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第一章

第11話(4) ファイブリスペクト

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「くっ……」

 白が苦々しい顔を浮かべる。平成が声を上げる。

「白い影は一掃した! 降参した方が身の為だぞ!」

「若輩者が生意気な!」

 宙に浮いていた白が地上に降り立つと気勢を上げる。強風が吹き荒れ、平成は面食らう。

「す、凄いプレッシャーだ!」

「こうなったら私自ら、貴様らを白く塗り潰してやる!」

「なんの望むところだ! 頼むぞ源平くん!」

「え?」

「なんだって?」

 源平は再び源と平に分かれている。平成は驚く。

「え? どういうこと⁉」

「こちらが聞きたい!」

「気が付いたらこうなっていたぞ」

「そ、そんな……長時間は持たないのか? し、知らんかった……」

「知らなかったのか!」

「未知なる術を我らで試すな!」

 唖然とする平成に対し、平と源が怒る。平成はなだめる。

「まあまあ……それでは気を取り直してお二方、あの白とやらを止めてくれ!」

「そうしたいのは山々だが……」

「へ?」

「今の融合で大分消耗したようだ、しばらくはまともに動けそうにない……」

「ええっ⁉」

「まずは生意気な口を利く貴様からだ!」

「お、俺狙い⁉」

 白が猛然と平成に迫る。

「うおおっ!」

「ちっ!」

 白が鉄剣のようなものを振りかざし、斬り掛かるが、平成はすんでのところでかわす。

「おのれ!」

「す、鋭い出足……」

「逃がさんぞ!」

「ぐっ! うおっ⁉」

 なんとか攻撃をかわしたと思われた平成だったが、服の一部が切られてしまう。

「『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』の威力を味わうがいい……」

「な、なんて切れ味だよ……」

 平成は体勢を立て直しながら呟く。。

「ヤマトタケルノミコトが用いたとされる剣か」

「『記紀』……『古事記』や『日本書紀』にも記述があるな」

「そ、それって……もはや『神話』の域じゃないか⁉ 反則に近くない⁉」

 平と源の呟きに平成が反応する。

「ヤマトタケルノミコトは3世紀末から4世紀にかけて活躍したとされる……」

「彼が用いても不思議はないということだね……」

 白鳳と飛鳥が冷静に分析する。

「そ、そんな……『三種の神器』を持ち出されたら……」

「隙有り!」

「くっ、こうなったら! 『チョナンカン』!」

 平成は一人の男性を召喚する。男性が挨拶する。

「アンニョンハセヨ♪」

「!」

「そっちが草薙剣ならこっちは『草彅くん』で勝負だ!」

「むう……」

 白がたじろぐ。旧石器が驚く。

「なんだ⁉ あの男は挨拶をしただけのようだが、効果があるようだぞ」

「恐らくだけど、399年と404年に朝鮮半島北部の『高句麗(こうくり)』の『好太王(こうたいおう)』に撃退されたのが一種のトラウマのようなものになっているのかもしれないね……」

「分からなくもないです……」

 飛鳥が呟く横で白鳳がややうなだれる。

「よし、たたみかけるぞ! 『香取くん』!」

「おっはー♪」

「……」

 白は沈黙する。

「あまり効果がない⁉ 『おはスタ』派か⁉ ならば『稲垣くん』!」

「サンキュー♪」

「! 足元がふらつく⁉」

「彼は大のワイン好き! アルコールを摂取した気分になっただろう!」

「くっ!」

 白が距離を取ろうとする。

「逃がすか! 『木村くん』!」

「ちょ待てよ!」

「ぐっ! な、なんだ⁉ 体が思うように動かん⁉」

「流石は平成の視聴率男! 効果は抜群だ!」

「こ、小癪な真似を!」

「とどめは『中居くん』!」

「エンダ~!」

「ぐおおっ⁉」

 白が両耳を抑えてうずくまる。

「やはりあのアイドルの枠に留まらない歌唱力は時代を超越する! これも効果抜群だ!」

 平成が手応えを得る。しかし、白は立ち上がろうとする。

「ぐ……」

「追い討ちが必要か! ならば喰らえ! 『青いイナズマ』!」

「うおおっ⁉」

 青い稲妻が落ち、白が倒れる。平成が肩で息をする。召喚した5人が消える。

「はあ……はあ……やっぱり5人立て続けに召喚はキツいな……しかし久々に5人が揃った姿を見られたのは良かったんじゃないかな?」

 平成は笑みを浮かべる。旧石器が叫ぶ。

「平成! 油断するのはまだ早いぞ!」

「!」

「な、なかなかやるようだが……貴様のような若い時代に屈するわけにはいかん……」

 白がゆっくりと立ち上がる。平成が舌打ちする。

「ちっ、まだ立つのかよ⁉」

「貴様らを白く塗り潰すまでは終われん!」

 白が剣を振るが平成の反応が遅れる。

「しまった! ……⁉」

「ようやったで平成、ここからはわの出番や!」

 古墳が七支刀で白の剣を受け止める。

「古墳さん!」

「こいつとは兄弟のようなもんや、決着はわがつける!」

「ふん!」

「うおっと⁉」

 白の剣に圧され、古墳が体勢を少し崩す。

「勝手に兄弟面をするな! 少しばかり記録が残っているくらいで良い気になりおって!」

「そ、そんなつもりはないんやけどな……」

「やはり貴様から白く塗ってやる!」

「! 平和的な話し合いは無理そうやな!」

 古墳が刀を構え、白を迎えうつ。平成が声を上げる。

「古墳さん! 危ない!」

「心配無用! 『讃・珍・斉・興・武』!」

「そ、それはただの雰囲気重視の掛け声では⁉」

「ところがそうでもないんやな! 『武』!」

「ぐぬっ⁉」

 古墳の刀が白の剣を押し返す。平成が驚く。

「お、押し返した⁉ なんて力だ⁉」

「武こと『雄略天皇(ゆうりゃくてんのう)』のお力を借りた! 考古学上で実在が確認される日本最初の天皇やからな! 地力が違う!」

「そ、そういうものなんですか?」

「興こと『安康天皇(あんこうてんのう)』は……お休み頂く!」

「ええっ⁉ なんで⁉ せっかくだからお力をお貸し頂いた方が……」

「諸々の事情や! お次は斉こと『允恭天皇(いんぎょうてんのう)』! これや!」

「ぬおっ! あ、熱い⁉」

 白の手にどこからか湧いた熱湯がかかる。

「允恭帝は氏姓制度の改革に乗り出し、その際に『盟神探湯(くがたち)』を行ったという! 正しい者は火傷せず、邪な者は火傷する!」

「わ、私を邪だというか!」

「顔に漆喰塗ってくるような奴は正ではないやろ! 次は珍こと『反正天皇(はんぜいてんのう)』! 『仁徳天皇(にんとくてんのう)』だとする説もあるそうやけど、ここは反正帝のお力をお貸し頂く!」

「! ま、眩しい……」

 古墳の顔が光り、白は思わず顔を覆う。

「反正帝は綺麗な歯並びだったそうや!」

「お力を借りるってそういうことなのかな?」

 平成が首を傾げる。古墳が叫ぶ。

「最後は讃こと『応神天皇(おうじんてんのう)』、『仁徳天皇』、『履中天皇(りちゅうてんのう)』! どなたか特定されてへんから御三方の力をお借りする! 古墳の大きさトップ3の御三方の圧倒的なパワーを喰らえ!」

「ぬおおっ⁉ お、おのれ! ここは退く!」

 古墳の強力な攻撃に圧された白はその場から姿を消す。
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