32 / 50
第1章
第8話(3)変幻自在のエース
しおりを挟む
「……八景島が入って、このまま横浜プレミアムペースになるかと思われたけど……」
「そんなことはなかったわ!」
「むしろ……川崎ステラが盛り返しているわ!」
「やはりあの存在が大きいわね!」
「ええ、百合ヶ丘恋! まさか前半の内に出てくるとはね……」
「しかし、横浜プレミアム側がチャンスを作れないでいる……」
「ふふっ、前半はベンチで見ておこうと思ったけれど、そうも行かなくなってね……」
恋がギャラリーの声を聞きながら呟く。
「それっ!」
「はっ!」
「むっ!」
「八景島からの鋭い縦パスを百合ヶ丘がカット!」
「あそこに通すというのもさすがだけど、読む方もさすがね……」
「さっきから何度か同じことを繰り返しているわ……」
ギャラリーが恋のプレーに湧く。
「さすがは『鋼鉄の貴婦人』ね!」
「は? そこは『川崎の鉄壁』じゃないの⁉」
「はい? 『微笑みの将軍』って聞いたけれど⁉」
「ふ、二つ名でケンカしないで⁉」
謎の言い争いを始めたギャラリーに向かって、恋が思わず声を上げる。
「百合ヶ丘! 調子に乗るなよ!」
紅が恋を指差して声を上げる。
「! あ、ああ、これは失礼……試合中に集中を欠いていたわね……」
恋が視線を戻し、軽く頭を下げる。
「自分は『横浜の防波堤』だ!」
紅が自らの胸を右手の親指で指差す。
「二つ名で張り合ってきた⁉」
恋が戸惑う。
「百合ヶ丘と言えども万能ではない! とりあえずシュートを撃っていけ!」
「!」
紅の指示を受け、横浜プレミアムの選手がシュートを撃っていく。
「わたしを避けるように、その位置から強引にシュートを撃っても……」
「はあっ!」
わりと良いシュートではあったが最愛が難なく防ぐ。
「残念、そこには最愛ちゃんがいるのよ……」
恋がニヤリと笑う。
「むう……しかし、良いぞ! 多少強引な形でもどんどんシュートを撃っていけ! それで流れは引き戻せる!」
紅が前線に声をかける。
「……!」
「はっ!」
こぼれ球からのボレーシュートを最愛が防ぐ。
「! 良いボレーだったが、弾かずにキャッチング……!」
紅が驚く。
「……‼」
「ふっ!」
こぼれ球から抜け出した相手との1対1という難しい状況も最愛が防ぐ。
「‼ 前へ飛び出して、スライディングでクリア……!」
紅が再び驚く。
「………」
「ほっ!」
混戦状態となった川崎ステラのゴール前の隙を突いて、カーブをかけたシュートを放つが、これも最愛が防ぐ。
「⁉ 巻いた良いシュートだったが、横っ飛びで防いだ……!」
紅が三度驚く。
「すごいわよ、あのキーパー⁉」
「あのキーパーが加わってから川崎ステラは負け知らずだとか……」
「! ほう……それは良いキーパーだな。なるほど、百合ヶ丘だけではないか……」
ギャラリーの声を聞いて、紅は笑みを浮かべる。
「……⁉」
「寄越せ!」
紅が猛然と掛け上がってくる。味方は一瞬戸惑ったが、紅にパスを送る。
「………!」
「ナイスパス! それっ!」
「ぐうっ⁉」
紅の放ったグラウンダーの強烈なシュートも最愛が身を低くしてキャッチしてみせる。
「⁉ そ、それも防ぐか……」
「……攻勢は凌げたかしら……前半の内にここでもう一押し……雛子ちゃん!」
恋と代わった雛子がヴィオラに代わってピッチに戻る。雛子、真珠、魅蘭の三人はまだ粗さは残るものの、良い連携を見せ、横浜プレミアムのゴール前に再三侵入。チャンスを作る。
「むう……」
紅が顔をしかめる。
「ふふっ、これは俺様の出番かな?」
キーパーユニフォームを着た黒髪で整った短髪で、体格の良い女性がピッチに入る。
「選手交代! キーパーを変える⁉」
ギャラリーから驚きの声が上がる。魅蘭が首を傾げる。
「……キーパーなのに、7番?」
「魅蘭ちゃん! 良い調子だから気にせず続けて!」
「ええ!」
恋の声に魅蘭は頷く。その後、川崎ステラにチャンスが訪れる。
「おらっ!」
「はあん⁉」
「えいっ!」
「ふうん⁉」
「それっ!」
「ほおん⁉」
「あの7番、立て続けにシュートを……どれも簡単なシュートではなかったはず……」
魅蘭がファインセーブを連発する相手ゴールキーパーに舌を巻く。するとそのゴールキーパーがわざとボールをサイドラインに出す。
「なんだ? 交代? うん⁉」
「キーパーからフィールドプレイヤー用のユニフォームに着替えた?」
真珠と雛子が驚く。
「さあ、前半の内にもう一点返そうか!」
7番が声をかける。紅が7番にボールを預ける。
「三人とも! しんどいけど、ここは戻って!」
恋の指示で、魅蘭、真珠、雛子が守備に戻る。川崎ステラの陣内に壁が出来上がる。
「……ふふっ、そういうのをこじ開けるのが面白いんだよ!」
「むっ⁉」
7番が鋭いドリブル突破でゴール前にあっという間に侵入する。
「おらあっ!」
「よしっ! ⁉」
強烈なシュートは独特の変化で、最愛の腕からすり抜け、川崎ステラのゴールに入る。
「出た、鋭いドリブル突破からの無回転シュート!」
「彼女の代名詞的プレー!」
「ゴレイロからピヴォまで幅広くこなす、横浜プレミアムのエース、鶴見奈々子(つるみななこ)!」
「ふふふ、もっと俺様を称えな……」
奈々子と呼ばれた選手が自らの背番号7番を誇示する。
「そんなことはなかったわ!」
「むしろ……川崎ステラが盛り返しているわ!」
「やはりあの存在が大きいわね!」
「ええ、百合ヶ丘恋! まさか前半の内に出てくるとはね……」
「しかし、横浜プレミアム側がチャンスを作れないでいる……」
「ふふっ、前半はベンチで見ておこうと思ったけれど、そうも行かなくなってね……」
恋がギャラリーの声を聞きながら呟く。
「それっ!」
「はっ!」
「むっ!」
「八景島からの鋭い縦パスを百合ヶ丘がカット!」
「あそこに通すというのもさすがだけど、読む方もさすがね……」
「さっきから何度か同じことを繰り返しているわ……」
ギャラリーが恋のプレーに湧く。
「さすがは『鋼鉄の貴婦人』ね!」
「は? そこは『川崎の鉄壁』じゃないの⁉」
「はい? 『微笑みの将軍』って聞いたけれど⁉」
「ふ、二つ名でケンカしないで⁉」
謎の言い争いを始めたギャラリーに向かって、恋が思わず声を上げる。
「百合ヶ丘! 調子に乗るなよ!」
紅が恋を指差して声を上げる。
「! あ、ああ、これは失礼……試合中に集中を欠いていたわね……」
恋が視線を戻し、軽く頭を下げる。
「自分は『横浜の防波堤』だ!」
紅が自らの胸を右手の親指で指差す。
「二つ名で張り合ってきた⁉」
恋が戸惑う。
「百合ヶ丘と言えども万能ではない! とりあえずシュートを撃っていけ!」
「!」
紅の指示を受け、横浜プレミアムの選手がシュートを撃っていく。
「わたしを避けるように、その位置から強引にシュートを撃っても……」
「はあっ!」
わりと良いシュートではあったが最愛が難なく防ぐ。
「残念、そこには最愛ちゃんがいるのよ……」
恋がニヤリと笑う。
