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第1章
第7話(1)大事な議題
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7
「失礼します……あら?」
生徒会室に入った美蘭がやや驚いた。自分以外の五人が既に席についていたからである。生徒会に正式入会した初日の為、遅刻しないように早めに来たのだったが。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、皆さんお早いですね……」
正高からの問いに美蘭が微笑を浮かべながら答える。
「当然です。大事な議題がありますから……」
正高が眼鏡をクイっと上げる。
「大事な議題?」
「ええ、とてもね」
「わたしは何も伺っておりませんが」
「貴女に関わることなので……」
「!」
美蘭はドキッとするが、動揺はなるだけ表に出さないようにつとめる。
「? なにか?」
「い、いいえ……」
正高から視線を向けられるが、美蘭は目を合わせないようにする。
「ふむ……?」
「正高くん、本題に入った方が良いんじゃないかな?」
「ああ、まだるっこしいのは無しだぜ」
「はじめにはっきりした方が良いよね~」
愛一郎の言葉に速人と雄大が頷く。
(ま、まさか……潜入がバレた?)
美蘭が自らの胸を抑える。
「……おい」
生徒会長の椅子に座る強平が正面に立つ美蘭をジッと見つめる。
「は、はい……」
「……」
「………」
「…………」
(な、なによ、この沈黙は⁉)
美蘭が困惑する。
「……なにが良い?」
「は?」
美蘭が首を傾げる。
「だから、何が良いかって聞いてんだよ」
「な、何がとは?」
「生徒会に正式に入会したんだろう?」
「え、ええ、そうです」
美蘭が戸惑い気味に頷く。
「誰の下につくのが良いかってことだよ」
「は、はい?」
美蘭が首を捻る。
「はあ、それでは分かりにくいでしょう……」
正高が呆れた様子で呟く。
「えっと……」
「亜久野さん、要は貴女のこの生徒会における役職を決めたいのです」
「や、役職?」
「ええ、そうです……とりあえずはいずれかのメンバーのサポートに就いてもらうのが無難かと思うのですが……」
正高が自らを含めて、五人のメンバーを指し示す。
「は、はあ……」
「まあ、ここは一択だろう!」
「い、一択?」
「ああ、生徒会長である俺の秘書だ!」
強平が右手の親指で自らを指差す。
「……それはいかがなものでしょうか?」
「ああん?」
強平が正高に視線を向ける。
「実質お飾りのようなあなたの側にいるよりも、私のサポートに当たってもらった方が生徒会としてもはるかに有意義です」
「お、お飾りだと?」
「紛れもない事実でしょう?」
「い、言ってくれるじゃねえか……」
強平が正高を睨む。
「ああ~ほら、ケンカはやめようよ……」
愛一郎が仲裁する。
「それなら、自分のサポートに入って欲しいぜ。庶務は正直何人いたっていいからな」
「速人くんのスピードに振り回されるのは気の毒だよ、却下」
「えっ⁉」
愛一郎の速やかな否定に速人が驚く。
「オイラのサポートをお願いしたいかな~? チェックする人が増えれば、計算ミスなどのリスクは減るし、会計としてはありがたいな」
「その場合だと、雄大くんが亜久野さんのサポートに回るんじゃない?」
「ええっ⁉」
愛一郎の言葉に雄大が驚く。
「だって、雄大くんアナログ派じゃない」
「そ、そうだけど……」
「亜久野さん、パソコンは?」
「ひ、一通りは使えます」
「ほらね」
美蘭の返答に愛一郎は両手を広げる。
「む、むう……」
雄大は黙り込む。愛一郎が美蘭に問う。
「書記のサポートをお願いしたいのだけど……どうですか?」
「……他の」
「え?」
「他の役職を希望します……いや、希望するわ!」
「「「「「⁉」」」」」
美蘭の発言に五人は驚く。
「わたしはきっと、いいえ、必ずや、この生徒会に貢献出来ると自負しているわ。誰かのサポートじゃなく、責任ある役職を任せて欲しい……!」
美蘭は自らの胸に右手を添えて力強く宣言する。
「~♪ 言うねえ……どうよ、副会長?」
口笛を鳴らした速人が正高に視線を向ける。
「そうですね……『広報』などはどうでしょうか?」
「広報?」
「ええ、この生徒会は――自分で言うのもなんですが――一般生徒たちから畏敬の念を通り越して、畏怖されています。生徒会の活動を生徒に近い目線で発信してくださる役割が必要ではないかと前から考えていたのですが……いかがでしょうか?」
「……やりがいがありそうね」
美蘭が笑みを浮かべる。
「では、会長……」
正高が強平に視線を向ける。
「ああ、亜久野美蘭、生徒会の広報に任命する!」
「頑張ります!」
美蘭が元気よく返事する。
「失礼します……あら?」
生徒会室に入った美蘭がやや驚いた。自分以外の五人が既に席についていたからである。生徒会に正式入会した初日の為、遅刻しないように早めに来たのだったが。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、皆さんお早いですね……」
正高からの問いに美蘭が微笑を浮かべながら答える。
「当然です。大事な議題がありますから……」
正高が眼鏡をクイっと上げる。
「大事な議題?」
「ええ、とてもね」
「わたしは何も伺っておりませんが」
「貴女に関わることなので……」
「!」
美蘭はドキッとするが、動揺はなるだけ表に出さないようにつとめる。
「? なにか?」
「い、いいえ……」
正高から視線を向けられるが、美蘭は目を合わせないようにする。
「ふむ……?」
「正高くん、本題に入った方が良いんじゃないかな?」
「ああ、まだるっこしいのは無しだぜ」
「はじめにはっきりした方が良いよね~」
愛一郎の言葉に速人と雄大が頷く。
(ま、まさか……潜入がバレた?)
美蘭が自らの胸を抑える。
「……おい」
生徒会長の椅子に座る強平が正面に立つ美蘭をジッと見つめる。
「は、はい……」
「……」
「………」
「…………」
(な、なによ、この沈黙は⁉)
美蘭が困惑する。
「……なにが良い?」
「は?」
美蘭が首を傾げる。
「だから、何が良いかって聞いてんだよ」
「な、何がとは?」
「生徒会に正式に入会したんだろう?」
「え、ええ、そうです」
美蘭が戸惑い気味に頷く。
「誰の下につくのが良いかってことだよ」
「は、はい?」
美蘭が首を捻る。
「はあ、それでは分かりにくいでしょう……」
正高が呆れた様子で呟く。
「えっと……」
「亜久野さん、要は貴女のこの生徒会における役職を決めたいのです」
「や、役職?」
「ええ、そうです……とりあえずはいずれかのメンバーのサポートに就いてもらうのが無難かと思うのですが……」
正高が自らを含めて、五人のメンバーを指し示す。
「は、はあ……」
「まあ、ここは一択だろう!」
「い、一択?」
「ああ、生徒会長である俺の秘書だ!」
強平が右手の親指で自らを指差す。
「……それはいかがなものでしょうか?」
「ああん?」
強平が正高に視線を向ける。
「実質お飾りのようなあなたの側にいるよりも、私のサポートに当たってもらった方が生徒会としてもはるかに有意義です」
「お、お飾りだと?」
「紛れもない事実でしょう?」
「い、言ってくれるじゃねえか……」
強平が正高を睨む。
「ああ~ほら、ケンカはやめようよ……」
愛一郎が仲裁する。
「それなら、自分のサポートに入って欲しいぜ。庶務は正直何人いたっていいからな」
「速人くんのスピードに振り回されるのは気の毒だよ、却下」
「えっ⁉」
愛一郎の速やかな否定に速人が驚く。
「オイラのサポートをお願いしたいかな~? チェックする人が増えれば、計算ミスなどのリスクは減るし、会計としてはありがたいな」
「その場合だと、雄大くんが亜久野さんのサポートに回るんじゃない?」
「ええっ⁉」
愛一郎の言葉に雄大が驚く。
「だって、雄大くんアナログ派じゃない」
「そ、そうだけど……」
「亜久野さん、パソコンは?」
「ひ、一通りは使えます」
「ほらね」
美蘭の返答に愛一郎は両手を広げる。
「む、むう……」
雄大は黙り込む。愛一郎が美蘭に問う。
「書記のサポートをお願いしたいのだけど……どうですか?」
「……他の」
「え?」
「他の役職を希望します……いや、希望するわ!」
「「「「「⁉」」」」」
美蘭の発言に五人は驚く。
「わたしはきっと、いいえ、必ずや、この生徒会に貢献出来ると自負しているわ。誰かのサポートじゃなく、責任ある役職を任せて欲しい……!」
美蘭は自らの胸に右手を添えて力強く宣言する。
「~♪ 言うねえ……どうよ、副会長?」
口笛を鳴らした速人が正高に視線を向ける。
「そうですね……『広報』などはどうでしょうか?」
「広報?」
「ええ、この生徒会は――自分で言うのもなんですが――一般生徒たちから畏敬の念を通り越して、畏怖されています。生徒会の活動を生徒に近い目線で発信してくださる役割が必要ではないかと前から考えていたのですが……いかがでしょうか?」
「……やりがいがありそうね」
美蘭が笑みを浮かべる。
「では、会長……」
正高が強平に視線を向ける。
「ああ、亜久野美蘭、生徒会の広報に任命する!」
「頑張ります!」
美蘭が元気よく返事する。
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