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『ケース1:Dランク異世界でのまったりとしたスローライフを希望するCランク勇者ショー=ロークの場合』
第12話(2)勝負は一瞬で
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♢
「『理想の大樹・旋風』!」
「グギャアア!」
俺は先程編み出したばかりの技を駆使して群がるオークを勢い良く薙ぎ払う。オークたちの叫び声が激しくこだまする。
「モンド、露払いは私が務めます、さっさとこの東門を突破しましょう!」
「御意!」
俺はすっかり調子に乗っていた。
「ふん……!」
「どわぁ⁉」
突き進む俺の進軍が強い衝撃によって止まる。衝撃を起こした主は俺たちの前に立ちはだかる巨大な金棒を持ったオーガという種族だ。大柄な体格を如何にも重そうな鎧で包み、額には二本の長い角が生えている。
「だ、誰だ⁉」
「ヴルフェ様!」
「ヴルフェ様が御出陣だ!」
「おおおっ!」
周囲のオークたちが次々と雄叫びを上げる。
「あれがヴルフェ……!」
「四傑の一角でござるな」
戸惑う俺の傍らでモンドが冷静に呟く。
「ドエイだけでなくシアまで殺りやがったか……そろそろ俺様のお仕置きが必要だな?」
ヴルフェと呼ばれたオーガは顎をさすりながら金棒を肩に担ぐ。
「くっ……」
俺ははっきりと怯んでしまう。ヴルフェが明らかに強者特有のオーラをこれでもかとばかりに放っていたからである。
「さてと……どちらから始末してやろうかね?」
「ふむ……ん? 勇者殿⁉」
俺はモンドとヴルフェの間に進み出る。
「モンド、ここは私に任せて下さい」
「し、しかし……!」
モンドは露骨に心配そうな声を上げる。当然だ、俺の体が震えているからである。しかし、ここで引いてしまっては駄目だ。俺は自らを奮い立たせるように大声を上げる。
「お願いします!」
「わ、分かりました。お、お気を付けて……」
「ありがとうございます……『理想の大樹・旋風』!」
俺は体を思いっ切り回転させて突っ込む。自分でも慣れてきたのか、今までよりも速いスピードが出せている。俺はあっという間にヴルフェを視界に捉える。鎧は堅そうであるため、狙いは当然奴の首だ。俺のスピードに奴はついてこられないように見える。もらった、この戦いは俺の勝ちだ。四傑の補佐どころか、四傑相手にだって十分に戦えるじゃないか。そのようなことを考えた次の瞬間……
「うぜえ!」
「ぬおわっ⁉」
ヴルフェが金棒を一振りし、俺の腰に生やした二本の大木があっけなく折られ、俺自身は豪快に吹っ飛ばされ、近くの城門の壁に打ち付けられる。
「ゆ、勇者殿! ご無事か⁉」
「な、なんとか……」
俺は倒れ込みながら答える。大木が俺の身を守ってくれた。
「勇者? 珍妙な術を使うから、てっきり奇術師かなにかかと思ったぜ」
ヴルフェが嘲笑を浮かべる。なんとか言い返してやりたかったが、我ながら珍妙な術というのを完全には否定できないので押し黙る。
「ここは拙者が!」
モンドが前に出る。弓を四発ほど、素早く放つ。
「鋭くかつ剛弓! 避けるのが大変……ならば、打ち返すまで!」
「なっ⁉」
ヴルフェが金棒を振り回し、鋭く飛んできた矢を金棒で打ち返したのである。打ち返された矢はそのまま一直線にモンドに向かって飛んできた。モンドは四発中二発を躱したが、残りの二本がモンドの左肩と、右腿に突き刺さった。俺も驚いた。
「ば、馬鹿な! 矢をそのまま打ち返すなんて……」
「ぐううっ!」
モンドはすぐさま、肩などに刺さった矢を抜き、投げ捨てる。
「ならば、これは⁉」
モンドは長い槍を突き付ける。槍の突きは速かったが、ヴルフェは難なく躱し、金棒を槍の長い柄に打ち付ける。槍は折れ曲がり、地面に刺さる。
「リーチ差をなんとかしたかったみたいだが、こんな細長い槍では無理だぜ!」
「くっ……」
「どうした、まさかもうネタ切れか?」
「ぐぬっ……」
「それじゃあ、そろそろこっちからいくぜ!」
マズい、このままではモンドがやられてしまう。少しでも時間を稼がなくてはならない。俺は苦し紛れの攻撃に出る。
「……『理想の大樹・旋風』!」
「だからうぜえっての!」
ヴルフェの金棒を再度喰らい、俺の体は地面に叩き付けられ、根元から折れた二つの大木が、無残に地面に転がる。それを見るやいなやモンドが走り出す。但し、ヴルフェの方ではなく。折れた大木の方に向かってである。
「モ、モンド、どうしたのです⁉」
俺は彼女の行動を理解出来なかった。モンドは左手に斧、右手に棍棒を握っている。
「『伐採乱舞』! 『豪打乱舞』! 合わせ技でござる!」
「!」
俺は驚いた。戦場に転がる大木をモンドが右手の斧で伐採し、伐った木片、大小様々な大きさのものを左手で持った棍棒で片っ端から打ち飛ばしたのだ。木片がヴルフェの方に向かっていくつも飛んで行く。
「はっ! 目くらましのつもりか⁉」
飛んでくる無数の木片を、ヴルフェが金棒で全て弾き返す。
「まあ……そんなところでござる!」
「何⁉」
ヴルフェの足下に転がった俺の体の上に、残った一本の大木が弾む。モンドが投げこんだものである。俺は戸惑う。
「こ、これは⁉」
「今でござる!」
モンドが自らの手前に弾んだ木の上に飛び乗って思い切り踏み付ける、てこの原理で、俺の体が支点となり、モンドが踏んだ場所が力点となり、反対側の木の先端が作用点となって、上に跳ねあがった木がヴルフェの顎を思い切り打ち付ける。
「ぐおっ⁉」
強烈なアッパーカットを喰らったようなかたちとなったヴルフェの体がふらつく。脳天が激しく揺れているのだろう。そこにモンドが斬りかかる。
「『退魔一閃』!」
一瞬の内に、モンドがヴルフェの脇をすり抜ける。後方で刀を鞘に納めた瞬間、ヴルフェの首から血がドバっと噴き出る。
「くっ、や、やりやがったな……」
「悔しいがお互いの実力差は明白でござった。少々狡い手でもなんでも、なりふり構わず使わせてもらったでござる。真の勝負はいずれまたどこかで……」
「ふん、どこかでな……」
ヴルフェがフッと笑みを浮かべてその場に倒れ込む。頼みの綱を失ったオークの兵士たちは狂乱状態になり、我先にと逃げ出していく。モンドが俺に乗っていた大木を拾い上げると、それを城門に思い切りぶつける。門が開き、モンドが声をかける。
「勇者殿、城内に参りましょう!」
俺とモンドは城内に侵入する。メラヌから渡された見取り図の通りに進み、スムーズに城の奥まで入り込むことが出来た。警備の兵も僅かに残ってはいたが、まさかここまで敵の俺たちが来るとは思わなかったのか、ほとんどが逃げ出し、勇敢にも立ち向かってきた僅かな兵士もモンドの刀の錆となった。
「見取り図によると、ここが玉座の間か……」
俺たちはこの城で一番大きい部屋の前に立つ。
「ショー様! モンドさんもご無事で!」
そこにスティラとメラヌが駆け付ける。
「ダーリン♡ 良かった、無事だったのね!」
アリンと、大き目の四体の妖精に運ばれたルドンナが姿を現す。
「ショー、皆も無事だったんだね!」
アパネも勢いよく駆け込んできた。俺はアパネに問う。
「アパネ、スビナエは?」
「追いつくから先に行けって! きっと大丈夫なはずだよ!」
「まあ、スビナエちゃんなら、そう簡単にはくたばらないでしょう……スティラちゃん、悪いけど皆の回復をよろしくね」
スティラの回復魔法により、あっという間に怪我が治り、溜まっていた疲労が取れた。
「お疲れさん、スティラちゃんの分は私がやってあげるわ」
「あ、ありがとうございます、メラヌさん」
「さてと……勇者さん、準備はいいかしら?」
メラヌが俺に問う。俺は皆を見渡して各々に声をかける。
「スティラ、皆の回復は頼みます」
「は、はい!」
「アパネ、先陣は任せました」
「任されたよ!」
「ルドンナ、超強力な召喚獣を一つ、お願いします」
「人使いが荒いわね~まあ、良いけど」
「モンド、頼りにさせてもらいます」
「期待には結果で応えるでござる」
「アリン、魔族の懸念材料を片付けましょう」
「簡単に言ってくれるけどね……ここまで来たらやるだけだけど」
「メラヌ、参りましょう」
「気合いも準備も万端ってところね……それじゃああらためて号令よろしく」
「皆、これが最後の戦いです! 全てを終わらせましょう!」
「「「おおっ‼」」」
俺たちは玉座の間に突入する。
「『理想の大樹・旋風』!」
「グギャアア!」
俺は先程編み出したばかりの技を駆使して群がるオークを勢い良く薙ぎ払う。オークたちの叫び声が激しくこだまする。
「モンド、露払いは私が務めます、さっさとこの東門を突破しましょう!」
「御意!」
俺はすっかり調子に乗っていた。
「ふん……!」
「どわぁ⁉」
突き進む俺の進軍が強い衝撃によって止まる。衝撃を起こした主は俺たちの前に立ちはだかる巨大な金棒を持ったオーガという種族だ。大柄な体格を如何にも重そうな鎧で包み、額には二本の長い角が生えている。
「だ、誰だ⁉」
「ヴルフェ様!」
「ヴルフェ様が御出陣だ!」
「おおおっ!」
周囲のオークたちが次々と雄叫びを上げる。
「あれがヴルフェ……!」
「四傑の一角でござるな」
戸惑う俺の傍らでモンドが冷静に呟く。
「ドエイだけでなくシアまで殺りやがったか……そろそろ俺様のお仕置きが必要だな?」
ヴルフェと呼ばれたオーガは顎をさすりながら金棒を肩に担ぐ。
「くっ……」
俺ははっきりと怯んでしまう。ヴルフェが明らかに強者特有のオーラをこれでもかとばかりに放っていたからである。
「さてと……どちらから始末してやろうかね?」
「ふむ……ん? 勇者殿⁉」
俺はモンドとヴルフェの間に進み出る。
「モンド、ここは私に任せて下さい」
「し、しかし……!」
モンドは露骨に心配そうな声を上げる。当然だ、俺の体が震えているからである。しかし、ここで引いてしまっては駄目だ。俺は自らを奮い立たせるように大声を上げる。
「お願いします!」
「わ、分かりました。お、お気を付けて……」
「ありがとうございます……『理想の大樹・旋風』!」
俺は体を思いっ切り回転させて突っ込む。自分でも慣れてきたのか、今までよりも速いスピードが出せている。俺はあっという間にヴルフェを視界に捉える。鎧は堅そうであるため、狙いは当然奴の首だ。俺のスピードに奴はついてこられないように見える。もらった、この戦いは俺の勝ちだ。四傑の補佐どころか、四傑相手にだって十分に戦えるじゃないか。そのようなことを考えた次の瞬間……
「うぜえ!」
「ぬおわっ⁉」
ヴルフェが金棒を一振りし、俺の腰に生やした二本の大木があっけなく折られ、俺自身は豪快に吹っ飛ばされ、近くの城門の壁に打ち付けられる。
「ゆ、勇者殿! ご無事か⁉」
「な、なんとか……」
俺は倒れ込みながら答える。大木が俺の身を守ってくれた。
「勇者? 珍妙な術を使うから、てっきり奇術師かなにかかと思ったぜ」
ヴルフェが嘲笑を浮かべる。なんとか言い返してやりたかったが、我ながら珍妙な術というのを完全には否定できないので押し黙る。
「ここは拙者が!」
モンドが前に出る。弓を四発ほど、素早く放つ。
「鋭くかつ剛弓! 避けるのが大変……ならば、打ち返すまで!」
「なっ⁉」
ヴルフェが金棒を振り回し、鋭く飛んできた矢を金棒で打ち返したのである。打ち返された矢はそのまま一直線にモンドに向かって飛んできた。モンドは四発中二発を躱したが、残りの二本がモンドの左肩と、右腿に突き刺さった。俺も驚いた。
「ば、馬鹿な! 矢をそのまま打ち返すなんて……」
「ぐううっ!」
モンドはすぐさま、肩などに刺さった矢を抜き、投げ捨てる。
「ならば、これは⁉」
モンドは長い槍を突き付ける。槍の突きは速かったが、ヴルフェは難なく躱し、金棒を槍の長い柄に打ち付ける。槍は折れ曲がり、地面に刺さる。
「リーチ差をなんとかしたかったみたいだが、こんな細長い槍では無理だぜ!」
「くっ……」
「どうした、まさかもうネタ切れか?」
「ぐぬっ……」
「それじゃあ、そろそろこっちからいくぜ!」
マズい、このままではモンドがやられてしまう。少しでも時間を稼がなくてはならない。俺は苦し紛れの攻撃に出る。
「……『理想の大樹・旋風』!」
「だからうぜえっての!」
ヴルフェの金棒を再度喰らい、俺の体は地面に叩き付けられ、根元から折れた二つの大木が、無残に地面に転がる。それを見るやいなやモンドが走り出す。但し、ヴルフェの方ではなく。折れた大木の方に向かってである。
「モ、モンド、どうしたのです⁉」
俺は彼女の行動を理解出来なかった。モンドは左手に斧、右手に棍棒を握っている。
「『伐採乱舞』! 『豪打乱舞』! 合わせ技でござる!」
「!」
俺は驚いた。戦場に転がる大木をモンドが右手の斧で伐採し、伐った木片、大小様々な大きさのものを左手で持った棍棒で片っ端から打ち飛ばしたのだ。木片がヴルフェの方に向かっていくつも飛んで行く。
「はっ! 目くらましのつもりか⁉」
飛んでくる無数の木片を、ヴルフェが金棒で全て弾き返す。
「まあ……そんなところでござる!」
「何⁉」
ヴルフェの足下に転がった俺の体の上に、残った一本の大木が弾む。モンドが投げこんだものである。俺は戸惑う。
「こ、これは⁉」
「今でござる!」
モンドが自らの手前に弾んだ木の上に飛び乗って思い切り踏み付ける、てこの原理で、俺の体が支点となり、モンドが踏んだ場所が力点となり、反対側の木の先端が作用点となって、上に跳ねあがった木がヴルフェの顎を思い切り打ち付ける。
「ぐおっ⁉」
強烈なアッパーカットを喰らったようなかたちとなったヴルフェの体がふらつく。脳天が激しく揺れているのだろう。そこにモンドが斬りかかる。
「『退魔一閃』!」
一瞬の内に、モンドがヴルフェの脇をすり抜ける。後方で刀を鞘に納めた瞬間、ヴルフェの首から血がドバっと噴き出る。
「くっ、や、やりやがったな……」
「悔しいがお互いの実力差は明白でござった。少々狡い手でもなんでも、なりふり構わず使わせてもらったでござる。真の勝負はいずれまたどこかで……」
「ふん、どこかでな……」
ヴルフェがフッと笑みを浮かべてその場に倒れ込む。頼みの綱を失ったオークの兵士たちは狂乱状態になり、我先にと逃げ出していく。モンドが俺に乗っていた大木を拾い上げると、それを城門に思い切りぶつける。門が開き、モンドが声をかける。
「勇者殿、城内に参りましょう!」
俺とモンドは城内に侵入する。メラヌから渡された見取り図の通りに進み、スムーズに城の奥まで入り込むことが出来た。警備の兵も僅かに残ってはいたが、まさかここまで敵の俺たちが来るとは思わなかったのか、ほとんどが逃げ出し、勇敢にも立ち向かってきた僅かな兵士もモンドの刀の錆となった。
「見取り図によると、ここが玉座の間か……」
俺たちはこの城で一番大きい部屋の前に立つ。
「ショー様! モンドさんもご無事で!」
そこにスティラとメラヌが駆け付ける。
「ダーリン♡ 良かった、無事だったのね!」
アリンと、大き目の四体の妖精に運ばれたルドンナが姿を現す。
「ショー、皆も無事だったんだね!」
アパネも勢いよく駆け込んできた。俺はアパネに問う。
「アパネ、スビナエは?」
「追いつくから先に行けって! きっと大丈夫なはずだよ!」
「まあ、スビナエちゃんなら、そう簡単にはくたばらないでしょう……スティラちゃん、悪いけど皆の回復をよろしくね」
スティラの回復魔法により、あっという間に怪我が治り、溜まっていた疲労が取れた。
「お疲れさん、スティラちゃんの分は私がやってあげるわ」
「あ、ありがとうございます、メラヌさん」
「さてと……勇者さん、準備はいいかしら?」
メラヌが俺に問う。俺は皆を見渡して各々に声をかける。
「スティラ、皆の回復は頼みます」
「は、はい!」
「アパネ、先陣は任せました」
「任されたよ!」
「ルドンナ、超強力な召喚獣を一つ、お願いします」
「人使いが荒いわね~まあ、良いけど」
「モンド、頼りにさせてもらいます」
「期待には結果で応えるでござる」
「アリン、魔族の懸念材料を片付けましょう」
「簡単に言ってくれるけどね……ここまで来たらやるだけだけど」
「メラヌ、参りましょう」
「気合いも準備も万端ってところね……それじゃああらためて号令よろしく」
「皆、これが最後の戦いです! 全てを終わらせましょう!」
「「「おおっ‼」」」
俺たちは玉座の間に突入する。
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