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第1章
第4話(2)順番争い
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「頼む!」
「ええ……?」
「この通りだ!」
雄大が勢いよく頭を下げる。
「いや、この通りだって言われても……」
美蘭が戸惑う。
「おい雄大、ちょっと待てよ……」
強平がゆっくりと立ち上がる。
「そ、そうよ、ちょっと待って……」
美蘭がうんうんと頷く。
「順番ってもんがあんだろ……」
「うん? 順番?」
美蘭が首を傾げる。
「まずは俺がビンタされるのが先だ!」
「ええっ⁉」
「さあ、今日こそはビンタをしてくれ……」
強平が頬を差し出しながら、美蘭に近づく。
「ええ……」
「さあ……」
「し、しないわよ!」
「ちっ……」
強平が舌打ちする。
「強平、お前さんがそんなことを言うとはね……」
雄大が少し驚いた様子を見せる。
「お前には関係ねえだろうが」
「それはそうだけどさ、それなら……」
「それなら?」
「別に他の人でも良いんじゃないか?」
「! た、確かに……」
雄大の言葉に美蘭が頷く。
「ったく、分かってねえなあ……」
強平がため息まじりに呟く。雄大が首を捻る。
「分かってない?」
「ほど良い強さっていうもんが必要なんだ。俺は最強だから、半端なスピードのビンタなら体が勝手に反応して避けちまうからな」
「なるほど……」
雄大が腕を組んで頷く。
「な、なるほどじゃないわよ!」
「……というわけで、ビンタを頼む」
「頼まれてもしないから!」
美蘭が声を上げる。
「ちっ、強情だな……」
「こっちのセリフよ!」
「……まったく、ナンセンスですね……」
正高が眼鏡をクイっと上げながら呟く。
「ああん?」
強平が正高を睨む。
「うんうん!」
美蘭がその通りだとばかりに頷く。
「なにがナンセンスなんだよ?」
「順番というものがですよ……」
「うん?」
美蘭が首を捻る。
「こういうことは亜久野さんにお任せするべきです」
「んん?」
「亜久野さん、というわけで……」
「というわけで?」
「……私を見下してはもらえないでしょうか?」
「な、なんでそうなるのよ⁉」
美蘭が困惑する。
「お願いします……」
正高が丁寧に頭を下げる。
「お、お願いされても!」
「おい、ちょっと待てや、眼鏡」
「……なにか?」
正高が強平に視線を向ける。
「順番っていうのが、一番筋が通っているだろうが」
「先に亜久野さんに出会った方が得をするのですか? それはいささか不公平というものではないでしょうか?」
「公平、不公平の話じゃねえだろう」
「いいえ、大事なことです。私たちは生徒会……生徒の模範たるべき存在ですから……」
正高が眼鏡の縁を抑えながら呟く。
「模範だあ?」
「ええ、そうです」
「それならばもっと納得いく形があるな……」
「……なんですって?」
「こういうのは役職が上の方からだろう。よって、会長の俺からビンタしてもらう……」
強平が自らの右頬をさすりながら笑みを浮かべる。
「! むう……」
「文句ねえよな?」
「も、文句あるよ!」
雄大が声を上げる。
「ああん? なんだよ、雄大?」
「それじゃあ、会計のオイラは何番目だい?」
「……この中なら、三番目だろうな……」
「そ、そんな、会計というものを低く見ている!」
「高い低いで言えば、低いんじゃねえか?」
「会計が予算を組まなきゃ、生徒会としての活動だってままならないだろう?」
「む……」
「単純な役職の上下だけじゃなく、重要度で決めるべきだと思うよ?」
「ちっ……」
「というわけで……オイラが先だね……」
「お待ちなさい、黄田谷さん」
「うん? なんだい? 正高君」
「さきほども似たようなことを申し上げましたが、実質的に貴方の職務の半分近くは私がこなしているようなものです」
「う……!」
「よって、私が優先されてしかるべきです」
「くっ……」
雄大が唇を噛む。
「ちいっ……」
強平が悔しそうにする。
「ふふっ……」
正高が笑みを浮かべる。
「……」
「それでは見下して……」
「しないから! さっきから何の話をしているのよ!」
美蘭が大きな声を上げる。
「ええ……?」
「この通りだ!」
雄大が勢いよく頭を下げる。
「いや、この通りだって言われても……」
美蘭が戸惑う。
「おい雄大、ちょっと待てよ……」
強平がゆっくりと立ち上がる。
「そ、そうよ、ちょっと待って……」
美蘭がうんうんと頷く。
「順番ってもんがあんだろ……」
「うん? 順番?」
美蘭が首を傾げる。
「まずは俺がビンタされるのが先だ!」
「ええっ⁉」
「さあ、今日こそはビンタをしてくれ……」
強平が頬を差し出しながら、美蘭に近づく。
「ええ……」
「さあ……」
「し、しないわよ!」
「ちっ……」
強平が舌打ちする。
「強平、お前さんがそんなことを言うとはね……」
雄大が少し驚いた様子を見せる。
「お前には関係ねえだろうが」
「それはそうだけどさ、それなら……」
「それなら?」
「別に他の人でも良いんじゃないか?」
「! た、確かに……」
雄大の言葉に美蘭が頷く。
「ったく、分かってねえなあ……」
強平がため息まじりに呟く。雄大が首を捻る。
「分かってない?」
「ほど良い強さっていうもんが必要なんだ。俺は最強だから、半端なスピードのビンタなら体が勝手に反応して避けちまうからな」
「なるほど……」
雄大が腕を組んで頷く。
「な、なるほどじゃないわよ!」
「……というわけで、ビンタを頼む」
「頼まれてもしないから!」
美蘭が声を上げる。
「ちっ、強情だな……」
「こっちのセリフよ!」
「……まったく、ナンセンスですね……」
正高が眼鏡をクイっと上げながら呟く。
「ああん?」
強平が正高を睨む。
「うんうん!」
美蘭がその通りだとばかりに頷く。
「なにがナンセンスなんだよ?」
「順番というものがですよ……」
「うん?」
美蘭が首を捻る。
「こういうことは亜久野さんにお任せするべきです」
「んん?」
「亜久野さん、というわけで……」
「というわけで?」
「……私を見下してはもらえないでしょうか?」
「な、なんでそうなるのよ⁉」
美蘭が困惑する。
「お願いします……」
正高が丁寧に頭を下げる。
「お、お願いされても!」
「おい、ちょっと待てや、眼鏡」
「……なにか?」
正高が強平に視線を向ける。
「順番っていうのが、一番筋が通っているだろうが」
「先に亜久野さんに出会った方が得をするのですか? それはいささか不公平というものではないでしょうか?」
「公平、不公平の話じゃねえだろう」
「いいえ、大事なことです。私たちは生徒会……生徒の模範たるべき存在ですから……」
正高が眼鏡の縁を抑えながら呟く。
「模範だあ?」
「ええ、そうです」
「それならばもっと納得いく形があるな……」
「……なんですって?」
「こういうのは役職が上の方からだろう。よって、会長の俺からビンタしてもらう……」
強平が自らの右頬をさすりながら笑みを浮かべる。
「! むう……」
「文句ねえよな?」
「も、文句あるよ!」
雄大が声を上げる。
「ああん? なんだよ、雄大?」
「それじゃあ、会計のオイラは何番目だい?」
「……この中なら、三番目だろうな……」
「そ、そんな、会計というものを低く見ている!」
「高い低いで言えば、低いんじゃねえか?」
「会計が予算を組まなきゃ、生徒会としての活動だってままならないだろう?」
「む……」
「単純な役職の上下だけじゃなく、重要度で決めるべきだと思うよ?」
「ちっ……」
「というわけで……オイラが先だね……」
「お待ちなさい、黄田谷さん」
「うん? なんだい? 正高君」
「さきほども似たようなことを申し上げましたが、実質的に貴方の職務の半分近くは私がこなしているようなものです」
「う……!」
「よって、私が優先されてしかるべきです」
「くっ……」
雄大が唇を噛む。
「ちいっ……」
強平が悔しそうにする。
「ふふっ……」
正高が笑みを浮かべる。
「……」
「それでは見下して……」
「しないから! さっきから何の話をしているのよ!」
美蘭が大きな声を上げる。
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