2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第6話(2)優れているのは誰か

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「き、君は!」

 朱雀が驚きの声を上げる。長身男子は丁寧にセットされた髪をさっとかき上げる。端正なルックスをほころばせ、輝く白い歯をのぞかせる。

「やあ、井伊谷さん、お久しぶりです」

「まさかアンタが登校してくるとはね……」

「嫌だな、扇原さん、私もまだ学生ですよ」

「君がここで動くとは予想外だよ」

「笠井君、なんの予想ですか?」

 男子は井伊谷たち三人と会話をかわす。そして、自分の席につこうとした男子の前に日光が立ちはだかる。照美が慌てる。

「ちょ、ちょっと……」

「? どちら様ですか?」

「このクラスの副クラス長をやっている、仁子日光だ……」

「ほう、貴方が……」

「見たところ、只者ではないようだ、名前は?」

「ああ、これは失礼。私は出席番号24番、本郷青龍(ほんごうせいりゅう)と申します。以後お見知りおきを……」

「本郷……」

 日光は後ろに立つ聡乃に視線をやる。聡乃が小声で耳打ちする。

「お、お察しの通り、四天王最後の一人で、『保守派』のリーダー格です」

「ふむ……」

「なにか気になることでも?」

 既に席についた青龍は日光に尋ねる。日光はやや間をおいて口を開く。

「……ここまで来たんだ、まだるっこしいことはやめよう……」

「え?」

「本郷青龍、お、俺の、と、友達になれ!」

「なんでそんなに照れるのよ……」

 照美が頭を抑える。青龍の答えは意外なものであった。

「いいですよ」

「そうか……ええっ⁉ い、いいのか⁉」

「ええ」

「そ、そうか……」

「ただ……なにか狙いがあるのでしょう? その勧誘には」

 青龍が笑顔をたたえながら、鋭い声色で日光に問う。日光は戸惑いながら答える。

「そ、そこに気がつくとは流石だな、俺はこの2年B組をより良いクラスにしたいと思っているのだ。その為の活動に力を貸して……」

「お断りします」

「そうか……って、ええっ⁉」

 日光が驚く。青龍が笑顔で繰り返す。

「ですから、お断りします」

「な、何故だ⁉」

「単刀直入に申し上げますと……」

 青龍が立ち上がる。長身かつがっしりとした肉体に日光は気圧される。

「む……」

「このクラスは私にはふさわしくないということです」

「なっ、なっ⁉」

「日光君、ホームルームが始まるわ、お話しの続きは後にしましょう」

 照美が唖然とする日光を席に座るように促す。

「……さて、次は移動教室ですか……ん?」

 席を立った青龍の前に白虎、朱雀、玄武の三人が立ちはだかる。

「え……」

「おいおい……」

 周囲のクラスメイトたちもざわつく。青龍が冷静に尋ねる。

「お三方お揃いでなにか御用ですか?」

「本郷、お前さんにはお前さんなりの考えがあるようだが……」

「はあ……」

 白虎の睨みつけるような視線に対して、青龍は肩をすくめる。

「このクラスは自分にはふさわしくないとは随分とまた大きく出たじゃないか」

「事実ですからね」

 朱雀の言葉に青龍は頷く。

「それが事実かどうか検証しようよってことでね♪」

「検証?」

 玄武の発言に青龍は首を傾げる。白虎が声を上げる。

「そうだ! 同じこの2年B組の四天王……誰が優れているのかをな!」

「検証するまでもないでしょう」

「なに?」

「私がトップだということは揺るぎありません」

 青龍が髪をかき上げる。白虎が顔をしかめる。

「こ、この……言ってくれるな……」

「~♪ すごい自信だね」

 玄武が口笛を鳴らす。青龍はため息交じりに呟く。

「まあ、それで皆様の気が済むのならお好きにどうぞ……」

「まずは僕だ!」

 朱雀が一歩前に進み出る。青龍が苦笑する。

「まずは、と言っている時点でどうかと思いますが……」

「う、うるさい! 本郷くん! 昨年度のバレンタインデー、チョコはいくつもらった⁉ 僕は用意していた紙袋が数袋分パンパンになるほどだったよ。人気者は辛いね……」

「用意していたんだ……」

 玄武が苦笑する。青龍が端末を取り出して画面を表示させる。

「数などを言うのは野暮ですので、これくらいですね……」

「⁉ け、軽トラック数台分⁉」

「手配するのが大変でした」

「ま、負けた……」

 朱雀が肩を落とす。白虎が一歩進み出る。

「本郷よ、そうやって丁寧にセットされた髪、ほのかに匂う香水、鍛え上げられた肉体……なかなか良いと思うぜ」

「ありがとうございます」

「しかしな……」

「はい?」

「お前さん、モテたくてモテたくて必死過ぎやしないか? 意外とアレだろ? ガキの頃はぽっちゃりした体型でモテなかったタイプだろう?」

「……」

「ふん、図星か?」

「……幼少期の頃についてはご想像にお任せしますが、周囲の方々に好感を持って頂く、不快感を与えないように、日々の努力は怠っていないつもりです」

「む……」

 青龍は白い歯を見せて、ニカっと笑う。白虎が顔をしかめる。

「煽りを受け流した……⁉」

 朱雀が驚く。玄武が一歩進み出る。

「青龍っち~テンション上がっている~?」

「まあ、それなりには……そうでないと失礼ですからね」

「失礼?」

「体が大きい私が沈んでいたら、周囲の方々に余計な心配をかけてしまいますから……」

「む、むう……」

 玄武が黙る。その様子を見ていた聡乃が感嘆とする。

「し、四天王の三人が圧されています……」

「イケメンぶり、女性への気遣い、余裕ある振る舞い、流石『スパダリ』の微能力者ね……」

 聡乃の隣で照美が深々と頷く。
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