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第1回公演
第3惑星(1)タスクマネージャー拝命
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3
「マネージャーさん! どうでした?」
「うん、よくなっているんじゃないかな?」
宇宙船のレッスンルームでダンスを一通り踊り終えたアユミちゃんが俺に尋ねてくる。もちろん俺はダンスの専門家ではないので、感じたことを素直に伝えるのみだ。俺の感想を聞くと、アユミちゃんは嬉しそうに笑う。
「ふふっ、良かった。この曲の振り付けはかなり難しいので、猛練習した甲斐があります」
「センリさん、最近は頑張っていたもんな、いつも頑張っているけど」
「え? いつも?」
「ああ、いや、変な意味じゃないよ。ざつよ……業務の合間に見ているだけだけど」
俺は慌てて訂正を入れる。ストーキングをしているとでも思われたら、またこの宇宙船から降ろされてしまうかもしれないからな。発言には気を付けないと……。
「ふふっ、いつも見てくれているんだ……嬉しいな……」
「えっ?」
「な、なんでもないです!」
「いや、今なんか言ったでしょ、小声で」
「なんでもありません!」
「なんか至らぬ点があるなら言ってくれ、すぐに改善するから!」
俺は頭をこれでもかと下げながら叫ぶ。アユミちゃんが戸惑う。
「マ、マネージャーさん、頭を上げて下さい……」
「もうこの船から降ろされたくはないんだ!」
「だ、大丈夫ですから!」
「ほ、本当かい? センリさん……」
「ええ、でも強いて言うなら……」
「ん?」
「わ、わたしのことはアユミと呼んでもらって良いですよ……」
「ええ?」
「だって……最初はそう呼んでくれていたじゃないですか」
思わぬ申し出に困惑する俺に対し、アユミちゃんは唇をちょっと尖らせながら言う。
「そ、それは確かに……で、でも、今は正式にアイドルとマネージャーの関係なわけだから、その辺はしっかりとわきまえないと」
「そ、そんなに他のアイドルさんとご一緒する機会はありませんけど、アイドルのことをファーストネームで呼んでいらっしゃる方は多いですよ!」
「よそはよそだろう。築き上げてきた信頼関係というものもあるだろうし……」
「わたしはマネージャーさんのことを信頼していますよ!」
「そ、その根拠は?」
「テュロンです! テュロンがあんなに初めから懐く人に悪い人はいません!」
「ああ、そう……」
根拠としてはいささか弱い気が……。アユミちゃんはテュロンの懐き具合を一つの判断基準と捉えているのか。それは殺し屋や賞金稼ぎとしてどうなんだろうと思うのだが……まあ、その気になれば彼女が俺を組み伏せるなんてわけのないことだろうから、本当に俺に対して抱く警戒心は希薄なんだろうな。嬉しい気もするが、男としてはちょっと寂しいな。
「ね?」
アユミちゃんが小首を傾げる。か、かわいい……。あざとさの権化だ。だが、それがいい。しかし待てよ……異星人の首の関節をボキッと折ったり、小刀を血しぶきが上がらないように器用に突き刺したり……そういうことを躊躇なく行える子なんだよな、この子……。あまり深入りするのは危険だ。俺は後頭部を掻きながら適当に話をはぐらかそうとする。
「う~ん、それよりさ……」
「マネージャーさん!」
アユミちゃんが俺のジャージの袖をグイっと引っ張る。うん、かわいい。こういう子の方からわざわざ距離を縮めてきてくれるのだ。それに乗らない手はないだろう。思えば、地球ではこのようなことにほとんど縁がなかったな……はい、嘘をつきました。まったく縁がありませんでした。これだけでも一念発起して、地球を飛び出した甲斐があるというものだ。俺は不意に熱くなった目頭を抑える。
「ぐっ……」
「ど、どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもないよ」
「そ、そうですか……」
「こ、これからもよろしくな、ア、アユミ……」
「はい、マネージャーさん!」
アユミちゃんが満面の笑みで頷く。俺はわざとらしく首を傾げる。
「う~ん?」
「な、なにか?」
「マネージャーさんっていうのも寂しいな……」
「え?」
「俺のこともタスマって呼んでくれよ」
「はい?」
「信頼してくれているんだろう?」
「そ、それは、そうですけど……」
「じゃあ、ほら、タスマって、呼んでごらん、ほらほら」
「……タ」
「タ?」
「タ、タスクマネージャーさん!」
「なんかのプログラムっぽいな!」
「や、やっぱり恥ずかしいですよ! わたしはマネージャーさんって呼びますから! それじゃあ、失礼します! 練習付き合ってくれてありがとうございました!」
アユミちゃんが頭をバッと下げ、レッスンルームから足早に出ていく。う~ん、少し調子に乗り過ぎたかな?
