5 / 50
第1章
第1話(4)バグキャラに転生……ってこと!?
しおりを挟む
「な、なにをぶつぶつとわけのわからねえことを言ってやがる!」
ジャックが声を上げる。まあ、そりゃあ分からないだろうな、他ならぬ俺自身もよく分かっていないんだから……。
「ふう……」
俺はジャックたちの方にゆっくりと歩み寄る。
「うっ……」
囚人連中が徐々に後ずさりをする。数では圧倒しているのにも関わらず、たった一人の俺に対してビビっているのが分かる。
「さてと……」
俺は首元を片手で抑えながら、首を動かし、首の骨をポキポキと鳴らす。この行動に特に意味はない。なんとなくやってみたかっただけだ。当然のごとく「さてと……」とか言う呟きにも何の意味もない。この後はまったくのノープランだからだ。何故か? 幸いなことに前世でも喧嘩の類はしたことがないからだ。あ、そういえばカツアゲされたことはあったな……思い出したら、なんか無性に腹が立ってきたな……。
「ううっ……」
「て、てめえら、ビビってんじゃねえ!」
「で、でも、ジャックの兄貴……」
「でももへちまもねえ! 数では有利なんだ! 数人がかりでとっちめてしまえ!」
ジャックが声を荒げる。囚人たちは互いの顔を見合わせる。
「ああ、なるほど!」
「その手があったな……!」
囚人たちは後ずさりをやめて、俺を包囲するようにして広がる。ジャックが自らの禿頭を撫でながら呟く。
「ったく、ようやく分かりやがったか……」
囚人たちが徐々に俺への包囲を狭めてくる。
「とりあえず抑えるぞ!」
「ああ、動きを塞いじまえば、こっちのもんだ!」
「行くぞ! せーの……」
「それっ!」
「おっと!」
「なっ⁉」
四方向から俺を捕らえようと、太った囚人たちが一斉に飛びかかってきたが、俺は高くジャンプして空中へと逃げる。囚人たちが面食らう。
「な、なんて高さだ!」
「落ち着け! 着地の時は無防備だ!」
「そ、それもそうだな!」
「落下点は……向こうだ! 待ち伏せろ!」
「……よっ!」
「なにっ⁉」
「ほっ!」
「はあっ⁉」
俺は歩くようにして、空中を軽やかに移動する。囚人たちの驚く顔が見える。かくいう俺も戸惑っている。まさかと思ったが……。
「これは……ん?」
俺の足元辺りにステータス画面よりは小さいウィンドウが表示される。それにはこのようなことが書いてあった。
「【特殊スキル:空中歩行】を発動しました」
これは情報ウィンドウってやつか……それにしても空中歩行とは……もはやほとんど空を飛んでいるようなものじゃないか……。なるほど、特殊スキルか……。俺は空中での散歩を楽しみながら、腕を組んで頷く。
「そらっ!」
「ぐえっ⁉」
「そりっ!」
「げえっ⁉」
「それっ!」
「ごえっ⁉」
俺は空中から降り立つと同時に、囚人たちの頭や顔を踏みつけて回る。思わぬ攻撃を食らった囚人たちはその場に次々と崩れ落ちる。一通り踏みつけ終わった俺は砂浜に着地する。
「ざっとこんなもんだ……」
俺はジャックをじっと見つめる。
「むうっ……」
「どうする? お味方はもうほとんど使い物にならなくなったみたいだが……」
「くっ……」
ジャックが唇を噛む。俺は再びジャックの方にゆっくりと近づく。
「どうするかと聞いているんだが……」
「お、お前、名前は?」
「え? ……キョウだ」
「そ、そうか、キョウ、どうだ、俺と組まねえか?」
「……はあ?」
俺は首を傾げる。
「手を組まねえかってことだよ。お前の強さがかなりのもんだということはよ~く分かった。だがな、強いばかりじゃ世の中っていうのは渡っていけねえんだぜ?」
