上 下
80 / 109
『ケース2:フラグをガンガンへし折りまくって、ハッピーエンドを目指す悪役令嬢志望のティエラの場合』

第8話(3)準決勝Bブロック中堅戦

しおりを挟む
「さあ、続いて中堅戦です! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」

「チーム『悪役令嬢』、ルッカ選手、意気込みをお願いします……」

「と、とにかく3ポイントを取りに行くだけだぜ!」

「ありがとうございます……次、お願いします」

「はい! チーム『剛腕』、ガルシア選手、意気込みの程をお願いします!」

「ふん、好き勝手に暴れるだけだ……」

「ありがとうございます! 次、お願いします!」

「は、はい! チーム『赤点』、ア、アンナ選手、意気込みを!」

「ベストを尽くします……」

「と、とても冷静なコメントを頂きました! つ、次、お願いします!」

「はい~チーム『龍と虎と鳳凰』、ウンガン選手、今どんな感じ~?」

「ゲンシンが3ポイント取ってくれただで、この流れをつなぎたいね~」

「なるほどね~じゃあ、お返ししま~す」

「さあ、四人がリングに上がろうとしています……解説は昨日惜しくも敗退したチーム『狐の目』のタカさんにお願いしています。タカさん、よろしくお願いします」

「……よろしく」

「この中堅戦、どう見ますか?」

「……予想が難しいな」

「ちゅ、注目選手などはいらっしゃいますか?」

「……ガルシアの捲土重来を期待する」

「け、けんど? ちょ、ちょうらい?」

 実況の方が固まってしまいます。わりと今回も解説者の人選ミスだと思います。

「……はじまるぞ」

「お、おっと四人がリングに上がった……審判が今、開始の合図を出しました!」

「おらあっ!」

「!」

「あっと、いきなりルッカがウンガンに仕掛けに行ったぞ!」

「3ポイント取られたら、勝ち抜け決定だからな! そうはさせねえぜ! 『火蹴』!」

 ルッカさんが火を纏った蹴りを操り出します。

「ふん!」

「おあっ⁉ 熱っ⁉」

「ウンガンが拳を振り上げると、ルッカが転がった! これはどういうことか⁉」

「鳳凰の炎で火の魔法を相殺したか……」

 タカさんが小声で呟きます。

「ふ~ん……今のを熱いくらいで済ませられるとは……なかなかの火の使い手だで……さて、今度はこっちから仕掛けさせてもらおうかな……」

 ウンガンさんが倒れ込むルッカさんに歩み寄ります。

「ぐっ……」

「おい、太っちょ! 俺が相手だ!」

「む!」

「おっと! 今度はガルシアが仕掛けるぞ!」

「炎とこの肉の防壁を破れるかな~」

 ウンガンさんがご自分のお腹をポンと叩くと、炎がその周囲に吹き上がります。炎のバリアが張られたような状態になります。そして、ガルシアさんに向き直ります。

「おらおらっ!」

「ぐほっ⁉」

「ガルシアの猛ラッシュ! ウンガン、たまらず崩れ落ちる!」

「ば、馬鹿な……燃え盛る炎に躊躇なく手足を突っ込んでくるなんて……」

「燃やされるなんて日常茶飯事だったからな……その程度どうってことはねえ」

「な、なるほど、噂に違わぬなかなかのバーサーカーぶり……これは余裕をかましている場合ではないようだで……」

「ウンガン、なんとか立ち上がったぞ!」

「ふん、案外タフだな……だが、これで終わりだ!」

「くっ!」

「ん?」

「ウンガン、鳳凰の姿に変わったぞ!」

「それを待っていました……」

「⁉ しまっ……」

「な、なんと! ウンガンが消えた!」

「なるほどな……」

 タカさんが一人頷かれます。実況の方が声を上げます。

「お一人で納得してないで、解説して下さいよ!」

「……巨人を封じ込めた封印魔法を使ったのだろう」

「そ、そうなると勝敗はどうなるんですか……?」

「それは知らん。そちらの方が把握しているのではないか?」

「そ、それは……あ、あっと! ガルシアがアンナに襲いかかる!」

「水を差してくれたな! 女だからって容赦はしねえぞ!」

「まあ、そうでしょうね」

 アンナさんが小瓶の口をガルシアさんに向けます。ガルシアさんが立ち止まります。

「む! 俺も封印しようってか? 出来るものならやってみな!」

「私は別にチンピラコレクターではありませんので……」

「チ、チンピラだと⁉」

「失礼、珍品の言い間違いでした」

「同じことだ!」

 ガルシアさんがアンナさんに接近します。

「そこまで接近してくれると助かります……!」

「むっ⁉」

 アンナさんの小瓶から凄まじい熱風が吹き出しました。ウンガンさんはリング外に転がり、熱風をもろに喰らったガルシアさんはうつ伏せに倒れ込みました。タカさんが頷きます。

「ふむ、そう来たか……」

「いや、だから! 解説をして下さいよ!」

「……あれも封印魔法とやらの応用形だろう。捕えた鳳凰を一気に解放したのだ」

 実況の方に促され、タカさんは淡々と解説します。

「思った以上の熱風でしたね……大変参考になりました」

 アンナさんが冷静に呟きます。審判が宣告します。

「ウンガン、敗北! 0ポイント! ガルシア、敗北! 1ポイント!」

「さあ、リング上にはアンナとルッカが残ったぞ!」

「そらっ!」

「!」

 ルッカさんの攻撃をアンナさんが躱します。ルッカさんが笑います。

「避けやがったか……最低限の体術の心得はあるみてえだな……ただ、今のは加減してやったんだ! 次の攻撃は躱せねえぞ! さっさと降参した方が身のためだぜ!」

「……お気遣いなく、やりようはいくらでもあるので」

「後悔すんなよ!」

「……」

「なっ⁉」

 ルッカさんだけでなく、会場中が驚きました。アンナさんの姿がリング上から忽然と消えたのです。タカさんがいち早くなにかを察します。

「なるほどな……」

「はっ!」

「がはっ!」

 アンナさんが残っていた小瓶から勢いよく飛び出し、ルッカさんの鳩尾に拳を入れます。思わぬ攻撃を喰らったルッカさんは力なく倒れ込みまず。

「ルッカ、敗北! 2ポイント! よって、アンナ、勝利! 3ポイント」

「ちゅ、中堅戦は衝撃の決着! 勝者はチーム『赤点』のアンナだ! タ、タカさん、どうでしたでしょうか?」

「まさか自らを封印するとはな……知識だけに囚われない柔軟な思考……正直恐れ入った」

 タカさんが心底感心したように呟きます。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...