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『ケース2:フラグをガンガンへし折りまくって、ハッピーエンドを目指す悪役令嬢志望のティエラの場合』
第5話(4)乱戦⁉Bブロック
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「え、ええと……」
「ウホウホウッホ……」
「あ、あの……」
「争いは好まないが、愛の為に戦う覚悟だ、と言っている」
男性の声がゴリラさんの後方から聞こえます。リポーターさんが驚きます。
「わ、分かるんですか⁉」
「ああ、フランソワと私は通じ合っているからな」
「そ、そうですか……つ、次、お願いします」
「こ、こちらは南口ゲートです! チーム『美女』のユファンさん! お、お美しいですね……じゃ、じゃなくて、意気込みをお願いします!」
拡声器を向けられたのは綺麗な長い黒髪に金色の髪飾りをつけた女性です。リポーターの方がおっしゃったように、エキゾチックな美しい顔立ちをしておられます。お召しになっているものもかなり立派で、それだけで身分の高い方だということが窺えます。
「わらわは常に一番であった……このような大会でも負けることなど毛頭考えられん!」
「す、凄い自信ですね! パ、パトラさんは残念な結果でしたが……」
「この混沌とした世界で数少ない友人じゃ。わらわが取り返せば良いだけのこと……」
「は~い、西口ゲートで~す。チーム『近所の孫』のジェーン選手……意気込みどうぞ」
「そうですね、頑張ります」
栗毛の長い髪をなびかせた大人しそうな女性が冷静に答えます。
「ジェーンちゃんって医学生だってね? ぶっちゃけ戦えるの?」
「人体の急所についても熟知しているつもりです。そこを突けば勝てます」
「ゴリラいるけど」
「……最善を尽くします」
「お返ししま~す」
「あ、ありがとうございました……さあ、中堅戦に臨む4人?がリングに上がりました……今、審判が開始の合図を出しました!」
「ガチでケモノが出てきてんじゃねえよ! まるで俺がスベったみてえじゃねえか!」
「おおっと、アルフォンが猛スピードでゴリ……フランソワに迫る!」
「ウホッ!」
「ちいっ! 意外と素早い反応しやがるな! それなら!」
「⁉」
「アルフォンが翼を広げ、空を舞った!」
「どうだ! これなら手が出せねえだろ!」
「……ウホッ!」
「なに⁉」
「ウホホッ!」
「ぐっ!」
「フランソワ! 自分の足元のリングを粉々に砕いて、その破片を上空のアルフォンに向かって投げつけはじめたぞ!」
「あ、危ねえ! ちっ! 頭回るじゃねえか! ならば!」
「!」
「アルフォン、急降下して、フランソワを掴んで再び上昇した!」
「ウホッ! ウホッ!」
「慌てんな! そんなに降りたきゃ降ろしてやるよ!」
「ウホッ⁉」
「アルフォン、フランソワを勢いよく振り落とした! フランソワ、リング外へ!」
「フランソワ、敗北! 0ポイント!」
「厄介なのは片付いた……さて、残りはどう料理してやろうかな……文字通り制空権は握った……俺の優位は変わらない……⁉」
突然、アルフォンさんがリング外に墜落するように落ちました。
「アルフォン、敗北! 1ポイント!」
「くっ……こ、これは吹き矢?」
「なかなか狙いが定めにくかったが、ゴリラを抱えているとき、動きがやや鈍ったのでな……上手く命中してくれたわ」
ユファンさんがアルフォンさんの方に近寄り、声をかけます。
「な、何をしやがった?」
「矢の先端に即効性のある毒を少々……無論、致死量にははるかに及ばない……やや痺れて体の自由がしばらく利かなくなるだけじゃ、心配するな」
「じょ、上流階級の癖して、えげつない戦い方を……」
「この場合、手段は問題ではない……それを誰が行うのかが問題なのじゃ……わらわがこういった戦い方を選択したとき、それが美しい戦い方となる」
「アルフォンが脱落した! さあ、残りは2人だ!」
「……見るからに市井の学生といった風情をしておるの。さっさと終わらせてやる!」
「ユファンが吹き矢を連発する!」
「くっ!」
「⁉ な、なに⁉ 矢は当たっているはずじゃ! 何故にそんなに動ける!」
「秘密はこれですよ!」
「そ、それは注射器か⁉」
「矢が当たったと同時に解毒剤を注射しています! だから問題ありません!」
「そ、そんな馬鹿な! 大体注射器を持ち歩いているなど!」
「医学を志すものならば、四六時中、肌身離さず持ち歩くマストアイテムです!」
「そ、そういうものなのか⁉」
「そういうものなのです! さあ、距離は詰めましたよ! お覚悟を!」
「ぐっ! し、しまった! ……なんてな」
「なに⁉ !」
ジェーンさんが崩れ落ちます。ユファンさんが笑みを浮かべます。
「遅行性の睡眠薬を混ぜておいた……しばらく眠るがよい……」
「ジェーン、敗北! 2ポイント! ユファン勝利! 3ポイント!」
「おおっと! 決着が着きました! 中堅戦はチーム『美女』の勝利! ……さあ、残るは大将戦です! 全チームに勝ち抜きの可能性が残っています! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」
「はい……チーム『人間上等』のニサさん、少々苦しい戦いが続いていますが……?」
口元が鮫のように鋭い形をしていて、上半身に入れ墨をびっしりといれた男性は吐き捨てるように呟きます。
「獣人も鳥人も情けねえな……魚人が凄さを見せてやるよ……」
「東口です。チーム『剛腕』のラティウスさん、意気込みをお願いします」
「ふふっ、勝つだけだよ。私はいつだってそうやってきた」
大柄で筋骨隆々とした男性は自信たっぷりに答えます。
「……差支えなければ、ゴリ……フランソワさんとの関係は?」
「とても大事な関係さ、かけがえのないね」
「そ、それは、例えばご夫婦のようなものと解釈しても?」
「どのように捉えてもらっても構わないよ」
「こちらは南口です! チーム『美女』のオコマチさん! 意気込みをお願いします!」
拡声器を向けられたのは長く綺麗な黒髪に変わった服装をした女性です。この方もまた絶世の美人さんです。
「いくさまえ 心波打つ 異国にて」
「は、はい?」
「勝ち負けは 時の運にて 騒がずに」
「あ、な、なるほど……次、お願いします」
「は~い、西口で~す。チーム『近所の孫』のシャーロット選手……意気込みどうぞ」
「ふふふっ! 勝って一位抜けを決めるわよ!」
拡声器を向けられた前後に庇がついた帽子を被り、丈の長いコートに、ケープを合わせたデザインの外套を羽織った、金髪で小柄な女の子が高らかに宣言しました。
「シャーロットちゃん、ちっこいけど戦えるの?」
「戦えるわよ! 子供扱いしないでくれる! 立派なレディーなのよ!」
「レディーねえ……お返ししま~す」
「あ、ありがとうございました……さあ、大将戦に臨む4人がリングに上がりました……今、審判が開始の合図を出しました!」
「魚人が陸の上で戦えるのかしら?」
「なめんなよ、ガキが!」
「おっと! ニサがシャーロットに襲いかかる!」
「せい!」
「なっ⁉」
「ニサがリングの上に転がったぞ!」
「私はバリツを習得しているのよ! あんまりナメないでよね!」
シャーロットちゃんが胸を張ります。バリツがなんなのかはよく分かりませんが、それなりの体術の使い手の様です。
「ほう! お嬢ちゃん、大したものだね、確かに立派なレディーだ」
「お褒めに預かり光栄だわ、ラティウス=カウィー卿、でも貴方には及ばない」