「むう……しかし、良いぞ! 多少強引な形でもどんどんシュートを撃っていけ! それで流れは引き戻せる!」
紅が前線に声をかける。
「……!」
「はっ!」
こぼれ球からのボレーシュートを最愛が防ぐ。
「! 良いボレーだったが、弾かずにキャッチング……!」
紅が驚く。
「……‼」
「ふっ!」
こぼれ球から抜け出した相手との1対1という難しい状況も最愛が防ぐ。
「‼ 前へ飛び出して、スライディングでクリア……!」
紅が再び驚く。
「………」
「ほっ!」
混戦状態となった川崎ステラのゴール前の隙を突いて、カーブをかけたシュートを放つが、これも最愛が防ぐ。
「⁉ 巻いた良いシュートだったが、横っ飛びで防いだ……!」
紅が三度驚く。
「すごいわよ、あのキーパー⁉」
「あのキーパーが加わってから川崎ステラは負け知らずだとか……」
「! ほう……それは良いキーパーだな。なるほど、百合ヶ丘だけではないか……」
ギャラリーの声を聞いて、紅は笑みを浮かべる。
「……⁉」
「寄越せ!」
紅が猛然と掛け上がってくる。味方は一瞬戸惑ったが、紅にパスを送る。
「………!」
「ナイスパス! それっ!」
「ぐうっ⁉」
紅の放ったグラウンダーの強烈なシュートも最愛が身を低くしてキャッチしてみせる。
「⁉ そ、それも防ぐか……」
「……攻勢は凌げたかしら……前半の内にここでもう一押し……雛子ちゃん!」
恋と代わった雛子がヴィオラに代わってピッチに戻る。雛子、真珠、魅蘭の三人はまだ粗さは残るものの、良い連携を見せ、横浜プレミアムのゴール前に再三侵入。チャンスを作る。
「むう……」
紅が顔をしかめる。
「ふふっ、これは俺様の出番かな?」
キーパーユニフォームを着た黒髪で整った短髪で、体格の良い女性がピッチに入る。
「選手交代! キーパーを変える⁉」
ギャラリーから驚きの声が上がる。魅蘭が首を傾げる。
「……キーパーなのに、7番?」
「魅蘭ちゃん! 良い調子だから気にせず続けて!」
「ええ!」
恋の声に魅蘭は頷く。その後、川崎ステラにチャンスが訪れる。
「おらっ!」
「はあん⁉」
「えいっ!」
「ふうん⁉」
「それっ!」
「ほおん⁉」
「あの7番、立て続けにシュートを……どれも簡単なシュートではなかったはず……」
魅蘭がファインセーブを連発する相手ゴールキーパーに舌を巻く。するとそのゴールキーパーがわざとボールをサイドラインに出す。
「なんだ? 交代? うん⁉」
「キーパーからフィールドプレイヤー用のユニフォームに着替えた?」
真珠と雛子が驚く。
「さあ、前半の内にもう一点返そうか!」
7番が声をかける。紅が7番にボールを預ける。
「三人とも! しんどいけど、ここは戻って!」
恋の指示で、魅蘭、真珠、雛子が守備に戻る。川崎ステラの陣内に壁が出来上がる。
「……ふふっ、そういうのをこじ開けるのが面白いんだよ!」
「むっ⁉」
7番が鋭いドリブル突破でゴール前にあっという間に侵入する。
「おらあっ!」
「よしっ! ⁉」
強烈なシュートは独特の変化で、最愛の腕からすり抜け、川崎ステラのゴールに入る。
「出た、鋭いドリブル突破からの無回転シュート!」
「彼女の代名詞的プレー!」
「ゴレイロからピヴォまで幅広くこなす、横浜プレミアムのエース、鶴見奈々子(つるみななこ)!」
「ふふふ、もっと俺様を称えな……」
奈々子と呼ばれた選手が自らの背番号7番を誇示する。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる