見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第382話】敬意なき魔人

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「はじめましてぇ、シン国王、そして英雄ガラルド。アタシの名前はソニア。アスタロト様、クローズ様の次に偉くなる予定の魔人よぉ。悪いけど貴方達にはここで死んでもらうわねぇ」

 ねっとりとした喋りで耳が疲れるタイプだが、これでも一応魔人のようだ。ザキールの言っていたソニアがコイツだ、名前的に女性かと思っていたがどうやら男のようだ。いや、そもそも魔人の性別はどんなふうになっているのだろうか?

 いや……今はそんなどうでもいい事を考えている暇はない。ソニアがシンバードにいた理由やアスタロト陣営の事を探れるだけ探っておくことにしよう。俺は早速ソニアへ尋ねる。

「お前が死の山から飛び立ってアスタロトと帝国に情報を運んだという魔人ソニアか。お前の仕事は死の山の大戦が始まったことを伝えるだけじゃなかったのか?」

「アタシがそんな簡単な仕事だけしかやらない訳ないでしょ。移動を終えてアスタロト様とモードレッドに情報を伝えた後はアタシもシン国王を探していたわ。でも中々見つからなくて焦っていたんだけどぉ、まさかそっちから現れてくれるなんてね、おかげで手間が省けたわ」

「なるほどな、移動に索敵に大忙しだったわけか、働き者だな。ソニアもブロネイル、ダンザルグ、ザキールと同じようにアスタロトに認められて出世したいと考えているのか?」

 俺が問いかけるとソニアはわざとらしく大きな溜息を吐いた。そして、鼻につく儚げな表情で髪をかき上げると、自分の理想を語り始める。

「もちろんアスタロト様に認めてもらいたいという気持ちはあるわ。でも野蛮な三魔人とアタシを一緒にしないでくれるかしら。アタシはダンザルグみたいな忠義バカの武人ではないし、ザキールやブロネイルみたいに短絡的でもないの。アタシは生き方も容姿も戦い方も全てが誰よりも美しいわ。だからアタシの美しさを大陸全土に知らしめるのがアタシの夢なの」

「う、美しさぁ? 何だか今までの魔人と違ってよく分からない奴だな」

「フフフ、貴方みたいなゴツゴツしたデカい男にはアタシの事なんて理解できるはずがないわ。アタシは人類がどうとか、魔人が最強とか、そんなことはどうでもいいわ。アタシはただ魔人の中で一番活躍してアスタロト様に認めてもらった後に『合成の霧』で永遠の美と若さを提供してもらいたいだけなのぉ。その目的の為に貴方達には死んでもらうわ」

 そう呟くとソニアはモーデックの背に降り立ち、両手の爪をこちらへ向けてきた。どうやら本当に一人でシンを殺せるつもりのようだ。

 向こうの出方を伺うべきか、こちらが先に仕掛けるべきか、俺達と敵の間に数秒の沈黙が流れると、グラッジが突然俺の肩に手を当てて「戦いの前にソニアに聞きたいことがあります、少し時間をください」と言い、戦いの中断を申し出た。

「僕からもう一つ質問させてくれ魔人ソニア。君が語った『夢』とやらは全て自分の利益ばかりが目に付いたが、仲間の為とかアスタロトへの忠義とかそういう気持ちは全然ないのか?」

「……敵なのに変な事を聞いてくるのね。そんな気持ちある訳ないじゃない。まぁアスタロト様は美しさを兼ね備えた強者だから尊敬する部分はあるけど、その程度の気持ちだわ。他の三魔人なんて今頃どうなってても全然気にならないもの」

「ザキールとブロネイルは今、人類側で拘束しているし、ダンザルグは忠誠心を燃やして自害してしまったよ。この事実を聞いても本当に何も思わないのか?」

「しつこいわね貴方。何度言われようと気持ちは変わらないわよ、アタシが大好きなのはアタシだけだもの」

「……そうか、分かった、もういいよ。お前には微塵も尊敬できるところはないし、迷いなく倒せそうだ」

 グラッジは小さく低い声で呟くと、再び俺に耳打ちしてきた。その内容は『僕達の連携技を使って一発で勝負を決めましょう』というものだった。

 俺達は戦争前の準備期間にそこそこ程度連携をとる練習をしてきたから連携技を出すこと自体は問題ない。ただ、耳打ちをしてきたグラッジが相当キレている感じだったから、グラッジの動きに遅れないよう注意しなければ。

 俺とグラッジは早速両足に魔力を集中させた。

「レッド・ステップ!」

千色千針せんしきせんしん! 三色一閃さんしきいっせん!」

 互いが超高速移動から勢いを乗せた拳で空気を切った。ソニアは目で追うのがやっとだったらしく「えっ?」と呟く事しか出来なかった。俺とグラッジは左右からソニアの横腹に拳撃を喰らわせ、同時に叫んだ。

「「クロス・ブロウ!」」

 二つの拳がソニアの腹を挟み込み、岩と岩がぶつかり合ったような衝撃音と共にソニアが断末魔をあげる。

「ぎぃやああぁぁっっ!」

 ソニアは断末魔と同時に白目を剥くと、両膝を着き、口から血の泡を吹きながらどさりと倒れた。グラッジは仲間を蔑ろにしたり、私利私欲だけで動く奴が大嫌いだから怒らせるとこうなるんだぞ! と説教してやりたかったがソニアは気を失っているから無理そうだ。

 まさか相手が一人だけとはいえ魔人との戦いが一瞬で終わるとは思わなかった。それに連携技がこんなにもピッタリ決まるとも思っていなかった。

 クロス・ブロウは以前俺とレックがモードレッドと模擬試合をした時に咄嗟に放った連携技を元に作り出した技だから、グラッジとも上手く連携がとれて正直凄く嬉しい。確実にチームとしても強くなっているのを感じる。

 俺達は下方に見える街からソニアの敗戦を見上げている敵軍たちを尻目にモーデックに乗って南の海へと逃げていった。これで無事シンの体を張った陽動は成功したわけだ。

 余裕の勝利に加えて、新技と陽動も大成功と文句なしの成果だ。後はソニアから情報を聞き出せればいいのだが。気を失ったままソニアを乗せたモーデックは何事もなく海へと潜り、そのままリヴァイアサンの泡に包まれて沈んでいった。





=======あとがき=======

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