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せこいよ
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「ふっふっふ。なるほど、現金をちらつかせ、私を買収《ばいしゅう》しようというのですね」
このカラス、これがお金ってわかるんだ。ゲンたちはわからなかったのに。
「よろしい。そこで待っていてください」
やった。交換してくれる気になったんだ。
カラスは、黒い羽根を大きく広げ、羽ばたかせた瞬間、ピタリとその動きをとめた。
「おっと、スズメくんたち後をつけてこないでくださいよ。私たちの秘密のかくし場所なんですからね」
なんて、疑り深い。チラリとサブスズメをみると小さく舌打ちしていた。あれっ、ひょっとしてこっそり後をつけていこうとしてた?
カラスは捨てゼリフをはき、何度も羽ばたかせた。あたりのかれ草をまきあげながら。風にあおられた草があたしのほほを打つ。
絶対わざとだ。こばかに一声カーと鳴いて、飛んでいった。
しばらくしてもどって来たカラスの口ばしから、ポロリと星のかけらが一つ、こぼれ落ちた。
「さあ、そのお金をよこしなさい」
「えっ、一個だけ? 石はもっとあるんでしょう」
あたしは百円玉をにぎりしめ、不満を声に出した。すると、フンとカラスは鼻息を荒くはき出す。
「交換するものが一つなのだから、石は一つ。当然でしょう」
「えー、これ百円なんだよ。せめて三つぐらいちょうだいよ」
「人間にとってそれは価値があるかもしれないが、カラスにはなんの価値もない。石をもっとほしかったら、他に交換するものを持ってきなさい」
そういって、勝ちほこったように口ばしを空へむける。
「アス、すまないけどいうこと聞いて、お金をわたして。とりあえず一つは手に入ったんだから」
納得できないけど、しぶしぶサブスズメの言葉にしたがい、カラスへむかって手のひらをつきだした。
高らかなカラスの鳴き声を背に、ねぐらまであたしたちはとぼとぼ帰って来た。暑い外とはちがい、天井がぬけててもねぐらの中はひんやりとしてすずしい。
あたしはハンモックの中に入って、ゆらゆらゆれながらいった。
「カラスはひかるものが好きだから、ああいう丸くてピカピカしたものなら交換してくれるよ」
「漂流ゴミから拾ってくるか?」
「あそこにあるのは、大きいものばかりだ。あんな小さいものは落ちてない」
「じゃあ、どうする?」
ゲンスズメが、ちょっとイラっとした声で、サブスズメにいった。
「あのカラスたちは、石をたくさんかくしてる。だからひかるものもたくさん集めないといけない。はたして、この島で集められるかどうか」
サブスズメの声がだんだんと小さくなっていく。あたしは、はっとひらめいた。
「そうだ、あの海で拾ったきれいな石は?」
「そうだよ、あの石キラキラしててきれいだったぜ」
ゲンスズメは同意してくれたけど、サブスズメは首をふる。
「たぶんだけど、アスがわたしたお金より小さいものとは、交換しないんじゃないかな」
あー、いいそう。随分《ずいぶん》とみくびられたものですね。とかなんとか。
「じゃあ、アスがもってたあのお金と同じぐらいか、それより大きなもので、なおかつたくさんあるものってなんだよ」
ゲンスズメが、イライラと羽をばたつかせていった。
「ガラス窓をわってみようか。でもガラスをわるの危ないしなあ」
サブスズメが、ちらりとあたしをみていう。あたしに危ないことさせられないって、思ったんだよね。そのやさしさ、うれしい。うれしいけど、キラキラした光るものみつけたい。
「ガラスびんは?」
小さなガラスびんをわることは危なくないと思い、あたしはいった。
「それだ! ガラスびんっていえば王冠《おうかん》じゃないか」
ゲンスズメが飛びあがっていった。
はっ? びんと、王様がかぶるかんむりと、なんの関係があるんだろう。
「王冠か! そうだよ。王冠ならたくさんある」
サブスズメまで喜んでるけど、王冠なんて宝物だよ。そんないっぱいあるわけないのに。二羽はどうしちゃったの。
「こんなところに、王冠なんかあるわけないよ」
あたしが疑問《ぎもん》を口にすると、
「それがあるんだな。オレいっぱい持ってるんだ」
ゲンスズメは自慢げに、胸をそらす。
「えっ、王冠いっぱい持ってるって。ゲン、この世界の王様だったの?」
「なにいってんだ、おまえ。それより、かまどの中に入ってくれ。そこにあるんだ」
かまどって、たしかごはんたいたりするところだよね。
ねぐらの入り口の近くに、四角いセメントの箱みたいなものがある。上には鉄の板がかぶせてあり、横に二つ穴があいている。そこへ二羽は飛んでいった。
夜、右の穴にゲン、左の穴にサブ兄ちゃんが入って眠《ねむ》るのだった。これが、かまどなの? こんなんで、どうやってごはんたくんだろう。
「アス、この中に入って、麻の袋をとってくれ」
そうゲンスズメにいわれ、あたしは腹ばいになって左の穴へ頭をつっこんだ。
中のセメントは真っ黒。布の切れ端《はし》やら、丸くて絵のかいてある厚紙やら、いろんなものが入っていた。その一番奥に袋《ふくろ》がみえた。
手をのばし引きよせると、じゃらっと音がする。何が入ってるんだろう。本当に王冠だったりして。
袋をかかえ、ずりずりと後ずさりして穴から出て、二羽にみせた。
「これこれ。袋あけて王冠を出してくれよ」
ゲンスズメの言葉にしたがい、袋の口のひもをほどく。そして、袋をひっくり返した。
じゃらじゃらっとにぎやかな音をたてながら、丸いものがいっぱい袋から出てきた。
なにこれ?
このカラス、これがお金ってわかるんだ。ゲンたちはわからなかったのに。
「よろしい。そこで待っていてください」
やった。交換してくれる気になったんだ。
カラスは、黒い羽根を大きく広げ、羽ばたかせた瞬間、ピタリとその動きをとめた。
「おっと、スズメくんたち後をつけてこないでくださいよ。私たちの秘密のかくし場所なんですからね」
なんて、疑り深い。チラリとサブスズメをみると小さく舌打ちしていた。あれっ、ひょっとしてこっそり後をつけていこうとしてた?
カラスは捨てゼリフをはき、何度も羽ばたかせた。あたりのかれ草をまきあげながら。風にあおられた草があたしのほほを打つ。
絶対わざとだ。こばかに一声カーと鳴いて、飛んでいった。
しばらくしてもどって来たカラスの口ばしから、ポロリと星のかけらが一つ、こぼれ落ちた。
「さあ、そのお金をよこしなさい」
「えっ、一個だけ? 石はもっとあるんでしょう」
あたしは百円玉をにぎりしめ、不満を声に出した。すると、フンとカラスは鼻息を荒くはき出す。
「交換するものが一つなのだから、石は一つ。当然でしょう」
「えー、これ百円なんだよ。せめて三つぐらいちょうだいよ」
「人間にとってそれは価値があるかもしれないが、カラスにはなんの価値もない。石をもっとほしかったら、他に交換するものを持ってきなさい」
そういって、勝ちほこったように口ばしを空へむける。
「アス、すまないけどいうこと聞いて、お金をわたして。とりあえず一つは手に入ったんだから」
納得できないけど、しぶしぶサブスズメの言葉にしたがい、カラスへむかって手のひらをつきだした。
高らかなカラスの鳴き声を背に、ねぐらまであたしたちはとぼとぼ帰って来た。暑い外とはちがい、天井がぬけててもねぐらの中はひんやりとしてすずしい。
あたしはハンモックの中に入って、ゆらゆらゆれながらいった。
「カラスはひかるものが好きだから、ああいう丸くてピカピカしたものなら交換してくれるよ」
「漂流ゴミから拾ってくるか?」
「あそこにあるのは、大きいものばかりだ。あんな小さいものは落ちてない」
「じゃあ、どうする?」
ゲンスズメが、ちょっとイラっとした声で、サブスズメにいった。
「あのカラスたちは、石をたくさんかくしてる。だからひかるものもたくさん集めないといけない。はたして、この島で集められるかどうか」
サブスズメの声がだんだんと小さくなっていく。あたしは、はっとひらめいた。
「そうだ、あの海で拾ったきれいな石は?」
「そうだよ、あの石キラキラしててきれいだったぜ」
ゲンスズメは同意してくれたけど、サブスズメは首をふる。
「たぶんだけど、アスがわたしたお金より小さいものとは、交換しないんじゃないかな」
あー、いいそう。随分《ずいぶん》とみくびられたものですね。とかなんとか。
「じゃあ、アスがもってたあのお金と同じぐらいか、それより大きなもので、なおかつたくさんあるものってなんだよ」
ゲンスズメが、イライラと羽をばたつかせていった。
「ガラス窓をわってみようか。でもガラスをわるの危ないしなあ」
サブスズメが、ちらりとあたしをみていう。あたしに危ないことさせられないって、思ったんだよね。そのやさしさ、うれしい。うれしいけど、キラキラした光るものみつけたい。
「ガラスびんは?」
小さなガラスびんをわることは危なくないと思い、あたしはいった。
「それだ! ガラスびんっていえば王冠《おうかん》じゃないか」
ゲンスズメが飛びあがっていった。
はっ? びんと、王様がかぶるかんむりと、なんの関係があるんだろう。
「王冠か! そうだよ。王冠ならたくさんある」
サブスズメまで喜んでるけど、王冠なんて宝物だよ。そんないっぱいあるわけないのに。二羽はどうしちゃったの。
「こんなところに、王冠なんかあるわけないよ」
あたしが疑問《ぎもん》を口にすると、
「それがあるんだな。オレいっぱい持ってるんだ」
ゲンスズメは自慢げに、胸をそらす。
「えっ、王冠いっぱい持ってるって。ゲン、この世界の王様だったの?」
「なにいってんだ、おまえ。それより、かまどの中に入ってくれ。そこにあるんだ」
かまどって、たしかごはんたいたりするところだよね。
ねぐらの入り口の近くに、四角いセメントの箱みたいなものがある。上には鉄の板がかぶせてあり、横に二つ穴があいている。そこへ二羽は飛んでいった。
夜、右の穴にゲン、左の穴にサブ兄ちゃんが入って眠《ねむ》るのだった。これが、かまどなの? こんなんで、どうやってごはんたくんだろう。
「アス、この中に入って、麻の袋をとってくれ」
そうゲンスズメにいわれ、あたしは腹ばいになって左の穴へ頭をつっこんだ。
中のセメントは真っ黒。布の切れ端《はし》やら、丸くて絵のかいてある厚紙やら、いろんなものが入っていた。その一番奥に袋《ふくろ》がみえた。
手をのばし引きよせると、じゃらっと音がする。何が入ってるんだろう。本当に王冠だったりして。
袋をかかえ、ずりずりと後ずさりして穴から出て、二羽にみせた。
「これこれ。袋あけて王冠を出してくれよ」
ゲンスズメの言葉にしたがい、袋の口のひもをほどく。そして、袋をひっくり返した。
じゃらじゃらっとにぎやかな音をたてながら、丸いものがいっぱい袋から出てきた。
なにこれ?
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