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第1章
出会いはあまりにも唐突に
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プロローグ
「で、どうするのさ、ヴィオラ?」
コートに座っていた青と黄色を織り交ぜた特徴的なショートカットの女の子が向かい合ってベンチに座っていた、紫色の長い髪を丁寧な三つ編みにした女の子に尋ねる。
「誰か一人でも新たに加入させられなければ、ここからも追い出されてしまいます……」
「あの“人妻”じゃ駄目なのかい?」
「復帰までもう少しかかりそうですし……あまりあの方の力をお借りしたくはないです!」
三つ編みがプイっと横を向く。ショートカットが苦笑する。
「ヴィオラは人妻が絡むといつもこうだからな~」
「そ、そういう円さんはどうなのですか⁉」
「一応声はかけているけど、ボクはこの辺じゃあ、まだまだ『外様』だから知り合いがまだ少なくて……それに……ポジション的にもね」
「そ、そうですよね……」
三つ編みが俯く。
「なんだなんだ、随分とシケた面してんな~」
「アンタほどじゃないでしょ」
「あんだと⁉ どういう意味だ、トサカ?」
「言葉通り受け取ってもらえばいいわ、それにアタシには雛子というれっきとした名前があるの、お分かり? オオカミさん?」
「俺は真珠だ!」
赤いミディアムヘアを狼のようにボサボサとさせた女の子と水色の髪をトサカのように逆立てた女の子が口喧嘩しながら、コートに入ってくる。三つ編みが立ち上がって迎える。
「お二人とも、こんにちは。コートでは仲良くね……」
「お、おおっ……」
「し、失礼……」
三つ編みがにっこりと笑い、ウルフカットとトサカヘアの女の子が軽く頭を下げる。
「おおっ、笑顔一つであの二人を黙らせた……さすがは『聖女様』」
「それで? 二人は誰か当てが見つかった?」
三つ編みが問う。
「はん、一匹狼の『オレ様』にそんな知り合いいねえよ!」
「ちゃんと勧誘したわ。『べ、別にアタシのチームに入っても良いんだからね!』って」
「……それ、効果あったのか?」
「何故だか敬遠されるのよね~」
ウルフカットの問いにトサカヘアは首を傾げる。
「へっ、そりゃあそうだろ……」
「なによそれ」
「相変わらず見事な『逆様』っぷり……」
「ど、どういう意味よ!」
そんな中、三つ編みが突如叫ぶ。
「あ~! もうまったく、どいつもこいつもですよ!」
「ヴィオラがキレた⁉」
「‼」
「おらあっ!」
三つ編みが近くに転がっていたボールを思い切り蹴る。勢いがあり正確なボールはコートを覆うネットが破れていた部分――ちょうどボール一個分――そこから外に飛び出してしまい、近くを歩いていた青みがかったロングヘアーの女の子に当たりそうになる。
「あ、危ない⁉」
「と、止めて!」
「いや、ヴィオラ、止めるのはいくらなんでも無理だって!」
「……!」
「⁉」
ロングヘアーの女の子が華麗に振り返ると、ボールをキャッチしてみせる。
「と、止めた……?」
「ヴィ、ヴィオラ、謝りに行かないと!」
ショートカットに促され、三つ編みが三人を連れて、ロングヘアーの女の子の元に向かい、頭を下げて謝罪する。
「ご、ごめんなさい! いきなりシュートをぶちかましちゃって」
「シュート……?」
ロングヘアーの女の子が優雅に首を傾げる。その雰囲気に吞まれてしまったのか、よく分からないが、三つ編みの女の子が名前を問う。
「あ、貴女、お名前は?」
「溝ノ口最愛(みぞのくちもあ)と申します」
「! あ、あの溝ノ口グループの『お嬢様』の……」
「ええ……」
最愛と名乗った女の子は髪をかき上げる。その綺麗な仕草、そして長い手指に目を奪われた三つ編みが突拍子もない提案をする。
「溝ノ口さん、私たちのチームでゴールキーパーをしてくれないかしら?」
「ええっ!」
「……良いですよ」
「ええっ⁉」
最愛が頷く。そのやりとりにショートカットら三人は驚く。
「で、どうするのさ、ヴィオラ?」
コートに座っていた青と黄色を織り交ぜた特徴的なショートカットの女の子が向かい合ってベンチに座っていた、紫色の長い髪を丁寧な三つ編みにした女の子に尋ねる。
「誰か一人でも新たに加入させられなければ、ここからも追い出されてしまいます……」
「あの“人妻”じゃ駄目なのかい?」
「復帰までもう少しかかりそうですし……あまりあの方の力をお借りしたくはないです!」
三つ編みがプイっと横を向く。ショートカットが苦笑する。
「ヴィオラは人妻が絡むといつもこうだからな~」
「そ、そういう円さんはどうなのですか⁉」
「一応声はかけているけど、ボクはこの辺じゃあ、まだまだ『外様』だから知り合いがまだ少なくて……それに……ポジション的にもね」
「そ、そうですよね……」
三つ編みが俯く。
「なんだなんだ、随分とシケた面してんな~」
「アンタほどじゃないでしょ」
「あんだと⁉ どういう意味だ、トサカ?」
「言葉通り受け取ってもらえばいいわ、それにアタシには雛子というれっきとした名前があるの、お分かり? オオカミさん?」
「俺は真珠だ!」
赤いミディアムヘアを狼のようにボサボサとさせた女の子と水色の髪をトサカのように逆立てた女の子が口喧嘩しながら、コートに入ってくる。三つ編みが立ち上がって迎える。
「お二人とも、こんにちは。コートでは仲良くね……」
「お、おおっ……」
「し、失礼……」
三つ編みがにっこりと笑い、ウルフカットとトサカヘアの女の子が軽く頭を下げる。
「おおっ、笑顔一つであの二人を黙らせた……さすがは『聖女様』」
「それで? 二人は誰か当てが見つかった?」
三つ編みが問う。
「はん、一匹狼の『オレ様』にそんな知り合いいねえよ!」
「ちゃんと勧誘したわ。『べ、別にアタシのチームに入っても良いんだからね!』って」
「……それ、効果あったのか?」
「何故だか敬遠されるのよね~」
ウルフカットの問いにトサカヘアは首を傾げる。
「へっ、そりゃあそうだろ……」
「なによそれ」
「相変わらず見事な『逆様』っぷり……」
「ど、どういう意味よ!」
そんな中、三つ編みが突如叫ぶ。
「あ~! もうまったく、どいつもこいつもですよ!」
「ヴィオラがキレた⁉」
「‼」
「おらあっ!」
三つ編みが近くに転がっていたボールを思い切り蹴る。勢いがあり正確なボールはコートを覆うネットが破れていた部分――ちょうどボール一個分――そこから外に飛び出してしまい、近くを歩いていた青みがかったロングヘアーの女の子に当たりそうになる。
「あ、危ない⁉」
「と、止めて!」
「いや、ヴィオラ、止めるのはいくらなんでも無理だって!」
「……!」
「⁉」
ロングヘアーの女の子が華麗に振り返ると、ボールをキャッチしてみせる。
「と、止めた……?」
「ヴィ、ヴィオラ、謝りに行かないと!」
ショートカットに促され、三つ編みが三人を連れて、ロングヘアーの女の子の元に向かい、頭を下げて謝罪する。
「ご、ごめんなさい! いきなりシュートをぶちかましちゃって」
「シュート……?」
ロングヘアーの女の子が優雅に首を傾げる。その雰囲気に吞まれてしまったのか、よく分からないが、三つ編みの女の子が名前を問う。
「あ、貴女、お名前は?」
「溝ノ口最愛(みぞのくちもあ)と申します」
「! あ、あの溝ノ口グループの『お嬢様』の……」
「ええ……」
最愛と名乗った女の子は髪をかき上げる。その綺麗な仕草、そして長い手指に目を奪われた三つ編みが突拍子もない提案をする。
「溝ノ口さん、私たちのチームでゴールキーパーをしてくれないかしら?」
「ええっ!」
「……良いですよ」
「ええっ⁉」
最愛が頷く。そのやりとりにショートカットら三人は驚く。
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