「悪党が偉そうに説教か?」
「そりゃあ、そんな恰好を見たら、誰だって一言くらい言いたくなるってもんだ」
「む……」
俺は思わず黙り込む。ほぼほぼ全裸だからな。ジャックはニヤリと笑う。
「旗頭はお前さんでいい。兵隊や資金集めは俺に任せとけ。一緒にこの国を盗ろうぜ……」
「……」
「どうした?」
「俺のこれからの生き方は俺自身が決める……」
「!」
「俺に指図するな」
「はっ、交渉決裂か! 残念だぜ! あばよ!」
ジャックが俺に向かって銃を発砲してくる。だが、俺は自分でも不思議なくらい慌てなかった。銃弾がゆっくりとこちらに向かってきたからだ。小さなウィンドウが表示される。
「【特殊スキル:スローモーション】を発動しました」
そんなスキルまであるとは……俺はデコピンの形を作り、銃弾に向ける。
「……ほいっと」
「⁉」
俺のデコピンで弾かれた銃弾がジャックの左胸に当たる。ジャックが仰向けに倒れる。
「あっ……やっちまったか……?」
「……な、なんだってんだ、てめえは⁉ 銃弾を弾き返しやがったのか⁉ ばあちゃんの形見の懐中時計が無かったらヤバかったぞ⁉ 何をしやがった⁉」
半身を起こしたジャックが胸ポケットから銃弾のめり込んだ時計を取り出して叫ぶ。
「何をって……デコピンだけど……」
「デ、デコピン⁉ わけのわからねえことを! こ、ここはずらかる!」
ジャックは囚人たちを置いて、わずかな取り巻きとともにその場を後にする。
「あ、逃げられた……。しかし……もしかして俺はあれか? モブキャラじゃなくてバグキャラに転生したってことか? それなら別に全裸でも良いか! あっはっはっは!」
生まれて初めての戦闘を切り抜けた俺はテンションが妙なベクトルに上がってしまって、仁王立ちをしたまま高笑いをする。
ジャックが声を上げる。まあ、そりゃあ分からないだろうな、他ならぬ俺自身もよく分かっていないんだから……。
「ふう……」
俺はジャックたちの方にゆっくりと歩み寄る。
「うっ……」
囚人連中が徐々に後ずさりをする。数では圧倒しているのにも関わらず、たった一人の俺に対してビビっているのが分かる。
「さてと……」
俺は首元を片手で抑えながら、首を動かし、首の骨をポキポキと鳴らす。この行動に特に意味はない。なんとなくやってみたかっただけだ。当然のごとく「さてと……」とか言う呟きにも何の意味もない。この後はまったくのノープランだからだ。何故か? 幸いなことに前世でも喧嘩の類はしたことがないからだ。あ、そういえばカツアゲされたことはあったな……思い出したら、なんか無性に腹が立ってきたな……。
「ううっ……」
「て、てめえら、ビビってんじゃねえ!」
「で、でも、ジャックの兄貴……」
「でももへちまもねえ! 数では有利なんだ! 数人がかりでとっちめてしまえ!」
ジャックが声を荒げる。囚人たちは互いの顔を見合わせる。
「ああ、なるほど!」
「その手があったな……!」
囚人たちは後ずさりをやめて、俺を包囲するようにして広がる。ジャックが自らの禿頭を撫でながら呟く。
「ったく、ようやく分かりやがったか……」
囚人たちが徐々に俺への包囲を狭めてくる。
「とりあえず抑えるぞ!」
「ああ、動きを塞いじまえば、こっちのもんだ!」
「行くぞ! せーの……」
「それっ!」
「おっと!」
「なっ⁉」
四方向から俺を捕らえようと、太った囚人たちが一斉に飛びかかってきたが、俺は高くジャンプして空中へと逃げる。囚人たちが面食らう。
「な、なんて高さだ!」
「落ち着け! 着地の時は無防備だ!」
「そ、それもそうだな!」
「落下点は……向こうだ! 待ち伏せろ!」
「……よっ!」
「なにっ⁉」
「ほっ!」
「はあっ⁉」
俺は歩くようにして、空中を軽やかに移動する。囚人たちの驚く顔が見える。かくいう俺も戸惑っている。まさかと思ったが……。
「これは……ん?」
俺の足元辺りにステータス画面よりは小さいウィンドウが表示される。それにはこのようなことが書いてあった。
「【特殊スキル:空中歩行】を発動しました」
これは情報ウィンドウってやつか……それにしても空中歩行とは……もはやほとんど空を飛んでいるようなものじゃないか……。なるほど、特殊スキルか……。俺は空中での散歩を楽しみながら、腕を組んで頷く。
「そらっ!」
「ぐえっ⁉」
「そりっ!」
「げえっ⁉」
「それっ!」
「ごえっ⁉」
俺は空中から降り立つと同時に、囚人たちの頭や顔を踏みつけて回る。思わぬ攻撃を食らった囚人たちはその場に次々と崩れ落ちる。一通り踏みつけ終わった俺は砂浜に着地する。
「ざっとこんなもんだ……」
俺はジャックをじっと見つめる。
「むうっ……」
「どうする? お味方はもうほとんど使い物にならなくなったみたいだが……」
「くっ……」
ジャックが唇を噛む。俺は再びジャックの方にゆっくりと近づく。
「どうするかと聞いているんだが……」
「お、お前、名前は?」
「え? ……キョウだ」
「そ、そうか、キョウ、どうだ、俺と組まねえか?」
「……はあ?」
俺は首を傾げる。
「手を組まねえかってことだよ。お前の強さがかなりのもんだということはよ~く分かった。だがな、強いばかりじゃ世の中っていうのは渡っていけねえんだぜ?」
「悪党が偉そうに説教か?」
「そりゃあ、そんな恰好を見たら、誰だって一言くらい言いたくなるってもんだ」
「む……」
俺は思わず黙り込む。ほぼほぼ全裸だからな。ジャックはニヤリと笑う。
「旗頭はお前さんでいい。兵隊や資金集めは俺に任せとけ。一緒にこの国を盗ろうぜ……」
「……」
「どうした?」
「俺のこれからの生き方は俺自身が決める……」
「!」
「俺に指図するな」
「はっ、交渉決裂か! 残念だぜ! あばよ!」
ジャックが俺に向かって銃を発砲してくる。だが、俺は自分でも不思議なくらい慌てなかった。銃弾がゆっくりとこちらに向かってきたからだ。小さなウィンドウが表示される。
「【特殊スキル:スローモーション】を発動しました」
そんなスキルまであるとは……俺はデコピンの形を作り、銃弾に向ける。
「……ほいっと」
「⁉」
俺のデコピンで弾かれた銃弾がジャックの左胸に当たる。ジャックが仰向けに倒れる。
「あっ……やっちまったか……?」
「……な、なんだってんだ、てめえは⁉ 銃弾を弾き返しやがったのか⁉ ばあちゃんの形見の懐中時計が無かったらヤバかったぞ⁉ 何をしやがった⁉」
半身を起こしたジャックが胸ポケットから銃弾のめり込んだ時計を取り出して叫ぶ。
「何をって……デコピンだけど……」
「デ、デコピン⁉ わけのわからねえことを! こ、ここはずらかる!」
ジャックは囚人たちを置いて、わずかな取り巻きとともにその場を後にする。
「あ、逃げられた……。しかし……もしかして俺はあれか? モブキャラじゃなくてバグキャラに転生したってことか? それなら別に全裸でも良いか! あっはっはっは!」
生まれて初めての戦闘を切り抜けた俺はテンションが妙なベクトルに上がってしまって、仁王立ちをしたまま高笑いをする。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる