もっともな戦隊はごもっともな変態!?

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第3話(1)プライドと己の性癖

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「……よし、来たな」

 生徒会室に入ってきた美蘭を見て、強平が笑みを浮かべる。

「……」

「それじゃあ、あらためてだが……」

「………」

 強平が美蘭に歩み寄る。美蘭が体を強張らせる。

「ビンタをしてくれ」

 強平が右の頬を美蘭に向かって差し出す。

「だ、だから、しないって!」

「何故だ?」

「する理由というか意味がないから!」

「意味なんてこの際どうだって良いだろう」

「どうでも良くないわよ!」

「ほらほら……」

 強平が右の頬を突き付けてくる。美蘭が戸惑う。

「ほ、ほらほら、じゃないわよ!」

「はあ……馬鹿なことはおやめなさい……」

 正高がため息交じりで強平と美蘭の間に割って入ってくる。

「あ……」

「馬鹿なこととはなんだ、こちとらマジでやってんだよ……!」

 強平が真面目な顔つきで正高を睨む。

「頭と質があまりにも悪すぎでしょう……」

 正高が呆れ気味に両手を広げる。

「なんだと……?」

「それよりも……」

 正高が美蘭の方に向き直り体勢を低くする。美蘭が首を傾げる。

「え?」

「……私を見下してください!」

「だ、だから、しませんって!」

「……何故ですか?」

「する理由がないからですよ!」

「理由なんて別にどうとでもなるでしょう」

「そ、そんなことを言われても!」

「さあ、上から目線を下さい……」

 正高がこれでもかと体勢を低くする。

「い、嫌ですよ!」

 美蘭が視線を逸らす。

「そんなことを言わずに!」

 正高がカサカサと動いて、なんとか美蘭の視界に入ろうとする。

「う、うわ……!」

 美蘭がドン引きしながら視線を部屋の天井の方に向ける。

「ああ……!」

 正高がハッとする。

「これで見下せませんよ……」

 美蘭が呟く。

「そ、そう来ましたか……」

 正高が眼鏡の縁を抑えながら呟く。

「ど、どうです?」

「それではどうしようもありませんね……」

 正高が立ち上がる。

「……」

 美蘭が首をプルプルとさせる。

「……首を戻しても構いませんよ」

「……本当に?」

「ええ」

「……本当の本当?」

「もちろんですとも」

 正高が首を縦に振る。

「……はあ……」

 美蘭が首を元に戻し、ほっとため息をつく。

「………」

「はっ⁉」

 美蘭が正高の視線に気付いて、またも上の方を向こうとする。

「少し落ち着いて下さい……」

 正高が両手の手のひらを下に向けて、ゆっくりと上下させる。

「落ち着けませんよ!」

 正高がふふっと笑う。

「なにも強引に見下してもらおうとは思っていません。無理矢理というのはあまり意味がありませんからね」

「む、むしろそっちが上から目線なのでは……⁉」

 正高の物言いに美蘭が戸惑う。

「へっ、まったくよお……」

「なにか?」

 正高が強平の方に視線を向ける。

「体勢を低くしていたの、まるで土下座みたいだったぜ?」

「そう見えましたか」

「ああ」

 強平がニヤッと笑う。

「まあ、捉え方というものは人それぞれの自由ですから」

 正高が眼鏡をクイっと上げる。

「自由って……良いのかよ?」

「ええ、構いませんよ」

「土下座まがいのことをするなんてお前にはプライドってもんは無いのかよ?」

「ア、アンタが言うな!」

 美蘭が呆れ気味に両手を広げる強平に対して、思わず突っ込みを入れてしまう。

「ならば逆に問いますが……」

「ん?」

「赤千代田……」

「呼び捨てすんな、会長って付けろ」

「赤千代田“一応”会長……」

「一応言うな、れっきとした会長だ」

 強平はムッとする。

「それはこの際どうでもよろしい」

「よろしくねえよ」

「貴方はプライドと己の性癖を天秤にかけて……プライドを優先するのですか?」

「あん?」

「どうなのですか?」

「そんなもん決まっているだろうが」

「ほう……お答えをお聞かせ願いますか?」

「己の性癖の方を優先する……!」

「ふむ……」

 正高が頷く。正高と強平が美蘭を見つめる。美蘭が身構える。

「な、なに……?」

「というわけで……亜久野美蘭さん……私を見下してください!」

「俺をビンタしてくれ!」

「は、はあっ⁉」

 二人の申し出に美蘭は思いっきり困惑する。
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