31 / 50
第1章
第8話(2)不動のキャプテン
しおりを挟む
「川崎ステラが大量リードしている!」
「これは意外な展開ね!」
「選手交代よ!」
「百合ヶ丘を出すの?」
「いや、違う選手ね……」
「誰かしら、あのツインテールは……」
「ふふっ! やっぱりワタクシの出番ですわね!」
魅蘭が笑いながらピッチ脇に立つ。
「頼むね」
「お任せあれ!」
円と交代で魅蘭がピッチに入る。
「よっと!」
雛子がボールを奪う。
「雛子さん、一旦下げて!」
ヴィオラがボールを要求する。
「それっ!」
雛子がボールを下げる。
「OK!」
ヴィオラがボールをキープする。
「ヴィオラ、寄越せ!」
真珠が前線でボールを要求しながら、斜めに走り込む。
「!」
横浜プレミアムのディフェンスがそれに釣られる。
「……!」
「⁉」
ヴィオラの出したパスが、マークの付いていないフリーの状態の魅蘭に渡る。
「ナイスパスですわ! ……えいっ!」
「き、決まった!」
「これで4点差……!」
「あの抜け出し方……只者じゃないわね……」
ギャラリーがざわつく。
「ふふふっ! この鷺沼魅蘭の名をその胸に刻み付けなさい! 横浜の皆さん!」
魅蘭が左手を胸に添え、右手を掲げる。
「さぎぬまみ……らん⁉」
「さぎぬま みらん ですわ!」
ギャラリーの声に魅蘭が反応する。
「ギャラリーとケンカすんなよ!」
「どの口が言うんだか……」
「ああん、なんか言ったか?」
「なにも……」
真珠と雛子が言い争いながら魅蘭に駆け寄る。
「とにかくナイス!」
「ファーストタッチでよく決めたわね!」
「ふふっ、もっと褒め称えてもよろしくてよ?」
魅蘭が胸を張る。
「いや、まだ試合中だからよ……」
「そうね、ゴールセレブレーションはこれくらいで……」
「あらら?」
軽くハグやタッチをして、さっと離れる真珠と雛子に魅蘭は拍子抜けする。
「おおっ、良い調子!」
「出来過ぎなくらいね……」
ベンチでガッツポーズを取る円の横で、恋が笑みを浮かべる。
「恋は出ないの?」
「ヴィオラちゃんのフィクソが上手く機能しているし、雛子ちゃんも守備を頑張っているし、変にいじらなくても良いんじゃないかしらね」
「なるほど……」
「まあ、もうちょっと様子を見て……ん?」
恋が横浜プレミアムのベンチを見る。コーンロウヘアーが特徴的な女性がコーチに何やら話しかけている。
「あ、あれは中華街で見た……」
「いよいよ出てくるということかしら……?」
「コーチ、自分が出ます」
「……」
「まだ前半とはいえ、これ以上の点差が開くのはマズいです」
「………」
「自分たちを投入してもらえれば、流れを取り戻してみせます」
「…………」
「コーチ!」
「アンタらがいないからこうなったんでしょ⁉ 揃いも揃ってどこ行ってたのよ⁉」
「会場間違えました……」
「ったく、とりあえず、アンタを投入するわ!」
コーチがユニフォーム姿になった、コーンロウヘアーの女性の背中を押す。
「おおっ‼」
ギャラリーが湧く。コーンロウヘアーの女性がピッチに入る。
「へっ、いよいよ真打のご登場か……」
真珠が笑う。
「三人はもっと前目にポジションを取れ! 守備は自分一人で充分だ!」
「ああん⁉」
コーンロウヘアーの女性が出した指示に真珠がムッとする。
「舐めやがって! ボールを寄越せ!」
「むっ……」
ヴィオラが逡巡する。
「いいから寄越せ!」
「はいっ!」
ヴィオラから真珠にボールが入る。
「よっしゃ!」
「むん!」
「うおっ⁉」
素早く体を寄せたコーンロウヘアーの女性が真珠からボールを奪う、ボールがこぼれる。
「よっと!」
「ナイスパス!」
雛子からのパスが抜け出した魅蘭に通る。
「……ふん!」
「ぬおっ⁉」
コーンロウヘアーの女性が猛然としたダッシュで魅蘭に追いつき、ボールを奪取する。
「そらっ! ……リターン!」
味方にボールを預けたコーンロウヘアーの女性が川崎ステラのゴール前に駆け上がる。
「そうは……なっ⁉」
対応しようとしたヴィオラが驚く。浮き球がゴール前に送られてきたからである。
「ぬん!」
「ぐっ⁉」
コーンロウヘアーの女性と競り合うがヴィオラは簡単に吹き飛ばされる。コーンロウヘアーの放った強烈なヘディングシュートが川崎ステラのゴールネットを揺らす。
「決まった! 守備面だけでなく、攻撃面でも頼れる!」
「これが横浜プレミアム、不動のキャプテン、八景島紅(はっけいじまくれない)!」
「さあ、反撃開始だ!」
紅と呼ばれたコーンロウヘアーの女性が両手を叩いて、チームを鼓舞する。
「これは意外な展開ね!」
「選手交代よ!」
「百合ヶ丘を出すの?」
「いや、違う選手ね……」
「誰かしら、あのツインテールは……」
「ふふっ! やっぱりワタクシの出番ですわね!」
魅蘭が笑いながらピッチ脇に立つ。
「頼むね」
「お任せあれ!」
円と交代で魅蘭がピッチに入る。
「よっと!」
雛子がボールを奪う。
「雛子さん、一旦下げて!」
ヴィオラがボールを要求する。
「それっ!」
雛子がボールを下げる。
「OK!」
ヴィオラがボールをキープする。
「ヴィオラ、寄越せ!」
真珠が前線でボールを要求しながら、斜めに走り込む。
「!」
横浜プレミアムのディフェンスがそれに釣られる。
「……!」
「⁉」
ヴィオラの出したパスが、マークの付いていないフリーの状態の魅蘭に渡る。
「ナイスパスですわ! ……えいっ!」
「き、決まった!」
「これで4点差……!」
「あの抜け出し方……只者じゃないわね……」
ギャラリーがざわつく。
「ふふふっ! この鷺沼魅蘭の名をその胸に刻み付けなさい! 横浜の皆さん!」
魅蘭が左手を胸に添え、右手を掲げる。
「さぎぬまみ……らん⁉」
「さぎぬま みらん ですわ!」
ギャラリーの声に魅蘭が反応する。
「ギャラリーとケンカすんなよ!」
「どの口が言うんだか……」
「ああん、なんか言ったか?」
「なにも……」
真珠と雛子が言い争いながら魅蘭に駆け寄る。
「とにかくナイス!」
「ファーストタッチでよく決めたわね!」
「ふふっ、もっと褒め称えてもよろしくてよ?」
魅蘭が胸を張る。
「いや、まだ試合中だからよ……」
「そうね、ゴールセレブレーションはこれくらいで……」
「あらら?」
軽くハグやタッチをして、さっと離れる真珠と雛子に魅蘭は拍子抜けする。
「おおっ、良い調子!」
「出来過ぎなくらいね……」
ベンチでガッツポーズを取る円の横で、恋が笑みを浮かべる。
「恋は出ないの?」
「ヴィオラちゃんのフィクソが上手く機能しているし、雛子ちゃんも守備を頑張っているし、変にいじらなくても良いんじゃないかしらね」
「なるほど……」
「まあ、もうちょっと様子を見て……ん?」
恋が横浜プレミアムのベンチを見る。コーンロウヘアーが特徴的な女性がコーチに何やら話しかけている。
「あ、あれは中華街で見た……」
「いよいよ出てくるということかしら……?」
「コーチ、自分が出ます」
「……」
「まだ前半とはいえ、これ以上の点差が開くのはマズいです」
「………」
「自分たちを投入してもらえれば、流れを取り戻してみせます」
「…………」
「コーチ!」
「アンタらがいないからこうなったんでしょ⁉ 揃いも揃ってどこ行ってたのよ⁉」
「会場間違えました……」
「ったく、とりあえず、アンタを投入するわ!」
コーチがユニフォーム姿になった、コーンロウヘアーの女性の背中を押す。
「おおっ‼」
ギャラリーが湧く。コーンロウヘアーの女性がピッチに入る。
「へっ、いよいよ真打のご登場か……」
真珠が笑う。
「三人はもっと前目にポジションを取れ! 守備は自分一人で充分だ!」
「ああん⁉」
コーンロウヘアーの女性が出した指示に真珠がムッとする。
「舐めやがって! ボールを寄越せ!」
「むっ……」
ヴィオラが逡巡する。
「いいから寄越せ!」
「はいっ!」
ヴィオラから真珠にボールが入る。
「よっしゃ!」
「むん!」
「うおっ⁉」
素早く体を寄せたコーンロウヘアーの女性が真珠からボールを奪う、ボールがこぼれる。
「よっと!」
「ナイスパス!」
雛子からのパスが抜け出した魅蘭に通る。
「……ふん!」
「ぬおっ⁉」
コーンロウヘアーの女性が猛然としたダッシュで魅蘭に追いつき、ボールを奪取する。
「そらっ! ……リターン!」
味方にボールを預けたコーンロウヘアーの女性が川崎ステラのゴール前に駆け上がる。
「そうは……なっ⁉」
対応しようとしたヴィオラが驚く。浮き球がゴール前に送られてきたからである。
「ぬん!」
「ぐっ⁉」
コーンロウヘアーの女性と競り合うがヴィオラは簡単に吹き飛ばされる。コーンロウヘアーの放った強烈なヘディングシュートが川崎ステラのゴールネットを揺らす。
「決まった! 守備面だけでなく、攻撃面でも頼れる!」
「これが横浜プレミアム、不動のキャプテン、八景島紅(はっけいじまくれない)!」
「さあ、反撃開始だ!」
紅と呼ばれたコーンロウヘアーの女性が両手を叩いて、チームを鼓舞する。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【第一章完結】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!
阿弥陀乃トンマージ
青春
大阪生まれの凸込笑美はとある事情があって、瀬戸内海の島へと引っ越してきた。近隣の島にある私立瀬戸内海学院に転入し、気分も新たに女子高校生生活を送ろうと考えていた。
しかし、転入初日、ある出会いが彼女を再び”あの世界”へ引きずり戻すこととなった……。
ツッコミの天才と謳われた少女が個性的な面々と織りなす、爆笑青春漫才コメディー、ここに開演!
美少女に恐喝されてフットサル部入ったけど、正直もう辞めたい
平山安芸
青春
史上最高の逸材と謳われた天才サッカー少年、ハルト。
とあるきっかけで表舞台から姿を消した彼は、ひょんなことから学校一の美少女と名高い長瀬愛莉(ナガセアイリ)に目を付けられ、半ば強引にフットサル部の一員となってしまう。
何故か集まったメンバーは、ハルトを除いて女の子ばかり。かと思ったら、練習場所を賭けていきなりサッカー部と対決することに。未来を掴み損ねた少年の日常は、少女たちとの出会いを機に少しずつ変わり始める。
恋も部活も。生きることさえ、いつだって全力。ハーフタイム無しの人生を突っ走れ。部活モノ系甘々青春ラブコメ、人知れずキックオフ。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
男装部?!
猫又うさぎ
青春
男装女子に抱かれたいっ!
そんな気持ちを持った
ただの女好き高校生のお話です。
〇登場人物 随時更新。
親松 駿(おやまつ しゅん) 3年
堀田 優希(ほった ゆうき) 3年
松浦 隼人(まつうら はやと) 3年
浦野 結華(うらの ゆいか) 3年
櫻井 穂乃果(さくらい ほのか) 3年
本田 佳那(ほんだ かな) 2年
熊谷 澪(くまがや れい) 3年 𝐧𝐞𝐰
委員会メンバー
委員長 松浦 隼人(まつうら はやと)3年
副委員長 池原 亮太(いけはら ゆうた)3年
書記 本田 佳那(ほんだ かな)2年
頑張ってます。頑張って更新するのでお待ちくださいっ!
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
ディア・ドロップ
あめいろ
青春
カフェで働くしがない青年、日野陽太は平凡だが幸せな日々を送っていた。そんな彼の前にある人物が現れる。
容姿端麗な彼女の名前は雨宮雫。
彼女はアイドル志望であり、陽太に自分をプロデュースして欲しいと依頼するのだった。
不人気プリンスの奮闘 〜唯一の皇位継承者は傍系宮家出身で、ハードモードの無理ゲー人生ですが、頑張って幸せを掴みます〜
田吾作
青春
21世紀「礼和」の日本。皇室に残された次世代の皇位継承資格者は当代の天皇から血縁の遠い傍系宮家の「王」唯一人。
彼はマスコミやネットの逆風にさらされながらも、仲間や家族と力を合わせ、次々と立ちはだかる試練に立ち向かっていく。その中で一人の女性と想いを通わせていく。やがて訪れる最大の試練。そして迫られる重大な決断。
公と私の間で彼は何を思うのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる