37 / 39
ゆめみたい
しおりを挟む
「白バトさま。この流星群が、あたしのせいってどういうこと?」
こうゆうの壮大《そうだい》っていうのかな。とてつもなくすごくて宇宙的なことが、なんであたしのせいなの。ひょっとして、あたし魔法つかいだったとか? それとも、エスパー?
「そなたは、呼び水だったのじゃ」
「よびみずってなに?」
なんだその地味な言葉。がっかりなんだけど。
「面倒じゃの。はよう大人になれ。簡単にいえば、きっかけじゃ。そなたの存在が、この島へ落ちてくる星のかけらの意味をかえたのだ」
「ますます、わかんないんだけど」
「どういうことだよ。オレらにも教えてくれよ、白バトさま」
ゲンがサブ兄ちゃんを支え、白バトさまへよってきた。
「ええい、そなたまで。今そんな悠長《ゆうちょう》なことを話している暇はない。はよう池へ入るのじゃ」
そうだった。池がひかる時に入らないと。あたしのつえは崖の上においてきたから、はいはいしながら進む。
流星群の落下がぴたりとやんだ。ゲンとサブ兄ちゃんが先に池へ入った。あたしも足からそっと入る。はれた左足に、冷たい水がここちいい。
あたしたち三人が首元までつかる深さへ進むと、頭上から満月の光は真っすぐおりてきた。水面に黄色い満月が落っこちたみたい。夜空にうかぶ満月と池にうつる満月を光の柱がつないでる。
その光の柱に反応して、池の中の星のかけらもひかり出した。白バトさまがいったように、ドバーっとひかっている。あたしたちの輪郭《りんかく》が、ぼやけるくらい強い光。まぶしくて目をとじたら、まぶたの裏も明るい。
その裏側にいろんな映像がうかんできた。
島の学校で授業をうけている子どもたち。あたしが知ってる、ボロボロの校舎じゃない。廃村になる前の風景?
漁船に乗って、あみを引いてるおじさんの姿。井戸から水をくんでる女の人。その人たちをみあげてる映像だ。これをみているのは、子どもたち?。
島の風景とはちがう映像も。
海をさみしそうにみているおじいさんの横顔。タンスの中の着物を大事そうにみているおばあさんの後ろ姿。スーツを着て家を出ていくおじさん。
これは、島をはなれた後の記憶? この島と関係ない記憶だ。つぎつぎかわる映像の中に、野球をやってるあたしの姿があった。これって、あたしの家族の記憶?
まぶしい光と、くるくるかわる映像にめまいがしそう。体まで、めまいにつられて感覚がなくなってきた。自分の体が自分じゃないみたい。
ふっと光が突然《とつぜん》やんだ。目をあけると、さっきまでのまぶしさがうそのような暗闇に、放り出された。目を細めると、横に立つサブ兄ちゃんとゲンの姿がみえた。二人はあたしと同じ大きさ。元の大きさにもどったのかわからない。
「よかったのお、そちたち。今年は元にもどったぞ」
さっきの壮大な景色とは真逆な、まのびした白バトさまの声。あわてて、池のまわりを探す。
いた! いつもの小さなかわいい姿の白バトさま。あらためて自分の体をみた。さっき首元まであった池の水は、あたしたちの足元にしかない。
ということは、元の大きさにもどれたんだ。夢みたい。
「やった。アスのおかげだ。この大きさにもどったの。何年ぶりだろう」
「ありがとう。アスがいなかったら、とっくにあきらめてたよ」
そういうふたりにあたしは、だきついた。ふたりの体温があったかい。夢じゃない。あたしたちは、やりとげたんだ。
「こちらこそ、ありがとう!」
あたしたちは三人でだき合い、ひとかたまりになって、水しぶきをあげながら飛びはねた。もう、足首も痛くない。何回だって飛べる。
「やめぬか。我に水がかかる」
白バトさまの苦情を聞いて、しぶしぶ池から出た。
「さっきおっしゃっていた、星のかけらの意味がかわったというのは、どういうことですか?」
すっかり元気になったサブ兄ちゃんが、白バトさまを腕へ乗せ質問し始めた。
「つまりの。小娘を心配する家族の強い思いが、この島へとどいた。すると、他の住民を思う気持ちも星のかけらとなってやってきたのじゃ」
「全然意味わかんねえ」
「他の住民って。この島にはもう三人しかいないよ」
「そうか、蛍か。蛍になった人々を思う気持ちがとどいたんだ」
サブ兄ちゃんが太ももをたたいていった。
「そうじゃ。今までは元住民の島の思い出だったものが、ここにいる蛍になった住民を思う思い出も、星のかけらとなったということじゃ。わかったかの?」
あたしとゲンは同時に首をかしげていった。
「たぶん」
「あはは、そっくりな反応だね」
サブ兄ちゃんに笑われた。だって、ゲンとあたしはおじいちゃんと孫なんだもん。内緒だけど。そっくりなのは、あたりまえ。
「さあ、もうよいだろう。ねぐらへ帰ってひと眠りするがよい。小娘、帰るのは明日でよかろう。我もつかれたしの」
「これから、お酒飲まないでね。白バトさまも眠ってね。そして朝いちばんここにくるから待っててよ」
白バトさまには、十分念おししとかないと。
「わかった、わかった。我も眠る。ではの」
そういって、やぶの中へ首を前後にゆらしながら入っていった。
あたしたちは、石段を競うように一気にかけおりた。あんなに高かった石段だったのに。体が元にもどったら、こんなに簡単におりられる。これから、ゲンもサブ兄ちゃんもできることがふえるね。
あたしは、ちょっとだけほこらしい気持ちでふたりをみた。
石段の下のクギでとめた葉っぱと青い石を拾いながら、ねぐらへ歩き始める。
ふたりはもうあたしの肩に乗っていない。横を同じ目線で歩いてる。小人になった時と同じなんだけど、なんかちょっと恥《は》ずかしい。
恥ずかしさをまぎらわすため、あたしはいった。
「ふたりと最後に野球したかったな」
「やろうぜ、アスが帰る前に」
「でも、バットとボールがないよ」
「ボールもってるよ。ボクは中学で野球部に入ってたんだ」
えっ? サブ兄ちゃんが野球やってたなんてはじめて聞いた。
こうゆうの壮大《そうだい》っていうのかな。とてつもなくすごくて宇宙的なことが、なんであたしのせいなの。ひょっとして、あたし魔法つかいだったとか? それとも、エスパー?
「そなたは、呼び水だったのじゃ」
「よびみずってなに?」
なんだその地味な言葉。がっかりなんだけど。
「面倒じゃの。はよう大人になれ。簡単にいえば、きっかけじゃ。そなたの存在が、この島へ落ちてくる星のかけらの意味をかえたのだ」
「ますます、わかんないんだけど」
「どういうことだよ。オレらにも教えてくれよ、白バトさま」
ゲンがサブ兄ちゃんを支え、白バトさまへよってきた。
「ええい、そなたまで。今そんな悠長《ゆうちょう》なことを話している暇はない。はよう池へ入るのじゃ」
そうだった。池がひかる時に入らないと。あたしのつえは崖の上においてきたから、はいはいしながら進む。
流星群の落下がぴたりとやんだ。ゲンとサブ兄ちゃんが先に池へ入った。あたしも足からそっと入る。はれた左足に、冷たい水がここちいい。
あたしたち三人が首元までつかる深さへ進むと、頭上から満月の光は真っすぐおりてきた。水面に黄色い満月が落っこちたみたい。夜空にうかぶ満月と池にうつる満月を光の柱がつないでる。
その光の柱に反応して、池の中の星のかけらもひかり出した。白バトさまがいったように、ドバーっとひかっている。あたしたちの輪郭《りんかく》が、ぼやけるくらい強い光。まぶしくて目をとじたら、まぶたの裏も明るい。
その裏側にいろんな映像がうかんできた。
島の学校で授業をうけている子どもたち。あたしが知ってる、ボロボロの校舎じゃない。廃村になる前の風景?
漁船に乗って、あみを引いてるおじさんの姿。井戸から水をくんでる女の人。その人たちをみあげてる映像だ。これをみているのは、子どもたち?。
島の風景とはちがう映像も。
海をさみしそうにみているおじいさんの横顔。タンスの中の着物を大事そうにみているおばあさんの後ろ姿。スーツを着て家を出ていくおじさん。
これは、島をはなれた後の記憶? この島と関係ない記憶だ。つぎつぎかわる映像の中に、野球をやってるあたしの姿があった。これって、あたしの家族の記憶?
まぶしい光と、くるくるかわる映像にめまいがしそう。体まで、めまいにつられて感覚がなくなってきた。自分の体が自分じゃないみたい。
ふっと光が突然《とつぜん》やんだ。目をあけると、さっきまでのまぶしさがうそのような暗闇に、放り出された。目を細めると、横に立つサブ兄ちゃんとゲンの姿がみえた。二人はあたしと同じ大きさ。元の大きさにもどったのかわからない。
「よかったのお、そちたち。今年は元にもどったぞ」
さっきの壮大な景色とは真逆な、まのびした白バトさまの声。あわてて、池のまわりを探す。
いた! いつもの小さなかわいい姿の白バトさま。あらためて自分の体をみた。さっき首元まであった池の水は、あたしたちの足元にしかない。
ということは、元の大きさにもどれたんだ。夢みたい。
「やった。アスのおかげだ。この大きさにもどったの。何年ぶりだろう」
「ありがとう。アスがいなかったら、とっくにあきらめてたよ」
そういうふたりにあたしは、だきついた。ふたりの体温があったかい。夢じゃない。あたしたちは、やりとげたんだ。
「こちらこそ、ありがとう!」
あたしたちは三人でだき合い、ひとかたまりになって、水しぶきをあげながら飛びはねた。もう、足首も痛くない。何回だって飛べる。
「やめぬか。我に水がかかる」
白バトさまの苦情を聞いて、しぶしぶ池から出た。
「さっきおっしゃっていた、星のかけらの意味がかわったというのは、どういうことですか?」
すっかり元気になったサブ兄ちゃんが、白バトさまを腕へ乗せ質問し始めた。
「つまりの。小娘を心配する家族の強い思いが、この島へとどいた。すると、他の住民を思う気持ちも星のかけらとなってやってきたのじゃ」
「全然意味わかんねえ」
「他の住民って。この島にはもう三人しかいないよ」
「そうか、蛍か。蛍になった人々を思う気持ちがとどいたんだ」
サブ兄ちゃんが太ももをたたいていった。
「そうじゃ。今までは元住民の島の思い出だったものが、ここにいる蛍になった住民を思う思い出も、星のかけらとなったということじゃ。わかったかの?」
あたしとゲンは同時に首をかしげていった。
「たぶん」
「あはは、そっくりな反応だね」
サブ兄ちゃんに笑われた。だって、ゲンとあたしはおじいちゃんと孫なんだもん。内緒だけど。そっくりなのは、あたりまえ。
「さあ、もうよいだろう。ねぐらへ帰ってひと眠りするがよい。小娘、帰るのは明日でよかろう。我もつかれたしの」
「これから、お酒飲まないでね。白バトさまも眠ってね。そして朝いちばんここにくるから待っててよ」
白バトさまには、十分念おししとかないと。
「わかった、わかった。我も眠る。ではの」
そういって、やぶの中へ首を前後にゆらしながら入っていった。
あたしたちは、石段を競うように一気にかけおりた。あんなに高かった石段だったのに。体が元にもどったら、こんなに簡単におりられる。これから、ゲンもサブ兄ちゃんもできることがふえるね。
あたしは、ちょっとだけほこらしい気持ちでふたりをみた。
石段の下のクギでとめた葉っぱと青い石を拾いながら、ねぐらへ歩き始める。
ふたりはもうあたしの肩に乗っていない。横を同じ目線で歩いてる。小人になった時と同じなんだけど、なんかちょっと恥《は》ずかしい。
恥ずかしさをまぎらわすため、あたしはいった。
「ふたりと最後に野球したかったな」
「やろうぜ、アスが帰る前に」
「でも、バットとボールがないよ」
「ボールもってるよ。ボクは中学で野球部に入ってたんだ」
えっ? サブ兄ちゃんが野球やってたなんてはじめて聞いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる