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第1集
第2話(4)獣人の疑問
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「どうかしたっすか?」
「アンジェラさん……」
「はい?」
「貴女しか書けない話を紡ぐべきです!」
「ええっ⁉」
「貴女にしか出来ないことです!」
「オ、オレにしか出来ないこと……」
アンジェラさんは首を傾げる。
「思い付きませんか?」
「いやあ、そう言われても……」
「先ほど、私がフェイクリルに散々追いかけまわされたという話をしたとき、貴女はこのようにおっしゃいました……」
「え?」
「……でも、あの狼も結構かわいいところあるんすけどね。よく分かっていないだけっすよ……とね」
「そ、それが何か?」
「貴女は獣人という御種族です」
「は、はい……」
アンジェラさんは何を今更という表情になる。私は両手を広げる。
「つまり、人でもあり、獣でもあるということ……」
「は、はあ……」
「貴女は双方にとって良き理解者なのです」
「!」
「貴女ならではの立場を活かした小説が書けるかと思います」
「オレならではの立場を活かした……?」
「そうです」
「ま、まだ、よく分からないっす……」
「分かりませんか?」
「え、ええ……」
「例えばですが、人と……」
私は右手を掲げる。
「はい」
「モンスター……」
私は次に左手を掲げる。
「は、はい」
「これを……一つにする!」
「‼」
私は掲げた両手を合わせる。アンジェラさんが驚く。
「……後は分かりますね」
「い、いや、分かんないっすよ! 人とモンスターが衝突したみたいじゃないっすか⁉」
「……『擬人化』です」
「え?」
「モンスターを擬人化するんで!す」
「え、ええ?」
「全員美少女です」
「び、美少女⁉」
「タイトルは……ずばり『モン娘(むすめ)。』!」
私は紙にでかでかと書いたタイトルをアンジェラさんに見せます。
「モ、モン娘……」
「そうです」
「……色々と気になることがあるんすけど……」
「なんでしょう」
「この『゜』はいるんですか?」
「いります」
「いるんですか⁉」
「むしろ一番重要です」
「い、一番重要⁉」
「全員女じゃないと駄目なんすか?」
「男が混ざるとどっちつかずになってしまう恐れがあります。ここは美少女好きにターゲットを絞るべきです」
「そ、そうっすか……」
「ご理解頂けましたか?」
「あの……一番気になるのが……」
「はい?」
「これ、オレっすよね……?」
アンジェラさんが自分の姿を指し示す。私は頭を抑えながら声を上げる。
「……あ~」
「い、いや、あ~じゃなくて! これは別に珍しくないんじゃないすか⁉」
「アンジェラさんカワイイから良いじゃないですか」
「カ、カワイイ⁉ い、いや、自分に近いような存在を書くのはどうしてもなんかこう……抵抗があるというか……!」
「ふむ……ではこうしましょう」
「ど、どうするんですか?」
「発想の転換です」
私は広げた手のひらをひっくり返す。
「発想の転換⁉」
「人をモンスター化するのです」
「ええっ⁉」
「つまり『擬モン化』です!」
「ぎ、擬モン化……?」
「分かりますね?」
「い、いや、さっぱり分からないっす!」
アンジェラさんが首をブンブンと左右に振る。
「凛々しい勇者は雄々しいドラゴンにするとか……」
「はい……」
「美しい女騎士は毛並みの艶やかなユニコーンにするとか……」
「はあ……」
「そういう感じでよろしくお願い出来ますか?」
「え、えっと、ちょっと待って下さいっす!」
「まだ擬モン化について疑問がありますか?」
「なにちょっと上手いこと言っているんすか! あるっす! 疑問!」
「なにか?」
「モンスター化して何をすれば良いんすか⁉」
「それこそあれですよ」
「あれ?」
「戦うのです!」
私はビシっとアンジェラさんを指差す。
「戦う⁉」
「ええ」
「ど、どうやって……?」
「まあ、シンプルに戦闘でも良いと思いますが……」
「戦闘……」
「爽やかにレースでも良いかなと。誰が一番速いかを決めるレースを行うとか……」
「! ドラゴンやユニコーンの走るレース……上手くやればスポ根要素も盛り込めるかもしれないっすね……分かったっす、それでちょっと考えてみるっす」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかうまくいったようだ。