「うん?」
「裸一貫でこの国にやってきて、一代で財を成し、貴族にまで上りつめた……しかし、その成功を妬んだ者の讒言によって島流しの刑に処され、なんやかんやあって、フランソワと結ばれた……」
「大した推理力だね……」
「簡単なプロファイリングよ……」
なんやかんやあっての部分が一番大事なのではないかとわたくしは思いましたが、空気を読んで黙っておくことにしました。
「流石はかの有名な名探偵のお孫さんといったところかな?」
「正確に言えば、名探偵の近所の茶飲み友達の孫よ」
「近所の孫ってそういうことですの⁉ さっきから大事な部分省略し過ぎ!」
わたくしは思わず声を出してしまいました。
「……孫だかなんだか知らねえが! これならどうだ!」
「おおっと、これは! ニサが両手から大量の水を出したぞ!」
「ええっ⁉」
わたくしは驚きの声を上げます。
「リングがすっぽりと沈んでしまった! コロシアムの中に小さな海が出来た!」
「こうなりゃリングアウトも関係ねえ! 俺の得意なフィールドで勝負だ!」
「ちょ、ちょっと待って! 私泳げないのよ! ギブアップ!」
「シャーロット、敗北! 0ポイント!」
「ふふっ、あの妙な服を着た女も沈んでいることだろう……何っ!」
「こ、これはどういうことだ⁉ オコマチが空に浮かんでいる⁉」
「言の葉に 力を込めて 成せる業」
「ふざけんなよ!」
「ニサが物凄いスピードでオコマチに迫る!」
「この歯で食いちぎってやるぜ!」
「うず潮よ 鮫を飲み込み 空放て」
「ぐおっ!」
「ニサが海面から上に放たれた!」
「バカな! 海で俺が遅れをとっているだと⁉」
「荒波よ 空舞う鮫を 狙い撃て」
「どはっ!」
「水の奔流がニサの体に当たった!」
「クソが! ……妙な術を使いやがって! おらあ!」
「!」
オコマチさんが手に持っている筆と紙がニサさんの放った水流によって、濡れてしまいました。すると、オコマチさんが海に落ちます。
「油断した 一寸先には 落とし穴」
「紙に文字を書いて攻撃してやがったのか……」
「我もまた かなづちの為 降参す」
「オコマチ、敗北! 1ポイント!」
「ふっ、後はマッチョなおっさんか、あのガタイだ、とっくに沈んでいるかもな……⁉」
「ふふっ、捕まえたぞ!」
「ラティウスがニサを羽交い絞めにしたぞ!」
「か、海中で俺を捕えるだと⁉」
「泳ぎは鍛えに鍛えたんだ、流刑地での生活でね!」
「ぐうっ……」
「技は完全に極まっている! 潔くギブアップしたまえ!」
「だ、誰が人間なんかに降参するかよ……」
「強情だな!」
「うるせえ! ……」
「落ちたか……審判!」
「ニサ、敗北! 2ポイント! ラティウス勝利! 3ポイント!」
「……ということは、Bブロック勝者はチーム『剛腕』と『近所の孫』に決定! 2チームが準決勝に進出! ともに5ポイントの為、順位は後ほど抽選で決めます!」
Bブロックが終わり、リングから排水作業が急ピッチで進められています。準決勝はチーム『剛腕』かチーム『近所の孫』のどちらかと必ず当たります。前者はバーサーカーとゴリラさんと魚人を海で仕留める文字通りの剛腕……。後者はバーサーカーを一瞬で沈めた軍人さんと注射器を振り回す医学生と謎の武術バリツの使い手……。
「どちらとも戦いたくありませんわ……」
わたくしは排水作業を眺めながら正直な思いを呟きます。
「ウホウホウッホ……」
「あ、あの……」
「争いは好まないが、愛の為に戦う覚悟だ、と言っている」
男性の声がゴリラさんの後方から聞こえます。リポーターさんが驚きます。
「わ、分かるんですか⁉」
「ああ、フランソワと私は通じ合っているからな」
「そ、そうですか……つ、次、お願いします」
「こ、こちらは南口ゲートです! チーム『美女』のユファンさん! お、お美しいですね……じゃ、じゃなくて、意気込みをお願いします!」
拡声器を向けられたのは綺麗な長い黒髪に金色の髪飾りをつけた女性です。リポーターの方がおっしゃったように、エキゾチックな美しい顔立ちをしておられます。お召しになっているものもかなり立派で、それだけで身分の高い方だということが窺えます。
「わらわは常に一番であった……このような大会でも負けることなど毛頭考えられん!」
「す、凄い自信ですね! パ、パトラさんは残念な結果でしたが……」
「この混沌とした世界で数少ない友人じゃ。わらわが取り返せば良いだけのこと……」
「は~い、西口ゲートで~す。チーム『近所の孫』のジェーン選手……意気込みどうぞ」
「そうですね、頑張ります」
栗毛の長い髪をなびかせた大人しそうな女性が冷静に答えます。
「ジェーンちゃんって医学生だってね? ぶっちゃけ戦えるの?」
「人体の急所についても熟知しているつもりです。そこを突けば勝てます」
「ゴリラいるけど」
「……最善を尽くします」
「お返ししま~す」
「あ、ありがとうございました……さあ、中堅戦に臨む4人?がリングに上がりました……今、審判が開始の合図を出しました!」
「ガチでケモノが出てきてんじゃねえよ! まるで俺がスベったみてえじゃねえか!」
「おおっと、アルフォンが猛スピードでゴリ……フランソワに迫る!」
「ウホッ!」
「ちいっ! 意外と素早い反応しやがるな! それなら!」
「⁉」
「アルフォンが翼を広げ、空を舞った!」
「どうだ! これなら手が出せねえだろ!」
「……ウホッ!」
「なに⁉」
「ウホホッ!」
「ぐっ!」
「フランソワ! 自分の足元のリングを粉々に砕いて、その破片を上空のアルフォンに向かって投げつけはじめたぞ!」
「あ、危ねえ! ちっ! 頭回るじゃねえか! ならば!」
「!」
「アルフォン、急降下して、フランソワを掴んで再び上昇した!」
「ウホッ! ウホッ!」
「慌てんな! そんなに降りたきゃ降ろしてやるよ!」
「ウホッ⁉」
「アルフォン、フランソワを勢いよく振り落とした! フランソワ、リング外へ!」
「フランソワ、敗北! 0ポイント!」
「厄介なのは片付いた……さて、残りはどう料理してやろうかな……文字通り制空権は握った……俺の優位は変わらない……⁉」
突然、アルフォンさんがリング外に墜落するように落ちました。
「アルフォン、敗北! 1ポイント!」
「くっ……こ、これは吹き矢?」
「なかなか狙いが定めにくかったが、ゴリラを抱えているとき、動きがやや鈍ったのでな……上手く命中してくれたわ」
ユファンさんがアルフォンさんの方に近寄り、声をかけます。
「な、何をしやがった?」
「矢の先端に即効性のある毒を少々……無論、致死量にははるかに及ばない……やや痺れて体の自由がしばらく利かなくなるだけじゃ、心配するな」
「じょ、上流階級の癖して、えげつない戦い方を……」
「この場合、手段は問題ではない……それを誰が行うのかが問題なのじゃ……わらわがこういった戦い方を選択したとき、それが美しい戦い方となる」
「アルフォンが脱落した! さあ、残りは2人だ!」
「……見るからに市井の学生といった風情をしておるの。さっさと終わらせてやる!」
「ユファンが吹き矢を連発する!」
「くっ!」
「⁉ な、なに⁉ 矢は当たっているはずじゃ! 何故にそんなに動ける!」
「秘密はこれですよ!」
「そ、それは注射器か⁉」
「矢が当たったと同時に解毒剤を注射しています! だから問題ありません!」
「そ、そんな馬鹿な! 大体注射器を持ち歩いているなど!」
「医学を志すものならば、四六時中、肌身離さず持ち歩くマストアイテムです!」
「そ、そういうものなのか⁉」
「そういうものなのです! さあ、距離は詰めましたよ! お覚悟を!」
「ぐっ! し、しまった! ……なんてな」
「なに⁉ !」
ジェーンさんが崩れ落ちます。ユファンさんが笑みを浮かべます。
「遅行性の睡眠薬を混ぜておいた……しばらく眠るがよい……」
「ジェーン、敗北! 2ポイント! ユファン勝利! 3ポイント!」
「おおっと! 決着が着きました! 中堅戦はチーム『美女』の勝利! ……さあ、残るは大将戦です! 全チームに勝ち抜きの可能性が残っています! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」
「はい……チーム『人間上等』のニサさん、少々苦しい戦いが続いていますが……?」
口元が鮫のように鋭い形をしていて、上半身に入れ墨をびっしりといれた男性は吐き捨てるように呟きます。
「獣人も鳥人も情けねえな……魚人が凄さを見せてやるよ……」
「東口です。チーム『剛腕』のラティウスさん、意気込みをお願いします」
「ふふっ、勝つだけだよ。私はいつだってそうやってきた」
大柄で筋骨隆々とした男性は自信たっぷりに答えます。
「……差支えなければ、ゴリ……フランソワさんとの関係は?」
「とても大事な関係さ、かけがえのないね」
「そ、それは、例えばご夫婦のようなものと解釈しても?」
「どのように捉えてもらっても構わないよ」
「こちらは南口です! チーム『美女』のオコマチさん! 意気込みをお願いします!」
拡声器を向けられたのは長く綺麗な黒髪に変わった服装をした女性です。この方もまた絶世の美人さんです。
「いくさまえ 心波打つ 異国にて」
「は、はい?」
「勝ち負けは 時の運にて 騒がずに」
「あ、な、なるほど……次、お願いします」
「は~い、西口で~す。チーム『近所の孫』のシャーロット選手……意気込みどうぞ」
「ふふふっ! 勝って一位抜けを決めるわよ!」
拡声器を向けられた前後に庇がついた帽子を被り、丈の長いコートに、ケープを合わせたデザインの外套を羽織った、金髪で小柄な女の子が高らかに宣言しました。
「シャーロットちゃん、ちっこいけど戦えるの?」
「戦えるわよ! 子供扱いしないでくれる! 立派なレディーなのよ!」
「レディーねえ……お返ししま~す」
「あ、ありがとうございました……さあ、大将戦に臨む4人がリングに上がりました……今、審判が開始の合図を出しました!」
「魚人が陸の上で戦えるのかしら?」
「なめんなよ、ガキが!」
「おっと! ニサがシャーロットに襲いかかる!」
「せい!」
「なっ⁉」
「ニサがリングの上に転がったぞ!」
「私はバリツを習得しているのよ! あんまりナメないでよね!」
シャーロットちゃんが胸を張ります。バリツがなんなのかはよく分かりませんが、それなりの体術の使い手の様です。
「ほう! お嬢ちゃん、大したものだね、確かに立派なレディーだ」
「お褒めに預かり光栄だわ、ラティウス=カウィー卿、でも貴方には及ばない」
「うん?」
「裸一貫でこの国にやってきて、一代で財を成し、貴族にまで上りつめた……しかし、その成功を妬んだ者の讒言によって島流しの刑に処され、なんやかんやあって、フランソワと結ばれた……」
「大した推理力だね……」
「簡単なプロファイリングよ……」
なんやかんやあっての部分が一番大事なのではないかとわたくしは思いましたが、空気を読んで黙っておくことにしました。
「流石はかの有名な名探偵のお孫さんといったところかな?」
「正確に言えば、名探偵の近所の茶飲み友達の孫よ」
「近所の孫ってそういうことですの⁉ さっきから大事な部分省略し過ぎ!」
わたくしは思わず声を出してしまいました。
「……孫だかなんだか知らねえが! これならどうだ!」
「おおっと、これは! ニサが両手から大量の水を出したぞ!」
「ええっ⁉」
わたくしは驚きの声を上げます。
「リングがすっぽりと沈んでしまった! コロシアムの中に小さな海が出来た!」
「こうなりゃリングアウトも関係ねえ! 俺の得意なフィールドで勝負だ!」
「ちょ、ちょっと待って! 私泳げないのよ! ギブアップ!」
「シャーロット、敗北! 0ポイント!」
「ふふっ、あの妙な服を着た女も沈んでいることだろう……何っ!」
「こ、これはどういうことだ⁉ オコマチが空に浮かんでいる⁉」
「言の葉に 力を込めて 成せる業」
「ふざけんなよ!」
「ニサが物凄いスピードでオコマチに迫る!」
「この歯で食いちぎってやるぜ!」
「うず潮よ 鮫を飲み込み 空放て」
「ぐおっ!」
「ニサが海面から上に放たれた!」
「バカな! 海で俺が遅れをとっているだと⁉」
「荒波よ 空舞う鮫を 狙い撃て」
「どはっ!」
「水の奔流がニサの体に当たった!」
「クソが! ……妙な術を使いやがって! おらあ!」
「!」
オコマチさんが手に持っている筆と紙がニサさんの放った水流によって、濡れてしまいました。すると、オコマチさんが海に落ちます。
「油断した 一寸先には 落とし穴」
「紙に文字を書いて攻撃してやがったのか……」
「我もまた かなづちの為 降参す」
「オコマチ、敗北! 1ポイント!」
「ふっ、後はマッチョなおっさんか、あのガタイだ、とっくに沈んでいるかもな……⁉」
「ふふっ、捕まえたぞ!」
「ラティウスがニサを羽交い絞めにしたぞ!」
「か、海中で俺を捕えるだと⁉」
「泳ぎは鍛えに鍛えたんだ、流刑地での生活でね!」
「ぐうっ……」
「技は完全に極まっている! 潔くギブアップしたまえ!」
「だ、誰が人間なんかに降参するかよ……」
「強情だな!」
「うるせえ! ……」
「落ちたか……審判!」
「ニサ、敗北! 2ポイント! ラティウス勝利! 3ポイント!」
「……ということは、Bブロック勝者はチーム『剛腕』と『近所の孫』に決定! 2チームが準決勝に進出! ともに5ポイントの為、順位は後ほど抽選で決めます!」
Bブロックが終わり、リングから排水作業が急ピッチで進められています。準決勝はチーム『剛腕』かチーム『近所の孫』のどちらかと必ず当たります。前者はバーサーカーとゴリラさんと魚人を海で仕留める文字通りの剛腕……。後者はバーサーカーを一瞬で沈めた軍人さんと注射器を振り回す医学生と謎の武術バリツの使い手……。
「どちらとも戦いたくありませんわ……」
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(純粋無垢?可憐?プフー。近藤さんってすぐにやらせてくれるから、大学では『ヤリマン』とか『サセコ』って呼ばれていたのですけどね。それが原因で、現在は性病に罹っているのよ?しかも、高校時代に堕胎をしている女を聖女って・・・。性女の間違いではないの?それなのに、お二人はそれを知らずにヤリマン・・・ではなく、近藤さんに手を出しちゃったのね・・・。王太子殿下と騎士さんの婚約者には、国を出る前に真実を伝えた上で婚約を解消する事を勧めておくとしましょうか)
「王太子殿下のお言葉に従います」
羽衣と霊剣・蜉蝣を使って九尾の一族を殲滅させた直後の自分を聖女召喚に巻き込んだウィスティリア王国に恨みを抱えていた紗雪は、その時に付与されたスキル【ネットショップ】を使って異世界で生き抜いていく決意をする。
紗雪は天女の血を引くとも言われている千年以上続く陰陽師の家に生まれた巫女にして最強の退魔師です。
篁家についてや羽衣の力を借りて九尾を倒した辺りは、後に語って行こうかと思っています。
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