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第1章
第3話(4)奥様の品定め
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「どういうことですか?」
ヴィオラが恋に尋ねる。
「お手並みを拝見するの♪」
「なんのために?」
「チームメイトの実力を把握しておくのはキャプテンとして大切なことでしょ?」
「! キャ、キャプテン……?」
「え? わたしがキャプテンでしょ? 違う?」
「……いいえ、違いません……」
ヴィオラが静かに首を振る。
「ねえ~そうよね~副キャプテン♪」
「じ、実質的なキャプテンは私みたいなものなのに……」
ヴィオラが小声で呟き、唇を噛む。
「え? なにか言ったかしら? 副キャプテン?」
「なにも……」
「そう、それじゃあ、副キャプテン……」
「副キャプテン、副キャプテンと連呼しないで下さい!」
ヴィオラが声を上げる。
「え~じゃあ、なんて呼べば良いの~?」
恋が小首を傾げる。
「さっきみたいに名前で呼べば良いでしょう!」
「大師ちゃん?」
「それは苗字!」
「あ~ヴィオラちゃん」
「そうです。それでは……」
「じゃあ、わたしのことも昔みたいに恋ちゃんって呼んで?」
「キャプテン」
「そうじゃなくて~」
「主将」
「言い換えただけじゃない~」
「船長」
「意味変わってない⁉」
「翼」
「キャプテン違い⁉」
「谷口」
「もはやサッカーですらない⁉」
恋が愕然とする。
「あの二人、昔は仲良かったんだよね~」
「今も仲良さそうに見えますけど」
円の言葉に魅蘭が反応する。
「いや、ああいう感じじゃなくてね……」
「確かに昔は仲良かったらしいけどな……『恋ちゃんヴィオちゃん』なんつって」
「捏造するんじゃないわよ、そんな漫才コンビみたいなことはしていないでしょう」
真珠の言葉を雛子が否定する。
「二人も知らないの?」
「少なくともオレらが入った頃にはあんな感じだったぜ」
「それはそうだったわね」
円の問いに真珠と雛子が思い出すように答える。
「そうなんだ……」
「なんでも……昔取り合ったのが原因らしいぜ」
「取り合った? 何をです?」
魅蘭が尋ねる。
「いやあ、女が取り合うって言ったらお前……」
真珠が首をすくめながら笑みを浮かべる。
「チャンネル権?」
「平和だな! ってか、昭和だな!」
「バーゲン品?」
「庶民的だな!」
「おもちゃ?」
「子供だな! そんな昔のことは知らねえよ!」
「う~ん、分かります?」
魅蘭が最愛に話を振る。最愛が腕を組んで考え込んでから口を開く。
「……言葉尻?」
「嫁と姑か!」
「……遺産?」
「どういう話だよ!」
「……跡目?」
「何のだよ⁉」
「分かりました、タマ」
「はあっ⁉」
「この場合、『命』と書いて、『タマ』と読みます……」
「発想が怖えよ!」
真珠が叫ぶ。
「そういうことを勘繰るのはやめなさいよ……」
雛子が注意する。最愛が頭を下げる。
「はあ……すみません……」
「別に謝らなくても良いけど」
「話を遮るってことはワタクシか溝ノ口さんが良い線行っていたってことですわ……」
「どっちもかすりもしていないわよ……!」
「皆さん、よろしいですか?」
ヴィオラが声をかける。皆が視線をヴィオラたちに向ける。恋が口を開く。
「お次はハーフコートで3対3をやりましょう~♪」
「3対3?」
雛子が首を傾げる。
「そうよ、メンバーはローテーションでね。六人全員が攻守の役割をこなしましょう」
「キーパーは溝ノ口さん固定です」
「は、はい!」
ヴィオラに声をかけられ、最愛が返事する。恋が笑顔で告げる。
「それじゃあ、早速始めましょう~」
メンバーがコートに散らばる。3対3が始まる。
「……恋!」
「はい♪」
「よしっ!」
「!」
恋とのワンツーパスで抜け出した円が鋭いシュートを放つが、最愛がキャッチする。
「あ~!」
天を仰ぐ円の脇で恋が考えを巡らす。
(ちょっと素直だったかしら? これなら……!)
「む!」
「ツインテールちゃん!」
恋が適切な守備位置につこうとしたヴィオラの体を絶妙に抑え込む。それによって、魅蘭のドリブルコースが出来上がった。
「貰いましたわ! それっ!」
出来る限り接近してから、魅蘭が低いシュートを放つが、最愛が足で防ぐ。
「……!」
「んなっ⁉ また抜きを狙いましたのに!」
(ギリギリまで相手の出方を我慢することが出来ている……集中力があるわね)
恋が感心する。
「そらっ、恋!」
真珠がパスを恋に渡す。
「……よっと♪」
「なっ⁉」
恋が守備陣のリズムをずらすような浮き球のパスをゴール前に送る。
「もらったぜ!」
「‼」
「どわあっ⁉」
ヘディングシュートを試みた真珠の前で最愛がジャンプし、ボールをパンチングする。真珠は思わず倒れ込む。最愛が慌てて手を差し伸べる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だぜ……」
(少しボールがペナルティーエリアの半円内にまで飛んじゃったわね……それにしても、相手とのボディコンタクトを恐れない度胸と、ここでは手を使っても良いという的確かつ冷静な状況判断力……)
真珠を引き起こす最愛を見ながら、恋が顎をさする。
「恋! こっち!」
「ええ!」
恋がダイレクトで相手の守備の裏に鋭いパスを通す。雛子が走り込む。
「ナイスパス! って⁉」
「……‼」
最愛が素早く前に飛び出し、雛子へのパスをカットし、ボールを蹴り出す。
(ふむ、飛び出しも素早いわね……それなら……!)
「……ナイス!」
恋が上手く相手を引き付け、ヴィオラにパスを送る。
「⁉」
ヴィオラが放った強烈なシュートを最愛が弾く。
「……それなら!」
「……⁉」
恋が遠い位置から強いシュートを放つが、最愛はガッシリと掴む。
「ナ、ナイスキーパー!」
(至近距離からの強烈なシュートにも臆せず……意表を突いたロングシュートにも慌てず……ふ~ん、なるほどね……)
「……キャプテン?」
「今日はこのへんで……お嬢……最愛ちゃん、わたしたちのゴールをよろしくね♪」
「! はい!」
ウインクする恋に最愛が力強く応える。
ヴィオラが恋に尋ねる。
「お手並みを拝見するの♪」
「なんのために?」
「チームメイトの実力を把握しておくのはキャプテンとして大切なことでしょ?」
「! キャ、キャプテン……?」
「え? わたしがキャプテンでしょ? 違う?」
「……いいえ、違いません……」
ヴィオラが静かに首を振る。
「ねえ~そうよね~副キャプテン♪」
「じ、実質的なキャプテンは私みたいなものなのに……」
ヴィオラが小声で呟き、唇を噛む。
「え? なにか言ったかしら? 副キャプテン?」
「なにも……」
「そう、それじゃあ、副キャプテン……」
「副キャプテン、副キャプテンと連呼しないで下さい!」
ヴィオラが声を上げる。
「え~じゃあ、なんて呼べば良いの~?」
恋が小首を傾げる。
「さっきみたいに名前で呼べば良いでしょう!」
「大師ちゃん?」
「それは苗字!」
「あ~ヴィオラちゃん」
「そうです。それでは……」
「じゃあ、わたしのことも昔みたいに恋ちゃんって呼んで?」
「キャプテン」
「そうじゃなくて~」
「主将」
「言い換えただけじゃない~」
「船長」
「意味変わってない⁉」
「翼」
「キャプテン違い⁉」
「谷口」
「もはやサッカーですらない⁉」
恋が愕然とする。
「あの二人、昔は仲良かったんだよね~」
「今も仲良さそうに見えますけど」
円の言葉に魅蘭が反応する。
「いや、ああいう感じじゃなくてね……」
「確かに昔は仲良かったらしいけどな……『恋ちゃんヴィオちゃん』なんつって」
「捏造するんじゃないわよ、そんな漫才コンビみたいなことはしていないでしょう」
真珠の言葉を雛子が否定する。
「二人も知らないの?」
「少なくともオレらが入った頃にはあんな感じだったぜ」
「それはそうだったわね」
円の問いに真珠と雛子が思い出すように答える。
「そうなんだ……」
「なんでも……昔取り合ったのが原因らしいぜ」
「取り合った? 何をです?」