「アンジェラさん……」
「はい?」
「貴女しか書けない話を紡ぐべきです!」
「ええっ⁉」
「貴女にしか出来ないことです!」
「オ、オレにしか出来ないこと……」
アンジェラさんは首を傾げる。
「思い付きませんか?」
「いやあ、そう言われても……」
「先ほど、私がフェイクリルに散々追いかけまわされたという話をしたとき、貴女はこのようにおっしゃいました……」
「え?」
「……でも、あの狼も結構かわいいところあるんすけどね。よく分かっていないだけっすよ……とね」
「そ、それが何か?」
「貴女は獣人という御種族です」
「は、はい……」
アンジェラさんは何を今更という表情になる。私は両手を広げる。
「つまり、人でもあり、獣でもあるということ……」
「は、はあ……」
「貴女は双方にとって良き理解者なのです」
「!」
「貴女ならではの立場を活かした小説が書けるかと思います」
「オレならではの立場を活かした……?」
「そうです」
「ま、まだ、よく分からないっす……」
「分かりませんか?」
「え、ええ……」
「例えばですが、人と……」
私は右手を掲げる。
「はい」
「モンスター……」
私は次に左手を掲げる。
「は、はい」
「これを……一つにする!」
「‼」
私は掲げた両手を合わせる。アンジェラさんが驚く。
「……後は分かりますね」
「い、いや、分かんないっすよ! 人とモンスターが衝突したみたいじゃないっすか⁉」
「……『擬人化』です」
「え?」
「モンスターを擬人化するんで!す」
「え、ええ?」
「全員美少女です」
「び、美少女⁉」
「タイトルは……ずばり『モン娘(むすめ)。』!」
私は紙にでかでかと書いたタイトルをアンジェラさんに見せます。
「モ、モン娘……」
「そうです」
「……色々と気になることがあるんすけど……」
「なんでしょう」
「この『゜』はいるんですか?」
「いります」
「いるんですか⁉」
「むしろ一番重要です」
「い、一番重要⁉」
「全員女じゃないと駄目なんすか?」
「男が混ざるとどっちつかずになってしまう恐れがあります。ここは美少女好きにターゲットを絞るべきです」
「そ、そうっすか……」
「ご理解頂けましたか?」
「あの……一番気になるのが……」
「はい?」
「これ、オレっすよね……?」
アンジェラさんが自分の姿を指し示す。私は頭を抑えながら声を上げる。
「……あ~」
「い、いや、あ~じゃなくて! これは別に珍しくないんじゃないすか⁉」
「アンジェラさんカワイイから良いじゃないですか」
「カ、カワイイ⁉ い、いや、自分に近いような存在を書くのはどうしてもなんかこう……抵抗があるというか……!」
「ふむ……ではこうしましょう」
「ど、どうするんですか?」
「発想の転換です」
私は広げた手のひらをひっくり返す。
「発想の転換⁉」
「人をモンスター化するのです」
「ええっ⁉」
「つまり『擬モン化』です!」
「ぎ、擬モン化……?」
「分かりますね?」
「い、いや、さっぱり分からないっす!」
アンジェラさんが首をブンブンと左右に振る。
「凛々しい勇者は雄々しいドラゴンにするとか……」
「はい……」
「美しい女騎士は毛並みの艶やかなユニコーンにするとか……」
「はあ……」
「そういう感じでよろしくお願い出来ますか?」
「え、えっと、ちょっと待って下さいっす!」
「まだ擬モン化について疑問がありますか?」
「なにちょっと上手いこと言っているんすか! あるっす! 疑問!」
「なにか?」
「モンスター化して何をすれば良いんすか⁉」
「それこそあれですよ」
「あれ?」
「戦うのです!」
私はビシっとアンジェラさんを指差す。
「戦う⁉」
「ええ」
「ど、どうやって……?」
「まあ、シンプルに戦闘でも良いと思いますが……」
「戦闘……」
「爽やかにレースでも良いかなと。誰が一番速いかを決めるレースを行うとか……」
「! ドラゴンやユニコーンの走るレース……上手くやればスポ根要素も盛り込めるかもしれないっすね……分かったっす、それでちょっと考えてみるっす」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかうまくいったようだ。
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