Live or Die?

阿弥陀乃トンマージ

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第1回公演

第11惑星(2)夢と希望を

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「ど~も~! 皆さん、わたしたち『ギャラクシーフェアリーズ』のライブにようこそ!」

「うわあああ!」

「きゃあああ!」

 客席から大歓声が上がる。

「それじゃあ、早速一曲目行きます! 『恋は前進あるのみ!』!」

「わああー!」

「きゃあー!」

 一曲目から凄い盛り上がりである。早くも総立ちになった客席の皆はペンライトを思い思いに振っている。青色、緑色、赤色の三色のライトが暗くなった会場を彩る。

「どうもありがとうー! 続いて、『序盤、中盤、終盤、スキしかない!』!」

「うわああー!」

 二曲目に入った。ステージ上の三人が、客席に呼びかける。客もそれに応える。コール&レスポンスもしっかりと決まっている。

「ありがとう! 次は『恋愛に定跡なし!』!」

「うおわああー!」

 三曲目もアップテンポなナンバーだ。たたみかけるような流れに客席のボルテージは早くも最高潮だ。ステージ上の三人もそうだが、客側の熱気もすごい。

「……はい! どうもありがとう!」

 曲が終わると、アユミたちがステージ袖で水分補給をした後、すぐにステージに戻ってくる。呼吸を整えつつ、客席の興奮がある程度治まるのを待ってから、アユミが話し出す。

「……はい、皆さんこんばんは!」

「こんばんはー!」

「ははっ、元気が良いですね~。それでは自己紹介をさせて頂きます。『千里の道も一歩から、夢に向かって一歩前進!』 アユミ=センリです!」

「アユミちゃん~!」

 青色のライトが一斉に振られる。

「はい……『どんな高い壁でもピョ~ンとひとっ跳び! 私に超えられないものなどありません!』 ケイ=ハイジャです!」

「ケイちゃん~!」

 緑色のライトが一斉に振られる。

「は~い♪ 『嫌なこと全部、槍で貫いちゃうよ? 覚悟は出来た? ロケットのように突き抜けるから遅れないでね? コウ=マクルビです!』」

「コウちゃ~ん!」

 赤色のライトが一斉に振られる。

「はい、改めまして、わたしたち……」

「「「ギャラクシーフェアリーズです‼」」」

「ぬうおわああっ!」

 三人が揃ってポーズを決めると、客席から声にならない歓声が上がる。再び興奮が治まるのを待ってからアユミが笑いながら話す。

「ふふっ、皆さん、元気一杯でわたしたちもとっても嬉しいです。ライブはまだまだ続きますので、どんどん盛り上がっていきましょう! 続いては……」

「……まさかライブを行うとはね」

 ライブも佳境に入ったところで、ネラが俺に声をかけてくる。

「会場を抑えたり、様々なコネを貸してくれてありがとう」

「それは別に良いけど、ここの会場で良かったの?」

「そうそう、ぶっちゃけ、もっと良い会場も抑えられたけど……」

 ネラの疑問にビアンカも同意する。俺は首を静かに振る。

「ここだからこそ、意味があるんだ……」

「? ちょっと意味が分からないんだけど……」

 ビアンカが首を傾げる。俺は笑う。

「まあ、とにかくありがとう。俺は3人に声をかけてくるから……」

 俺はその場を離れ、ステージ袖に向かう。アンコール前で、衣装を着替え、水分補給を終えた3人と顔を合わせる。アユミが声を上げる。

「あ、マネージャーさん!」

「お疲れさま」

「……まだ終わっていないわよ」

「そうだな、すまん」

 ケイの言葉に俺は苦笑する。

「何か気になることあった~?」

「いや、特にはない……ただ、伝えたいことがあってな……」

「伝えたいこと~?」

 コウの問いに俺は頷く。

「ああ、あえて言わないでおいたんだが……この会場はいわゆる地球では『下層階級』に位置する人々が利用する会場だ」

「!」

「……まあ、なんとなく察しはついていたわ。それで?」

 驚くアユミの横でケイが俺に話の続きを促す。

「……地球では金かコネが無いとまず這い上がれないというような話は以前したことがあるかと思う。今、この会場にいる人たちは言ってしまえば這い上がれない人たちだ」

「あ……」

「君たちのマネージャーをさせてもらうようになってから色々と考えたんだ。こういう人たちにも夢と希望を与えられるのが『アイドル』なんじゃないかって……」

「……!」

「だから、あえてこの会場でライブをしてもらったんだ。客席の盛り上がりぶりを見ると、今回の判断は間違ってなかったんじゃないか……って⁉」

「……」

 俺は驚いた。アユミが大粒の涙を流していたからだ。

「ア、アユミ、どうした⁉」

 アユミは涙を拭う。

「……い、いえ、すみません、ちょっと昔を思い出して……」

「昔?」

「水星でわたしも恵まれない環境の中、育ちました。このまま大人になって一生を終えるのかなって、それこそ夢も希望も抱けないような状況でした……」

「アユミ……」

「そんな中、たまたまあるアイドルのライブを見る機会に恵まれました。初めてのライブはとってもキラキラしていて、わたしに夢と希望、そして勇気を与えてくれたんです……」

「そうだったのか……」

「マネージャーさん、わたしもそんな……夢と希望を与えられる存在になれていますか?」

「……ああ!」

「良かった……」

 アユミは胸の前で両手を合わせて目を閉じる。感無量といった様子だ。

「アユミ、水を差すようで悪いけど、まだアンコールが残っているわ」

「ええ!」

「よし! 元気よくいっくよ~♪」

 ケイの言葉にアユミが力強く頷き、コウが声をかけて、3人はステージに飛び出していく。アンコールも大盛り上がり、ライブは大成功に終わった。翌日……。

「『ギャラクシーフェアリーズ、コンサート大成功! 健在ぶりを示す』……ってよ」

「SNSでも一気に好意的な投稿が増えているね~」

 打ち上げの席でネラとビアンカが端末に表示された情報を読み上げる。

「社会の階級なんかにもこだわらないという姿勢を見せたことで、好感度も一気に取り戻すとはなかなか上手い采配ね……」

 ケイが笑みを浮かべて呟く。

「いや、そういういやらしい計算はしてなかったと言えば……ウソになるな」

 俺は苦笑交じりで答える。端末を眺めていたコウが口を開く。

「ねえ、あのクワトロ……なんとかからDMが来たよ。『ギャラクシーフェアリーズ、決着をつけよう』だってさ」

「! まあ、当然そうくるだろうな……」

 俺は腕を組む。
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