「随分と楽しそうだったわね」
「アユミちゃん、顔真っ赤だったね~♪」
「あ、ハイジャさん、マクルビさん……」
ケイちゃんとコウちゃんがレッスンルームに入ってくる。
「親交を深めるのは大変結構、ただ……」
「ただ?」
「立場を弁えること……アイドルに恋愛はご法度よ」
「⁉」
ケイちゃんが俺の耳元で低い声で囁く。
「法度を破ったら、分かっているわね……?」
「ど、どうなるんですか?」
「士道不覚悟、ハラキリよ……」
「ええっ⁉」
今時ハラキリって、そもそも俺、サムライじゃねえし。
「ははっ、その時は介錯してあげるよ~♪」
コウちゃんが笑いながら言う。マジか、念の為、ハラキリの作法も確認しておかなくてはならないな……。俺が深刻そうな顔つきをしていると、ケイちゃんが苦笑気味に呟く。
「冗談よ」
「え? 冗談?」
「当たり前でしょう……どんなグループだと思っているのよ」
「しょ、賞金稼ぎの『ギャラクシーマーダーズ』……」
「それは世を忍ぶ仮の姿、本当の姿は『ギャラクシーフェアリーズ』よ」
いつも思うけど逆じゃねえのかな……。仮の姿があまりにもおっかな過ぎるのだが。
「それじゃあ、銀河に夢と愛を届ける為に、レッスン頑張ろうかな~♪」
「コウ、アユミがシャワーを終えてからよ。まだ操縦室にいなさい。もうすぐ着陸だから」
「は~い、分かったよ~」
コウちゃんが部屋を出ていく。首を傾げる俺にケイちゃんが告げる。
「もうすぐ金星につくわよ」
「金星⁉」
俺は驚きの声を上げる。
「マネージャーさん! どうでした?」
「うん、よくなっているんじゃないかな?」
宇宙船のレッスンルームでダンスを一通り踊り終えたアユミちゃんが俺に尋ねてくる。もちろん俺はダンスの専門家ではないので、感じたことを素直に伝えるのみだ。俺の感想を聞くと、アユミちゃんは嬉しそうに笑う。
「ふふっ、良かった。この曲の振り付けはかなり難しいので、猛練習した甲斐があります」
「センリさん、最近は頑張っていたもんな、いつも頑張っているけど」
「え? いつも?」
「ああ、いや、変な意味じゃないよ。ざつよ……業務の合間に見ているだけだけど」
俺は慌てて訂正を入れる。ストーキングをしているとでも思われたら、またこの宇宙船から降ろされてしまうかもしれないからな。発言には気を付けないと……。
「ふふっ、いつも見てくれているんだ……嬉しいな……」
「えっ?」
「な、なんでもないです!」
「いや、今なんか言ったでしょ、小声で」
「なんでもありません!」
「なんか至らぬ点があるなら言ってくれ、すぐに改善するから!」
俺は頭をこれでもかと下げながら叫ぶ。アユミちゃんが戸惑う。
「マ、マネージャーさん、頭を上げて下さい……」
「もうこの船から降ろされたくはないんだ!」
「だ、大丈夫ですから!」
「ほ、本当かい? センリさん……」
「ええ、でも強いて言うなら……」
「ん?」
「わ、わたしのことはアユミと呼んでもらって良いですよ……」
「ええ?」
「だって……最初はそう呼んでくれていたじゃないですか」
思わぬ申し出に困惑する俺に対し、アユミちゃんは唇をちょっと尖らせながら言う。
「そ、それは確かに……で、でも、今は正式にアイドルとマネージャーの関係なわけだから、その辺はしっかりとわきまえないと」
「そ、そんなに他のアイドルさんとご一緒する機会はありませんけど、アイドルのことをファーストネームで呼んでいらっしゃる方は多いですよ!」
「よそはよそだろう。築き上げてきた信頼関係というものもあるだろうし……」
「わたしはマネージャーさんのことを信頼していますよ!」
「そ、その根拠は?」
「テュロンです! テュロンがあんなに初めから懐く人に悪い人はいません!」
「ああ、そう……」
根拠としてはいささか弱い気が……。アユミちゃんはテュロンの懐き具合を一つの判断基準と捉えているのか。それは殺し屋や賞金稼ぎとしてどうなんだろうと思うのだが……まあ、その気になれば彼女が俺を組み伏せるなんてわけのないことだろうから、本当に俺に対して抱く警戒心は希薄なんだろうな。嬉しい気もするが、男としてはちょっと寂しいな。
「ね?」
アユミちゃんが小首を傾げる。か、かわいい……。あざとさの権化だ。だが、それがいい。しかし待てよ……異星人の首の関節をボキッと折ったり、小刀を血しぶきが上がらないように器用に突き刺したり……そういうことを躊躇なく行える子なんだよな、この子……。あまり深入りするのは危険だ。俺は後頭部を掻きながら適当に話をはぐらかそうとする。
「う~ん、それよりさ……」
「マネージャーさん!」
アユミちゃんが俺のジャージの袖をグイっと引っ張る。うん、かわいい。こういう子の方からわざわざ距離を縮めてきてくれるのだ。それに乗らない手はないだろう。思えば、地球ではこのようなことにほとんど縁がなかったな……はい、嘘をつきました。まったく縁がありませんでした。これだけでも一念発起して、地球を飛び出した甲斐があるというものだ。俺は不意に熱くなった目頭を抑える。
「ぐっ……」
「ど、どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもないよ」
「そ、そうですか……」
「こ、これからもよろしくな、ア、アユミ……」
「はい、マネージャーさん!」
アユミちゃんが満面の笑みで頷く。俺はわざとらしく首を傾げる。
「う~ん?」
「な、なにか?」
「マネージャーさんっていうのも寂しいな……」
「え?」
「俺のこともタスマって呼んでくれよ」
「はい?」
「信頼してくれているんだろう?」
「そ、それは、そうですけど……」
「じゃあ、ほら、タスマって、呼んでごらん、ほらほら」
「……タ」
「タ?」
「タ、タスクマネージャーさん!」
「なんかのプログラムっぽいな!」
「や、やっぱり恥ずかしいですよ! わたしはマネージャーさんって呼びますから! それじゃあ、失礼します! 練習付き合ってくれてありがとうございました!」
アユミちゃんが頭をバッと下げ、レッスンルームから足早に出ていく。う~ん、少し調子に乗り過ぎたかな?
「随分と楽しそうだったわね」
「アユミちゃん、顔真っ赤だったね~♪」
「あ、ハイジャさん、マクルビさん……」
ケイちゃんとコウちゃんがレッスンルームに入ってくる。
「親交を深めるのは大変結構、ただ……」
「ただ?」
「立場を弁えること……アイドルに恋愛はご法度よ」
「⁉」
ケイちゃんが俺の耳元で低い声で囁く。
「法度を破ったら、分かっているわね……?」
「ど、どうなるんですか?」
「士道不覚悟、ハラキリよ……」
「ええっ⁉」
今時ハラキリって、そもそも俺、サムライじゃねえし。
「ははっ、その時は介錯してあげるよ~♪」
コウちゃんが笑いながら言う。マジか、念の為、ハラキリの作法も確認しておかなくてはならないな……。俺が深刻そうな顔つきをしていると、ケイちゃんが苦笑気味に呟く。
「冗談よ」
「え? 冗談?」
「当たり前でしょう……どんなグループだと思っているのよ」
「しょ、賞金稼ぎの『ギャラクシーマーダーズ』……」
「それは世を忍ぶ仮の姿、本当の姿は『ギャラクシーフェアリーズ』よ」
いつも思うけど逆じゃねえのかな……。仮の姿があまりにもおっかな過ぎるのだが。
「それじゃあ、銀河に夢と愛を届ける為に、レッスン頑張ろうかな~♪」
「コウ、アユミがシャワーを終えてからよ。まだ操縦室にいなさい。もうすぐ着陸だから」
「は~い、分かったよ~」
コウちゃんが部屋を出ていく。首を傾げる俺にケイちゃんが告げる。
「もうすぐ金星につくわよ」
「金星⁉」
俺は驚きの声を上げる。
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