【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
上 下
40 / 50
第1章

第10話(3)ユニフォーム配布

しおりを挟む
                  ♢

「……というわけで戻ってきました」

 グラウンドで最愛が皆に向かって話す。

「良かった、良かった!」

 円が拍手する。

「練習を休んでしまって申し訳ありませんでした……」

 最愛が頭を下げる。

「ドンマイ! そんなの気にすんなって!」

 真珠が声をかける。

「アタシたちもサボりかけたからね……」

 雛子が苦笑する。

「というわけでキャプテン……」

 ヴィオラが恋に視線を向ける。

「そうね……最愛ちゃんだけでなく、皆に聞きにくいことを聞くんだけど……」

「? なんだよ?」

 真珠が首を傾げる。

「……敗北のショックは完全に払拭出来たかしら?」

「!」

 恋の問いかけに全員の顔がやや強張る。

「……どうかしら?」

「大丈夫です!」

「……‼」

 声を上げた最愛に皆が視線を向ける。

「一度や二度の敗北でいちいち挫けていられません! 次を見据えるべきです!」

「ふむ……」

 恋が微笑みながら頷く。

「それでこそ、我が友ですわ!」

「あれ? いつの間にかライバルじゃなくなったの?」

 魅蘭の言葉に雛子が首を捻る。真珠が声を上げる。

「最愛の言う通りだ! オレもすっかり切り替えているぜ!」

「おおっ! ワタクシも同じくですわ!」

「キャプテン……」

「皆さんの意気込みはよく伝わったわ……そうおっしゃってくれると思って、横浜プレミアムさんに再戦を申し込んでおいたわ。向こうも快く承諾してくれたわ。本気で来るって」

「‼」

 恋の言葉に皆が驚く。

「あくまでも練習試合なのだけど、公式戦用のユニフォームがちょうど届いたので、それを着て臨むことにしましょう。大事な一戦だからね」

 ヴィオラが段ボールを持ってきてグラウンドに置く。

「ああ、何だろうかなと思ったら、ユニフォームだったのか……」

 円が納得する。

「これを今から配るわ。名前を呼ぶので、前に出て、ヴィオラちゃん……副キャプテンから受け取ってください」

「……」

 恋がヴィオラの横に並ぶ。

「それでは……背番号8、登戸円さん」

「はい!」

 円がユニフォームを受け取る。

「攻守両面での活躍を期待しているわ。変な遠慮は要らないわよ?」

「うん!」

 恋の言葉に円が頷き、皆のところへ戻る。

「へ~金色基調のユニフォームなのね……」

 雛子が円の広げたユニフォームを見て呟く。

「ステラはイタリア語で星のことですから、星が光り輝くイメージで発注しました」

 ヴィオラが説明する。

「デザインはヴィオラちゃんが一晩でやってくれました♪」

「マ、マジかよ⁉」

 恋の発言に真珠が驚く。

「そんなわけがないでしょう……ちゃんと時間をかけてデザインしましたよ」

 ヴィオラが呆れ気味に恋の発言を訂正する。

「な、なんだよ……」

「星の輝きとは、このワタクシにふさわしいですわね!」

「そう思えるメンタルがもはや眩しいわね……」

 雛子は魅蘭のことを、目を細めて見つめる。

「次は背番号7、等々力雛子さん」

「あ、はい!」

 雛子がユニフォームを受け取る。

「攻撃面での貢献を期待しているわ。貴重なゴールを決めてくれると確信しているわよ」

「き、期待してもらって一向に構わないわ!」

「うん、良いツンデレね♪」

「ツンデレなのか……?」

 満足気な恋の横でヴィオラが小声で呟いて首を傾げる。

「次は背番号9、御幸真珠さん」

「おう!」

 真珠がユニフォームを受け取る。

「貴女にはズバリ、ゴールを期待しているわ。バンバン決めちゃって~♪」

「へへっ! 任せとけ!」

 真珠が自らの胸をバンと叩く。

「次は背番号4、大師ヴィオラさん」

「はい……」

 ヴィオラは自分の分のユニフォームを取り、脇にそっと置く。

「ヴィオラちゃんはゴレイロをやってもらう場合もあるから、その分も持っていてね」

「ええ……」

 ヴィオラが段ボールからもう一着取り出す。

「そうだ、セカンドユニフォームも渡さなくちゃね」

「そうですね……」

 ヴィオラがもう一つの段ボールを持ってきて開けて、先に渡した三人に配る。

「これは……」

 円がユニフォームを広げる。右から赤、緑、青の三色で構成され、間に白色を挟んだ縦縞のデザインである。ヴィオラが簡潔に説明する。

「川崎市のロゴマークから拝借しました」

「へ~こういうロゴなんだ……ああ、川の字になっているのか」

「そういうことです……背番号5は百合ヶ丘恋さん」

「はい~♪」

 恋がユニフォームを受け取る。ヴィオラが淡々と声をかける。

「……名実ともに貴女のチームです。活躍を期待しています」

「ご期待に沿えるよう努力するわ~」

 恋がウインクする。

「続けてください」

「ええ、次は背番号10、鷺沼魅蘭さん」

「はい‼」

「良い返事ね。期待しているわ。存分に暴れまわってちょうだい」

「お任せあれ! エースナンバーにふさわしい活躍をしてみせますわ! おほほ~♪」

 ユニフォームを受け取った魅蘭がはしゃぎまわる。ヴィオラが小声で呟く。

「フットサルのエースナンバーは5番なのですが……」

「世の中には知らない方が良いこともあるのよ……最後に背番号1、溝ノ口最愛さん!」

「……はい!」

 最愛が力強く返事し、両肩の部分が赤く、他は白色のキーパー用ユニフォームを受け取る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

AGAIN 不屈の挑戦者たち

海野 入鹿
青春
小3の頃に流行ったバスケ漫画。 主人公がコート上で華々しく活躍する姿に一人の少年は釘付けになった。 自分もああなりたい。 それが、一ノ瀬蒼真のバスケ人生の始まりであった。 中3になって迎えた、中学最後の大会。 初戦で蒼真たちのチームは運悪く、”天才”がいる優勝候補のチームとぶつかった。 結果は惨敗。 圧倒的な力に打ちのめされた蒼真はリベンジを誓い、地元の高校へと進学した。 しかし、その高校のバスケ部は去年で廃部になっていた― これは、どん底から高校バスケの頂点を目指す物語 *不定期更新ですが、最低でも週に一回は更新します。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

おてんばプロレスの女神たち はちゃめちゃ市長・日奈子への特別インタビュー

ちひろ
青春
 おてんば市初の女性市長として、あっと驚きの政策を打ち出しまくる日奈子。その無策ぶりは、女子ローカルプロレスごっこ団体・おてんばプロレスを運営し、自ら女子プロレスラー・プレジデント日奈子として、はちゃめちゃ人生を駆け抜ける日奈子ならではのことであった。  日奈子が社長を務める編集プロダクション・有限会社おてんば企画の顔ともいうべき情報誌「おてんばだより」の原稿の中から、新市長・日奈子の巻頭インタビューをそのまま載せちゃいます。小説というよりも日奈子のいいたい放題(笑)。インタビュアーは、おてんば企画の編集部長・美央です。

処理中です...