7 / 51
第1回公演
第2惑星(2)いい湯だったな(過去形)
しおりを挟む
「……あ~」
アユミちゃんの質問責めから解放された俺は――もっとも、質問は50個ほどしか答えられなかったが、地球の成り立ちとか分からねえよ――バスタブに浸かって、声にならない声を上げる。生き返るような気分だ。死んだことはないが。しかし、あらためて広いバスタブだな、一度に数人は入れそうだ。お陰で掃除がくそ大変だったけど。深さも意外とあるし。美容に効く入浴剤でも使っているのか? 透明でなく真っ白なお湯だ。とにもかくにも一日の疲れが取れていくようだ……ん?
「なんで一緒に入らなきゃいけないのよ……」
「え~いいじゃん、裸の付き合いってやつだよ」
「私、一人の時間を大切にしたいのだけど……」
「アタシと一緒なら楽しいよ~?」
「別に楽しさは求めてないのよ」
「いいから入ろ、入ろ♪」
「⁉」
ケイちゃんとコウちゃんの話し声⁉ し、しまった、『入浴中』とパネルに表示させるのを忘れていた……! は、早く、声をかけないと……!
「あ、あの……」
「お~いいお風呂だね~!」
「! 耳元でいきなり大声出さないでちょうだい!」
「めんごめんご、発声練習してみた。ここ防音しっかりしてるし♪」
「今のタイミングじゃなくても良いでしょう⁉」
「あ……」
マズい、二人が完全にバスルームに入ってきた……! 声をかけるタイミングを完全に逸してしまった! 湯気が立ち込めていて、二人の姿は見えない、ちょっと残念……いや、違う、これ幸いってやつだ。向こうからも俺のことが見えていないということだからな。よし、今の内に……!
「うぐっ……⁉」
な、なんだ、このタイミングで同時に両腕両足がつっただと⁉ う、動けねえ! 足はともかく、腕までつるなんて……! こんなことがあるのか? ここ最近の疲れが一気に出ちまったのか⁉ ど、どうする?
「? 今、なにか声がしなかった?」
「え? アタシの声が反響したんでしょ?」
「いや、もっとうめき声のような……」
「も~そうやって怖がらせようとしたって無駄だよ?」
「そういうことではなくて……」
「あれでしょ、頭を洗っていたら視線を感じるってやつ? あれはね、神様なんだよ♪」
「は?」
「例えばシャンプーで洗っているときはリンスの神様が『次はワシじゃよ、努々忘れるなよ』ってメッセージを込めた念を送ってきているんだよ」
「なによそれ……」
「そういう言い伝え知らない?」
「知らないわ」
「あそ。まあいいや、ケイちゃん、洗いっこしない?」
「な、なんでそんなことしなきゃいけないのよ⁉」
「せっかくだしさ。ほら座って座って」
「ちょ、ちょっと! 引っ張らないで!」
「まずはそれぞれ頭を洗おうか……よし、終わったね。それじゃあ……」
「きゃっ⁉ ど、どこを触っているのよ⁉」
「何って、頭を洗ったら、次はボディでしょ?」
「じ、自分でやるから!」
「いやいや、案外手が届かないところがあるからさ……」
「こ、ここは届くわよ! そ、それに手つきがいやらしいのよ!」
「ええ~? いやらしい気分になったの?」
「な、なってないわよ!」
「じゃあ、良いじゃない♪」
「良くない! あん、だ、だから、なんでそこばっかり……!」
「ここをね、人にマッサージしてもらうと大きくなるらしいよ~?」
「なによそれは⁉ それも言い伝え⁉」
「……合法的に触る言い訳かな?」
「なっ!」
「大きくな~れ、大きくな~れ♪」
「あ、あん……ちょ、ちょっと……いい加減にしなさい!」
「うおっと⁉ ア、アタシは良いって……」
「洗いっこしようといったのは貴女でしょう⁉ まったく、何を食べたらこんなに……」
「う、うん……ケ、ケイちゃん、どうしてなかなかテクニシャン……」
「こっちもよ!」
「うおい⁉ そ、そっちは……」
「くっ……まるで桃のようなプリプリ感……羨ましい……」
「え?」
「な、なんでもないわ!」
「そ。じゃあ、次はアタシのターン!」
「きゃっ⁉ そ、そこは……!」
「う~ん、すべすべしてるね~……こっちはどうかな?」
「そ、そこはダメよ⁉」
「……」
はっ! 何をやっているんだ俺は! 今の内に脱出出来たかもしれないのに、呑気に聞き耳を立ててしまった! し、しかし、腕も足もまだつったままだ!
「まあ、今日の所はこの辺にして、そろそろ入ろうか♪」
「まったく……」
ヤ、ヤバい! 二人がこっちに来る! ど、どうすれば⁉ ……こ、これしかない!
