【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
40 / 50
第一章

第10話(3)彼女が甲冑を着替えたら

しおりを挟む
「ヤヨイ、大丈夫でしょうか……」

 カンナは走りながら、心配そうに後ろを振り返る。

「奴なら大丈夫ですよ。熊でもそうそう倒せない」

「いや、象でもまず倒せんだろう……」

「ふ、二人とも、随分と好き勝手言っていますね……」

 シモツキとキサラギの言葉にカンナが戸惑う。

「それは冗談ですが……」

「じょ、冗談なのですか……」

「後を追いかけると言っていたではありませんか!」

「! 確かに……」

「それを信じましょう!」

「そうですね……」

 シモツキの言葉に対し、カンナが頷く。

「玉座の間に急ぎましょう!」

「そうはさせん……!」

「む!」

 走る三人の目の前に大剣が振り下ろされる。三人は散らばってそれをかわす。

「ふん、かわしたか……」

 綺麗な金髪をたなびかせ、甲冑に身を包んだ、碧眼の美女が大剣を肩に担ぎ直して、三人の前に立ちはだかる。カンナが驚く。

「ミ、ミナ⁉」

「ご機嫌麗しゅう、姫様……」

 ミナと呼ばれた女性は大剣を床に突き立てると、右手を左脇に添え、右足を左足の後ろにもっていき、左膝を少し折り曲げて、頭を軽く下げて一礼する。

「あ、貴女までも……」

 シモツキが声を上げる。

「き、貴様は元々、姫様のガードとして雇われたのではないか⁉」

「ああ」

「それが姫様に対し、刃を向けるというのか⁉」

「うむ」

「……あ、あっさりとしているな……恥ずかしいと思わんのか⁉」

「別に思わないな」

「なっ⁉」

「よりよい条件を提示されたので……そちらに移るまでだ」

「そ、そんなことが……」

「傭兵だからな。どうぞ悪しからず」

 戸惑うシモツキに対し、ミナがふっと微笑む。シモツキが唇を噛む。

「くっ……」

「さて……」

 ミナが大剣を構え直す。

「はっ!」

「!」

 次の瞬間、煙がもくもくと立ち込める。キサラギが叫ぶ。

「シモツキ! 姫様を連れて先に進め!」

「し、しかし⁉」

「こいつは俺が相手をする! 早くしろ!」

「ああ! 姫様、急ぎましょう!」

 煙が晴れたころには既にカンナとシモツキの姿は無かった、ミナが舌打ちする。

「ちっ、煙幕とは古典的なことを……まあいい」

「む……?」

「行き先は分かっている。貴様をさっさと片付けて追いかければ済むことだ……」

 ミナが大剣の切っ先をキサラギに向ける。

「その言葉……」

「ん?」

「そっくり返すぞ!」

「むっ!」

 キサラギが飛んで、苦無で斬りかかるが、ミナが大剣でそれを防ぐ。

「はっ! はっ! はっ!」

「くっ! ぬっ! むっ!」

 キサラギが連撃を仕掛ける。ミナがなんとかそれを防ぐ。

「どうした⁉ さっさと片付けるのではなかったのか⁉」

「ちっ! 鬱陶しいな!」

「おっと!」

 ミナが大剣を勢い良く横に薙ぐが、キサラギはバク転でかわす。ミナが再び舌打ちする。

「ちっ、思ったよりすばっしっこいな……」

「ふう……」

「どうした? スタミナ切れか?」

「……」

「おいおい無視か。寂しいな」

 ミナが苦笑する。キサラギはミナから目を逸らさずに考えを巡らせる。

(模擬戦などで手合わせをしたことがないからな……思ったよりもやるというのはこちらも同じような思いだ。あの大剣を器用に使いこなすとは、さすがは名うての傭兵か……)

「考え事とは余裕だな!」

「うおっ‼」

 ミナが距離を詰め、大剣を振る。キサラギが苦無でそれを受け止めるが、衝撃を吸収しきれず、後方に吹っ飛ばされる。ミナが顎をさすりながら呟く。

「ふむ、大した反応だ……」

(かなりのパワーだ……力勝負では分が悪い……それならば!)

「おっ?」

 倒れていたキサラギがバッと起き上がり、構えを取る。

「手数で圧倒する!」

「‼」

 キサラギがあっという間にミナの懐に入り、苦無を素早く振り回す。

「はあっ! えいっ! それっ!」

「うぐっ! むぐっ! ぬぐっ!」

 キサラギの振るった苦無が厚い鎧の隙間部分を正確に斬りつけたため、ミナはその端正な顔を思わずしかめさせる。首筋に隙が出来る。キサラギが叫ぶ。

「もらった!」

「そうはさせん!」

「どおっ⁉」

 ミナが大剣を振り上げる。キサラギはなんとかかわすが、風圧で飛ばされる。

「ちっ、これもかわすか……」

「首筋を空けたのは誘いだったか、油断ならんな……」

「しかし、そのスピードは厄介だな……仕方がない」

「⁉」

 キサラギが驚く。ミナが鎧を脱ぎ捨て、黒いスポーツブラとスパッツのみの恰好になったからである。ミナが左手で体を扇ぐ。

「あ~やっぱり涼しいな……」

「なっ、なっ……⁉」

「どうした?」

「そんな薄着になるとは……何を考えている⁉」

「貴様こそ何を考えている? はは~ん、さては女の肌を見るのは初めてか?」

「そ、そういうわけでは……い、いや、そんなことはどうでもいい! そんなに肌を露出するとは弱点をさらけ出しているようなものだぞ⁉」

「ご心配いただいて嬉しいな……ただ、守りを考えていては勝てない相手だと思ったのだ」

「ど、どうなっても知らんぞ!」

「貴様の武器さばきは既に見切ったさ……」

 ミナが大剣をゆっくりと構え直す。キサラギが呟く。

「接近戦は危険だということはさすがに理解した……」

「ほう……」

「これならどうだ!」

 キサラギが数枚の手裏剣を投げつける。手裏剣は鋭い軌道を描いてミナに向かって飛ぶ。

「はんっ!」

「な、なんだと⁉ はっ⁉」

 キサラギは再び驚く。ミナが手裏剣をことごとくかわしたかと思うと、次の瞬間、自らの懐へと入ってきたからである。ミナが大剣を横に薙ぐ。

「そらあっ!」

「ちっ⁉」

「……なにっ⁉ 手応えありかと思ったら、身代わりの術か……」

 ミナが苦笑しながら大剣をかざすと、そこには丸太が突き刺さっていた。キサラギは横方向に飛んで距離を取り、驚き交じりで呟く。

「な、なんというスピードだ……」

「身軽になったからな。どうする? これで貴様の有利は失われたぞ?」

「どうやらそうなるな……」

「なんだ、認めるのか?」

 ミナが拍子抜けといった表情になる。キサラギがわずかに首を傾げる。

「……なにをがっかりしている?」

「もっとこうなにかないのか? 煙幕、手裏剣、身代わりの術と来たら次はなにかと期待が大いに膨らむだろう?」

「別に期待に応える義務などないだろう……」

「ファンサービスもニンジャの務めだろう?」

「なんだファンとは……まあ、諦めはしないが!」

「おおっと⁉」

 キサラギが分身して、ミナに迫り苦無を振りかざす。

「喰らえ!」

「邪魔な分身を片付け、返す刀で……⁉」

「ぐおっ……」

 キサラギが脇と苦無を使って、大剣を防ぐ。もっとも完璧とは言えず、腹に傷を負う。

「なっ⁉ 本体であえて攻撃を受けただと⁉」

「あらためて……喰らえ!」

「ぐはっ⁉」

 分身の攻撃を受け、ミナが倒れ込む。キサラギが苦笑する。

「期待に沿えたか? ……こちらもダメージが……骨を断つ前に肉を切らせ過ぎた……」

 キサラギは苦しそうに脇腹を抑えながら、片膝をつく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...