【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!

阿弥陀乃トンマージ

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第1集

第8話(3)なんでもする

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「あ……」

「今、『なんでもする』と言ったな?」

「ええ? 言いましたっけ?」

「いや、確かに言ったぞ。我の耳は誤魔化せん……」

「地獄耳というやつか」

「貴様は黙っていろ……」

 クラウディアさんがザビーネさんを睨む。

「ふん……」

「……気を取り直して、なんでもしてくれるのだな?」

「い、いや、それは……」

 私はわざとらしく目線を逸らす。

「まさか……」

「え?」

「嘘をついたのか?」

「う、嘘と言いますか、何と言いますか……」

「もしも嘘だと言うのならば……」

「ならば?」

「この建物のみならず、この辺一帯を灰燼に帰してやっても良いのだぞ?」

 クラウディアさんが右手の手のひらを上にする。手のひらから小さな火が出る。

「そんなことを自分が許すと思うか?」

「貴様の許可なぞ求めていない」

「求められてもそんなものは却下だ」

「止められるものならやってみろ……」

 クラウディアさんとザビーネさんが睨み合う。

「おおっ、これは激戦の予感っすね!」

「ア、アンジェラさん、だから無邪気に煽らないで……」

 ルーシーさんが慌てる。

「熱そうなのは人魚的にはちょっと嫌ね……」

「ヨ、ヨハンナさん、そんな呑気なことを言っている場合ではなくて……」

 ルーシーさんが呆れる。

「かぶりつきで見たい戦いですね。なにぶんスライムには縁遠い世界ですので……」

「マ、マルガリータさんもちょっと冷静に……」

 ルーシーさんが頭を抑える。

「オッズはどうなるのかしら? 賭けたら盛り上がるわよ~」

「へ、ヘレンさん……そういう欲求もあるのですか?」

 ルーシーさんがため息をつく。

「あ~! 皆さん、落ち着いて下さい!」

 私は声を上げる。皆さんの注目が私に集まる。

「……」

「なんでもします! ただし!」

「ただし?」

 クラウディアさんが首を傾げる。

「皆さんの執筆する小説がヒットを飛ばしたらの話です!」

「「「「「「「⁉」」」」」」」

 ルーシーさんがおずおずと尋ねてくる。

「み、皆さんというのはワタシたちも対象に含まれるのですか?」

「え? えっと……」

「モリさん、これは大事なことですので」

「ああ、まあ、はい、そうなります」

「そうですか……」

 ルーシーさんが深々と頷く。

「ふ~ん、面白そうじゃないっすか……男に二言はないっすね?」

「え、ええ……」

 私はアンジェラさんに応える。どういう問いかけだ?

「……う~ん、食べちゃおうかな」

「はい?」

 マルガリータさん、聞き捨てならないことを呟いたような……。

「人間、しかも異世界の方……それならお許しが出るかも……」

「え、えっと……?」

 ヨハンナさんが顎に手を当てて呟く。お許しって何の話だろうか?

「ふふん、異世界の殿方……興味深いわね。あんなことやこんなこと……」

「ちょ、ちょっと……」

 ヘレンさんが艶めかしい視線を向けてくる。確実によからぬことを考えている。

「な、なんでも……」

「あ、あの……?」

 ザビーネさんが顔を真っ赤にされている。何を考えているのだろうか>

「ふん、なかなか愉快なことになってきたな」

「は、ははっ……」

 クラウディアさんの言葉に私は苦笑する。私は今一度皆さんを見回す。

「………」

 な、なんだろう皆さんの眼の色が変わったような……気のせいだろうか。

「……ということはだ」

「はい?」

 クラウディアさんに私は視線を戻す。

「ヒット作を出すために入念に打ち合わせをしないとならんな」

「そ、そうですね……」

「では、早速我と打ち合わせをするぞ」

「え? えっと……」

「他の者は席を外してもらおうか」

「ちょっと待て、勝手に決めるな」

 赤面状態からキリっとしたお顔に戻ったザビーネさんがクラウディアさんを制止する。

「なにかと言えば突っかかってくるな……」

「この場合、極めて正当な抗議だ。他の皆はどうする?」

「我の打ち合わせが終わるまで待て」

「いつまでだ?」

「さあな? 暗くなるまでかな」

「なんだと?」 

「我も色々と忙しい。今日以外はなかなか予定がとれんのでな、出来るだけたっぷりと打ち合わせをしたいのだ」

「それは皆一緒だ。そうであろう?」

 ザビーネさんが皆を見回す。皆は揃って頷く。クラウディアさんが面倒そうに問う。

「では、どうするのだ?」

「順番を決めよう」

「どうやって? 戦ってか? まあ、それも構わんが……」

「それではフェアではない。くじを引いて……」

「くじは誰が作るのだ? それこそフェアではない」

「モリ殿に作ってもらえば良い」

「む……」

「異論はないな?」

「いや……ちょっと待て」

「なんだ?」

「一組の打ち合わせがどれくらいで終わるか分からんだろう?」

「半刻ほどに区切れば良いではないか」

「はっ、たったそれほどで満足のいく打ち合わせが出来るものか……浅はかだな」

「なにを……」

 ザビーネさんとクラウディアさんが再び睨み合う。

「あ、あの……皆さん合同で打ち合わせをするというのはいかがでしょうか?」

 ルーシーさん、何を言い出すんだ。
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