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第1笑
4本目(2)厳しさの反動
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「え、えっと……笑美さん」
「お、男の子たち? 声を聴く限り女の子やと……」
笑美が司の服を脱がそうとしていた男の子二人を指差す。
「え~女の子だって~嬉しい~」
黒髪をおしゃれに右の七三分けにしている男の子が両手で自らの頬を抑える。
「ワタシらもなかなかやるわね~」
こちらは左の七三分けにしている男の子が満足気な笑みを浮かべる。二人とも、髪型など細かい違いがあるが、顔がそっくりである。首を傾げる笑美に司が告げる。
「あ、紹介します。同じ2年生の能美兄弟のお二人です」
「兄の能美礼明(のうみれいめい)で~す」
右の七三分けが右手を挙げる。
「弟の能美礼光(のうみれいこう)で~す」
左の七三分けが左手を挙げる。二人が笑美に向かって手を振る。
「「よろしく~♪」」
「よ、よろしく……って、ふ、双子……?」
「そうよ~」
「初めて見た?」
「い、いや、初めてってことはないねんけど……」
「あ、関西弁だ~」
「ないねんけど……だって!」
「「かわいい~♪」」
能美兄弟がお互いの顔を見合わせて声を上げる。笑美が戸惑う。
「か、かわいい……?」
「うん、かわいい!」
「と~ってもかわいい!」
「ああ、それはおおきに……」
「おおきにだって!」
「生で初めて聴いた~」
「やばい!」
「感動~!」
能美兄弟のテンションがさらに上がる。
「ま、まあ、部室に名札がかけてあるから……存在はなんとなく知っとったけど……また、その、なんというか……」
「気持ち悪い?」
「えっ?」
「嫌?」
「ええっ?」
礼明と礼光からいきなり迫られ、笑美は面食らう。司が間に入ろうとする。
「ふ、二人とも、初顔合わせなんですから……」
「……別に嫌ちゃうよ」
笑美がぼそっと呟く。
「本当に?」
「ああ、ホンマや」
首を傾げる礼明に対し、笑美が頷く。
「ホンマにホンマ?」
「ホンマにホンマや」
礼光の問いに笑美は即答する。
「……」
「………」
能美兄弟は再び顔を見合わせ、黙り込む。司が問う。
「ふ、二人とも……?」
「「良かった~!」」
「よ、良かった?」
「そうよ、司ちゃん!」
「ワタシらこんな感じじゃない?」
「は、はい……」
「初対面の段階で敬遠されちゃう場合が多いのよ~」
「それが彼女は嫌じゃないって!」
「本当に良かった~わたし、安心しちゃったわ~」
礼明が胸をなで下ろす。
「昨日から緊張で眠れなかったものね~」
礼光がうんうんと頷く。
「あ、緊張していたんですね……」
「そうよ、司ちゃん! だから江田パイセンをいじって緊張を紛らわせていたんだから~」
「ええっ! いじりだったんすか⁉」
江田が愕然とする。
「いや、江田パイセンのボディは見事よ」
「それは別に嘘とかじゃないわ、安心して」
「あ、そ、そうすか、それは良かったっす……」
「……僕がつられて脱いだのは馬鹿みたいじゃないか?」
「あ~」
「それは若干否めないわね」
「若干⁉」
屋代が上半身裸で愕然とする。笑美が司に問う。
「えっと……司くん?」
「なんでしょう?」
「もしかしてやけど……」
「はい、そのもしかしてです。今度のネタライブはこの二人と組んで欲しいんです」
「! ト、トリオかいな……?」
「そうなりますね」
「ほ、ほう……」
笑美が腕を組む。礼明が首を捻る。
「やっぱり難しい感じ?」
「い、いや、そういうわけやないけども……気になることがあって……」
「気になること?」
「兄弟二人とも明るいやん、そのノリを敬遠する人も、そら中にはおるやろうけど、友達も結構多そうやん?」
「まあ、それは……」
「少なくはないわね」
「なんでまたお笑いサークルに?」
「う~ん……」
「それは……」
「それは?」
能美兄弟は三度顔を見合わせてから、バッと笑美の方を見る。
「「弾けたいの!」」
「じゅ、十分弾けていると思うんやけど⁉」
「……この二人はこの辺の島々では一番大きい寺の生まれだ」
「て、寺⁉」
服を着た屋代の言葉に笑美が驚く。
「そうなのよ~家のしつけがそれはもう厳しくて厳しくて……」
「いっつも抑圧されている感じがするのよね~」
「は、反動ってことかいな……」
「卒業したら本格的にお坊さんの修行に入っちゃうからさ……」
「それまでに高校生らしい思い出を刻みたいのよね~」
「……そうか、分かった、一緒に頑張ろう!」
笑美が兄弟に向かって頷く。
「お、男の子たち? 声を聴く限り女の子やと……」
笑美が司の服を脱がそうとしていた男の子二人を指差す。
「え~女の子だって~嬉しい~」
黒髪をおしゃれに右の七三分けにしている男の子が両手で自らの頬を抑える。
「ワタシらもなかなかやるわね~」
こちらは左の七三分けにしている男の子が満足気な笑みを浮かべる。二人とも、髪型など細かい違いがあるが、顔がそっくりである。首を傾げる笑美に司が告げる。
「あ、紹介します。同じ2年生の能美兄弟のお二人です」
「兄の能美礼明(のうみれいめい)で~す」
右の七三分けが右手を挙げる。
「弟の能美礼光(のうみれいこう)で~す」
左の七三分けが左手を挙げる。二人が笑美に向かって手を振る。
「「よろしく~♪」」
「よ、よろしく……って、ふ、双子……?」
「そうよ~」
「初めて見た?」
「い、いや、初めてってことはないねんけど……」
「あ、関西弁だ~」
「ないねんけど……だって!」
「「かわいい~♪」」
能美兄弟がお互いの顔を見合わせて声を上げる。笑美が戸惑う。
「か、かわいい……?」
「うん、かわいい!」
「と~ってもかわいい!」
「ああ、それはおおきに……」
「おおきにだって!」
「生で初めて聴いた~」
「やばい!」
「感動~!」
能美兄弟のテンションがさらに上がる。
「ま、まあ、部室に名札がかけてあるから……存在はなんとなく知っとったけど……また、その、なんというか……」
「気持ち悪い?」
「えっ?」
「嫌?」
「ええっ?」
礼明と礼光からいきなり迫られ、笑美は面食らう。司が間に入ろうとする。
「ふ、二人とも、初顔合わせなんですから……」
「……別に嫌ちゃうよ」
笑美がぼそっと呟く。
「本当に?」
「ああ、ホンマや」
首を傾げる礼明に対し、笑美が頷く。
「ホンマにホンマ?」
「ホンマにホンマや」
礼光の問いに笑美は即答する。
「……」
「………」
能美兄弟は再び顔を見合わせ、黙り込む。司が問う。
「ふ、二人とも……?」
「「良かった~!」」
「よ、良かった?」
「そうよ、司ちゃん!」
「ワタシらこんな感じじゃない?」
「は、はい……」
「初対面の段階で敬遠されちゃう場合が多いのよ~」
「それが彼女は嫌じゃないって!」
「本当に良かった~わたし、安心しちゃったわ~」
礼明が胸をなで下ろす。
「昨日から緊張で眠れなかったものね~」
礼光がうんうんと頷く。
「あ、緊張していたんですね……」
「そうよ、司ちゃん! だから江田パイセンをいじって緊張を紛らわせていたんだから~」
「ええっ! いじりだったんすか⁉」
江田が愕然とする。
「いや、江田パイセンのボディは見事よ」
「それは別に嘘とかじゃないわ、安心して」
「あ、そ、そうすか、それは良かったっす……」
「……僕がつられて脱いだのは馬鹿みたいじゃないか?」
「あ~」
「それは若干否めないわね」
「若干⁉」
屋代が上半身裸で愕然とする。笑美が司に問う。
「えっと……司くん?」
「なんでしょう?」
「もしかしてやけど……」
「はい、そのもしかしてです。今度のネタライブはこの二人と組んで欲しいんです」
「! ト、トリオかいな……?」
「そうなりますね」
「ほ、ほう……」
笑美が腕を組む。礼明が首を捻る。
「やっぱり難しい感じ?」
「い、いや、そういうわけやないけども……気になることがあって……」
「気になること?」
「兄弟二人とも明るいやん、そのノリを敬遠する人も、そら中にはおるやろうけど、友達も結構多そうやん?」
「まあ、それは……」
「少なくはないわね」
「なんでまたお笑いサークルに?」
「う~ん……」
「それは……」
「それは?」
能美兄弟は三度顔を見合わせてから、バッと笑美の方を見る。
「「弾けたいの!」」
「じゅ、十分弾けていると思うんやけど⁉」
「……この二人はこの辺の島々では一番大きい寺の生まれだ」
「て、寺⁉」
服を着た屋代の言葉に笑美が驚く。
「そうなのよ~家のしつけがそれはもう厳しくて厳しくて……」
「いっつも抑圧されている感じがするのよね~」
「は、反動ってことかいな……」
「卒業したら本格的にお坊さんの修行に入っちゃうからさ……」
「それまでに高校生らしい思い出を刻みたいのよね~」
「……そうか、分かった、一緒に頑張ろう!」
笑美が兄弟に向かって頷く。
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