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『ケース3:パーティーを追放されてからチート魔法に目覚めて無双、モテモテハーレムライフを送りたい魔法使いユメナムの場合』

第3話(3)伸び代しかない

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「来ないならこっちから行くよ!」

「うええっ⁉」

「はいっ!」

「がはっ!」

「えいっ!」

「ぐはっ!」

「せいっ!」

「ごはっ!」

 アギさんの繰り出す鋭い突きを立て続けに食らい、僕はたまらず崩れ落ちる。

「あらら……ことごとくクリーンヒット……」

「むぐう……」

「ちょっとは避けるなり防いだりしなよ~」

「む、無茶を言わないで下さい……こちとらかよわい魔法使いですよ?」

「かよわいって」

「接近戦なんて無理ですよ……」

「強くなってもらわないと困るんだよ」

「例の変化する魔法があるから大丈夫ですよ……」

「とはいってもさ……」

 アギさんがしゃがんで、こちらを覗き込んでくる。

「え?」

「ある程度基礎となる戦闘力は高めておかないと駄目なんじゃない?」

「む……」

「違うかな?」

 アギさんが首を傾げる。

「ま、まあ、理屈としては分からないでもないですが……」

「でしょ?」

 アギさんが屈託のない笑顔を浮かべる。

「う、う~ん……」

「それじゃあ、ほら立って立って」

「は、はい……」

 僕はなんとか立ち上がる。アギさんが少し距離を取って向き直る。

「それじゃあ行くよ~」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「うん?」

「やっぱり無理なものは無理ですよ……」

「弱音を吐かないの」

「し、しかしですね……」

「手加減してあげるからさ」

「……本当ですか?」

「マジマジ、大体の実力は分かったからさ」

「はあ……」

「良いね?」

「は、はい……!」

「ほいっ!」

「どはっ!」

「ていっ!」

「ぶはっ!」

 アギさんの切れ味ある蹴りを食らい、僕はまたもや崩れ落ちる。

「あらら……またもや……手加減したんだけどな~」

「蹴りじゃないですか! 足加減して下さい!」

「足加減って……」

 僕の意味不明な発言にアギさんは戸惑う。

「下半身を狙うなんて聞いてないです!」

「素直に言う馬鹿はいないでしょ」

「そ、それは確かにそうですが……」

「まあいいや、立てるでしょ?」

「え? ま、まだ続けるんですか……?」

「そりゃあねえ」

「い、いつまでやるおつもりですか?」

「それなりにモノになるまでかな~」

「そ、そんなの無理ですって!」

「ううん、無理じゃないよ」

 アギさんが首を左右に振る。

「で、ですが……この体たらくですよ?」

「逆に言えば……」

「逆に?」

「伸び代があるよ♪」

「物は言いような気が……」

「さあ、続けるよ♪」

「くっ……」

 僕はどうにかこうにか立ち上がる。もはや結構ボロボロなんだが……。

「……」

「はあっ!」

「うん!」

「たあっ!」

「ふん!」

「やあっ!」

「むん!」

「……はあ、はあ……」

「うん、なかなか良くなってきたよ」

 肩で息をする僕に対し、アギさんが笑顔で声をかけてくる。

「ほ、本当ですか……?」

「マジだよ」

「でも、一度も攻撃を当てられませんでした……」

「そりゃあ、アタシは結構な達人だし」

 アギさんが首をすくめる。

「きゃあ!」

「なっ!」

 悲鳴の上がった方に視線を向けると、ギャング・イハタゲの連中が暴れていた。

「あいつら……」

「アギさん! 街の平穏を守るときです!」

「ああ……おい、お前ら!」

「ああん?」

「この魔法使い、ユメナムちゃんが相手だ!」

 アギさんが僕を指し示す。

「ええっ⁉ 僕が行くんですか⁉」

「見た感じちょうどいい相手だよ」

「そ、そんな……」

「魔法使いだあ? そんなひ弱な野郎に何が出来る!」

「さあ、功夫の成果を見せるときだよ!」

「くっ!」

「!」

「‼」

「⁉」

 僕は向かってきたギャング三人を簡単にのしてしまった。

「えっ……この短時間で強くなっている……?」

「こういうのは案外コツを掴めば早いもんなんだって♪」

 アギさんが僕を見てウインクする。
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