36 / 51
第1回公演
第9惑星(3)ドキドキ撮影
しおりを挟む
「インストアイベントはどうでした?」
「なんていうか、殺気を隠しきれていなかったな……」
「ええ?」
俺の言葉に横を歩くアユミは驚く。
「いや、あくまでも俺の感想だけどな、ネットの書き込みを見る限りは、そこまではマイナスイメージを持たれなかったようだ。ケイのクールさが上手い方に作用したのかな?」
「そ、そうですか……」
「まあ、概ね成功と言って良いんじゃないか」
「は、はあ……」
「お店の方も、次回もよろしくお願いしますって言ってくれたし」
「ああ、それなら良かったですね」
「ただ、次回はアユミにお願いした方が良いかもな……」
「ははっ……」
「アユミはどうだ? ああいう握手会というのには抵抗はないか?」
「絶対に緊張すると思いますけど、ファンの方と直接交流ができるのは楽しそうですよね」
「そうか」
「むしろ抵抗があるのは、今日みたいなお仕事ですかね……」
アユミが小声でなにやら呟く。俺は首を傾げる。
「うん? なにか言ったか?」
「い、いいえ、なんでもありません。急ぎましょう」
「いや……もう着いたぞ?」
「え?」
「ここだから、今日の現場」
俺はある建物を指差す。
「あ、ああ、こちらですか。立派な建物ですね」
「そうだな」
「……」
「アユミ?」
「いや、なんでもないです。入りましょう」
「ああ。おはようございます!」
「お、おはようございます!」
俺とアユミは建物に入り、挨拶をする。現場に入ると、俺はスタッフさんと簡単な打ち合わせをする。スタッフさんがある人物を紹介してくれる。
「マネージャーさん。こちらが今日撮影して下さる先生です」
「よろしく~♪ アユミちゃんの良い写真、ガンガン撮っちゃおう~」
「あ、は、はい、よろしくお願いします」
俺はその界隈ではかなり有名だというカメラマンの方と挨拶をかわす。そう、今日はアユミのグラビア撮影なのだ。
「アユミさん、入りまーす!」
「よ、よろしくお願いします……」
アユミが白のワンピース姿で現れた。おお……まるで清楚を擬人化したような感じだな。有名カメラマンが大きな声を上げる。
「よ~し、それじゃあ、撮っていこうか!」
「は、はい……」
「じゃあ、立ったままポーズ取ってみてくれる?」
「こ、こうですか……?」
「う~ん、ちょっと硬いかな?」
「す、すみません……」
「謝らなくても良いよ~♪ あ、笑顔ね、笑顔♪」
「は、はい……」
アユミが笑みを浮かべる。ちょっとぎこちない感じだ……。カメラマンが首を捻る。
「う~ん、もっと自然な感じでお願い出来る?」
「え、えっと……」
「ちょっと違うかな~」
アユミ、手こずっているな。別に暗い性格でもないんだけど、自然な感じで笑顔を作れって言われても難しいよな……。そうだ!
「……!」
「? ⁉」
俺はカメラマンの背後に回り、ギャラクシーフェアリーズの振り付けをマネする。もちろん、素人のダンスなので無茶苦茶だ。しかし、結構覚えているので、なんとなくそれっぽくはなる。それでも滑稽な動きであることには間違いない。アユミはそんな俺を見て、思わず噴き出してしまう。カメラマンが声を上げる。
「おお~良いね、その笑顔だよ、そういう感じでドンドン行こうか!」
その後、緊張が解けて、リラックスしたアユミは撮影を順調にこなしていく。5パターン目の衣装を撮り終えると、スタッフが声を上げる。
「それでは、本日の撮影は以上でーす!」
「いや~良かったよ、アユミちゃん♪ 実はね、近くの高級ホテルに部屋を取っているんだ。どうかな、食事の後にプライベートな撮影でも……って⁉」
「あ、ありがとうございます! お、お疲れ様でした!」
アユミ、自分の肩に馴れ馴れしく手をまわそうとしたカメラマンの肩を一瞬だけ脱臼させてすぐに戻したな……。なんという早業だ。見逃さなかった俺も恐ろしい……。カメラマンが戸惑っている内に退散しよう……。
「なんていうか、殺気を隠しきれていなかったな……」
「ええ?」
俺の言葉に横を歩くアユミは驚く。
「いや、あくまでも俺の感想だけどな、ネットの書き込みを見る限りは、そこまではマイナスイメージを持たれなかったようだ。ケイのクールさが上手い方に作用したのかな?」
「そ、そうですか……」
「まあ、概ね成功と言って良いんじゃないか」
「は、はあ……」
「お店の方も、次回もよろしくお願いしますって言ってくれたし」
「ああ、それなら良かったですね」
「ただ、次回はアユミにお願いした方が良いかもな……」
「ははっ……」
「アユミはどうだ? ああいう握手会というのには抵抗はないか?」
「絶対に緊張すると思いますけど、ファンの方と直接交流ができるのは楽しそうですよね」
「そうか」
「むしろ抵抗があるのは、今日みたいなお仕事ですかね……」
アユミが小声でなにやら呟く。俺は首を傾げる。
「うん? なにか言ったか?」
「い、いいえ、なんでもありません。急ぎましょう」
「いや……もう着いたぞ?」
「え?」
「ここだから、今日の現場」
俺はある建物を指差す。
「あ、ああ、こちらですか。立派な建物ですね」
「そうだな」
「……」
「アユミ?」
「いや、なんでもないです。入りましょう」
「ああ。おはようございます!」
「お、おはようございます!」
俺とアユミは建物に入り、挨拶をする。現場に入ると、俺はスタッフさんと簡単な打ち合わせをする。スタッフさんがある人物を紹介してくれる。
「マネージャーさん。こちらが今日撮影して下さる先生です」
「よろしく~♪ アユミちゃんの良い写真、ガンガン撮っちゃおう~」
「あ、は、はい、よろしくお願いします」
俺はその界隈ではかなり有名だというカメラマンの方と挨拶をかわす。そう、今日はアユミのグラビア撮影なのだ。
「アユミさん、入りまーす!」
「よ、よろしくお願いします……」
アユミが白のワンピース姿で現れた。おお……まるで清楚を擬人化したような感じだな。有名カメラマンが大きな声を上げる。
「よ~し、それじゃあ、撮っていこうか!」
「は、はい……」
「じゃあ、立ったままポーズ取ってみてくれる?」
「こ、こうですか……?」
「う~ん、ちょっと硬いかな?」
「す、すみません……」
「謝らなくても良いよ~♪ あ、笑顔ね、笑顔♪」
「は、はい……」
アユミが笑みを浮かべる。ちょっとぎこちない感じだ……。カメラマンが首を捻る。
「う~ん、もっと自然な感じでお願い出来る?」
「え、えっと……」
「ちょっと違うかな~」
アユミ、手こずっているな。別に暗い性格でもないんだけど、自然な感じで笑顔を作れって言われても難しいよな……。そうだ!
「……!」
「? ⁉」
俺はカメラマンの背後に回り、ギャラクシーフェアリーズの振り付けをマネする。もちろん、素人のダンスなので無茶苦茶だ。しかし、結構覚えているので、なんとなくそれっぽくはなる。それでも滑稽な動きであることには間違いない。アユミはそんな俺を見て、思わず噴き出してしまう。カメラマンが声を上げる。
「おお~良いね、その笑顔だよ、そういう感じでドンドン行こうか!」
その後、緊張が解けて、リラックスしたアユミは撮影を順調にこなしていく。5パターン目の衣装を撮り終えると、スタッフが声を上げる。
「それでは、本日の撮影は以上でーす!」
「いや~良かったよ、アユミちゃん♪ 実はね、近くの高級ホテルに部屋を取っているんだ。どうかな、食事の後にプライベートな撮影でも……って⁉」
「あ、ありがとうございます! お、お疲れ様でした!」
アユミ、自分の肩に馴れ馴れしく手をまわそうとしたカメラマンの肩を一瞬だけ脱臼させてすぐに戻したな……。なんという早業だ。見逃さなかった俺も恐ろしい……。カメラマンが戸惑っている内に退散しよう……。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
関白の息子!
アイム
SF
天下一の出世人、豊臣秀吉の子―豊臣秀頼。
それが俺だ。
産まれて直ぐに父上(豊臣秀吉)が母上(茶々)に覆いかぶさり、アンアンしているのを見たショックで、なんと前世の記憶(平成の日本)を取り戻してしまった!
関白の息子である俺は、なんでもかんでもやりたい放題。
絶世の美少女・千姫とのラブラブイチャイチャや、大阪城ハーレム化計画など、全ては思い通り!
でも、忘れてはいけない。
その日は確実に近づいているのだから。
※こちらはR18作品になります。18歳未満の方は「小説家になろう」投稿中の全年齢対応版「だって天下人だもん! ー豊臣秀頼の世界征服ー」をご覧ください。
大分歴史改変が進んでおります。
苦手な方は読まれないことをお勧めします。
特に中国・韓国に思い入れのある方はご遠慮ください。
Solomon's Gate
坂森大我
SF
人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。
ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。
実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。
ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。
主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。
ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。
人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる