【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第10話(3)ユニフォーム配布

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                  ♢

「……というわけで戻ってきました」

 グラウンドで最愛が皆に向かって話す。

「良かった、良かった!」

 円が拍手する。

「練習を休んでしまって申し訳ありませんでした……」

 最愛が頭を下げる。

「ドンマイ! そんなの気にすんなって!」

 真珠が声をかける。

「アタシたちもサボりかけたからね……」

 雛子が苦笑する。

「というわけでキャプテン……」

 ヴィオラが恋に視線を向ける。

「そうね……最愛ちゃんだけでなく、皆に聞きにくいことを聞くんだけど……」

「? なんだよ?」

 真珠が首を傾げる。

「……敗北のショックは完全に払拭出来たかしら?」

「!」

 恋の問いかけに全員の顔がやや強張る。

「……どうかしら?」

「大丈夫です!」

「……‼」

 声を上げた最愛に皆が視線を向ける。

「一度や二度の敗北でいちいち挫けていられません! 次を見据えるべきです!」

「ふむ……」

 恋が微笑みながら頷く。

「それでこそ、我が友ですわ!」

「あれ? いつの間にかライバルじゃなくなったの?」

 魅蘭の言葉に雛子が首を捻る。真珠が声を上げる。

「最愛の言う通りだ! オレもすっかり切り替えているぜ!」

「おおっ! ワタクシも同じくですわ!」

「キャプテン……」

「皆さんの意気込みはよく伝わったわ……そうおっしゃってくれると思って、横浜プレミアムさんに再戦を申し込んでおいたわ。向こうも快く承諾してくれたわ。本気で来るって」

「‼」

 恋の言葉に皆が驚く。

「あくまでも練習試合なのだけど、公式戦用のユニフォームがちょうど届いたので、それを着て臨むことにしましょう。大事な一戦だからね」

 ヴィオラが段ボールを持ってきてグラウンドに置く。

「ああ、何だろうかなと思ったら、ユニフォームだったのか……」

 円が納得する。

「これを今から配るわ。名前を呼ぶので、前に出て、ヴィオラちゃん……副キャプテンから受け取ってください」

「……」

 恋がヴィオラの横に並ぶ。

「それでは……背番号8、登戸円さん」

「はい!」

 円がユニフォームを受け取る。

「攻守両面での活躍を期待しているわ。変な遠慮は要らないわよ?」

「うん!」

 恋の言葉に円が頷き、皆のところへ戻る。

「へ~金色基調のユニフォームなのね……」

 雛子が円の広げたユニフォームを見て呟く。

「ステラはイタリア語で星のことですから、星が光り輝くイメージで発注しました」

 ヴィオラが説明する。

「デザインはヴィオラちゃんが一晩でやってくれました♪」

「マ、マジかよ⁉」

 恋の発言に真珠が驚く。

「そんなわけがないでしょう……ちゃんと時間をかけてデザインしましたよ」

 ヴィオラが呆れ気味に恋の発言を訂正する。

「な、なんだよ……」

「星の輝きとは、このワタクシにふさわしいですわね!」

「そう思えるメンタルがもはや眩しいわね……」

 雛子は魅蘭のことを、目を細めて見つめる。

「次は背番号7、等々力雛子さん」

「あ、はい!」

 雛子がユニフォームを受け取る。

「攻撃面での貢献を期待しているわ。貴重なゴールを決めてくれると確信しているわよ」

「き、期待してもらって一向に構わないわ!」

「うん、良いツンデレね♪」

「ツンデレなのか……?」

 満足気な恋の横でヴィオラが小声で呟いて首を傾げる。

「次は背番号9、御幸真珠さん」

「おう!」

 真珠がユニフォームを受け取る。

「貴女にはズバリ、ゴールを期待しているわ。バンバン決めちゃって~♪」

「へへっ! 任せとけ!」

 真珠が自らの胸をバンと叩く。

「次は背番号4、大師ヴィオラさん」

「はい……」

 ヴィオラは自分の分のユニフォームを取り、脇にそっと置く。

「ヴィオラちゃんはゴレイロをやってもらう場合もあるから、その分も持っていてね」

「ええ……」

 ヴィオラが段ボールからもう一着取り出す。

「そうだ、セカンドユニフォームも渡さなくちゃね」

「そうですね……」

 ヴィオラがもう一つの段ボールを持ってきて開けて、先に渡した三人に配る。

「これは……」

 円がユニフォームを広げる。右から赤、緑、青の三色で構成され、間に白色を挟んだ縦縞のデザインである。ヴィオラが簡潔に説明する。

「川崎市のロゴマークから拝借しました」

「へ~こういうロゴなんだ……ああ、川の字になっているのか」

「そういうことです……背番号5は百合ヶ丘恋さん」

「はい~♪」

 恋がユニフォームを受け取る。ヴィオラが淡々と声をかける。

「……名実ともに貴女のチームです。活躍を期待しています」

「ご期待に沿えるよう努力するわ~」

 恋がウインクする。

「続けてください」

「ええ、次は背番号10、鷺沼魅蘭さん」

「はい‼」

「良い返事ね。期待しているわ。存分に暴れまわってちょうだい」

「お任せあれ! エースナンバーにふさわしい活躍をしてみせますわ! おほほ~♪」

 ユニフォームを受け取った魅蘭がはしゃぎまわる。ヴィオラが小声で呟く。

「フットサルのエースナンバーは5番なのですが……」

「世の中には知らない方が良いこともあるのよ……最後に背番号1、溝ノ口最愛さん!」

「……はい!」

 最愛が力強く返事し、両肩の部分が赤く、他は白色のキーパー用ユニフォームを受け取る。
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