見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第399話】反撃の燃料 勝利への道筋

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「ぼ、僕らの魔力を……使って……モード……レッドを……止めてくれ」

 サーシャやリリスに負けないぐらいダメージを負っているフレイムがとんでもない事を言い始めた。こんなにボロボロの奴から魔力を貰ったらそれこそトドメになってしまいかねない。俺が「そんな事をしたら死んじまうぞ!」と言葉を返すとフレイムは再び首を横に振った。

「大丈夫……だよ。あくまで僕らは肉体にダメージを……負っただけだ。だから、魔量自体は減っていないし、ハァハァ……魔力を与えても……問題ない……うぐっ!」

「呻き声をあげているような奴が何を言ってんだ! それにいくら魔量が余っていても魔量が無くなればダメージの回復が遅くなる……いや、下手したら後遺症や死が待っている可能性すらあるんだぞ?」

「フフッ、問題ないさ、ギリギリ死なない程度に……マ、マジックパサーを使うつもりだからね。だから君は……モードレッドの動きを見つめながら……ハァハァ……打開策を探りつつ回復を待つといい」

 そう呟くとフレイムは逃がさないと言わんばかりに俺の足首を掴んだ。それと同時にブレイズ、アクア、レインも這いずりながら俺の四方を囲み始めた。まるでゾンビのような執念に気圧された俺は離れられるはずなのに足を動かす事が出来なかった。

 絶対に回復させてやるというパープルズの凄味が彼らを危険な目に合わせたくないという俺の意思を弾き飛ばしたのだ。四方から俺の体に触れたパープルズは一斉にマジックパサーを開始した。

 水を吸った綿の様に自身の体がみるみる満たされていくのを感じる。今回は4人全員が俺を回復してくれている影響か初めて回復してもらった時よりも遥かに凄い回復量だ。

 数日前のフレイムは「ガラルド君にマジックパサーをしたら魔力を吸われているような感覚があってあまり回復できなかった」と言っていたけれど充分な回復量だ、これは4人が魔量の天井を大きく上げる程に鍛錬をしたからか、それとも別の理由があるのだろうか?

 回復を受けながらマジックパサーについて考えていると、4人は俺の体から同時に手を離し、どさりとうつ伏せに倒れた。

 まさか本当に死んでしまったのではと心配になったが、ブレイズもアクアもレインもぐっすりと眠っている、どうやら上手く供給量を調節して気を失うだけで済んだようだ。

 そして、4人の中でただ一人意識を保っていたフレイムは今にも眠ってしまいそうな程に瞼を狭めながら最後の言葉を呟く。

「後は頼んだよ……ガラルド君。戦えるのはもう……シンさんと君しかいない。シンバードを救って僕達に未来を歩ませてくれ。僕らはまだ君達に償いきれていな――――」

 あと少しで言葉を言い切れるところでフレイムは気を失った。パープルズの中にリーダーという役割があるのかは分からないが、一人だけ意識を長く保てたのはフレイムがタフであり、人一倍責任感の強い奴だからだろう。

 彼らのおかげで反撃の為の燃料は手に入った。後は不屈の闘志を維持し、どう戦うか考えるだけだ。空や地上を行き来しながら人間離れした戦いを見せるシンとモードレッドを眺めていた俺は打開策を考え続けた。

 その結果、俺が思いついた勝利への道筋は至ってシンプルなものとなった。俺は地上で剣をぶつけ合っている二人に近づくとシンバードの配下らしからぬ提案をシンに持ち掛けた。

「聞いてくれシンッ! 俺達が勝てる方法は一つしかない! それは反動と消耗が激しい力を使っているモードレッドが強さを維持できなくなるまで時間を稼ぐ戦法だ」

 俺が提案を持ち掛けると、鍔迫り合いを続けていたシンが目線を俺に向けてニヤリと笑っていった。

「つまり俺がギリギリまで戦いを長引かせてガラルド君に後を託せということだな? 全く……これじゃあどっちが王様か分からないじゃないか、フフッ」

「ジッとしたまま守られるより自ら戦って国を守る方がシンの性根に合っているだろ? 疲れ切ったモードレッドに俺が必ずレストーレを当てる。頼んだぞシン!」

「確かにガラルド君の言う通りだ……そっちの方がよっぽど俺らしい。それじゃああと少しだけ一緒に楽しもうか、モードレッド!」

 顔から一切の曇りが消えたシンが呼びかけると不思議とモードレッドは笑っていた。傍から2人を見ていると国の存亡を賭けた戦いというよりも旧友との喧嘩を楽しんでいる様に見える。

 2人の衝突はその後も5分以上続き、周囲の地形は撃ち合う魔術によって穴だらけになり、最初の景色の面影は残っていない。

 そんな戦いも徐々にモードレッドが押し始め、シンの防御が間に合わなくなってきた。モードレッドが目まぐるしく繰り出す上下左右の剣撃は威力・速度ともに少しずつ落ちているものの、シンの疲労による鈍重化はそれを上回っている。

 モードレッドは薙ぎ払いでシンの剣を大きく吹き飛ばすと素手になったシンに向かって突きの構えを見せる。

「これで終わりだ、シン!」

 モードレッドはシンの心臓目掛けて一直線に突きを放った――――だが、シンに時間を稼ぐよう指示を出した俺がみすみす見逃すはずがない。俺はレッド・ステップで横から棍を繰り出し、モードレッドの突きを弾くと、シンを後ろへ下がらせて宣言する。

「待たせたなモードレッド。ここからは俺との戦いに付き合ってもらうぜ」


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