうするつもりなの⁉」
「料理をするつもりだ」
「今の本郷君の料理を見ていなかったの⁉」
「もちろん見ていたさ、敵ながら見事なものだ」
日光がうんうんと頷く。
「状況が分かっているの⁉」
「どういうことだ?」
「ここで下手な料理を作ったって、恥の上塗りになるだけよ!」
「か、勝手に下手だと決めつけるな! そ、それになんだ、恥の上塗りって! もう既に恥をかいたみたいに言うな!」
「出来るの、料理?」
「出来なかったら対決など持ちかけない……」
「で、でも……」
「ちょっとどいてくれ……」
日光が青龍に歩み寄る。
「?」
「……」
「!」
日光が眼帯をめくり青龍に尋ねる。
「俺の左眼は何色だ?」
「え?」
「教えてくれ」
「茶色ですね」
「そうか、分かった」
日光は調理台に向かい、調理を始める。照美が心配そうに見つめる。
「だ、大丈夫なのかしら……」
「ふん……!」
「‼」
「それ!」
「なっ⁉」
「どうだ!」
「こ、これは……」
日光の調理に青龍、照美、聡乃が驚く。
「……出来たぞ」
テーブルに三品の料理が並ぶ。照美が尋ねる。
「こ、これはどこの料理なの……?」
「まずこれはウズベキスタン料理のプロフだ……」
「ウ、ウズベキスタン……」
「朱雀、食べてみろ」
「わ、分かったよ……」
朱雀がプロフを口にする。日光が問う。
「どうだ?」
「! うん、見たところ、ただの焼き飯かと思ったが、甘いね!」
「味のアクセントとして、レーズンが入っているからな」
「レーズンか、なるほど!」
「次はこれだ、エジプト料理のコシャリ……」
「エ、エジプト……」
「玄武、食べてみろ」
「い、いただきます……」
玄武がコシャリを口に運ぶ。日光が聞く。
「さあ、どうだ?」
「! トマトソースがとても良いスパイスになっている混ぜご飯だね!」
「日本人のエジプト旅行の思い出ベスト3で多いのが、『ピラミッド・スフィンクス・コシャリ』らしいぞ。まあこれは余談だが」
「そうなんだ……」
「お次はこれだ、南米料理のエンパナーダ……」
「な、南米……」
「白虎、食べてみろ」
「あ、ああ……」
白虎がエンパナーダを食する。日光が尋ねる。
「……どうだ?」
「! さくさくした皮の中から肉のジューシーな香りが漂ってくる!」
「南米では国や地域ごとに様々な具材を使っているようだな」
「そうなのか……」
「さて……判定は?」
日光が三人に問いかける。
「うむ……」
「悩みどころだね~」
「う~ん……」
「どちらだ?」
「日光くんだね」
「日光っちに一票」
「日光だ」
三人はほぼ同時に答えた。日光が頷く。
「俺の勝ちだな」
「……それだけの腕がありながら、なぜ日本ではマイナーな料理を?」
青龍が首を傾げる。照美が口を開く。
「恐らくだけど……反王道系を往く中二病が発動したってところね」
「中二病……なるほど、それが貴方の微能力か」
「ああ」
青龍の言葉に日光が頷く。
「こうしちゃいられないわ! 私たちもカンボジア料理を作りましょう!」
「俺たちはウクライナ料理だ!」
「⁉」
クラスメイトたちがおもむろに動き出したことに青龍が驚く。
「こ、これは、皆さんに影響を与えた……? 能力の副作用?」
聡乃が分析する。周囲を見回して青龍が頷く。
「皆が高め合っている……。ふむ、どうやら私の完全な負けのようです」
「ほ、本郷君?」
青龍の敗北宣言に照美が戸惑う。
「私の微能力では、自分ばかりが恩恵を受け、周囲に影響を及ぼすことなど到底出来ません。故に微妙な能力の域を出ない……」
淡々とした青龍の言葉に日光が答える。
「そんなこともないだろう。どんな能力も使いようだ」
「! そのように考えたこともなかった……。貴方は己だけでなく、周囲も引き上げることが出来る人物のようだ……このクラスが私にとって過ぎたるものになるかもしれませんね」
「買いかぶりかもしれんぞ」
日光が苦笑する。青龍が静かに首を振る。
「いえ……この本郷青龍、貴方の活動に力を尽くしましょう」
「そうか、それは非常に心強い……」
日光と青龍がガッチリと握手を交わす。
「おい! うちはトリニダード・トバゴ料理を作ろうぜ!」
「わたしたちはエチオピア料理を作りましょう!」
「高め合っているというか、皆ただ単に面白がっているだけのような……まあ、いいか」
周囲を見回した照美は余計なことは言うまいと決めた。
「ま、待って!」
「なんだ、照美?」
「どうするつもりなの⁉」
「料理をするつもりだ」
「今の本郷君の料理を見ていなかったの⁉」
「もちろん見ていたさ、敵ながら見事なものだ」
日光がうんうんと頷く。
「状況が分かっているの⁉」
「どういうことだ?」
「ここで下手な料理を作ったって、恥の上塗りになるだけよ!」
「か、勝手に下手だと決めつけるな! そ、それになんだ、恥の上塗りって! もう既に恥をかいたみたいに言うな!」
「出来るの、料理?」
「出来なかったら対決など持ちかけない……」
「で、でも……」
「ちょっとどいてくれ……」
日光が青龍に歩み寄る。
「?」
「……」
「!」
日光が眼帯をめくり青龍に尋ねる。
「俺の左眼は何色だ?」
「え?」
「教えてくれ」
「茶色ですね」
「そうか、分かった」
日光は調理台に向かい、調理を始める。照美が心配そうに見つめる。
「だ、大丈夫なのかしら……」
「ふん……!」
「‼」
「それ!」
「なっ⁉」
「どうだ!」
「こ、これは……」
日光の調理に青龍、照美、聡乃が驚く。
「……出来たぞ」
テーブルに三品の料理が並ぶ。照美が尋ねる。
「こ、これはどこの料理なの……?」
「まずこれはウズベキスタン料理のプロフだ……」
「ウ、ウズベキスタン……」
「朱雀、食べてみろ」
「わ、分かったよ……」
朱雀がプロフを口にする。日光が問う。
「どうだ?」
「! うん、見たところ、ただの焼き飯かと思ったが、甘いね!」
「味のアクセントとして、レーズンが入っているからな」
「レーズンか、なるほど!」
「次はこれだ、エジプト料理のコシャリ……」
「エ、エジプト……」
「玄武、食べてみろ」
「い、いただきます……」
玄武がコシャリを口に運ぶ。日光が聞く。
「さあ、どうだ?」
「! トマトソースがとても良いスパイスになっている混ぜご飯だね!」
「日本人のエジプト旅行の思い出ベスト3で多いのが、『ピラミッド・スフィンクス・コシャリ』らしいぞ。まあこれは余談だが」
「そうなんだ……」
「お次はこれだ、南米料理のエンパナーダ……」
「な、南米……」
「白虎、食べてみろ」
「あ、ああ……」
白虎がエンパナーダを食する。日光が尋ねる。
「……どうだ?」
「! さくさくした皮の中から肉のジューシーな香りが漂ってくる!」
「南米では国や地域ごとに様々な具材を使っているようだな」
「そうなのか……」
「さて……判定は?」
日光が三人に問いかける。
「うむ……」
「悩みどころだね~」
「う~ん……」
「どちらだ?」
「日光くんだね」
「日光っちに一票」
「日光だ」
三人はほぼ同時に答えた。日光が頷く。
「俺の勝ちだな」
「……それだけの腕がありながら、なぜ日本ではマイナーな料理を?」
青龍が首を傾げる。照美が口を開く。
「恐らくだけど……反王道系を往く中二病が発動したってところね」
「中二病……なるほど、それが貴方の微能力か」
「ああ」
青龍の言葉に日光が頷く。
「こうしちゃいられないわ! 私たちもカンボジア料理を作りましょう!」
「俺たちはウクライナ料理だ!」
「⁉」
クラスメイトたちがおもむろに動き出したことに青龍が驚く。
「こ、これは、皆さんに影響を与えた……? 能力の副作用?」
聡乃が分析する。周囲を見回して青龍が頷く。
「皆が高め合っている……。ふむ、どうやら私の完全な負けのようです」
「ほ、本郷君?」
青龍の敗北宣言に照美が戸惑う。
「私の微能力では、自分ばかりが恩恵を受け、周囲に影響を及ぼすことなど到底出来ません。故に微妙な能力の域を出ない……」
淡々とした青龍の言葉に日光が答える。
「そんなこともないだろう。どんな能力も使いようだ」
「! そのように考えたこともなかった……。貴方は己だけでなく、周囲も引き上げることが出来る人物のようだ……このクラスが私にとって過ぎたるものになるかもしれませんね」
「買いかぶりかもしれんぞ」
日光が苦笑する。青龍が静かに首を振る。
「いえ……この本郷青龍、貴方の活動に力を尽くしましょう」
「そうか、それは非常に心強い……」
日光と青龍がガッチリと握手を交わす。
「おい! うちはトリニダード・トバゴ料理を作ろうぜ!」
「わたしたちはエチオピア料理を作りましょう!」
「高め合っているというか、皆ただ単に面白がっているだけのような……まあ、いいか」
周囲を見回した照美は余計なことは言うまいと決めた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ベスティエンⅢ【改訂版】
花閂
ライト文芸
美少女と強面との美女と野獣っぽい青春恋愛物語。
恋するオトメと武人のプライドの狭間で葛藤するちょっと天然の少女と、モンスターと恐れられるほどの力を持つ強面との、たまにシリアスたまにコメディな学園生活。
名門お嬢様学校に通う少女が、彼氏を追いかけて地元で恐れられる最悪の不良校に入学。
女子生徒数はわずか1%という環境でかなり注目を集めるなか、入学早々に不良をのしてしまったり暴走族にさらわれてしまったり、彼氏の心配をよそに前途多難な学園生活。
不良たちに暴君と恐れられる彼氏に溺愛されながらも、さらに事件に巻き込まれていく。
人間の女に恋をしたモンスターのお話がハッピーエンドだったことはない。
鐵のような両腕を持ち、鋼のような無慈悲さで、鬼と怖れられ獣と罵られ、己のサガを自覚しながらも
恋して焦がれて、愛さずにはいられない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる