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第1章

第7話(3)お嬢様、思い出を語る

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「潮風が気持ち良いわね~♪」

「はい……」

 恋の言葉に最愛が頷く。

「ごめんね」

「え?」

 最愛が首を傾げる。

「急に神奈川遠征なんて言い出しちゃって……」

「ああ……」

「わたしって、昔から思い付いたら即行動!みたいなところがあるから……」

「ふむ……」

「ついつい周りを振り回しちゃうのよね~」

「自覚があったのですね……」

 最愛が小声で呟く。

「ええ?」

「いえ、なんでもありません」

 最愛が首を左右に振る。

「あ、そう……」

「……別にそれでも良いと思いますが」

「そう?」

「ええ、『思い立ったが吉日』という言葉もありますから」

「ふふっ、皆にとっては吉日になったかしらね?」

「なったと思いますよ」

「そうかしら?」

「ええ、あまり無責任なことは言えませんが」

「最愛ちゃんはどう?」

「わたくしがですか?」

「そう」

「楽しんでいますよ」

「楽しんでいる?」

「まずいですか?」

「いいえ、それなら良いのだけど」

「神奈川県って、良いところだなと……」

「ほう」

「これまでは東京の植民地みたいな認識しかありませんでしたが……」

「自分の住んでいる県を卑下し過ぎじゃない⁉」

 恋が困惑する。

「皆さんと色々周ることが出来て楽しかったです」

「どこへ行ったんだっけ?」

「……」

「あら?」

「大体、百合ヶ丘さんからのご提案だったかと思うのですが……」

「そうだっけ? 忘れちゃったわ」

 恋が首を傾げながら笑う。

「雛子さんとは相模湖でスワンボートを漕ぎました」

「ああ、言っていたわね」

「もう滅茶苦茶漕ぎました……」

「そ、そう……」

「ちょっと浮かび上がるくらい……」

「滅茶苦茶漕いだわね⁉」

 恋が驚く。

「真珠さんとは足柄古道を歩きました」

「ああ、それも言っていたわね」

「歴史の息吹を感じました」

「ふ~ん……」

「真珠さんは将来の夢が決まったそうです」

「へえ、何かしら?」

「偉人」

「漠然としているわね⁉」

 恋がまたも驚く。

「円さんとは小田原観光をしました」

「小田原城も上ったんでしょう?」

「ええ、上りました」

 最愛が頷く。

「どうだった?」

「なかなか出来ない経験をさせて頂きました」

「まあ、お嬢様でもなかなかお城に行く機会ないかもね」

「はい。覚えている限りでは……二回目でしょうかね?」

 最愛が首を傾げながら呟く。

「二回目?」

「ドイツのノインシュヴァンシュタイン城には行ったことがあるのですが……」

「ドイツから小田原⁉」

 恋がまたまた驚く。

「ヴィオラさんとは江ノ電に乗りました」

「ああ、そうだったわね」

 恋が思い出して笑う。

「色々と沿線を観光しました」

「江の島は行ったの?」

「時間の関係上、行けませんでした……」

 最愛が残念そうに語る。

「あら、そうなの……じゃあ、夏になったら皆で行きましょうか?」

「本当ですか⁉」

「え、ええ……」

 最愛が急に詰め寄ってきた為、恋が戸惑う。

「何月何日に行きますか⁉」

「そ、そうね、大体ね~」

「大体では困ります!」

「ま、まあ、それこそ皆と予定を合わせなくちゃ……鎌倉はどうだったの?」

 恋が話を変える。

「ああ、鷺沼さんが幕府を開くと心に決めたそうです」

「どうしてそうなるの⁉」

「しかし、良い国を造るのなら、後、二千年は生きないといけませんとわたくしが指摘しましたら、『確かに……』とおっしゃっていました」

「あ、ああ、4192年で良い国……お嬢様同士で変わった会話をしているのね~」

 恋が戸惑い気味に頷く。

「まあ、そんな感じです」

「ふふっ、それじゃあ、この横須賀でも良い思い出を作りましょうか」

「はい!」

 二人は三笠公園を訪れるなど横須賀観光を楽しんだ。その数時間後……。

「……!」

 最愛が相手の放ったシュートを防ぐ。

「最愛ちゃん! こっち!」

「それっ!」

 最愛が素早く駆け上がった恋に鋭いボールを送る。

「ナイスパ~ス♪ ……それっ!」

「決まった! ナイスシュート!」

「ふふっ……最愛ちゃんのセービングも冴え渡っているわね……戦艦三笠効果かしら?」

 恋が微笑みながら呟く。試合は恋と最愛が堅守を築き、リードを守り切った川崎ステラが勝利を収めた。これで遠征6連勝である。
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