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『ケース2:フラグをガンガンへし折りまくって、ハッピーエンドを目指す悪役令嬢志望のティエラの場合』

第9話(2)決勝中堅戦

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「さあ、続いて中堅戦です! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」

「チーム『悪役令嬢』、シルヴァン選手、意気込みをお願いします……」

「……とにかく3ポイントを取りに行くだけだよ」

「ありがとうございます……次、お願いします」

「はい! チーム『剛腕』、ガルシア選手、意気込みの程をお願いします!」

「ふん、好きなように暴れるだけだ……」

「ありがとうございます! 次、お願いします!」

「は、はい! チーム『武士と戦士と騎士』、セ、セリーヌ選手、意気込みを!」

「3ポイントを狙いにいく……」

「と、とても堅実なコメントを頂きました! つ、次、お願いします!」

「はい~チーム『覆面と兄弟』、エイスっち、今どんな感じ~?」

「エイスっちって……3ポイントを取りにいきます」

「なるほどね~じゃあ、お返ししま~す」

「さあ、四人がリングに上がろうとしています……解説は昨日惜しくも敗退したチーム『近所の孫』のシャーロットさんにお願いしています。シャーロットさん、どうぞよろしくお願いします」

「よろしく!」

「この中堅戦ですが、どう見ますか?」

「ガルシアに3ポイント取られたら終わっちゃうわ! まずは潰しに行くでしょ!」

「た、確かに……」

「ふふん、至極簡単な推理よ!」

「ということは、3対1という状況もあり得るわけですね」

「そうね! ルール的には何の問題もないし! 逆にガルシアがそれをどう潜り抜けるのかが注目ポイントね!」

「な、なるほど……いやはや、お嬢さんなのにしっかりしていますね……」

「だから! 私は立派なレディーよ!」

 実況の方に対して、シャーロットさんが文句を言います。ですが、その様子はやはりお転婆なお嬢様に見えます。

「おっと、四人がリングに上がった……審判が今、開始の合図を出しました!」

「バレバレだけど……勝たれたら試合が終わっちゃうしね! 『蔦生える』!」

「うぐっ!」

「シルヴァンが蔦を生やして、ガルシアの体を縛り付ける!」

「速やかにご退場頂きます! 『氷突』!」

「そこにエイスが氷を棒状にしたものを生やして突っ込む!」

「特に打ち合わせてはいないだろうけど、自然な連携プレーね!」

 シャーロットさんが感心します。エイスさんが声を上げます。

「先端部分は丸くしてありますから、そこまで痛くはないはずです!」

「ふん!」

「なっ!」

「あっと! ガルシアの腹部を狙ったエイスの氷の棒が粉々に!」

「腹筋で氷を砕いたわ!」

「甘いな……突き刺すくらいの気持ちで来い! おらあっ!」

「ぐはっ!」

 ガルシアさんの頭突きがエイスさんの肩に炸裂し、エイスさんが倒れ込みます。

「ちっ! これはあまり使いたくないんだけど!」

「おおっと! シルヴァンの蔦がガルシアの首にも巻き付こうとする!」

「昨日の準決勝みたいに締め落とす気ね!」

「させるかよ!」

「はっ⁉」

「ガ、ガルシア! 蔦を噛み千切った!」

「や、野生的ね……」

「おらあっ!」

「どあっ⁉」

 ガルシアさんが蔦を振り回し、シルヴァンさんは投げ飛ばされます。

「ふん……複数でかかってくるとは、坊っちゃんどもにしては思い切った方だが、詰めが甘いな……どこかお行儀の良さを捨てきれていねえ……」

 ガルシアさんは首を回して、首の骨をポキポキと鳴らします。

「……」

「セリーヌがガルシアにゆっくりと歩み寄ります!」

「……坊っちゃんどもに合わせて、同時に斬りかかってくれば良かったのによ。大陸中央騎士団所属だったんなら、それくらい容易いことだろう?」

「……いくらルール上問題ないと言っても、試合でそういった行動をとるのは私のプライドが許さない……モンスター討伐ではないのだからな」

「はっ! くだらねえプライドだな! サシで俺に勝てるとでも⁉」

「ガルシアがセリーヌに猛然と襲いかかる!」

「はっ!」

「うおっ……!」

 ガルシアさんとセリーヌさんが交錯し、ガルシアさんがうつ伏せに倒れ込みます。

「な、なにが起こったのでしょうか?」

「すれ違い様に複数の急所をサーベルで的確に突いたのよ……あのスピードでそれを行うなんて……流石は大陸中央騎士団ね……」

 シャーロットさんが唸ります。サーベルを構え直し、セリーヌさんが呟きます。

「突進力などは並のモンスターを遥かに凌駕しているが、動きの工夫が並のモンスターより遥かに劣るな……と言っても聞こえていないか……審判、宣告を」

「ガルシア、敗北! 0ポイント!」

「『蔦生える』!」

「むっ⁉」

「ああっと! シルヴァン、蔦を伸ばし、セリーヌからサーベルを取り上げた!」

「流石の剣さばきだが、剣が無ければどうにもならないだろう!」

「確かに少し困るな……あくまでも少しだがな!」

「のあっ!」

 セリーヌさんが物凄い力で蔦を引っ張り、シルヴァンさんを自らの近くまで半ば強引に引き寄せます。

「そもそも鍛え方が違うのだ!」

「どはっ……!」

「セ、セリーヌの強烈なパンチがシルヴァンの腹部へ入った! シ、シルヴァンはその場に力なく崩れ落ちます! 審判が駆け寄る!」

「シルヴァン、敗北! 1ポイント!」

「ふむ……」

 セリーヌさんが遠くに落ちたサーベルを拾いにスタスタと歩き出します。

「隙有り! 『氷剣』!」

「⁉」

「おあっと! エイスが剣状の氷を発生させ、セリーヌに背後から斬りかかる!」

「覚悟! ⁉」

「ふ、ふん……」

 エイスさんだけでなく、会場中が驚きます。セリーヌさんが素手でエイスさんの氷の剣を受け止めたからです。

「そ、そんな……」

「『シラハドリ』だ、『ムトウドリ』とも言うのだったか? モンジュウロウに教わったのがここで役に立ったな……はっ!」

「ぐおっ⁉」

 セリーヌさんの鋭いキックが決まり、エイスさんが倒れ込みます。

「背後から声をかけるとは……ガルシアの言う通り、少しお行儀が良過ぎだな……」

「エイス、敗北! 2ポイント! よって、セリーヌ勝利! 3ポイント!」

「ちゅ、中堅戦は怒涛の決着! 勝者はチーム『武士と戦士と騎士』のセリーヌだ! シャ、シャーロットさん、どうでしたでしょうか?」

「冷静な戦いぶりが光ったわね……剣なしでも強いとは……流石の一言ね」

 シャーロットさんが腕を組んで深々と頷きます。
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