【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
上 下
12 / 50
第1集

第3話(3)セクシーダイナマイト

しおりを挟む
「か、硬いですか……」

「はい、内容はこの世界で数百年前にあった戦国時代を題材にしていますね」

「ええ、そうです」

「その時期に活躍したが、あまりスポットの当たらなかった方を主役に据えている……」

「マ、マイナー過ぎるかなと思ったのですが、ボクはその方のことが好きなので……」

「先ほども申し上げましたが……」

「はい」

「読み応えはありました。マイナーな主人公ということを忘れるくらい」

「あ、そ、そうですか……」

「ですが」

 私は右手を掲げる。

「は、はい……」

「これは読者層がかなり限られます……」

「え……?」

「いわゆる『時代』ものというだけで、ほとんどの読者が敬遠します。書店でもあらすじだけさっと目を通して、棚に戻してしまうでしょう」

「!」

 マルさんが目を丸くする。

「せめてもう少しエンターテインメント性があればと思うのですが……」

「エンターテインメント性……」

「繰り返しになりますが、ここまで硬派な内容ですと……」

「はあ……」

「これは例えばの話なのですが……」

 私は右手を挙げる。

「はい」

「オリジナルのキャラクターを出すことは出来ませんか?」

「オ、オリジナルですか?」

「ええ、狂言回し的なキャラクターというか……」

「う、う~ん……」

「あるいは」

「あるいは?」

「読者の目線に立ったキャラクターを主役に据えるとか」

「ど、読者目線のキャラですか?」

「ええ、それで大分分かりやすくなるかと思いますが」

「う~ん……」

 マルさんは腕を組んで考え込む。

「……もしくは」

「も、もしくは?」

「物語を彩るキャラが欲しいですね」

「い、彩るキャラ?」

「ええ、そうです」

「た、例えば?」

「そうですね……謎の女とか」

「な、謎の女⁉」

「はい、謎の女」

 私は頷く。

「そ、それはどんな謎を持っているんですか?」

「……さあ?」

「さ、さあって⁉」

 私の言葉にマルさんが戸惑う。

「そういうミステリアスなところが読者の興味を惹きつけるのです」

「ふ、ふむ……」

「さらに……」

「さらに?」

「セクシーであれば言うことはありません」

「セ、セクシー⁉」

「はい、セクシーダイナマイトです」

「ダ、ダイナマイト⁉」

「そうです」

「セ、セクシーダイナマイトとは例えばどんな方でしょうか?」

「う~ん、セクシーさがダイナマイトのように爆発しているのでしょうね」

「セクシーさが爆発している……?」

 マルさんが首を傾げる。

「マルさんが思い浮かべているセクシーさがこの机の高さくらいだとします」

 私は腹部あたりの高さの机を軽く叩く。それを見てマルさんも頷く。

「は、はい、そのくらい……」

「ダイナマイトとは、この部屋の天井くらいです!」

 私は天井をビシっと指差す。マルさんが驚く。

「そ、そんなに⁉」

「当然です。セクシーダイナマイツなのですから」

「え? ダイナマイトですか? ダイナマイツですか?」

「それはどうでもよろしい」

「え、ええ……」

「とにかくそういったキャラを出せば、男性読者が食いつくでしょう」

「く、食いつきますか?」

「食いつきます」

「だ、断言されますね……」

「男なんてどこの世界でもそんなものです」

「モ、モリさんもそうなんですか?」

「……ノーコメントです」

「あ、逃げた……」

 私は話を変える。

「イケメンキャラも必要ですね」

「イ、イケメンですか?」

「はい、女性読者を獲得する為です」

「イケメンですか、難しいな……」

「イケメンが五人くらい欲しいですね」

「お、多すぎませんか⁉」

「一人ではサービスが悪いです」

「サ、サービス?」

「タイプの異なったイケメンを大量投入すれば、女性読者のハートを鷲摑みですよ」

「……」

「これらはあくまで一例ですが、そういう方向性で進めてもらって……」

「ボ、ボクはそういう話は書きたくありません!」

「‼」

「あ、す、すみません……ただ、ボクはこの世界の戦国時代が好きなんです。戦いはもちろんよくないものですけど、そこから見えてくるもの、学べるものがあるはずです。好きなものについてより深く知ってもらうというのはダメなんですか?」

 マルさんが私に尋ねてくる。やや間を空けてから私は答える。

「……好きばかりでは売り物になりません」

「⁉」

 マルさんが目を見開いてこちらを見る。

「皆さんどこかで妥協というか、折り合いをつけて作品作りに取り掛かっています」

「……自分の嫌いな題材でも書くということですか?」

「少し極端な話ですが、まあ、中にはそういう方もいらっしゃいますね、プロとして」

「それがプロだというなら、ボクには無理かも……」

「いやそう言わずにもう少し……ん?」

 その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またこれだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す 絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...