もっともな戦隊はごもっともな変態!?

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第4話(4)最速のグリーン

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「カマキリ怪人さま!」

 全身黒タイツの者がカマキリの顔をした怪人に近寄り、敬礼をする。

「ふむ……どうだ?」

「はっ! 学院の敷地内に侵入成功しました!」

「うむ……」

「各ポイントに展開しました!」

「うむうむ……」

「続いての指示をお願いします!」

「ああ、私は職員室に向かう。あそこには学院全体をチェック出来るモニターがあるからな」

「はっ!」

「事前にリストアップした、生徒をはじめとする学院の関係者たちをそこに連れてこい」

「ははっ!」

「職員室に集めた後は……私のこの鎌で……」

 カマキリ怪人が自らの鎌をゆっくりと掲げる。

「……」

「ん? どうかしたか?」

「い、いえ……」

「なにか気になることがあるならば言ってみろ」

「い、いや、別にないです……」

 戦闘員が右手を左右に振る。カマキリ怪人が重ねて尋ねる。

「ないことはないだろう。言ってみろ」

「よ、よろしいのですか?」

「ああ、構わん……」

「えっと……その鎌で始末してしまうのですか?」

「そんな訳が無いだろう」

「え?」

「集める意味をよく考えてみろ。人質として活用するのだ」

「あ、ああ……」

「それくらい分かるだろう……何故そんなことを聞いた?」

 カマキリ怪人が問い返す。

「え、えっと、ご自身の鎌を恍惚と見ておられましたので……」

「……それはあれか? 私が『鎌の切れ味を試そうか……』とかサイコなことを言い出すとでも思ったのか?」

「はい」

「言う訳がなかろう!」

 カマキリ怪人が声を上げる。

「す、すみません!」

 戦闘員が再び敬礼をする。

「……まあいい、それでは、貴様も持ち場につけ」

「ははっ!」

 戦闘員が三度敬礼をしてその場を離れようとする。

「……よし、それでは私も職員室へと向かう……!」

「待て!」

「!」

 緑色のスーツを着た男がその場に駆け付ける。

「お前らの企みもそこまでだぜ!」

「グ、グリーンセイバー⁉ ど、どうしてこんな場所に⁉」

 カマキリ怪人が驚く。

「悪の雰囲気を感じ取ったまでだよ……」

 グリーンセイバーがマスクを軽く抑えながら呟く。

「悪の雰囲気だと?」

「ああ……如何にも悪そうな感じがしてね」

「ふ、ふざけるな!」

「いやいや、真面目に言っているんだが?」

「……うん? 貴様一人か? 他の連中はどうしたんだ?」

「ああ、今日は自分一人だ」

「なにっ⁉ な、舐めているのか?」

「舐めているわけではないさ。ただ、すぐに間に合うのが自分だけだったってことさ」

「そ、それが舐めているだろう! おい、かかれ!」

「はっ! 行くぞ! お前たち! グリーンセイバーを包囲しろ!」

「戦闘員連中か……やめとけ、怪我するぞ?」

「我々は戦闘員の中でも特に訓練された面々だ! お前にだって勝てる! 行け!」

「おおっ!」

「……!」

「がはっ⁉」

 向かってきた一人の戦闘員に対し、グリーンセイバーが反撃する。戦闘員が倒れる。

「ああっ⁉ な、なにが起こったんだ⁉」

「カウンターを合わせたまでだよ……」

「な、ならば! この部隊でも屈指のスピードのお前が行け!」

「うおおっ!」

「………!」

「ぐはっ⁉」

 グリーンセイバーが向かってきた戦闘員の突進を冷静に見極めて、転ばしてしまう。

「ああっ⁉ この部隊でも屈指の俊足を……」

「自分とスピード勝負というのは、愚の骨頂だぜ?」

 グリーンセイバーが呆れたように両手を広げる。

「お、お前ら、一斉にかかるぜ! どおりゃあ!」

「ふん……!」

「げはっ⁉」

 グリーンセイバーの反撃で、戦闘員たちはあっという間に全員倒される。

「へっ、遅いよ……それで群がってこられても、落ち着いてただ単純にカウンターを繰り出せばいいだけのこと……むっ⁉」

「はははっ! 隙ありだぞ! グリーンセイバー!」

 グリーンセイバーの懐に入ったカマキリ怪人が右腕の鎌を振る。

「……はっ、遅い!」

「ならば! 二段攻撃だ!」

「おっと!」

「‼ 左腕の鎌もかわした……なんて速さだ……!」

「『最速』を誇る自分の前では無駄な小細工だ……そらっ!」

「ごはあっ⁉」

 グリーンセイバーのキックによってカマキリ怪人は遠くへと吹き飛ばされる。

「終わった終わった。戦闘員たちの確保は警察にでも任せようか……さてと……」

 グリーンセイバーは生徒会室に窓から戻り、変身を解いて、速人に戻る。そこにいた美蘭が尋ねる。

「……わたしの前で変身しても良かったのですか?」

「ああ、ここにいたのか。まあ、知られても構わないさ。君は生徒会の関係者なんだろう?

「関係者というか……お手伝いを少々……」

「そうか、君にお願いしたいことがあってね……」

「! お、お願いしたいことですって? ちょ、ちょっと失礼……」

 嫌な予感がした美蘭がその場を離れようとする。

「待った!」

「は、速い⁉」

 生徒会室を出ようとした美蘭の前に速人が素早く先回りする。身構える美蘭に対し、速人がゆっくりと近寄ってから、身を屈める。

「お願いだ! さっきみたいに自分を焦らしてくれ! 自分は最速と呼ばれるくらい何事も速い。だから、思いっきり焦らされたいんだ! 君のさっきの言葉にピンと来た!」

「⁉ へ、変態⁉」

 目の前で土下座する速人を見て、美蘭は困惑する。
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