20 / 50
第1集
第5話(3)文字がエロい
しおりを挟む
私は説明する。
「なんというか、文章からにじみ出てきています。エロさが」
「そ、そんなに?」
「ええ、それはもうとめどなく」
「とめどなく⁉」
「ドバドバと」
「ドバドバと⁉」
「これでは……」
「これでは?」
「ちょっと我が社からは出版は出来かねますね」
「び、美少年同士がくんずほぐれつするイラスト集を出していなかったかしら?」
「あれはあくまでも格闘技の技を掛け合っているだけですから」
「あ、あくまでもって……」
「特にそういう意味合いはありません」
「ふ、ふ~ん……」
「ただ、こちらは……」
私はヘレンさんの原稿を指差す。
「こちらは?」
「もう、そういうレベルを超越しています」
「超越している⁉」
「文字が妖艶な形をしています」
「いや、どんな形よ、それ!」
「上手く言えないのですが……」
「普通に文字を書いただけよ!」
「それでも……雰囲気がこう……」
私は両手をもみもみとさせる。
「その手つきは何よ⁉」
「い、いや、すみません……」
私は慌てて手を引っ込める。ヘレンさんは黙る。
「……」
「なんと言えば良いでしょうか……」
「……じゃない」
「え?」
「だってしょうがないじゃない! どうしても醸し出してしまうのよ! 自分の秘めるエロティックさを!」
ヘレンさんが机に突っ伏す。
「ヘ、ヘレンさん……」
「アタシだってエロいのは書きたくないわよ! でも、そういう体質なんだからしょうがないじゃないの!」
「それって体質なんですか?」
「知らないけど!」
「す、すみません……」
「でもアタシは本を書いてみたいのよ! 登場人物同士の心の交流とか、心の機微とか!」
「は、はあ……」
「ダメなの⁉」
ヘレンさんが顔を上げて尋ねてくる。私は腕を組む。
「……」
「どうなの⁉」
「う~ん……」
「う~んじゃなくて!」
「む~ん……」
「いや、そういうことじゃないのよ!」
「悩ましいですね……」
「悩ましいって⁉」
ヘレンさんが体勢を直す。胸がプルンと揺れるのが目に入る。色んな意味で悩ましい……ということは黙っておく。
「……少し落ち着いて下さい」
「ああ……」
「内容に関してですが……」
「ええ……」
「特に問題はありません」
「そうなの?」
「ええ、もちろん、ある程度のブラッシュアップは必要になってくるかとは思いますが……」
「そう……」
「ただ、なんというか……」
「なんというか?」
「繰り返しになってしまいますが……」
「うん?」
「……エロいんですよね」
「だから何よそれ⁉」
「いやらしい感じなんです」
「言い直さなくても良いから!」
「雰囲気がどうしても……」
「じゃあ、お堅い文章にすれば良いの⁉」
「いや、全体的にポップな文体が印象的なので、それを捨てるのは惜しいです……ん?」
その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またまたこの感覚だ。
「? どうすれば良いの?」
「……内容の見直しでしょうか?」
「内容?」
「はい」
「ストーリーを少し変えるとか?」
「そうですね……」
「ハッピーエンドをビターエンドにしてみる?」
「いえ、それではまだ十分ではありませんね……」
「え?」
「キャラクターを変えてみますか」
「ええ?」
「登場人物を減らしましょうか」
「いや、そんなに多くないでしょう?」
「そこをなんとか」
「じゃ、じゃあ、友人キャラを一人減らす?」
「う~む……」
私は首を傾げる。
「ええ、まさか、もっと減らせって? サブキャラと言えど、これ以上は削れないわよ」
「……メインキャラを削りましょうか」
「はっ⁉ 主役の男女を⁉」
「そうです」
「男女の恋模様が主軸のお話なのよ⁉」
「それがエロに繋がっているのかもしれません。男か女、どちらかに絞りましょう」
「絞るって……それじゃあ話が別のものになっちゃうじゃない!」
「やむを得ません!」
「やむを得るわよ!」
「そこをどうにか」
「……じゃあ、女一人を主人公にするわ。それで良いでしょう?」
「……それではまだ不十分ですね」
「はい?」
「いっそのことジャンルごと変えちゃいましょうか」
「はっ⁉」
「なんというか、文章からにじみ出てきています。エロさが」
「そ、そんなに?」
「ええ、それはもうとめどなく」
「とめどなく⁉」
「ドバドバと」
「ドバドバと⁉」
「これでは……」
「これでは?」
「ちょっと我が社からは出版は出来かねますね」
「び、美少年同士がくんずほぐれつするイラスト集を出していなかったかしら?」
「あれはあくまでも格闘技の技を掛け合っているだけですから」
「あ、あくまでもって……」
「特にそういう意味合いはありません」
「ふ、ふ~ん……」
「ただ、こちらは……」
私はヘレンさんの原稿を指差す。
「こちらは?」
「もう、そういうレベルを超越しています」
「超越している⁉」
「文字が妖艶な形をしています」
「いや、どんな形よ、それ!」
「上手く言えないのですが……」
「普通に文字を書いただけよ!」
「それでも……雰囲気がこう……」
私は両手をもみもみとさせる。
「その手つきは何よ⁉」
「い、いや、すみません……」
私は慌てて手を引っ込める。ヘレンさんは黙る。
「……」
「なんと言えば良いでしょうか……」
「……じゃない」
「え?」
「だってしょうがないじゃない! どうしても醸し出してしまうのよ! 自分の秘めるエロティックさを!」
ヘレンさんが机に突っ伏す。
「ヘ、ヘレンさん……」
「アタシだってエロいのは書きたくないわよ! でも、そういう体質なんだからしょうがないじゃないの!」
「それって体質なんですか?」
「知らないけど!」
「す、すみません……」
「でもアタシは本を書いてみたいのよ! 登場人物同士の心の交流とか、心の機微とか!」
「は、はあ……」
「ダメなの⁉」
ヘレンさんが顔を上げて尋ねてくる。私は腕を組む。
「……」
「どうなの⁉」
「う~ん……」
「う~んじゃなくて!」
「む~ん……」
「いや、そういうことじゃないのよ!」
「悩ましいですね……」
「悩ましいって⁉」
ヘレンさんが体勢を直す。胸がプルンと揺れるのが目に入る。色んな意味で悩ましい……ということは黙っておく。
「……少し落ち着いて下さい」
「ああ……」
「内容に関してですが……」
「ええ……」
「特に問題はありません」
「そうなの?」
「ええ、もちろん、ある程度のブラッシュアップは必要になってくるかとは思いますが……」
「そう……」
「ただ、なんというか……」
「なんというか?」
「繰り返しになってしまいますが……」
「うん?」
「……エロいんですよね」
「だから何よそれ⁉」
「いやらしい感じなんです」
「言い直さなくても良いから!」
「雰囲気がどうしても……」
「じゃあ、お堅い文章にすれば良いの⁉」
「いや、全体的にポップな文体が印象的なので、それを捨てるのは惜しいです……ん?」
その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またまたこの感覚だ。
「? どうすれば良いの?」
「……内容の見直しでしょうか?」
「内容?」
「はい」
「ストーリーを少し変えるとか?」
「そうですね……」
「ハッピーエンドをビターエンドにしてみる?」
「いえ、それではまだ十分ではありませんね……」
「え?」
「キャラクターを変えてみますか」
「ええ?」
「登場人物を減らしましょうか」
「いや、そんなに多くないでしょう?」
「そこをなんとか」
「じゃ、じゃあ、友人キャラを一人減らす?」
「う~む……」
私は首を傾げる。
「ええ、まさか、もっと減らせって? サブキャラと言えど、これ以上は削れないわよ」
「……メインキャラを削りましょうか」
「はっ⁉ 主役の男女を⁉」
「そうです」
「男女の恋模様が主軸のお話なのよ⁉」
「それがエロに繋がっているのかもしれません。男か女、どちらかに絞りましょう」
「絞るって……それじゃあ話が別のものになっちゃうじゃない!」
「やむを得ません!」
「やむを得るわよ!」
「そこをどうにか」
「……じゃあ、女一人を主人公にするわ。それで良いでしょう?」
「……それではまだ不十分ですね」
「はい?」
「いっそのことジャンルごと変えちゃいましょうか」
「はっ⁉」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた
山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。
ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。
だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。
そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。
……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。
そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。
俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。
最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。
そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。
俺は女主人公を影で助ける。
そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】
早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
ライカ
こま
ファンタジー
昔懐かしいRPGをノベライズしたような物語。世界がやばいとなったら動かずにいられない主人公がいるものです。
こんな時には再び降臨して世界を救うとの伝承の天使が一向に現れない!世界を救うなんて力はないけど、何もせずに救いを祈るあんて性に合わないから天使を探すことしました!
困っているひとがいれば助けちゃうのに、他者との間に壁があるライカ。彼女の矛盾も原動力も、世界を襲う災禍に迫るほどに解き明かされていきます。
ゲーム一本遊んだ気になってくれたら本望です!
書いた順でいうと一番古い作品です。拙い面もあるでしょうが生温かく見守ってください。
また、挿話として本編を書いた当時には無かった追加エピソードをだいたい時系列に沿って入れています。挿話は飛ばしても本編に影響はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる