令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第3話(2) 縄文DOKI

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「ここが私たちのムラよ」

「すごく……大きい集落ですね」

「道路もきちんと整備されているな」

 縄文に続いて集落に入った令和と平成が感心する。縄文が笑う。

「それはもちろん、数百人が住む集落だからね」

「数百人⁉ 青森県の三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)に匹敵しますね……」

 令和が驚く。平成が尋ねる。

「あれはなんですか?」

 平成が指差した先には六本の柱によって立つ三階建ての建物がある。

「あれは神殿だったか、物見やぐらだったか……」

「わ、分からないんですか?」

「まあ、その辺はご想像にお任せするわ♪」

「いや、想像に任せるって……」

 縄文の答えに平成は困惑する。

「それより、あの建物は面白いのよ。六つある柱の穴の直径と深さがそれぞれ2m、そして4.2mの間隔で掘られているの」

「! ということは測量の知識が既にあったということになりますね……」

「そういうことね。そして、それを建てるしっかりとした技術力があるのよ」

 驚く令和に対し、縄文が胸を張る。平成が声を上げる。

「なんの! こっちだって『六本木ヒルズ』がありますよ!」

「無駄に張り合わないで下さいよ……六本って聞いて思い付いただけでしょう……」

 平成の虚しい自慢に令和が冷ややかに突っ込む。平成は話題を変える。

「あ、あれはなんですか?」

 平成が再び指差した先には大きな長方形型の建物がある。縄文が答える。

「あれは『大型住居』ね」

「そ、そのままのネーミングですね」

 平成が再度困惑する。令和が尋ねる。

「皆さんがあそこにお住まいになっているのですか?」

「う~ん……単に集会所だったか、宿泊施設だったか、作業所だったか……」

「わ、分からないのですか?」

「その辺もご想像にお任せするわ♪」

「ええ……」

 縄文の回答に令和は戸惑う。

「……ライブハウスじゃないか?」

「なんでピンポイントでライブ限定なんですか……」

 平成の呟きに令和が呆れる。縄文が先を指し示す。

「他にも色々と案内したいけど……まずは私のうちに行きましょうか」

 縄文が円形の建物に令和たちを連れていく。

「ここは……」

「『竪穴住居(たてあなじゅうきょ)』よ」

「縄文さんのうちなんですね?」

「そうよ、自慢のマイホーム。それじゃあ中にどうぞ」

 縄文が令和たちを建物の中に招く。

「お、お邪魔します……」

「うわ~! 俺、女の方の竪穴住居入ったの初めてっすよ!」

「ざ、斬新な感想ね……」

 謎に興奮気味な平成に縄文は戸惑う。令和が周囲を見渡して呟く。

「その名の通り、竪に穴を掘って、その底に床を作り、柱を立てて、屋根は樹皮を敷いて土を被せているのですね……」

「冷静な分析ね、令和ちゃん。そうよ、そういうリアクションが欲しかったの。屋根に関しては茅葺きや草葺きのものもあるけどね」

 令和の反応に縄文は満足気に頷く。平成も建物の中を見回す。

「あ、囲炉裏がありますね」

「やっぱり火は欠かせないでしょう? 食べ物の煮炊きや、暖房、照明としてもね」

「なるほど……」

「少し聞きづらいのですが……」

 令和が遠慮がちに口を開く。縄文が促す。

「どうぞ」

「過ごしやすさについてはどうなのでしょうか?」

「これが意外と快適なのよ、夏は涼しく、冬は暖かいの」

「そうなのですか……その辺りの温度調節についてもしっかり考えていたのですね」

 令和は頷く。平成が尋ねる。

「さすがにさっきの大型住居ほどじゃないですけど、ここも他の竪穴住居に比べると、ちょっと大きいですよね?」

「そうね、ここは女性と子どもが5~6人で住むところだから」

「え? 家族で住まないんですか?」

「男性は隣の住居で2~3人で暮らすの。さらに一回り小さい小屋には若者が2~3人で生活しているわ。大体10人で一つのグループって感じかしら」

「つ、つまり、ここは女性専用の竪穴住居ってわけですね……」

「平成さん、なんとなくですけどセクハラです」

 令和が冷たく鋭い視線を向ける。平成は慌てて話題を変える。

「あ! えっと……これはあれですね! 『縄文土器(じょうもんどき)』!」

 平成が床に置いてあった土器を手に取る。令和もそれに目をやる。

「縄で文様がつけられていますね」

「世界でも最古の部類に入る土器よ」

 縄文は再び胸を張る。

「うちの親父もよく体に縄目つけていましたよ!」

「うん、その情報は聞きたくなかったわ」

 平成の言葉に縄文は冷めた声で答える。令和が咳払いを一つ入れて問う。

「こほん……この文様の意味は……やはりおしゃれの表れですか?」

「いいえ、単に滑り止めよ、落として割らないようにね」

「そ、そうなのですか……」

「後、文様をつけることで表面積が大きくなって、熱効率が良くなるのよ」

「な、なるほど……煮炊きを行う上では重要ですね」

「他にも、ひび割れ防止の為とかね」

「あ、ああ、そうですか……」

 縄文の答えに令和は少し落胆する。縄文が笑う。

「まあ、時期を経ると、色々と凝った文様も出てくるからね……何らかの特別な意味合いを持たせたものや純粋におしゃれなデザインを追求したものもあるでしょうね……その辺りもご想像にお任せするわ♪」

「は、はあ……」

 令和に代わって平成が尋ねる。

「この住居、どれくらいの広さなんですかね?」

「え? う~ん、そうね……ざっと100LDKかしらね」

「「ええっ⁉」」

 縄文の答えに平成と令和は揃って驚く。

「いやいや、どうみても1ルームでしょう⁉」

「DK、ダイニングとキッチンはどこですか⁉」

「ええっ⁉ DKってそういう意味なの⁉」

「どういう意味だと思ったのですか⁉」

「DOKI(土器)のDKかと……」

「か、仮にそうだとしてLは⁉」

「エ、L字型土器……?」

「そ、それは何に使うのですか……?」

 縄文の予期せぬ言葉に令和は脱力したように呟く。
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