【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
上 下
9 / 50
第1集

第2話(4)獣人の疑問

しおりを挟む
「どうかしたっすか?」

「アンジェラさん……」

「はい?」

「貴女しか書けない話を紡ぐべきです!」

「ええっ⁉」

「貴女にしか出来ないことです!」

「オ、オレにしか出来ないこと……」

 アンジェラさんは首を傾げる。

「思い付きませんか?」

「いやあ、そう言われても……」

「先ほど、私がフェイクリルに散々追いかけまわされたという話をしたとき、貴女はこのようにおっしゃいました……」

「え?」

「……でも、あの狼も結構かわいいところあるんすけどね。よく分かっていないだけっすよ……とね」

「そ、それが何か?」

「貴女は獣人という御種族です」

「は、はい……」

 アンジェラさんは何を今更という表情になる。私は両手を広げる。

「つまり、人でもあり、獣でもあるということ……」

「は、はあ……」

「貴女は双方にとって良き理解者なのです」

「!」

「貴女ならではの立場を活かした小説が書けるかと思います」

「オレならではの立場を活かした……?」

「そうです」

「ま、まだ、よく分からないっす……」

「分かりませんか?」

「え、ええ……」

「例えばですが、人と……」

 私は右手を掲げる。

「はい」

「モンスター……」

 私は次に左手を掲げる。

「は、はい」

「これを……一つにする!」

「‼」

 私は掲げた両手を合わせる。アンジェラさんが驚く。

「……後は分かりますね」

「い、いや、分かんないっすよ! 人とモンスターが衝突したみたいじゃないっすか⁉」

「……『擬人化』です」

「え?」

「モンスターを擬人化するんで!す」

「え、ええ?」

「全員美少女です」

「び、美少女⁉」

「タイトルは……ずばり『モン娘(むすめ)。』!」

 私は紙にでかでかと書いたタイトルをアンジェラさんに見せます。

「モ、モン娘……」

「そうです」

「……色々と気になることがあるんすけど……」

「なんでしょう」

「この『゜』はいるんですか?」

「いります」

「いるんですか⁉」

「むしろ一番重要です」

「い、一番重要⁉」

「全員女じゃないと駄目なんすか?」

「男が混ざるとどっちつかずになってしまう恐れがあります。ここは美少女好きにターゲットを絞るべきです」

「そ、そうっすか……」

「ご理解頂けましたか?」

「あの……一番気になるのが……」

「はい?」

「これ、オレっすよね……?」

 アンジェラさんが自分の姿を指し示す。私は頭を抑えながら声を上げる。

「……あ~」

「い、いや、あ~じゃなくて! これは別に珍しくないんじゃないすか⁉」

「アンジェラさんカワイイから良いじゃないですか」

「カ、カワイイ⁉ い、いや、自分に近いような存在を書くのはどうしてもなんかこう……抵抗があるというか……!」

「ふむ……ではこうしましょう」

「ど、どうするんですか?」

「発想の転換です」

 私は広げた手のひらをひっくり返す。

「発想の転換⁉」

「人をモンスター化するのです」

「ええっ⁉」

「つまり『擬モン化』です!」

「ぎ、擬モン化……?」

「分かりますね?」

「い、いや、さっぱり分からないっす!」

 アンジェラさんが首をブンブンと左右に振る。

「凛々しい勇者は雄々しいドラゴンにするとか……」

「はい……」

「美しい女騎士は毛並みの艶やかなユニコーンにするとか……」

「はあ……」

「そういう感じでよろしくお願い出来ますか?」

「え、えっと、ちょっと待って下さいっす!」

「まだ擬モン化について疑問がありますか?」

「なにちょっと上手いこと言っているんすか! あるっす! 疑問!」

「なにか?」

「モンスター化して何をすれば良いんすか⁉」

「それこそあれですよ」

「あれ?」

「戦うのです!」

 私はビシっとアンジェラさんを指差す。

「戦う⁉」

「ええ」

「ど、どうやって……?」

「まあ、シンプルに戦闘でも良いと思いますが……」

「戦闘……」

「爽やかにレースでも良いかなと。誰が一番速いかを決めるレースを行うとか……」

「! ドラゴンやユニコーンの走るレース……上手くやればスポ根要素も盛り込めるかもしれないっすね……分かったっす、それでちょっと考えてみるっす」

「よろしくお願いします」

 私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかうまくいったようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す 絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】

赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。 某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。 全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。 自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ! 宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造! 異世界やり過ぎコメディー!

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう
ファンタジー
 町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。  結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。  そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!  これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...