「じゃぶ~ん!」
「普通に入りなさい! ……って、なんで近くに入るのよ!」
「なんで?」
「広いんだから、離れなさいよ!」
「イヤだ」
「い、嫌だって……ちょ、ちょっと、近いわよ……」
「湯に浸かった状態でね……触れ合うと美容に良いらしいよ?」
「そ、それも言い伝え?」
「ううん、思いつき♪」
「きゃっ⁉ だ、だから、やめなさいって……ん?」
「⁉」
な、なんだ⁉ 一か八か潜ってみたら顔になにか乗っかかって来たぞ? し、しまった、頭の方に重みがかかって足が浮いてしまう……!
「! おっと、ケイちゃん、挟み込んでくるとはやるね~」
「な、なにもしてないわよ!」
「へっ?」
「えっ?」
も、もしかして……俺の顔に乗っているのはケイちゃんのあれで、両の太ももに触れているのはコウちゃんのあれか? い、いや、こんなときに余計なことは考えるな、俺! 理性を保て! ……うん、無理!
「ひょ、ひょっとして、お風呂のオバケが本当に⁉ ど、どうしよう⁉」
「お、落ち着きなさい! そ、そう、こういうときは歌でも歌うのよ!」
「そ、そうだね! お、湯気でよく見えないけど、マイクが出てきた! 一緒に歌おう!」
「マ、マイク⁉ あ! こ、これね! 二人でデュエットするわよ!」
「そ、そんなに握って上下させたら刺激が強すぎる! ……あっ」
「「……」」
お湯の中から色んな意味で飛び出した俺はケイちゃんとコウちゃんとばっちり目が合う。俺、終了のお知らせ。
アユミちゃんの質問責めから解放された俺は――もっとも、質問は50個ほどしか答えられなかったが、地球の成り立ちとか分からねえよ――バスタブに浸かって、声にならない声を上げる。生き返るような気分だ。死んだことはないが。しかし、あらためて広いバスタブだな、一度に数人は入れそうだ。お陰で掃除がくそ大変だったけど。深さも意外とあるし。美容に効く入浴剤でも使っているのか? 透明でなく真っ白なお湯だ。とにもかくにも一日の疲れが取れていくようだ……ん?
「なんで一緒に入らなきゃいけないのよ……」
「え~いいじゃん、裸の付き合いってやつだよ」
「私、一人の時間を大切にしたいのだけど……」
「アタシと一緒なら楽しいよ~?」
「別に楽しさは求めてないのよ」
「いいから入ろ、入ろ♪」
「⁉」
ケイちゃんとコウちゃんの話し声⁉ し、しまった、『入浴中』とパネルに表示させるのを忘れていた……! は、早く、声をかけないと……!
「あ、あの……」
「お~いいお風呂だね~!」
「! 耳元でいきなり大声出さないでちょうだい!」
「めんごめんご、発声練習してみた。ここ防音しっかりしてるし♪」
「今のタイミングじゃなくても良いでしょう⁉」
「あ……」
マズい、二人が完全にバスルームに入ってきた……! 声をかけるタイミングを完全に逸してしまった! 湯気が立ち込めていて、二人の姿は見えない、ちょっと残念……いや、違う、これ幸いってやつだ。向こうからも俺のことが見えていないということだからな。よし、今の内に……!
「うぐっ……⁉」
な、なんだ、このタイミングで同時に両腕両足がつっただと⁉ う、動けねえ! 足はともかく、腕までつるなんて……! こんなことがあるのか? ここ最近の疲れが一気に出ちまったのか⁉ ど、どうする?