魅蘭が尋ねる。
「いやあ、女が取り合うって言ったらお前……」
真珠が首をすくめながら笑みを浮かべる。
「チャンネル権?」
「平和だな! ってか、昭和だな!」
「バーゲン品?」
「庶民的だな!」
「おもちゃ?」
「子供だな! そんな昔のことは知らねえよ!」
「う~ん、分かります?」
魅蘭が最愛に話を振る。最愛が腕を組んで考え込んでから口を開く。
「……言葉尻?」
「嫁と姑か!」
「……遺産?」
「どういう話だよ!」
「……跡目?」
「何のだよ⁉」
「分かりました、タマ」
「はあっ⁉」
「この場合、『命』と書いて、『タマ』と読みます……」
「発想が怖えよ!」
真珠が叫ぶ。
「そういうことを勘繰るのはやめなさいよ……」
雛子が注意する。最愛が頭を下げる。
「はあ……すみません……」
「別に謝らなくても良いけど」
「話を遮るってことはワタクシか溝ノ口さんが良い線行っていたってことですわ……」
「どっちもかすりもしていないわよ……!」
「皆さん、よろしいですか?」
ヴィオラが声をかける。皆が視線をヴィオラたちに向ける。恋が口を開く。
「お次はハーフコートで3対3をやりましょう~♪」
「3対3?」
雛子が首を傾げる。
「そうよ、メンバーはローテーションでね。六人全員が攻守の役割をこなしましょう」
「キーパーは溝ノ口さん固定です」
「は、はい!」
ヴィオラに声をかけられ、最愛が返事する。恋が笑顔で告げる。
「それじゃあ、早速始めましょう~」
メンバーがコートに散らばる。3対3が始まる。
「……恋!」
「はい♪」
「よしっ!」
「!」
恋とのワンツーパスで抜け出した円が鋭いシュートを放つが、最愛がキャッチする。
「あ~!」
天を仰ぐ円の脇で恋が考えを巡らす。
(ちょっと素直だったかしら? これなら……!)
「む!」
「ツインテールちゃん!」
恋が適切な守備位置につこうとしたヴィオラの体を絶妙に抑え込む。それによって、魅蘭のドリブルコースが出来上がった。
「貰いましたわ! それっ!」
出来る限り接近してから、魅蘭が低いシュートを放つが、最愛が足で防ぐ。
「……!」
「んなっ⁉ また抜きを狙いましたのに!」
(ギリギリまで相手の出方を我慢することが出来ている……集中力があるわね)
恋が感心する。
「そらっ、恋!」
真珠がパスを恋に渡す。
「……よっと♪」
「なっ⁉」
恋が守備陣のリズムをずらすような浮き球のパスをゴール前に送る。
「もらったぜ!」
「‼」
「どわあっ⁉」
ヘディングシュートを試みた真珠の前で最愛がジャンプし、ボールをパンチングする。真珠は思わず倒れ込む。最愛が慌てて手を差し伸べる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だぜ……」
(少しボールがペナルティーエリアの半円内にまで飛んじゃったわね……それにしても、相手とのボディコンタクトを恐れない度胸と、ここでは手を使っても良いという的確かつ冷静な状況判断力……)
真珠を引き起こす最愛を見ながら、恋が顎をさする。
「恋! こっち!」
「ええ!」
恋がダイレクトで相手の守備の裏に鋭いパスを通す。雛子が走り込む。
「ナイスパス! って⁉」
「……‼」
最愛が素早く前に飛び出し、雛子へのパスをカットし、ボールを蹴り出す。
(ふむ、飛び出しも素早いわね……それなら……!)
「……ナイス!」
恋が上手く相手を引き付け、ヴィオラにパスを送る。
「⁉」
ヴィオラが放った強烈なシュートを最愛が弾く。
「……それなら!」
「……⁉」
恋が遠い位置から強いシュートを放つが、最愛はガッシリと掴む。
「ナ、ナイスキーパー!」
(至近距離からの強烈なシュートにも臆せず……意表を突いたロングシュートにも慌てず……ふ~ん、なるほどね……)
「……キャプテン?」
「今日はこのへんで……お嬢……最愛ちゃん、わたしたちのゴールをよろしくね♪」
「! はい!」
ウインクする恋に最愛が力強く応える。
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