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第一章 JK将軍誕生

最終弁論

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 反対派が再び輪になって話し合う。

「まさか赤毛がまともな事言うとはな、予想外だったぜ」

「赤宿もお前には言われたくないだろう……さて、最終弁論だがどうする?」

「少し癪ですが……この場は五橋さんに譲りましょうか。よろしいですか? 五橋さん?」

「……ああ、赤毛の君……野生溢れる見た目とは裏腹に知性溢れる御発言、素敵ですわ……」

 八千代が賛成派の席に座る進之助に対して熱い視線を送っている。隣の南武が不思議そうに小霧たちに尋ねる。

「さっきの赤宿さんの発言時からこの調子で……お二人はどういうご関係なのでしょう?」

「こ、これは……」

「命の恩人だからな……吊り橋効果のようなものか」

「良いね~その横顔、絵になるぜ」

 弾七が両手で目の前に長方形を作り、そこから八千代を覗き込む。

「創作活動は後にして下さる? ならば最終弁論は南武さん、貴方にお願いしますわ」

「わ、分かりました。精一杯努めます」

 南武は急いで準備に取り掛かった。一方賛成派の方では、

「そなた赤宿、と言ったか、初めはどうなることかと思ったが、どうしてなかなか良い発言をしておったな、褒めてつかわす。」

「……そりゃどうも」

 進之助は頭を掻きながら、一応礼を言う。

「最終弁論だけどさ~どうする……?」

「無論、余が出る。それでこのディベートも我らの勝利で決まりだ」

 北斗の問いかけに対して、光ノ丸としては当然自分が出るものだと思っていた。しかしそこに、爽が頭を下げ、意見を述べる。

「恐れながら、ここは氷戸さまが出るまでもありません」

「何……? どういうことだ?」

「この問題は元を正せば、南北の両奉行所の意見対立がそもそもの原因。ならばここは。両奉行による最終弁論で雌雄を決するのが筋かと」

「なるほど、そういう考え方もあるか……よろしい奉行どの、最終弁論はそなたに任せる」

「お、おう! 分かったぜ!」

こうして期せずして、最終弁論は南北奉行による兄弟対決となった。

「それでは時間になりました。まずは反対派の最終弁論をお願いします」

「はい」

 南武が返事の後、一拍置いてから話し始める。

「……まず賛成派の皆さんに諸々の問題点に関して、良し悪しは別としてもお考えがきちんとあることを伺えたのは非常に良かったです。しかし、町の調和というものは今すぐに整うというものではありませんし、さらに伝統というものも一朝一夕で出来上がるものではありません。そういったことを踏まえても、計画の部分的見直しは是非とも実行していただきたいところであります。加えて、地域住民の皆さまへの説明も十分過ぎる程に行って貰いたいと思います。その町に住む人々を決して蔑ろにせず、足並みを揃えて、より良い町へ向けて進んで行って欲しいと切に願っております。私からは以上とさせて頂きます」

 南武の話が終わり、聴衆から拍手が聞こえた。

「……ありがとうございました。それでは、賛成派の最終弁論をお願い致します」

「おいっす」

 北斗がゆっくりと立ち上がって、口を開いた。

「……俺たちは先程の防火の件に限らず、あらゆる問題点に対して真摯に向き合って、この計画を進めているつもりだ。解決策の提示がやや不十分だったことは素直に認める。話し合いや協議を重ね、解決策、または妥協点を見出していければと思っているぜ。今回の高層ビル建設だが、俺はこの計画が時代を一つ前に進めるターニングポイントだと捉えている。より多くの人々の理解や協力を得て、この計画を必ず成功させたい。その為にも、みんなの力を是非とも貸して欲しいんだ、よろしく頼む!」

 北斗は力強く言い切って、頭を聴衆に向かって下げた。聴衆からはまたも大きな拍手や歓声が聞こえてきた。それらが静かになるのを待って、万城目が討論の終了を告げる。

「……ありがとうございました。以上をもちまして、ディベートを終わります。それでは両陣営のこれまでの弁論を踏まえて、上様に勝敗を決めて頂きたいと思います。上様、宜しいでしょうか?」

「え、えっと……」

 葵は困惑する。

「ちょっと考えさせて下さい」

「分かりました」

 葵は両肘を机の上に突き、両手を顔の前で組んで目をつむってしばし考え込んだ。やや間を置いて、葵は目を見開き、意を決した表情で立ち上がり宣言した。

「このディベート、勝者は……賛成派です!」

 葵の言葉を受け、賛成派の面々は笑みを浮かべ、反対派の面々はうなだれ、会場は大いに湧き立った。しかし、葵はその盛り上がりを両手で制し、話を続けた。

「賛成派を勝者としましたが、条件と言いますか、注文がいくつかあります。反対派の方々がおっしゃるように、計画の部分的見直しを検討して頂きたいのです。例えばビルのデザインですが、純和風に、町並みによく合う雰囲気のものに変更はできないでしょうか? それならば町の調和も保たれて、伝統も紡いでいき易くなるのではないかと思います。後はランドマーク云々に関してですが、既存の建物、或いは町並みの風景もまた、象徴たり得るという発言がございました。良い言葉だと思います。時の流れが速い今だからこそ、新しいものも大事ですが、歴史あるものも大切に扱っていくということが、これからの町づくりには必要な事になってくるのではないでしょうか? 私からは以上です」

「……はい、ありがとうございました。それではこれで、『江西地区高層ビル建設の是非について』の公開ディベートの一切を終了致します。お集まりの皆さま、そしてwebサイトを通じてご覧頂いた方も誠にありがとうございました」

 司会の万城目が一礼し、聴衆が拍手を送って、公開ディベートは幕を閉じた。
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