10 / 50
第1章
第3話(1)新メンバー加入
しおりを挟む
3
「では、改めて、ご挨拶をよろしくお願いいたします……」
「鷺沼魅蘭ですわ、どうぞよろしく!」
ヴィオラに促され、魅蘭が挨拶する。
「……」
皆が拍手する。
「……というわけで、我らが川崎ステラに頼もしい仲間が一人増えました。非常に喜ばしいことですね……」
「ってかよお……」
「どうかしましたか、真珠さん?」
「良いのかよ、ヴィオラ?」
「良いのかとは?」
ヴィオラが首を傾げる。
「いや、なんというか……」
「この間の試合で皆さんもご覧になったように、実力の程は申し分ありません」
「それはそうかもしれねえけど……」
真珠が頭を掻く。
「なにか問題が?」
「ってか、アンタはそれで良いのか?」
真珠は魅蘭を指差す。魅蘭が首を傾げる。
「どういうことですの?」
「溝ノ口がライバルなんだろう?」
真珠が最愛を指し示しながら尋ねる。
「ええ、そうですわ」
魅蘭が頷く。
「それが一緒のチームになっちまって良いのか?」
「まあ、対戦相手というのも良いものですが……ワタクシ、気付いてしまいましたの」
「気付いた?」
「ええ」
「何に?」
「一緒のチームならば、いつでもどこでも手合わせが出来るではありませんか!」
「て、手合わせって……」
真珠が戸惑う。
「そうは思いませんこと⁉」
「ま、まあ、言わんとしていることは分からねえでもねえけど……」
魅蘭の勢いに圧され、真珠は頷く。
「柔軟やストレッチも済んだところで……ランニングをしましょうか」
ヴィオラが指示を出し、六人が二列になって、コートの周りを走り始める。
「はははっ! ワタクシがトップですわ~!」
「ま、待て!」
猛ダッシュを始める魅蘭に対し、真珠が声を上げる。
「待ちませんわ~!」
「な、なんだと⁉」
「おほほっ! 捕まえてごらんなさい~!」
「このおっ!」
「む!」
「うおおっ!」
「ワタクシに着いてくるとは、なかなかやりますわね!」
「負けてらんねえんだよ!」
「ならば、こちらも!」
「なっ⁉ 更にペースを⁉」
「いかがですか⁉」
「へっ! まだだぜ!」
「む! まだ着いてこれますか! ならば!」
「おおおっ!」
「お二方とも、盛り上がっているところたいへん恐縮なのですが……」
ヴィオラが口を開く。
「ええっ?」
「なんだよ、ヴィオラ!」
「これは競争ではありません。ペースをいたずらに乱さないで下さい……」
「はっ、なにを言い出すかと思えば!」
「ああ、オレらの迸る情熱は止められねえぜ!」
魅蘭と真珠が笑う。
「ペースを落として下さい……!」
「「はっ⁉」」
ヴィオラの静かに響く低音の声に魅蘭と真珠がはっとなる。
「……二度も同じことを言わせないで下さい……!」
「え、ええ……」
「わ、分かったぜ……」
魅蘭と真珠はペースを落とす。
「よろしい」
ヴィオラが笑顔を見せる。
「はあ……アホが増えた……」
ヴィオラと最愛の後方を走る雛子がため息交じりで呟く。
「ははっ、さすがはヴィオラ、もう手懐けちゃったね」
雛子の隣を走る円が笑う。
「呑気に笑っている場合でもないでしょう……」
「そう?」
「そうよ」
「結構賑やかになって良いと思うけど……」
「え?」
「なんだか良いムードメーカーになってくれそうじゃない?」
「サークルクラッシャー属性もあるけど?」
「う……」
円が言葉に詰まる。
「それでもいいのかしら?」
「ま、まあ、その辺には目を瞑るとして……」
「人が良いわね、色んな意味で……」
「いやあ……色んな意味で?」
円が雛子の顔を見る。雛子が魅蘭に向かって顎をしゃくる。
「あの子の実力は見たでしょ?」
「う、うん……」
「ポジションの適性とかもあるだろうけど……」
「あっ……」
円が何かに気付く。
「ようやく気付いたようね……」
「うん、このままだと……」
「そう……」
「真珠の相方……取られちゃうね、雛子」
「だ、誰が相方よ! って、そうじゃなくて!」
円が首を傾げる。
「違うの?」
「違うわよ!」
「分かっているよ……レギュラーでしょ?」
「そ、そうよ……」
「このままだと一人は確実に漏れちゃうね」
「そういうこと」
雛子が頷く。
「では、改めて、ご挨拶をよろしくお願いいたします……」
「鷺沼魅蘭ですわ、どうぞよろしく!」
ヴィオラに促され、魅蘭が挨拶する。
「……」
皆が拍手する。
「……というわけで、我らが川崎ステラに頼もしい仲間が一人増えました。非常に喜ばしいことですね……」
「ってかよお……」
「どうかしましたか、真珠さん?」
「良いのかよ、ヴィオラ?」
「良いのかとは?」
ヴィオラが首を傾げる。
「いや、なんというか……」
「この間の試合で皆さんもご覧になったように、実力の程は申し分ありません」
「それはそうかもしれねえけど……」
真珠が頭を掻く。
「なにか問題が?」
「ってか、アンタはそれで良いのか?」
真珠は魅蘭を指差す。魅蘭が首を傾げる。
「どういうことですの?」
「溝ノ口がライバルなんだろう?」
真珠が最愛を指し示しながら尋ねる。
「ええ、そうですわ」
魅蘭が頷く。
「それが一緒のチームになっちまって良いのか?」
「まあ、対戦相手というのも良いものですが……ワタクシ、気付いてしまいましたの」
「気付いた?」
「ええ」
「何に?」
「一緒のチームならば、いつでもどこでも手合わせが出来るではありませんか!」
「て、手合わせって……」
真珠が戸惑う。
「そうは思いませんこと⁉」
「ま、まあ、言わんとしていることは分からねえでもねえけど……」
魅蘭の勢いに圧され、真珠は頷く。
「柔軟やストレッチも済んだところで……ランニングをしましょうか」
ヴィオラが指示を出し、六人が二列になって、コートの周りを走り始める。
「はははっ! ワタクシがトップですわ~!」
「ま、待て!」
猛ダッシュを始める魅蘭に対し、真珠が声を上げる。
「待ちませんわ~!」
「な、なんだと⁉」
「おほほっ! 捕まえてごらんなさい~!」
「このおっ!」
「む!」
「うおおっ!」
「ワタクシに着いてくるとは、なかなかやりますわね!」
「負けてらんねえんだよ!」
「ならば、こちらも!」
「なっ⁉ 更にペースを⁉」
「いかがですか⁉」
「へっ! まだだぜ!」
「む! まだ着いてこれますか! ならば!」
「おおおっ!」
「お二方とも、盛り上がっているところたいへん恐縮なのですが……」
ヴィオラが口を開く。
「ええっ?」
「なんだよ、ヴィオラ!」
「これは競争ではありません。ペースをいたずらに乱さないで下さい……」
「はっ、なにを言い出すかと思えば!」
「ああ、オレらの迸る情熱は止められねえぜ!」
魅蘭と真珠が笑う。
「ペースを落として下さい……!」
「「はっ⁉」」
ヴィオラの静かに響く低音の声に魅蘭と真珠がはっとなる。
「……二度も同じことを言わせないで下さい……!」
「え、ええ……」
「わ、分かったぜ……」
魅蘭と真珠はペースを落とす。
「よろしい」
ヴィオラが笑顔を見せる。
「はあ……アホが増えた……」
ヴィオラと最愛の後方を走る雛子がため息交じりで呟く。
「ははっ、さすがはヴィオラ、もう手懐けちゃったね」
雛子の隣を走る円が笑う。
「呑気に笑っている場合でもないでしょう……」
「そう?」
「そうよ」
「結構賑やかになって良いと思うけど……」
「え?」
「なんだか良いムードメーカーになってくれそうじゃない?」
「サークルクラッシャー属性もあるけど?」
「う……」
円が言葉に詰まる。
「それでもいいのかしら?」
「ま、まあ、その辺には目を瞑るとして……」
「人が良いわね、色んな意味で……」
「いやあ……色んな意味で?」
円が雛子の顔を見る。雛子が魅蘭に向かって顎をしゃくる。
「あの子の実力は見たでしょ?」
「う、うん……」
「ポジションの適性とかもあるだろうけど……」
「あっ……」
円が何かに気付く。
「ようやく気付いたようね……」
「うん、このままだと……」
「そう……」
「真珠の相方……取られちゃうね、雛子」
「だ、誰が相方よ! って、そうじゃなくて!」
円が首を傾げる。
「違うの?」
「違うわよ!」
「分かっているよ……レギュラーでしょ?」
「そ、そうよ……」
「このままだと一人は確実に漏れちゃうね」
「そういうこと」
雛子が頷く。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
Y/K Out Side Joker . コート上の海将
高嶋ソック
青春
ある年の全米オープン決勝戦の勝敗が決した。世界中の観戦者が、世界ランク3ケタ台の元日本人が起こした奇跡を目の当たりにし熱狂する。男の名前は影村義孝。ポーランドへ帰化した日本人のテニスプレーヤー。そんな彼の勝利を日本にある小さな中華料理屋でテレビ越しに杏露酒を飲みながら祝福する男がいた。彼が店主と昔の話をしていると、後ろの席から影村の母校の男子テニス部マネージャーと名乗る女子高生に声を掛けられる。影村が所属していた当初の男子テニス部の状況について教えてほしいと言われ、男は昔を語り始める。男子テニス部立直し直後に爆発的な進撃を見せた海生代高校。当時全国にいる天才の1人にして、現ATPプロ日本テニス連盟協会の主力筆頭である竹下と、全国の高校生プレーヤーから“海将”と呼ばれて恐れられた影村の話を...。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる