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『ケース1:Dランク異世界でのまったりとしたスローライフを希望するCランク勇者ショー=ロークの場合』
第7話(3)ゴブリン村の激闘
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「ふん!」
俺は生やした大樹をやや乱暴に倒して、俺たちを収容していた牢屋を壊して外に出る。
「さて、まずはどうする?」
アリンの問いに俺は答える。
「まずは非戦闘員を安全な場所まで退避させつつ、私の剣と盾を回収します」
「暗がりと土煙でよく分からないけど、モンスターは村の南部で暴れているようね。北部にいる私たちとはちょうど真反対ね」
「隙を突いて逃げないで下さいね!」
俺はアリンに釘を刺す。アリンはややムッとして答える。
「今更逃げないわよ」
「結構なことです」
「面倒だからここから魔法をぶっ放してもいい?」
「それは却下です」
「なんでよ」
「被害が広範囲に及びます。村の外に誘導して倒すのが望ましいです」
アリンは不満気な様子で呟く。
「そう上手く行くかしらね? だって……」
「え? なんです?」
「なんでもない! 早く剣と盾を回収して!」
俺は周囲を見回して、この村で一番大きいと思われる建物に駆け込む。
「む! お、お前、いつの間に牢屋を⁉」
俺を捕えたゴブリンの一人が驚いた視線を向けてくる。俺は構わず問う。
「私の剣と盾を返して貰います!」
「そ、そんなこと……!」
「この村の危機なのですよ! 私に任せて下さい!」
「……貴方ならば救えると?」
腰の曲がった老いたゴブリンが尋ねてくる。恐らくこの村の村長であろう。
「当然です! 勇者ですから!」
「……持ち物を返してやれ」
「い、いいんですか⁉ 村長!」
「いいから急げ!」
「は、はい!」
村長からの指示を受けたゴブリンが走っていく。村長は俺に話す。
「申し訳ない……村の平和を守るため、過敏過ぎる反応を取ってしまいました……」
「それが最善だと判断したのなら、こちらが言うことは何もありません」
俺は気にするなという風に答える。
「も、持ってきました!」
ゴブリンから剣と盾を受け取った俺はその場にいた全員に告げる。
「直ちに避難を! モンスターは私が倒します!」
「頼みます……!」
村長の懇願を背に受けた俺は建物を出て、村の南部に走る。すぐさま俺は現場にたどり着く。激しく舞う土埃も晴れて、モンスターの姿を確認することが出来た。
「これは⁉ 鳥か⁉」
俺の目に映ったのは、大きなくちばしに一匹のゴブリンを咥えている巨大な鳥の姿であった。周囲を取り囲むゴブリンたちが小柄だということを差し引いても、かなりの大きさである。俺が到着したことに気付いたアリンが背中越しに話す。
「魔鳥エビルホークよ!」
「あ、あのゴブリンを助けないと!」
「迂闊に近づいたら危険よ!」
俺はアリンの忠告を無視し、突っ込む。そこに鋭い足の爪が襲い掛かってきた。
「うおっ⁉」
俺はなんとか横に転がって躱した。巨体に似合わず素早い。確かにこれでは容易に近づくことは出来ない。アリンが俺を諭すように叫ぶ。
「距離をとって攻撃しないと!」
「では、貴女の魔法をお願い出来ませんか⁉ 糸か何か使えるでしょう⁉」
「生憎、魔力切れが近いわ! 糸は使えない!」
「ええっ⁉」
俺は驚いて振り返る。アリンが忌々し気に呟く。
「断片的にだけど思い出したわ。私、貴方の仲間のエルフに雷魔法を喰らったでしょ?」
「え、ええ……」
「あの魔法は『裁きの雷』と言って相手にダメージを負わせるだけに留まらず、その相手の持つ魔力を一定期間、制限することが出来る高等魔法よ……」
「そ、そんな……」
スティラの奴、またとんでもない魔法を初見でマスターしたな……。などと感心している場合ではない。アリンに必要以上に頼ることが出来ないということはこの場は俺がなんとかせねばなるまい。俺は一旦周囲を見回す。ゴブリンたちが長い槍を構えている。戦いに慣れていない種族というのはどうやら本当で皆どことなく構えがぎこちない。震えが止まらない者もいる。魔鳥と呼ばれるような大きな鳥と相対すれば無理もないことではあるのだが。俺はゴブリンたちに声を掛ける。
「皆さん! 槍をあの鳥に向かって投げつけて下さい!」
「「「⁉」」」
「早く!」
俺の迫力に圧されたのか、ゴブリンたちは持っていた槍を魔鳥に向かって投げつける。皆ほとんどへっぴり腰で投げているので、当然当たるはずもなく、槍が飛ぶ方向も目茶苦茶だ。ただ、気を引いてくれればそれで十分であった。俺は魔鳥の隙を突いてその懐に潜り込むことに成功する。
「『登木(のぼりぎ)』!」
俺は木を地面に生やし、その幹を勢いよく駆け上がって、魔鳥の喉に斬り付ける。喉は太く硬い為、切り裂くことは出来なかったが、魔鳥はくちばしを広げ、くわえていたゴブリンを落とす。標的を俺に切り替えた魔鳥はくちばしを俺に向けて広げてくる。
「『縛蔦(ばくった)』!」
俺は蔦を生やして、魔鳥の大きなくちばしを縛る。予想外のことに混乱した魔鳥は体勢を立て直そうとしたのか飛び立とうとした為、俺は再び『縛蔦』と唱え、魔鳥の左の翼と左足を縛る。それでも、魔鳥は飛び立ったが、不安定な体勢だった為、満足な高度を取れない。俺はアリンに声を掛ける。
「アリン! 頼みます!」
「『地獄の業火』!」
アリンの両手から凄まじい勢いの炎が放たれ、魔鳥は一瞬で焼き尽くされ、地上に落下する。ゴブリンたちが歓声を上げる。木から降りた俺はアリンとともに、ゴブリンたちの称賛と感謝を受ける。俺たちは村長のもとに強引に連れていかれ、改めて丁寧な謝辞を受ける。すぐにでも出発したいところであったが、どうやら現在島の周りの海は荒れており、船などを出すのは危険だという。一晩待てば、海も落ち着くだろうということで、俺たちは引き留められ、そのままなし崩し的に宴に参加することになった。俺とアリンはゴブリンたちに薦められるまま酒を大いに飲んだ。俺の隣でアリンがぶつぶつ呟く。
「勢いに乗せられたようなものだけど……困っている者を助けるというのも案外悪くないものね……貴方のお陰で新たな知見を得たわ。か、感謝しているんだからね……そ、そのお礼と言ってはなんだけど……や、やっぱり恥ずかしいわね」
「んえ? ああ! わたひにドーンとお任せ下さしゃい!」
すっかり酔いの回った俺は、アリンに気前よく返事をする。翌日……
「では……どうぞお気を付けて」
村長たちに見送られ、俺はゴブリンの村を後にする。気になるのは俺の三歩程後ろを歩くアリンの様子だ。俺は振り向いて彼女に問いかける。
「あ、あの……アリン? どうかしたのですか? もっと近づいても……」
「肩を並べて歩くだなんてとんでもない。後方はどうぞ私にお任せを……ダーリン♡」
そう言って、アリンはポッと顔を赤らめる。ダ、ダーリン?ひょっとしてまたまたまたまたまたなんかあったパターンか、残念ながら全く記憶に無い。俺は天を仰ぎつつ歩く。
俺は生やした大樹をやや乱暴に倒して、俺たちを収容していた牢屋を壊して外に出る。
「さて、まずはどうする?」
アリンの問いに俺は答える。
「まずは非戦闘員を安全な場所まで退避させつつ、私の剣と盾を回収します」
「暗がりと土煙でよく分からないけど、モンスターは村の南部で暴れているようね。北部にいる私たちとはちょうど真反対ね」
「隙を突いて逃げないで下さいね!」
俺はアリンに釘を刺す。アリンはややムッとして答える。
「今更逃げないわよ」
「結構なことです」
「面倒だからここから魔法をぶっ放してもいい?」
「それは却下です」
「なんでよ」
「被害が広範囲に及びます。村の外に誘導して倒すのが望ましいです」
アリンは不満気な様子で呟く。
「そう上手く行くかしらね? だって……」
「え? なんです?」
「なんでもない! 早く剣と盾を回収して!」
俺は周囲を見回して、この村で一番大きいと思われる建物に駆け込む。
「む! お、お前、いつの間に牢屋を⁉」
俺を捕えたゴブリンの一人が驚いた視線を向けてくる。俺は構わず問う。
「私の剣と盾を返して貰います!」
「そ、そんなこと……!」
「この村の危機なのですよ! 私に任せて下さい!」
「……貴方ならば救えると?」
腰の曲がった老いたゴブリンが尋ねてくる。恐らくこの村の村長であろう。
「当然です! 勇者ですから!」
「……持ち物を返してやれ」
「い、いいんですか⁉ 村長!」
「いいから急げ!」
「は、はい!」
村長からの指示を受けたゴブリンが走っていく。村長は俺に話す。
「申し訳ない……村の平和を守るため、過敏過ぎる反応を取ってしまいました……」
「それが最善だと判断したのなら、こちらが言うことは何もありません」
俺は気にするなという風に答える。
「も、持ってきました!」
ゴブリンから剣と盾を受け取った俺はその場にいた全員に告げる。
「直ちに避難を! モンスターは私が倒します!」
「頼みます……!」
村長の懇願を背に受けた俺は建物を出て、村の南部に走る。すぐさま俺は現場にたどり着く。激しく舞う土埃も晴れて、モンスターの姿を確認することが出来た。