「? 今、なにか声がしなかった?」
「え? アタシの声が反響したんでしょ?」
「いや、もっとうめき声のような……」
「も~そうやって怖がらせようとしたって無駄だよ?」
「そういうことではなくて……」
「あれでしょ、頭を洗っていたら視線を感じるってやつ? あれはね、神様なんだよ♪」
「は?」
「例えばシャンプーで洗っているときはリンスの神様が『次はワシじゃよ、努々忘れるなよ』ってメッセージを込めた念を送ってきているんだよ」
「なによそれ……」
「そういう言い伝え知らない?」
「知らないわ」
「あそ。まあいいや、ケイちゃん、洗いっこしない?」
「な、なんでそんなことしなきゃいけないのよ⁉」
「せっかくだしさ。ほら座って座って」
「ちょ、ちょっと! 引っ張らないで!」
「まずはそれぞれ頭を洗おうか……よし、終わったね。それじゃあ……」
「きゃっ⁉ ど、どこを触っているのよ⁉」
「何って、頭を洗ったら、次はボディでしょ?」
「じ、自分でやるから!」
「いやいや、案外手が届かないところがあるからさ……」
「こ、ここは届くわよ! そ、それに手つきがいやらしいのよ!」
「ええ~? いやらしい気分になったの?」
「な、なってないわよ!」
「じゃあ、良いじゃない♪」
「良くない! あん、だ、だから、なんでそこばっかり……!」
「ここをね、人にマッサージしてもらうと大きくなるらしいよ~?」
「なによそれは⁉ それも言い伝え⁉」
「……合法的に触る言い訳かな?」
「なっ!」
「大きくな~れ、大きくな~れ♪」
「あ、あん……ちょ、ちょっと……いい加減にしなさい!」
「うおっと⁉ ア、アタシは良いって……」
「洗いっこしようといったのは貴女でしょう⁉ まったく、何を食べたらこんなに……」
「う、うん……ケ、ケイちゃん、どうしてなかなかテクニシャン……」
「こっちもよ!」
「うおい⁉ そ、そっちは……」
「くっ……まるで桃のようなプリプリ感……羨ましい……」
「え?」
「な、なんでもないわ!」
「そ。じゃあ、次はアタシのターン!」
「きゃっ⁉ そ、そこは……!」
「う~ん、すべすべしてるね~……こっちはどうかな?」
「そ、そこはダメよ⁉」
「……」
はっ! 何をやっているんだ俺は! 今の内に脱出出来たかもしれないのに、呑気に聞き耳を立ててしまった! し、しかし、腕も足もまだつったままだ!
「まあ、今日の所はこの辺にして、そろそろ入ろうか♪」
「まったく……」
ヤ、ヤバい! 二人がこっちに来る! ど、どうすれば⁉ ……こ、これしかない!
「じゃぶ~ん!」
「普通に入りなさい! ……って、なんで近くに入るのよ!」
「なんで?」
「広いんだから、離れなさいよ!」
「イヤだ」
「い、嫌だって……ちょ、ちょっと、近いわよ……」
「湯に浸かった状態でね……触れ合うと美容に良いらしいよ?」
「そ、それも言い伝え?」
「ううん、思いつき♪」
「きゃっ⁉ だ、だから、やめなさいって……ん?」
「⁉」
な、なんだ⁉ 一か八か潜ってみたら顔になにか乗っかかって来たぞ? し、しまった、頭の方に重みがかかって足が浮いてしまう……!
「! おっと、ケイちゃん、挟み込んでくるとはやるね~」
「な、なにもしてないわよ!」
「へっ?」
「えっ?」
も、もしかして……俺の顔に乗っているのはケイちゃんのあれで、両の太ももに触れているのはコウちゃんのあれか? い、いや、こんなときに余計なことは考えるな、俺! 理性を保て! ……うん、無理!
「ひょ、ひょっとして、お風呂のオバケが本当に⁉ ど、どうしよう⁉」
「お、落ち着きなさい! そ、そう、こういうときは歌でも歌うのよ!」
「そ、そうだね! お、湯気でよく見えないけど、マイクが出てきた! 一緒に歌おう!」
「マ、マイク⁉ あ! こ、これね! 二人でデュエットするわよ!」
「そ、そんなに握って上下させたら刺激が強すぎる! ……あっ」
「「……」」
お湯の中から色んな意味で飛び出した俺はケイちゃんとコウちゃんとばっちり目が合う。俺、終了のお知らせ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
刻の唄――ゼロ・クロニクル――
@星屑の海
SF
遙か彼方の未来、人類の活動圏が天の川銀河全土に広がって二十万年の時を経た時代。二度の銀河全土を覆う動乱の時代を経た人類は、局所的な紛争はあるものの比較的平和な時代を生きていた。人工知能に代表されるインテリジェンスビーングが高度に進化した時代、それらに対抗するため作られた戦士キャバリアー達がグラディアートという戦闘兵器を用い戦いの主役となっていた。
零・六合は一年半前、ある存在に敗れ旅の巡礼者となり戦いから身を引いていたのだが、旅の途中ボルニア帝国の内乱に巻き込まれてしまう。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー
阿弥陀乃トンマージ
SF
『ゲート』……21世紀も四半世紀を経過しようとしたその頃、世界各地に突如として現れるようになった空間に生ずる大きな黒い穴を人類はこのように呼称するようになった。
そのゲートからは様々なもの、『イレギュラー』が出現するようになった。大別すれば、三種の恐るべき力を持った存在である。これらイレギュラーは世界各地で暴虐の限りを尽くした。戸惑いながらも人類は連携を取りながら、これらの敵性的存在の迎撃に当たった。人類はその為に構築した迎撃体勢組織を『ゲートバスターズ』と呼ぶようになった。
これは日本の北陸地方でゲートバスターズに所属する三人の少年とその仲間たちの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる