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第1章
第5話(2)青年はエクソシスト
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「一応確認させてもらうが、最寄田静香……で間違いねえな?」
「は、はい……」
わたしは戸惑い気味に頷く。
「はあ……五日目か、やれやれ、やっと会うことが出来たぜ……」
全身黒ずくめの恰好をした金髪の青年は両手を広げて呟く。ワイルドな雰囲気を身に纏っているが、精悍な顔立ちをしている。長すぎず、短すぎない髪はセットされていない、いわゆる無造作ヘアーといった感じだが、それがよく似合っている。好き嫌いは別として、世の女性の多くは彼のことをイケメンだと判断するだろう。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年はそれに気が付いて、首を捻る。
「ん? どうかしたか?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……ビビッてんのか?」
「ま、まあ、そうですね……」
四日前の一昨昨日、一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、仕方がないことだろう。わたしは素直に頷く。
「へへっ……オイラは決して怪しいもんじゃねえよ」
「そ、そうですか⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、全身黒ずくめの服を着ている男性は怪しい寄りだと思う。歌舞伎町ならいなくもなさそうだが。
「そうだ。だからそんなにビビんなって」
「……何故、わたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、アンタに用があるからだよ」
「ス、スカウトの類でしたらお断りします! というか、そういうお店で働くのは法律に引っかかってしまいますよ!」
「! ひゃっはっはっは!」
青年は声を上げて笑う。わたしは少しムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いやいや……オイラはスカウトマンじゃねえよ。こういうもんだ」
青年は首に提げた十字架のペンダントを見せてくる。
「え? じゅ、十字架……? えっと……?」
「ああ、オイラはブレム=マタ。エクソシストだ」
「エ、エクソシスト⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のな」
ブレムと名乗った青年は髪をかき上げる。
「エクソシストはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうか?」
「そうですよ! 映画とかでしか見ませんよ」
「へえ……トウキョウはこんなにデケえ街だというのに?」
ブレムさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「そこの新宿駅は世界で一番の利用者数だと聞いたが?」
「そ、それはそうらしいですが……」
「それならば中にはいるだろう、エクソシストの一人や二人くらい」
「そ、そうかもしれませんが……いちいち確認とかはしませんから知らないですけど」
「それっぽい気は感じるんだけどな……」
ブレムさんは腕を組んで呟く。生憎、気とか言われても困る。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「ちょっと待て……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………精霊に問う……」
ブレムさんはなにやらブツブツと呟きながら、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだな」
ブレムさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいんだが……どうだ?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に嫌な顔をしてしまう。ブレムさんは苦笑する。
「露骨に嫌そうだな……どうしてだ?」
「いや、どうしてって言われても……」
「言っておくけどナンパじゃねえぞ?」
「ナンパの方がまだマシですよ」
「マシ?」
「ええ、エクソシストってなんですか?」
「邪悪なものを祓うものだよ」
「ご自身も邪悪寄りかと……」
「はっ、言ってくれんじゃねえの」
「失礼、思っていたことを口に出してしまいました……ご本名は? 日本の方ですか?」
「色々と決まりというか、縛りがあってな……それについては明かせねえ」
「ええ……」
縛りってなに? 日本語はネイティブのそれに近いようだけど……。しかし、エクソシストとは……一体どうしたものか……。
「……どうよ?」
「……いや、いいです。失礼します」
「待ってるぜ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。このちょい悪なイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ブレムさんが何故かいたからだ。
「おう」
「……何故にここに?」
「いや、オイラもホームルームが早目に終わったからな……この辺りを調べていた」
ブレムさんはペンダントを地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですが……」
「ああ、オイラはこの学園の転入生だよ」
「せ、制服を着なくて良いんですか?」
「ああいうのは窮屈だからな、オイラは何者にも縛られたくねえんだよ」
さっき縛りがあるとかなんとか言ってなかったっけ? わたしは首を傾げた後、一応尋ねてみる。やぶへびになるだろうとは半ば覚悟しながらも。
「……なにをされているんですか?」
「反応がないかを調べているんだよ」
「は、反応ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、悪魔だ。さあ、共に祓おうじゃねえか」
「はいいいいいっ⁉」
ブレムさんの発言にわたしは驚く。
「は、はい……」
わたしは戸惑い気味に頷く。
「はあ……五日目か、やれやれ、やっと会うことが出来たぜ……」
全身黒ずくめの恰好をした金髪の青年は両手を広げて呟く。ワイルドな雰囲気を身に纏っているが、精悍な顔立ちをしている。長すぎず、短すぎない髪はセットされていない、いわゆる無造作ヘアーといった感じだが、それがよく似合っている。好き嫌いは別として、世の女性の多くは彼のことをイケメンだと判断するだろう。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年はそれに気が付いて、首を捻る。
「ん? どうかしたか?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……ビビッてんのか?」
「ま、まあ、そうですね……」
四日前の一昨昨日、一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、仕方がないことだろう。わたしは素直に頷く。
「へへっ……オイラは決して怪しいもんじゃねえよ」
「そ、そうですか⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、全身黒ずくめの服を着ている男性は怪しい寄りだと思う。歌舞伎町ならいなくもなさそうだが。
「そうだ。だからそんなにビビんなって」
「……何故、わたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、アンタに用があるからだよ」
「ス、スカウトの類でしたらお断りします! というか、そういうお店で働くのは法律に引っかかってしまいますよ!」
「! ひゃっはっはっは!」
青年は声を上げて笑う。わたしは少しムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いやいや……オイラはスカウトマンじゃねえよ。こういうもんだ」
青年は首に提げた十字架のペンダントを見せてくる。
「え? じゅ、十字架……? えっと……?」
「ああ、オイラはブレム=マタ。エクソシストだ」
「エ、エクソシスト⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のな」
ブレムと名乗った青年は髪をかき上げる。
「エクソシストはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうか?」
「そうですよ! 映画とかでしか見ませんよ」
「へえ……トウキョウはこんなにデケえ街だというのに?」
ブレムさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「そこの新宿駅は世界で一番の利用者数だと聞いたが?」
「そ、それはそうらしいですが……」
「それならば中にはいるだろう、エクソシストの一人や二人くらい」
「そ、そうかもしれませんが……いちいち確認とかはしませんから知らないですけど」
「それっぽい気は感じるんだけどな……」
ブレムさんは腕を組んで呟く。生憎、気とか言われても困る。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「ちょっと待て……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………精霊に問う……」
ブレムさんはなにやらブツブツと呟きながら、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだな」
ブレムさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいんだが……どうだ?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に嫌な顔をしてしまう。ブレムさんは苦笑する。
「露骨に嫌そうだな……どうしてだ?」
「いや、どうしてって言われても……」
「言っておくけどナンパじゃねえぞ?」
「ナンパの方がまだマシですよ」
「マシ?」
「ええ、エクソシストってなんですか?」
「邪悪なものを祓うものだよ」
「ご自身も邪悪寄りかと……」
「はっ、言ってくれんじゃねえの」
「失礼、思っていたことを口に出してしまいました……ご本名は? 日本の方ですか?」
「色々と決まりというか、縛りがあってな……それについては明かせねえ」
「ええ……」
縛りってなに? 日本語はネイティブのそれに近いようだけど……。しかし、エクソシストとは……一体どうしたものか……。
「……どうよ?」
「……いや、いいです。失礼します」
「待ってるぜ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。このちょい悪なイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ブレムさんが何故かいたからだ。
「おう」
「……何故にここに?」
「いや、オイラもホームルームが早目に終わったからな……この辺りを調べていた」
ブレムさんはペンダントを地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですが……」
「ああ、オイラはこの学園の転入生だよ」
「せ、制服を着なくて良いんですか?」
「ああいうのは窮屈だからな、オイラは何者にも縛られたくねえんだよ」
さっき縛りがあるとかなんとか言ってなかったっけ? わたしは首を傾げた後、一応尋ねてみる。やぶへびになるだろうとは半ば覚悟しながらも。
「……なにをされているんですか?」
「反応がないかを調べているんだよ」
「は、反応ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、悪魔だ。さあ、共に祓おうじゃねえか」
「はいいいいいっ⁉」
ブレムさんの発言にわたしは驚く。
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