「これは⁉ 鳥か⁉」
俺の目に映ったのは、大きなくちばしに一匹のゴブリンを咥えている巨大な鳥の姿であった。周囲を取り囲むゴブリンたちが小柄だということを差し引いても、かなりの大きさである。俺が到着したことに気付いたアリンが背中越しに話す。
「魔鳥エビルホークよ!」
「あ、あのゴブリンを助けないと!」
「迂闊に近づいたら危険よ!」
俺はアリンの忠告を無視し、突っ込む。そこに鋭い足の爪が襲い掛かってきた。
「うおっ⁉」
俺はなんとか横に転がって躱した。巨体に似合わず素早い。確かにこれでは容易に近づくことは出来ない。アリンが俺を諭すように叫ぶ。
「距離をとって攻撃しないと!」
「では、貴女の魔法をお願い出来ませんか⁉ 糸か何か使えるでしょう⁉」
「生憎、魔力切れが近いわ! 糸は使えない!」
「ええっ⁉」
俺は驚いて振り返る。アリンが忌々し気に呟く。
「断片的にだけど思い出したわ。私、貴方の仲間のエルフに雷魔法を喰らったでしょ?」
「え、ええ……」
「あの魔法は『裁きの雷』と言って相手にダメージを負わせるだけに留まらず、その相手の持つ魔力を一定期間、制限することが出来る高等魔法よ……」
「そ、そんな……」
スティラの奴、またとんでもない魔法を初見でマスターしたな……。などと感心している場合ではない。アリンに必要以上に頼ることが出来ないということはこの場は俺がなんとかせねばなるまい。俺は一旦周囲を見回す。ゴブリンたちが長い槍を構えている。戦いに慣れていない種族というのはどうやら本当で皆どことなく構えがぎこちない。震えが止まらない者もいる。魔鳥と呼ばれるような大きな鳥と相対すれば無理もないことではあるのだが。俺はゴブリンたちに声を掛ける。
「皆さん! 槍をあの鳥に向かって投げつけて下さい!」
「「「⁉」」」
「早く!」
俺の迫力に圧されたのか、ゴブリンたちは持っていた槍を魔鳥に向かって投げつける。皆ほとんどへっぴり腰で投げているので、当然当たるはずもなく、槍が飛ぶ方向も目茶苦茶だ。ただ、気を引いてくれればそれで十分であった。俺は魔鳥の隙を突いてその懐に潜り込むことに成功する。
「『登木(のぼりぎ)』!」
俺は木を地面に生やし、その幹を勢いよく駆け上がって、魔鳥の喉に斬り付ける。喉は太く硬い為、切り裂くことは出来なかったが、魔鳥はくちばしを広げ、くわえていたゴブリンを落とす。標的を俺に切り替えた魔鳥はくちばしを俺に向けて広げてくる。
「『縛蔦(ばくった)』!」
俺は蔦を生やして、魔鳥の大きなくちばしを縛る。予想外のことに混乱した魔鳥は体勢を立て直そうとしたのか飛び立とうとした為、俺は再び『縛蔦』と唱え、魔鳥の左の翼と左足を縛る。それでも、魔鳥は飛び立ったが、不安定な体勢だった為、満足な高度を取れない。俺はアリンに声を掛ける。
「アリン! 頼みます!」
「『地獄の業火』!」
アリンの両手から凄まじい勢いの炎が放たれ、魔鳥は一瞬で焼き尽くされ、地上に落下する。ゴブリンたちが歓声を上げる。木から降りた俺はアリンとともに、ゴブリンたちの称賛と感謝を受ける。俺たちは村長のもとに強引に連れていかれ、改めて丁寧な謝辞を受ける。すぐにでも出発したいところであったが、どうやら現在島の周りの海は荒れており、船などを出すのは危険だという。一晩待てば、海も落ち着くだろうということで、俺たちは引き留められ、そのままなし崩し的に宴に参加することになった。俺とアリンはゴブリンたちに薦められるまま酒を大いに飲んだ。俺の隣でアリンがぶつぶつ呟く。
「勢いに乗せられたようなものだけど……困っている者を助けるというのも案外悪くないものね……貴方のお陰で新たな知見を得たわ。か、感謝しているんだからね……そ、そのお礼と言ってはなんだけど……や、やっぱり恥ずかしいわね」
「んえ? ああ! わたひにドーンとお任せ下さしゃい!」
すっかり酔いの回った俺は、アリンに気前よく返事をする。翌日……
「では……どうぞお気を付けて」
村長たちに見送られ、俺はゴブリンの村を後にする。気になるのは俺の三歩程後ろを歩くアリンの様子だ。俺は振り向いて彼女に問いかける。
「あ、あの……アリン? どうかしたのですか? もっと近づいても……」
「肩を並べて歩くだなんてとんでもない。後方はどうぞ私にお任せを……ダーリン♡」
そう言って、アリンはポッと顔を赤らめる。ダ、ダーリン?ひょっとしてまたまたまたまたまたなんかあったパターンか、残念ながら全く記憶に無い。俺は天を仰ぎつつ歩く。
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