Live or Die?

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
上 下
29 / 51
第1回公演

第7惑星(4)イオでの稽古

しおりを挟む
「まあ、この辺で良いかな♪」

 コウが呟く。俺は怪訝な顔をして尋ねる。

「……本当にここで良いのか?」

「うん♪」

「そ、そうか……それにしても、何をする気なんだ?」

「あのギャルたちにあって、アタシに足りないものを補わないといけないなって思ってさ」

「へえ……」

「なによ、そのリアクション?」

「そういう真面目さがあったんだな……」

「……マネージャー、アタシのことなんだと思っていたの?」

 コウがジト目で見つめてくる。俺は慌てて謝る。

「す、すまん、すまん、冗談だ」

「まあ、いいけどさ……」

「ところで足りないものとは?」

「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれたね」

「いや、聞くだろ、この流れなら」

「あの白黒双子にあって、アタシに足りないもの……軽やかなステップワークだよ!」

「なるほど、ステップワークか……」

「ステップはダンス全般に通じるからね。それ以外にも……」

 俺はあえてそれ以外という部分には触れず、話を続ける。

「コウもなかなかのステップを見せているとは思うんだが……」

「それは確かにそうだね」

「認めるのか」

 どうやら謙遜という言葉は持ち合わせていないらしい。

「でもね、なんと言えば良いのかな……アタシのはこう……直線的過ぎるんだよね」

「直線的?」

「そう、どうしても突っ走りがちというかね……」

「自覚あったんだな……」

「え?」

「い、いや、なんでもない。そう言われるとそうかもしれないな……」

「あの二人は、直線はもちろん、曲線も描けるというか、さらに言うならば、点で動くことも出来るというか……」

「多彩に動けるっていうことだな」

「そう!」

 コウは俺の顔をビシっと指差す。

「つまり、動きのバリエーションを増やしたいと……」

「うん、それによってダンスの幅も広がるし、それ以外の場面でも活きるからね」

 俺はまたしてもそれ以外云々には触れないで、話を続ける。

「それで? どうやって増やすんだ?」

「自分の中にあるイメージを膨らませて、それに沿って動いてみるって感じかな♪」

「イメージを膨らませる……」

「そう、視野を広く持つって言うのかな?」

「まあ、言わんとしていることは何となくだが分かるけれども……」

「それじゃあ、ガンガン行こうかな~?」

「ちょ、ちょっと待て!」

「ん? なによ~? 今テンションが良い感じに上がってきていたのに~」

 コウが不満気な顔を見せる。

「こ、ここで動き回るつもりか⁉」

「え? そうだけど?」

 コウが、それが何か?といった風に両手を広げる。

「な、なにもこんな溶岩だらけの中で動かなくても良いだろう⁉」

「いや~だって、このイオって衛星は太陽系の中でも、もっとも火山活動が活発な星だし……溶岩ないところの方が珍しいって~」

「だ、だからといってだな! 足を踏み外したら、火傷じゃ済まないぞ!」

「稽古はこれくらいスリルがあった方が良いじゃん♪」

 恐怖心がバグっていやがる……ダメだこいつ、なんとかしないと……。

「こ、こういう稽古も悪くないとは思うが……!」

「うん?」

「コウの場合は、長所を伸ばした方が良いんじゃないか⁉」

「長所?」

「さっき自分で言っていたように、直線的な、良くも悪くもまっすぐなところだ!」

「いや、悪かったらダメじゃん……」

「その辺りはアユミとケイがフォローしてくれる!」

「二人に頼りっきりっていうのもね~」

「そんなことは無い! 二人の方こそ、コウには助けられている! その若干イッちゃっているところ……じゃなくて、天真爛漫な部分とか! かくいう俺もその一人だ! 助けられているというか、心惹かれている!」

「は、恥ずかしいことを大声で言ってくれるね……」

 コウが照れ臭そうにする。もう一押しか?

「だから、別の方法でダンスを磨こう!」

「分かったよ……」

 良かった、こちらがドン引きするような稽古は考え直してくれたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代―― 後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。 ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。 誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。 拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生! ・検索キーワード 空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

処理中です...