【第1章完】お嬢様はゴールキーパー!

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第2話(2)ライバル?

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※前の話のラストを少し修正しました。

赤みがかった髪をツインテールにした女子→赤みがかったロングヘアーで小柄な女子




「ふふふ……」

「誰だ?」

 真珠が目を細める。

「まさか、フットサルを始められているとは……」

「か、語り出した!」

 円が戸惑う。

「学園中、どこも探してもいない、登下校のルートを張っていてもいない、ご自宅をアポなしで訪問してもいない……ないない尽くしでまったく途方に暮れていましたわ……」

「さりげなくヤバいこと言っているわね……」

 雛子が顔をしかめる。

「そんな中、フットサルチームに入ったという噂を耳にしましたわ。初めは何かの冗談かと思ったのですが……本当にいらっしゃいましたわね」

「……」

「ふふっ、驚きのあまり声も出ませんか……」

「……どちら様ですか?」

「なっ⁉」

 ロングヘアーの女子が愕然とする。

「なんだよ、知り合いじゃねえのか?」

「ええ、そうだと思いますが……」

 真珠の問いに最愛が首を傾げる。

「すみません、練習中ですので……」

「どうぞお帰り下さい」

 円と雛子が女子に伝える。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 溝ノ口最愛さん、まさか忘れたのですか⁉」

「なぜわたくしの名前を……」

「それは当然、ワタクシは貴女の宿敵であり、ライバルだからです!」

 女子が最愛をビシっと指差す。

「同じような意味じゃねえか」

 真珠がボソッと呟く。

「なんだ、宿敵いたんじゃん」

「どうやらそのようですわね……」

 円の言葉に最愛は若干戸惑いながら頷く。

「自覚していないってどういうことなのよ……本当にライバル?」

 雛子が呆れ気味の視線を女子に向ける。

「ほ、本当ですわ!」

「な~んか疑わしいわね……」

「怪しいな……」

 雛子と真珠が揃って腕を組む。円が尋ねる。

「なにかライバルだと証明出来るものはありますか?」

「え? 最愛さんとは同じ学園ですわ、ほら、学生証!」

 女子が制服の内ポケットから学生証を取り出して見せる。

「ふむ……そういえば、制服も同じ……」

「待て、円、学生証を偽造した可能性もあるぜ」

「そんな面倒なことは致しませんわ!」

「その制服もコスプレの可能性が……」

「そんなことも致しません!」

「う~ん……」

「やっぱり怪しいわね……」

 真珠と雛子がまじまじと女子を見つめる。

「あ、貴女がた、初対面だというのに随分と失礼ですわね……と、というか、最愛さんからもなにかおっしゃって下さいな」

 最愛が戸惑いながらも口を開く。

「ええっと、付属の初等部の子でしょうか……?」

「確かに小柄ですけど、そこまで小さくありませんわ!」

「中等部一年生の……」

「違いますわ!」

「二年生の……」

「違います!」

「三年生の……」

「何故中等部で細かく刻んでくるのですか⁉ ワタクシはれっきとした高等部ですわ!」

「ええっ⁉」

 最愛が後方に軽くのけ反る。

「そ、そんなに驚くことかしら⁉」

「こ、後輩の方?」

「だから違います! 年下から離れて!」

「ああ、先輩でしたか、これは失礼しましたわ」

「同級生です!」

「えっと、留年なされた……」

「留年などしていません! 何故に同い年だということを頑なに認めませんの⁉」

「同い年……」

 最愛が顎に手を当てる。

「そうですわ」

「端のクラスの……」

「違います‼」

「隣のクラスの……」

「だから違います‼」

「それとは反対側の隣のクラスの……」

「違います‼ 同じクラスですわ‼」

「え、同じクラス……?」

「何故それを忘れることが出来るのですか⁉」

「前の方の席に座っていらっしゃる……?」

「いいえ!」

「ならば、後ろの方の席……?」

「いいえ‼」

「どこの席の方?」

「貴女の隣ですわ!」

「ええっ⁉」

「こちらがええっ⁉ですわよ! ほぼ毎日顔を合わせてどうして忘れられるのですか⁉」

「う~む……」

 最愛が女子の頭を見つめる。女子がハッとなる。

「! まさかと思いますが……これでどうかしら⁉」

 女子がロングヘアーをツインテールにする。最愛が両手をポンと叩く。

「ああ、誰かと思ったら、鷺沼魅蘭(さぎぬまみらん)さん!」

「やっとお分かりに⁉」

「雰囲気が違うから分かりませんでしたわ」

「もしかして……今までワタクシのことをツインテールで認識していたのですか……」

「まあ、そうですね」

 最愛が頷く。

「~~! な、なんということ! この屈辱は今度晴らしてみせますわ!」

 魅蘭が最愛を再びビシっと指差して、その場を去る。ヴィオラとすれ違いになる。

「あら、あの子は確か……」

「ヴィオラ、知っているの?」

「ええ、今度の試合の相手チーム所属の子です。挨拶に来たのかしら?」

「えっ⁉」

 円たちがヴィオラの言葉に驚く。

「試合……」

 最愛が笑みを浮かべる。
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