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第1回公演
第7惑星(2)イオでの特訓
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「ここがイオか……」
「はい、木星の第1衛星で、太陽系の衛星の中でも4番目に大きい衛星です」
アユミが簡単に説明してくれる。ここはイオのとある平原だ。
「なるほどな……広さなどは十分か」
「ええ、特訓にはピッタリかなと思います」
「特訓っていうのは俺の方から提案させてもらったんだが……具体的には何をするのか決まっているのか?」
「わたしの場合はやはり歌唱力を伸ばす必要があるかと……」
アユミが顎に手を当てて呟く。
「そうか……」
「マネージャーさんはどう思いますか?」
「アユミはかわいいからな。いわゆる天性のアイドル性みたいなものは既に備わっていると思うから、パフォーマンスの質を高めるというのは間違っていないと思うぞ」
「あ、ありがとうございます……」
アユミの顔が赤くなっているな、俺、なんか変なことを言ったかな?
「で? どうするんだ? ボイトレの類はいつもやっているだろう?」
「う~ん、ハーモニーの練習をしようかと思いまして……」
「ハ、ハーモニー?」
「ええ……えい!」
「おおっ⁉」
アユミが九体に分身する。
「さて……」
「い、いや、ちょっと待て……」
「ド~♪」
「レ~♪」
「ミ~♪」
「ファ~♪」
「ソ~♪」
「ラ~♪」
「シ~♪」
「ラ~♪」
「ええっ⁉」
「レ♯~♪」
「ちょ、ちょっと待て!」
「どうかしましたか?」
「シまで行ったら、高いドだろう⁉ 何故、一音戻っちゃうんだよ⁉」
「あ、気付きませんでした……」
「そしてそこでレの♯とかあまり入れないから!」
「そ、そうですか……」
「分身の中に妙に器用なやつがいるな……」
俺はアユミの分身を見回す。一人、明後日の方向を向いて口笛を吹くやつがいる。
「~♪」
「お前だ、お前! 協調性を乱すな!」
「マ、マネージャーさん、落ち着いて下さい……」
「ああ、そうだな、すまん……」
俺は呼吸を落ち着かせる。やや間を置いてアユミは口を開く。
「さて、では改めて……」
「い、いや、だからちょっと待て!」
「ど、どうしたんですか?」
「ステージで分身したらエラいことになるぞ!」
「そ、そうですかね?」
「そうだよ!」
「話題になるかなって思って……」
「変な話題を呼んじゃうよ! 世を忍ぶ仮の姿なんだろ? 変に目立っちゃマズいよ、いやそれならまずアイドルの時点でおかしいんだけど!」
俺は思わずまくし立てる。アユミが困惑する。
「ダメ出しの嵐ですね……」
「あ、す、すまん……」
「いえ、とっても参考になります。ありがとうございます」
「あ、ああ……」
アユミが頭を下げてくる。逆に俺が戸惑ってしまう。
「それでは分身を解除しますか……」
「い、いや、分身自体はそれほど悪くはないと思うぞ!」
「え?」
「分身の精度を良くするということはアユミ自分のポテンシャルを高めることにつながるんじゃないか! ……多分だけど」
「なるほど、そういう考え方もありますね……それでは、分身を継続します」
「あ、ああ……」
「では……組体操開始!」
「了解!」
アユミと分身たちが組体操を披露する。とても綺麗に揃っている。アイドルのパフォーマンスにそれが必要なのかは甚だ疑問ではあるが。
「はい、木星の第1衛星で、太陽系の衛星の中でも4番目に大きい衛星です」
アユミが簡単に説明してくれる。ここはイオのとある平原だ。
「なるほどな……広さなどは十分か」
「ええ、特訓にはピッタリかなと思います」
「特訓っていうのは俺の方から提案させてもらったんだが……具体的には何をするのか決まっているのか?」
「わたしの場合はやはり歌唱力を伸ばす必要があるかと……」
アユミが顎に手を当てて呟く。
「そうか……」
「マネージャーさんはどう思いますか?」
「アユミはかわいいからな。いわゆる天性のアイドル性みたいなものは既に備わっていると思うから、パフォーマンスの質を高めるというのは間違っていないと思うぞ」
「あ、ありがとうございます……」
アユミの顔が赤くなっているな、俺、なんか変なことを言ったかな?
「で? どうするんだ? ボイトレの類はいつもやっているだろう?」
「う~ん、ハーモニーの練習をしようかと思いまして……」
「ハ、ハーモニー?」
「ええ……えい!」
「おおっ⁉」
アユミが九体に分身する。
「さて……」
「い、いや、ちょっと待て……」
「ド~♪」
「レ~♪」
「ミ~♪」
「ファ~♪」
「ソ~♪」
「ラ~♪」
「シ~♪」
「ラ~♪」
「ええっ⁉」
「レ♯~♪」
「ちょ、ちょっと待て!」
「どうかしましたか?」
「シまで行ったら、高いドだろう⁉ 何故、一音戻っちゃうんだよ⁉」
「あ、気付きませんでした……」
「そしてそこでレの♯とかあまり入れないから!」
「そ、そうですか……」
「分身の中に妙に器用なやつがいるな……」
俺はアユミの分身を見回す。一人、明後日の方向を向いて口笛を吹くやつがいる。
「~♪」
「お前だ、お前! 協調性を乱すな!」
「マ、マネージャーさん、落ち着いて下さい……」
「ああ、そうだな、すまん……」
俺は呼吸を落ち着かせる。やや間を置いてアユミは口を開く。
「さて、では改めて……」
「い、いや、だからちょっと待て!」
「ど、どうしたんですか?」
「ステージで分身したらエラいことになるぞ!」
「そ、そうですかね?」
「そうだよ!」
「話題になるかなって思って……」
「変な話題を呼んじゃうよ! 世を忍ぶ仮の姿なんだろ? 変に目立っちゃマズいよ、いやそれならまずアイドルの時点でおかしいんだけど!」
俺は思わずまくし立てる。アユミが困惑する。
「ダメ出しの嵐ですね……」
「あ、す、すまん……」
「いえ、とっても参考になります。ありがとうございます」
「あ、ああ……」
アユミが頭を下げてくる。逆に俺が戸惑ってしまう。
「それでは分身を解除しますか……」
「い、いや、分身自体はそれほど悪くはないと思うぞ!」
「え?」
「分身の精度を良くするということはアユミ自分のポテンシャルを高めることにつながるんじゃないか! ……多分だけど」
「なるほど、そういう考え方もありますね……それでは、分身を継続します」
「あ、ああ……」
「では……組体操開始!」
「了解!」
アユミと分身たちが組体操を披露する。とても綺麗に揃っている。アイドルのパフォーマンスにそれが必要なのかは甚だ疑問ではあるが。
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